家族の中に失踪者がいると、失踪宣告しないとどうなるのか気になります。
結論から言えば、「失踪者は死亡にならない」です。
何十年経過しても死亡にならないので、死亡を原因とする法律行為は発生しません。
また、失踪者が当事者となる権利行為も、同意や許可が得られないので解決できません。
失踪宣告しなくても違法ではありませんが、放置すると様々な問題が発生します。
今回の記事では、失踪宣告しないとどうなるのか?について説明しているので、失踪者がいるなら確認しておいてください。
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1.失踪宣告しないと死亡にならない
家族の中に失踪者(生死不明者)がいる人から、以下のような質問を受けることがあります。
父が10年以上前から行方不明ですが、失踪宣告しないとどうなりますか?
上記の質問に対する答えは「父親は死亡にならない」です。
失踪宣告は失踪者を死亡とみなす制度なので、何もしなければ生死不明のままとなります。
失踪者の生死が不明である以上、法律上は生存している人として扱います。
1-1.生死不明が7年以上でも死亡にならない
失踪者の生死不明が7年以上になっても、利害関係人の申立て(請求)がなければ、失踪宣告されません。
以下は、民法の条文です。
生死不明が20年や30年でも、失踪宣告の申立てをしない限り、失踪者は生死不明のままです。
失踪者が自動的に死亡になる制度ではないので、家族に失踪者がいる人は注意してください。
関連記事を読む『【失踪宣告の手続き】申立てをしなければ始まらない 』
1-2.失踪宣告しなくても罰則はない
失踪宣告の申立ては義務ではないので、罰則規定はありません。
したがって、家族に生死不明の人がいても、失踪宣告するかは自由に決めれます。
【事例】
失踪者 |二男
生死不明 |20年以上
推定相続人|母親
二男は20年以上前に父親から勘当されて以降、行方が分からなくなっている。
母親は二男が死んでいるとは思ってないので、失踪宣告をするつもりがない。
上記のようなケースは珍しくなく、家族に生死不明の人がいても、必要にならない限り失踪宣告していない人が多いです。
1-3.失踪者の戸籍は最終的に高齢者消除
失踪者の戸籍は、最終的に高齢者消除で除籍されます。
なぜなら、失踪宣告されない限り、失踪者は生存扱いとなり、いつまでも戸籍の管理が続くからです。
一般的には、失踪者の年齢が100歳以上になると、調査したうえで高齢者消除の手続きを進めます。
ただし、高齢者消除されても、相続は発生しません。あくまでも、戸籍を整理するための手続きです。
失踪宣告と高齢者消除の違いについては、下記の記事を参考にしてください。
関連記事を読む『【高齢者消除と失踪宣告の違い】4つのポイントで比較説明』
2.失踪宣告で死亡にしないとどうなる
次に、失踪宣告により失踪者を死亡にしないと、どうなるのかについて説明していきます。
失踪者が死亡にならないと、以下のような問題が発生します。
- 失踪者の相続が発生しない
- 生命保険金の請求権が発生しない
- 遺族年金の受給権が発生しない
- 失踪者との婚姻関係が消滅しない
逆に言えば、上記の問題を解決したいなら、失踪宣告の申立てをしてください。
2-1.生死不明の間は相続が発生しない
相続の発生原因は死亡なので、失踪者が生死不明の間は発生しません。
以下は、民法の条文です。
失踪者が死亡と判断されない限り、何十年待っても相続は発生しません。
相続を発生させたいなら、失踪宣告をして死亡とみなす必要があります。
関連記事を読む『【失踪宣告による相続】誰が相続人なのか間違えないように注意』
2-2.失踪者が対象の生命保険金が受け取れない
生命保険契金の支払い条件は被保険者(失踪者)の死亡なので、生死不明では受け取れません。
たとえ死亡している可能性が高くても、死亡にならない限りは条件を満たせないです。
生命保険金を受け取るには、失踪宣告により死亡とみなす必要があります。
関連記事を読む『失踪宣告でも生命保険金は受け取れるが契約の継続は必要』
2-3.失踪者に関する遺族年金が支給されない
失踪者が生死不明の間は、遺族年金も支給されません。
「遺族」という言葉からも分かるように、失踪者が死亡と判断されない限り、遺族年金の支給要件を満たせないからです。
