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【失踪宣告の手続き】申立てをしなければ始まらない

失踪宣告の申立て手続き
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家族の中に行方不明者がいて困っているなら、失踪宣告も解決の手段となります。

失踪宣告の手続きを済ませれば、行方不明者は死亡とみなされます。結果として、相続手続きや不動産の処分も可能です。

ただし、失踪宣告の申立てには複数の要件があります。満たせなければ何十年経っても生存扱いです。

今回の記事では、失踪宣告の手続きについて説明しているので、しっかりと確認しておいてください。

1.失踪宣告は家庭裁判所の手続き

失踪宣告は家庭裁判所の手続きであり、その他の場所ではできません。

以下は、民法の条文です。

(失踪の宣告) 第三十条 不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
出典:e-Govウェブサイト(民法30条)

市役所や警察署の窓口に行っても、失踪宣告はできないので注意してください。

1-1.申立先の家庭裁判所は決まっている

失踪宣告は家庭裁判所の手続きですが、申立先の家庭裁判所は決まっています。

以下は、家事事件手続法の条文です。

第百四十八条 失踪の宣告の審判事件(別表第一の五十六の項の事項についての審判事件をいう。次項において同じ。)は、不在者の従来の住所地又は居所地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。
出典:e-Govウェブサイト(家事事件手続法148条1項)

