失踪宣告が認められると行方不明者は死亡とみなされます。
失踪宣告の効力は人の生死に関わるので、申立てができる人の範囲は限られています。申立てができるのは法律上の利害関係人のみです。
あなたが失踪宣告の申立てを検討しているなら、申立人に該当するか確認しておいてください。
目次
1.失踪宣告には法律上の利害関係が必要
家庭裁判所に対して失踪宣告の申立てができる人は、民法で定められています。
以下は、民法の条文です。
失踪宣告の申立てができるのは利害関係人とありますが、法律上の利害関係が必要だとされています。
失踪宣告が認められると行方不明者は死亡とみなされます。死亡とみなされることに法律上の利害関係があるかどうかです。
法律上の利害関係で一番分かりやすいのは、財産を取得する権利を持っている人です。
2.失踪宣告の申立てができる利害関係人
失踪宣告の申立てができる主な利害関係人です。
- 配偶者
- 推定相続人
- 受遺者
- 生命保険金の受取人
上記以外の人でも法律上の利害関係があれば、失踪宣告の申立てをすることができます。
2-1.行方不明者の配偶者
行方不明者の配偶者は法律上の利害関係を有しています。
- 相続が発生する
- 再婚が可能となる
相続が発生するについては【2-2.行方不明者の相続人】で説明しています。
行方不明者が死亡とみなされると、配偶者は再婚することが可能となります。
関連記事を読む『失踪宣告をすると離婚ではなく婚姻関係の消滅』
2-2.行方不明者の相続人
相続は人が亡くなると始まります。つまり、行方不明である限り相続は始まらないということです。行方不明者が死亡とみなされることにより、行方不明者に関する相続も発生します。
ちなみに、申立てができる相続人とは配偶者と先順位相続人です。
誰が相続人になるかは『法定相続人|誰がなるかは法律により定められている』でご確認ください。
2-3.遺言書による受遺者
行方不明者が遺言書を作成していても、効力が発生するのは亡くなってからです。行方不明の間は遺言書の効力が発生することはありません。
遺言書による受遺者は失踪宣告の申立てをすることにより、遺言書の効力を発生させることができます。
2-4.生命保険金の受取人
生命保険契約で受取人になっていても、行方不明者が亡くならないと保険金を受け取ることはできません。
生命保険金の受取人は失踪宣告の申立てをすることにより、生命保険金を受け取ることができます。
3.失踪宣告に対する利害関係が認められない人
失踪宣告の申立てをすることが認められない人もいます。
- 債権者
- 後順位相続人
- 検察官
事実上の利害関係を有する人は認められません。
3-1.債権者は利害関係が認められない
債権者は失踪宣告の申し立てが認められません。
- 行方不明者の債権者
- 行方不明者の相続人の債権者
どちらの債権者であっても、失踪宣告の利害関係人ではありません。
行方不明者の債権者
行方不明者に金銭を貸していても、失踪宣告の申立ては認められません。
ただし、行方不明者に財産がある場合は、不在者財産管理人の選任申立てをすることは可能です。
関連記事を読む『不在者財産管理人の選任申立て|手続きには時間がかかるので早めに行動』
行方不明者の相続人の債権者
行方不明者の相続人に金銭を貸していても、失踪宣告の申立ては認められません。
例えば、行方不明者が生命保険に加入していて、相続人が受取人の場合です。失踪宣告が認められると、相続人の債権者は金銭を回収することができます。
ですが、失踪宣告の申し立てをするかは相続人が決めることです。債権者には利害関係が認められません。
3-2.配偶者の再婚相手は利害関係が認めらない
行方不明の期間が何年であっても、法律上は生存しているので、配偶者は婚姻状態のままです。
婚姻状態のままでは再婚できないので、失踪宣告を検討する人もいます。
ただし、配偶者の再婚相手は失踪宣告の利害関係人ではありません。再婚したいのであれば、配偶者自身が失踪宣告の申し立てをしてください。
3-3.後順位相続人は相続人ではない
行方不明者の相続人であっても、後順位相続人は失踪宣告の利害関係人ではありません。
なぜなら、先順位相続人が存在するなら、後順位相続人は相続人ではないからです。失踪宣告の申立てに利害関係がありません。
例えば、行方不明者に子どもがいる場合、兄弟姉妹は相続人ではありません。子どもが失踪宣告を望まなければ、失踪宣告をすることはできないです。
3-4.検察官は除外されている
不在者財産管理人の選任については、法律で検察官も請求することができます。
ただし、失踪宣告の申立てについては請求権者となっていません。
4.さいごに
失踪宣告の申立てが認められると、行方不明者は死亡とみなされます。
失踪宣告の効力は人の生死に関わるので、申立てができる人も法律上の利害関係人に限られます。行方不明者が死亡とみなされることに、法律上の利害関係があるかどうかです。
自分が法律上の利害関係人に該当するか分からない場合は、失踪宣告の申立てを相談する際に聞いてみてください。