家族の中に行方不明者がいて困っているなら、失踪宣告も解決の手段となります。
失踪宣告の手続きを済ませれば、行方不明者は死亡とみなされます。結果として、相続手続きや不動産の処分も可能です。
ただし、失踪宣告の申立てには複数の要件があります。満たせなければ何十年経っても生存扱いです。
今回の記事では、失踪宣告の手続きについて説明しているので、しっかりと確認しておいてください。
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1.失踪宣告は家庭裁判所の手続き
失踪宣告は家庭裁判所の手続きであり、その他の場所ではできません。
以下は、民法の条文です。
市役所や警察署の窓口に行っても、失踪宣告はできないので注意してください。
1-1.申立先の家庭裁判所は決まっている
失踪宣告は家庭裁判所の手続きですが、申立先の家庭裁判所は決まっています。
以下は、家事事件手続法の条文です。
一般的には、行方不明者の住民票を取得して、最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。
住民票の住所が分からない場合は、戸籍の附票でも住所は確認できます。
1-2.申立てがなければ失踪宣告できない
家族の中に行方不明者がいても、申立てがなければ失踪宣告できません。
つまり、誰も申立てをしなければ、生死不明が数十年であっても生存扱いです。
待っていても失踪宣告されないので、長期間経過しているなら手続きを検討してください。
関連記事を読む『失踪宣告しないとどうなる?死亡を原因とする行為が発生しない』
1-3.失踪宣告の手続費用は4つに分かれる
失踪宣告の手続費用は4つに分かれます。
- 申立手数料|800円
- 予納郵券 |約4,000円
- 添付書類 |数千円
- 官報公告料|約5,000円
申立手数料は共通ですが、予納郵券は家庭裁判所により違います。申立てる前に確認しておいてください。
一般的な添付書類(戸籍・住民票)だけなら数千円です。
官報公告料も手続費用の一部ですが、申立時ではなく家庭裁判所に請求されてから納付します。
関連記事を読む『【失踪宣告の費用は5つ】失踪者の事情により金額が違う』
2.失踪宣告には行方不明が一定期間必要
失踪宣告の手続きをするには、前提として行方不明が一定期間必要です。
行方不明になった原因により、期間に違いがあります。
関連記事を読む『失踪宣告の期間は複数あり起算日や期限もそれぞれ違う』
2-1.普通失踪なら7年以上経過してから申立て
一般的な行方不明は、普通失踪になります。
したがって、行方不明の期間が7年以上なければ、失踪宣告の申立てはできません。
最後に生存が確認できた日から7年なので、経過日を把握しておきましょう。
2-2.特別失踪なら1年以上経過してから申立て
特別な危難に遭遇しての行方不明は、特別失踪になります。
したがって、行方不明の期間が1年あれば、失踪宣告の申立てはできます。
普通失踪より期間が短いのは、亡くなっている可能性が高いからです。
3.失踪宣告の手続きに必要な書類
失踪宣告に必要な書類は3つあります。
- 失踪宣告の申立書
- 生死不明を証する書類
- 利害関係を証する書類
上記を揃えて家庭裁判所に提出します。
3-1.失踪宣告の申立書
失踪宣告の申立書は、家庭裁判所の窓口やホームページから取得できます。
申立人や失踪者の情報、申立ての理由等を記載してください。
書き方については、下記の記事で詳細に説明しています。
関連記事を読む『失踪宣告の申立書を6つのパートに分けて書き方を細かく説明』
3-2.生死不明を証する書類
失踪宣告の申立てには、生死不明(失踪)を証する書類も必要です。
- 行方不明者の戸籍
- 職権消除された住民票
- 行方不明届受理証明書
- 調査報告書
- その他
住民票が職権消除されているなら、生死不明を証する書類になります。
警察署に行方不明届を出しているなら、行方不明届受理証明書も生死不明を証する書類です。
自分たちで探した事実をまとめた書類(調査報告書)も該当します。
どれか一つを出すのではなく、用意できる書類はすべて提出してください。