一般的には、行方不明者の住民票を取得して、最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。

住民票の住所が分からない場合は、戸籍の附票でも住所は確認できます。

1-2.申立てがなければ失踪宣告できない

家族の中に行方不明者がいても、申立てがなければ失踪宣告できません。

つまり、誰も申立てをしなければ、生死不明が数十年であっても生存扱いです。

待っていても失踪宣告されないので、長期間経過しているなら手続きを検討してください。

1-3.失踪宣告の手続費用は4つに分かれる

失踪宣告の手続費用は4つに分かれます。

  • 申立手数料|800円
  • 予納郵券 |約4,000円
  • 添付書類 |数千円
  • 官報公告料|約5,000円

申立手数料は共通ですが、予納郵券は家庭裁判所により違います。申立てる前に確認しておいてください。

一般的な添付書類(戸籍・住民票)だけなら数千円です。

官報公告料も手続費用の一部ですが、申立時ではなく家庭裁判所に請求されてから納付します。

2.失踪宣告には行方不明が一定期間必要

失踪宣告に必要な生死不明の期間

失踪宣告の手続きをするには、前提として行方不明が一定期間必要です。

行方不明になった原因により、期間に違いがあります。

2-1.普通失踪なら7年以上経過してから申立て

一般的な行方不明は、普通失踪になります。

したがって、行方不明の期間が7年以上なければ、失踪宣告の申立てはできません。

最後に生存が確認できた日から7年なので、経過日を把握しておきましょう。

2-2.特別失踪なら1年以上経過してから申立て

特別な危難に遭遇しての行方不明は、特別失踪になります。

したがって、行方不明の期間が1年あれば、失踪宣告の申立てはできます。

普通失踪より期間が短いのは、亡くなっている可能性が高いからです。

3.失踪宣告の手続きに必要な書類

失踪宣告に必要な書類は3つあります。

  1. 失踪宣告の申立書
  2. 生死不明を証する書類
  3. 利害関係を証する書類

上記を揃えて家庭裁判所に提出します。

3-1.失踪宣告の申立書

失踪宣告の申立書

失踪宣告の申立書は、家庭裁判所の窓口やホームページから取得できます。

申立人や失踪者の情報、申立ての理由等を記載します。

3-2.生死不明を証する書類

生死不明を証する書類

失踪宣告の申立てには、生死不明(失踪)を証する書類も必要です。

  • 行方不明者の戸籍
  • 職権消除された住民票
  • 行方不明届受理証明書
  • 調査報告書
  • その他

住民票が職権消除されているなら、生死不明を証する書類になります。

警察署に行方不明届を出しているなら、行方不明届受理証明書も生死不明を証する書類です。

自分たちで探した事実をまとめた書類(調査報告書)も該当します。

どれか一つを出すのではなく、用意できる書類はすべて提出してください。

3-3.利害関係を証する書類

失踪宣告の利害関係を証する書類

失踪宣告の申立人が配偶者や推定相続人なら、戸籍が利害関係を証する書類となります。

兄弟姉妹や甥姪が推定相続人の場合は、添付する戸籍も多くなるので漏れなく収集してください。

4.失踪宣告の手続きを流れで確認

失踪宣告の流れは6つに分かれており、4つ目までが手続きの部分です。

STEP
失踪宣告の申立て

生死不明の期間が経過したら、家庭裁判所に申立てをします。

必要書類や管轄家庭裁判所を、申立前に確認しておきましょう。

STEP
失踪者の調査

失踪宣告の申立てがあると、家庭裁判所も失踪者の調査(捜索)をします。

調査の結果、失踪者が見つかれば、申立ては却下(取下げ)です。

STEP
失踪宣告の官報公告

家庭裁判所の調査でも失踪者が見つからなければ、官報公告を行います。

官報公告の期間は約3ヶ月です。

STEP
審判決定・確定

官報公告の期間が満了すれば、失踪宣告の審判決定となります。

そして、審判決定から2週間経過で審判確定です。

失踪宣告の手続きが終わった後は、申立人が市役所等に失踪届を提出します。

その後、失踪宣告が記載された戸籍を取得し、相続手続きを進めてください。

5.失踪宣告の手続きで気を付ける点

失踪宣告の手続きで気を付ける点

失踪宣告の手続きで気を付ける点も説明しておきます。

  • 申立ての前に調査が必要
  • 生死不明者の死亡日は選べない
  • 家庭裁判所の調査で形跡が見つかる

それぞれ簡単に説明していきます。

5-1.申立ての前に失踪者の調査が必要

失踪宣告の申立てをする前に、申立人が失踪者の調査をする必要があります。

  • いつから行方不明なのか?
  • 住民票の住所は存在するのか?
  • 親族に知っている人はいるのか?

申立人ができる調査はしたうえで、家庭裁判所に申立てをします。

5-2.死亡とみなされる日は選べない

失踪宣告が認められると、生死不明者は死亡とみなされます。

ただし、死亡とみなされる日(死亡日)は家庭裁判所が決めるので、申立人が自由に選べるわけではありません。

想定していた死亡日と違うと、相続人も変わる可能性があるので、十分に注意してください。

5-3.家庭裁判所の調査で形跡が見つかる

生死不明から7年以上経過していても、家庭裁判所の調査で失踪者の形跡が見つかるケースはあります。

【事例】

失踪者|父親
失踪日|平成23年8月15日
申立日|令和6年3月17日
形跡 |令和2年9月23日(免許更新)

最後に生存が確認された日から7年経過していますが、調査により免許更新の事実が判明。

免許更新日から7年経過していないので、失踪宣告の申立ては却下されます。

失踪者の形跡が見つかっても、今も住んでいるかは不明なので、現住確認からやり直しです。

6.失踪宣告の手続きは専門家に依頼できる

失踪宣告は司法書士と弁護士に依頼できる

失踪宣告の手続きは専門家に依頼できますが、法律で司法書士と弁護士に限られています。

申立書の作成や添付書類の収集、失踪宣告に関する相談も可能です。

ただし、慣れている専門家は少ないので、相談・依頼する際は気を付けてください。
※失踪宣告の件数自体が少ない。

失踪宣告の後に相続登記する予定であれば、司法書士に両方ともご相談ください。

7.まとめ

今回の記事では「失踪宣告の手続き」について説明しました。

失踪宣告は家庭裁判所の手続きであり、その他の場所ではできません。

誰かが申立てをしない限り失踪宣告はされず、失踪者は生存扱いのままです。

申立てをするには、生死不明が一定期間必要であり、行方不明の原因により違います。

失踪宣告の手続きには気を付ける点があるので、申立てをする前に確認しておきましょう。

失踪宣告は司法書士に相談・依頼できるので、お気軽にお問い合わせください。

失踪宣告の手続きに関するQ&A

いつから行方不明か分からないです。

住民票が職権消除されているなら削除日から7年経過。

失踪宣告の申立てに予納金は必要ですか?

不要です。