行方不明になってから何十年経過していても、行方不明者は死亡とはみなされません。法律上は生存していると扱われます。
行方不明者を死亡とみなすには、失踪宣告の申立てをして認めてもらう必要があります。
ただし、失踪宣告の申立ては行方不明だからといって、無条件に誰でもできるわけではないです。
今回の記事では、失踪宣告の手続きについて説明しているので、申立ての要件と書類等の確認をしておいてください。
目次
1.失踪宣告の申立て要件を満たす
行方不明の人がいるからといって、無条件に失踪宣告の申立てはできません。申立てをするには決められた期間、生死不明であることが条件となります。
失踪宣告には2種類あります。
普通失踪と特別失踪では、申立ての条件となる生死不明の期間が違います。
1-1.普通失踪の申立ては7年経過
一般的に行方不明と言われるのが普通失踪となります。
普通失踪により失踪宣告を申し立てるには、行方不明になってから7年経過している必要があります。
(失踪の宣告)
第三十条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
最後に確認が取れた日から7年経過していなければ、失踪宣告の申立てはできません。
例えば、行方不明になってから5年後に電話があった場合、電話があった日から7年経過していれば申立てできます。
失踪宣告の申立てを検討するなら、7年経過しているかは重要です。
1-2.特別失踪の申立ては1年経過
特別失踪により失踪宣告を申し立てるには、危難が去ったときから1年経過している必要があります。
(失踪の宣告)
第三十条
2 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止やんだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
例えば、船舶が沈没したことにより行方不明になっているなら、沈没してから1年経過していれば申立てできます。
死亡している可能性が高くても、1年は経過しなければ申立てできません。
2.失踪宣告の手続きはどこに誰がするのか
失踪宣告の申立ての前に「管轄家庭裁判所」と「申立人」を確認します。
2-1.管轄家庭裁判所を確認する
家庭裁判所は全国にありますが、失踪宣告を申し立てる家庭裁判所は決まっています。
第百四十八条 失踪の宣告の審判事件(別表第一の五十六の項の事項についての審判事件をいう。次項において同じ。)は、不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
行方不明者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所が、失踪宣告の申立て先となります。
基本的には最後に住んでいた住所地を管轄する家庭裁判所です。
2-2.申立て人は限られている
失踪宣告の申立てができるのは、法律上の利害関係を有する人です。
一般的には以下の人が該当します。
- 配偶者
- 相続人にあたる人
- 財産管理人
- 受遺者
上記以外の人でも利害関係があれば申立てをすることができます。
ただし、行方不明者の債権者や取引の相手方等は申立てができません。なぜなら、不在者財産管理人の選任申立てをすることで、問題を解決することができるからです。
関連記事を読む『失踪宣告の利害関係人の範囲|申立てができる人は限られる』
3.失踪宣告の申し立てに必要な費用と書類
失踪宣告の申立てをするには、手続き費用と添付書類を準備する必要があります。
関連記事を読む『【失踪宣告の費用は5つ】失踪者の事情により金額が違う』
3-1.失踪宣告の申立費用は3種類
失踪宣告の申立てに必要な費用を確認します。
- 収入印紙
- 連絡用の切手代
- 官報公告料
収入印紙
収入印紙が800円分必要です。
収入印紙はコンビニや郵便局で購入できます。
- コンビニ:200円×4枚
- 郵便局:400円×2枚
コンビニで売っている額面は200円のみなので、200円を4枚購入してください。
一方、郵便局なら400円も売っているので、400円を2枚購入する方が枚数も多くならないのでお勧めです。
収入印紙は申立書の右上に貼ります。
関連記事を読む『収入印紙800円分を購入する【家庭裁判所申立書に貼付】』
連絡用の切手代
家庭裁判所に提出する連絡用の切手を用意する必要があります。
切手は家庭裁判所から申立人等への郵送に使われます。
各家庭裁判所によって内訳も指定されているので、管轄家庭裁判所に確認しておきましょう。
(例)大阪家庭裁判所
500円×2
320円×2
84円×30
50円×2
10円×20
2円×6
1円×10
官報公告料
官報公告料は裁判所の指示があってから納めます。
- 失踪に関する届出の催告(3,053円)
- 失踪宣告(1,763円)
合計で4,816円です。
家庭裁判所に失踪宣告の申立てをすると、家庭裁判所が失踪者の調査をします。調査をしても見つからなければ、失踪宣告の官報公告を行います。
関連記事を読む『失踪宣告に関する官報公告は2回行われる』
3-2.失踪宣告の申立書に添付する書類
失踪宣告の申立てに必要な添付書類を準備しましょう。
- 行方不明者の戸籍謄本(450円)
- 行方不明者の戸籍附票(約300円)
- 失踪を証する資料
- 利害関係を証する資料(戸籍謄本等)
失踪を証する資料については、下記の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『失踪を証する資料|申立ての添付書類として必要になる』
4.失踪宣告の申し立て手続きは依頼できる
失踪宣告の申立て手続きは、専門家(弁護士・司法書士)に依頼することも可能です。
失踪宣告の申立書の作成だけでなく、失踪宣告が認められた後の相続手続きについても相談できます。
誰が相続人になるのかや、遺産分割協議・相続登記等の有無も確認できます。
失踪宣告の申立てを検討しているなら、専門家の知識を利用しましょう。
5.さいごに
失踪宣告の申立てを家庭裁判所にしてから、審判確定までには数ヶ月以上かかります。審判確定までの間にその後の準備等をしておいてください。
確定までの流れは『失踪宣告までの流れ|審判確定までには半年から1年ぐらい』をご覧ください。
失踪宣告の申立てが認められると、行方不明者に関する相続が開始します。遺産分割協議や相続登記等が必要になるかもしれません。
失踪宣告の申立書作成を専門家に依頼される場合は、その後の相続手続についても相談しておきましょう。
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