関連記事を読む『失踪を証する資料|申立ての添付書類として必要になる』
3-3.利害関係を証する書類
失踪宣告の申立人が配偶者や推定相続人なら、戸籍が利害関係を証する書類となります。
兄弟姉妹や甥姪が推定相続人の場合は、添付する戸籍も多くなるので漏れなく収集してください。
関連記事を読む『失踪宣告の利害関係人の範囲|申立てができる人は限られる』
4.失踪宣告の手続きを流れで確認
失踪宣告の流れは6つに分かれており、4つ目までが手続きの部分です。
生死不明の期間が経過したら、家庭裁判所に申立てをします。
必要書類や管轄家庭裁判所を、申立前に確認しておきましょう。
失踪宣告の申立てがあると、家庭裁判所も失踪者の調査(捜索)をします。
調査の結果、失踪者が見つかれば、申立ては却下(取下げ)です。
官報公告の期間が満了すれば、失踪宣告の審判決定となります。
そして、審判決定から2週間経過で審判確定です。
失踪宣告の手続きが終わった後は、申立人が市役所等に失踪届を提出します。
その後、失踪宣告が記載された戸籍を取得し、相続手続きを進めてください。
関連記事を読む『失踪宣告の流れ|審判確定までには10ヶ月から1年ぐらい必要 』
5.失踪宣告の手続きで気を付ける点
失踪宣告の手続きで気を付ける点も説明しておきます。
- 申立ての前に調査が必要
- 生死不明者の死亡日は選べない
- 家庭裁判所の調査で形跡が見つかる
それぞれ簡単に説明していきます。
5-1.申立ての前に失踪者の調査が必要
失踪宣告の申立てをする前に、申立人が失踪者の調査をする必要があります。
- いつから行方不明なのか?
- 住民票の住所は存在するのか?
- 親族に知っている人はいるのか?
申立人ができる調査はしたうえで、家庭裁判所に申立てをします。
関連記事を読む『【失踪宣告の調査は2つある】それぞれ微妙に目的が違う 』
5-2.死亡とみなされる日は選べない
失踪宣告が認められると、生死不明者は死亡とみなされます。
ただし、死亡とみなされる日(死亡日)は家庭裁判所が決めるので、申立人が自由に選べるわけではありません。
想定していた死亡日と違うと、相続人も変わる可能性があるので、十分に注意してください。
関連記事を読む『失踪宣告による死亡日はいつなのか|相続発生日となるので重要 』
5-3.家庭裁判所の調査で形跡が見つかる
生死不明から7年以上経過していても、家庭裁判所の調査で失踪者の形跡が見つかるケースはあります。
【事例】
失踪者|父親
失踪日|平成23年8月15日
申立日|令和6年3月17日
形跡 |令和2年9月23日(免許更新)
最後に生存が確認された日から7年経過していますが、調査により免許更新の事実が判明。
免許更新日から7年経過していないので、失踪宣告の申立ては却下されます。
失踪者の形跡が見つかっても、今も住んでいるかは不明なので、現住確認からやり直しです。
6.失踪宣告の手続きは専門家に依頼できる
失踪宣告の手続きは専門家に依頼できますが、法律で司法書士と弁護士に限られています。
申立書の作成や添付書類の収集、失踪宣告に関する相談も可能です。
ただし、慣れている専門家は少ないので、相談・依頼する際は気を付けてください。
※失踪宣告の件数自体が少ない。
失踪宣告の後に相続登記する予定であれば、司法書士に両方ともご相談ください。
関連記事を読む『失踪宣告は司法書士に依頼できる!経験者は少ないので注意 』
7.まとめ
今回の記事では「失踪宣告の手続き」について説明しました。
失踪宣告は家庭裁判所の手続きであり、その他の場所ではできません。
誰かが申立てをしない限り失踪宣告はされず、失踪者は生存扱いのままです。
申立てをするには、生死不明が一定期間必要であり、行方不明の原因により違います。
失踪宣告の手続きには気を付ける点があるので、申立てをする前に確認しておきましょう。
失踪宣告は司法書士に相談・依頼できるので、お気軽にお問い合わせください。
失踪宣告の手続きに関するQ&A
- いつから行方不明か分からないです。
-
住民票が職権消除されているなら削除日から7年経過。
- 失踪宣告の申立てに予納金は必要ですか?
-
不要です。