もちろん、遺族年金の支給要件は死亡以外にもあるので、失踪宣告しても受け取るれる保障はありません。
死亡以外の要件を確認したうえで、失踪宣告が必要か判断してください。
関連記事を読む『失踪宣告による死亡でも遺族年金は受給できる』
2-4.婚姻関係が消滅しないので再婚できない
配偶者が生死不明になっても、婚姻関係は消滅しないので再婚できません。
婚姻関係の消滅要件は、以下の2つです。
- 配偶者の死亡
- 配偶者と離婚
勘違いしやすいのですが、失踪宣告では離婚できません。死亡による婚姻関係の消滅です。
再婚したいのか、または、離婚したいのかで、取るべき方法も変わります。
関連記事を読む『失踪宣告すると離婚ではなく死別による婚姻関係の消滅』
3.失踪宣告しないと権利関係でも問題
失踪者の失踪宣告をしないと、権利関係でも問題が発生します。
なぜなら、失踪者が権利関係の当事者だと、同意・許可・協議等ができないので、手続きが止まってしまうからです。
3-1.失踪者の同意や許可が得られない
失踪者の生死不明期間が長くても、権利関係から除外できません。
そのため、以下のような問題が発生します。
- 共有不動産が処分できない
- 遺産分割協議ができない
- 失踪者の契約が解約できない
上記の行為をするには、失踪者が必要になります。
共有者が生死不明だと不動産が処分できない
不動産の共有者に失踪者がいると、不動産が処分できません。
なぜなら、共有不動産の処分には、共有者全員の同意が必要だからです。
※失踪者の共有持分は無関係。
共同相続人が生死不明だと遺産分割協議が成立しない
共同相続人に失踪者が含まれると、遺産分割協議は成立しません。
なぜなら、遺産分割協議の成立には、相続人全員の同意が必要だからです。生死不明でも除外できません。
関連記事を読む『行方不明者がいても遺産分割協議書を作成する2つの方法』
契約者が生死不明だと契約の変更・解約ができない
原則として、契約者が生死不明になっても、契約の変更や解約はできません。
あくまでも、契約者は失踪者なので、変更や解約する権利も失踪者が有しているからです。
3-2.失踪宣告で当事者を相続人に変更する
失踪宣告により当事者を相続人に変更するのも、解決方法の一つとなります。
相続人は失踪者の権利を受け継ぐので、不動産の共有者にもなりますし、遺産分割協議の参加者にもなります。
ただし、当事者を変更できても、相続人から同意を得られるかは別問題です。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |母親(配偶者)・長男・長女・二男(失踪者)
二男の子|二男の長男・二男の長女
失踪宣告により二男の子を、遺産分割協議の参加者に変更しようとした。
ところが、二男の長男も所在が不明だと判明。失踪宣告しても、二男の長男の同意が得られないので、遺産分割協議は成立しない。
失踪宣告により当事者を変更する場合、相続人の同意を得られるかどうかも、前もって確認しておいてください。
3-3.権利関係は不在者財産管理人でも解決
失踪宣告では権利関係を解決できないケースもあります。
- 相続人の同意が得られない
- 生死不明の期間が足りない
- 失踪宣告の申立人が存在しない
上記のような場合、不在者財産管理人の選任でも解決できます。
不在者財産管理人が選任されると、失踪者に代わって話し合いに応じてくれるからです。
例えば、遺産分割協議にも不在者財産管理人が参加して、遺産分割協議書にも署名捺印します。
もちろん、不在者財産管理人にもデメリットはあります。比較検討したうえで、選任するのか判断してください。
関連記事を読む『不在者財産管理人のデメリット6選|欠点を確認しておこう!』
4.まとめ
今回の記事では「失踪宣告しないとどうなるのか?」について説明しました。
失踪宣告をしないと失踪者は、生死不明のままなので死亡になりません。
したがって、死亡を要因とする法律行為は発生しないです。
- 失踪者の相続
- 生命保険金の支払い
- 遺族年金の支給
- 婚姻関係の消滅
誰かが失踪宣告の申立をしない限り、失踪者は生きていると判断されます。
失踪者が権利関係の当事者となると、同意や許可が得られないので、手続きが進みません。
失踪宣告により相続人を当事者にする方法や、不在者財産管理人を選任するなどが、解決方法となります。