市区町村長は非居住の事実を確認した場合、職権により住民票を消除できます。
住民票が職権消除されると、国民健康保険等の行政サービスに影響があります。転出届(転居届)は忘れずに提出してください。
行方不明者の住民票が職権消除されているなら、失踪宣告等の添付書類となります。
今回の記事では、住民票の職権消除について説明しているので、疑問を解消する参考にしてください。
目次
1.住所を変更せずに放置すると職権消除
住所を変更せずに放置しておくと、職権消除により住民票が除かれます。
1-1.市町村長は居住の事実を調査できる
市町村長は住民票の記載事項(住所等)について、必要があると認めるときは調査できます。
以下は、住民基本台帳法の条文です。
市町村長が住所について調査するケースとしては、以下があります。
- 市役所等からの郵送物が届かない
- 居住者からの申し出がある
市役所等が書類(税金や保険料等)を郵送しても、受け取られず返却されると、居住の事実を調査します。
また、居住者からの申し出があった場合も、居住の事実を調査します。
居住者からの申し出については、【3.不在者の住民票を職権消除してもらう】で説明しています。
1-2.非居住の事実を確認後に職権消除
市町村長の調査により、非居住(住んでいない)の事実を確認したら、職権で住民票を抹消します。
以下は、法務省令の条文です。
住民票上の住所に住んでいないなら、記載と一致しないので住民票は抹消されます。
住民票が職権消除されないように、住所を変更した場合は、転出届(転居届)を出しておきましょう。
※法律上の義務があります。
2.職権消除された住民票が添付書類になる
生死不明者(行方不明者)の住民票が職権消除されている場合、以下の申し立てをする際の添付書類となります。
それぞれ説明していきます。
2-1.職権消除された住民票は失踪宣告で使用
生死不明者の住民票が職権消除されている場合、失踪宣告の申立てをする際の添付書類となります。
なぜなら、失踪宣告の申立てには「失踪を証する資料」を添付する必要があるからです。
「失踪」=「住所が存在しない」
職権消除されている住民票(除票)は、失踪を証する資料となります。
また、市役所等が所在不明であることを確認しているので、申立人が改めて所在を調べる手間が省けます。
失踪宣告の申立てを検討しているなら、まずは生死不明者の住民票を確認してください。
関連記事を読む『失踪を証する資料|申立ての添付書類として必要になる』
2-2.職権消除された住民票は不在の事実を証する資料
不在者(行方不明者)の住民票が職権消除されている場合、不在者財産管理人の申立てをする際の添付書類となります。
なぜなら、不在者財産管理人の申立てには「不在の事実を証する資料」を添付する必要があるからです。
「不在の事実」=「住所が存在しない」
職権消除されている住民票(除票)は、不在の事実を証する資料となります。
また、市役所等が不在であることを確認しているので、申立人が改めて所在を調べる手間が省けます。
不在者財産管理人の申立てを検討しているなら、まずは不在者の住民票を確認してください。
関連記事を読む『不在の事実を証する資料|何を用意するのか知っておこう』
3.不在者の住民票を職権消除してもらう
住民票の住所に住んでいなくても、職権消除されているとは限りません。そのまま住民票が残っているケースも多いです。
不在者の住民票が残っている場合は、その住所に住んでいる人から市役所等に申し出が可能です。市町村長が不在住の事実を確認すると、住民票が職権消除されます。
3-1.引越先の住所に他人の住民票が残っている
私自身の体験になりますが、引越先の住所に他人の住民票が残っており、役所の窓口で「同居ですか?」と尋ねられたことがあります。
一人暮らしであると説明しましたが、言葉だけでは納得してもらえず、賃貸借契約書を見せて納得してもらいました。
もし他人の住民票が残っているなら、市役所等に申し出をしておきましょう。
3-2.別居している家族は申し出ができない
行方不明者の住民票が残っていても、他の場所に住んでいる家族は申し出ができません。
実際、行方不明者の住民票が残っていたので、役所に相談しましたが、家族であっても無理という返答でした。
新しく住んでいる人から申し出があれば、市役所等も調べることが可能だそうです。
4.職権消除された住民票を回復させる
住民票が職権消除されると、住民票が存在しない状態となります。
住民票が存在しないと、国民健康保険や国民年金等の行政サービスに影響が出ます。
なぜなら、役所からの郵送物は住民票の住所に発送されるので、住民票が存在しなければ郵送物も発送されないからです。
転出届(転居届)を出さない間に住民票を職権消除された場合は、役所の窓口で事情を説明して住民票を回復しましょう。
5.住民票の職権消除は戸籍の附票にも記載
住民票が職権消除されると、戸籍の附票にも職権消除が記載されます。
※戸籍の附票にも住所が記載されている。
以下は、住民基本台帳法の条文です。
住所地の市町村長から通知を受けた場合、本籍地の市町村長は職権で戸籍の附票を修正します。
戸籍の附票でも住所が抹消されている事実は確認できます。
ですので、失踪宣告や不在者財産管理人の申立てに添付する書類は、戸籍の附票でも大丈夫です。
6.まとめ
今回の記事では「住民票の職権消除」について説明しました。
市町村長は非居住の事実を確認すると、職権で住民票を抹消できます。
役所が非居住の事実を確認しているので、職権抹消された住民票は、失踪宣告や不在者財産管理人の申立てに使用します。
自分が転出届(転居届)を出さない間に、住民票が職権消除された場合は、窓口で事情を説明して回復しましょう。