相続放棄できない原因は人によって違う!勘違いして諦める人も多い

相続放棄ができない
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相続放棄できないと言っても、人それぞれ原因が違います。

  • 単純承認したとみなされた
  • 相続人に該当しない
  • 家庭裁判所以外の手続き
  • 意思能力(判断能力)がない
  • 個別の事情がある

できない原因が違うので、相続放棄を検討しているなら注意してください。

逆に、相続放棄できないと勘違いするケースもあるので、今回の記事で確認しておきましょう。

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目次

1.単純承認すると相続放棄できない

単純承認したとみなされると相続放棄できない

1つ目のケースは、法定単純承認に該当したです。

法律により単純承認したとみなされると、相続放棄できません。

単純承認

亡くなった人の権利義務をすべて承継する

以下は、民法の条文です。

(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
出典:e-Govウェブサイト(民法921条)
  • 相続財産の全部または一部を消費した
  • 相続の開始を知った日から3ヶ月経過

上記のどちらかに該当すると、単純承認したとみなされます。

1-1.相続財産を消費すると単純承認

亡くなった人の財産を消費すると、単純承認したとみなされます。

  • 不動産の処分
  • 金銭の消費
  • 遺産分割協議の成立

不動産の処分には、売却だけでなく建物の解体も含まれます。

たとえ財産を取得していなくても、遺産分割協議を成立させると、相続放棄できなくなります。

相続放棄を検討しているなら、相続財産には関わらないでください。

1-2.相続の開始を知った日から3ヶ月経過

相続の開始を知った日から3ヶ月経過すると、単純承認したとみなされます。

相続放棄するつもりなら、後回しにしている時間はないので、すぐに手続きを始めてください。

忙しくて準備に時間が取れないなら、専門家に依頼するなどしましょう。

2.相続人でなければ相続放棄できない

相続人以外は相続放棄できない

2つ目のケースは、相続放棄する権利がないです。

相続放棄できるのは相続人だけなので、相続人以外は相続放棄できません。

当たり前だと思ったかもしれませんが、相談・依頼してくる人はいます。

  • 相続発生前はできない
  • 先順位が存在する間はできない
  • 法律上の相続人以外はできない

2-1.相続が発生する前は相続人ではない

あなたの親や兄弟姉妹に借金があっても、相続が発生していなければ相続放棄できません。

なぜかというと、相続が発生していなければ、相続人ではないからです。

前もって相続放棄したいと考える人もいますが、相続発生後でなければ申述は却下されます。

相続発生前(生前)の相続放棄は、絶対に認められません。

2-2.先順位が存在すれば相続人ではない

死亡により相続が発生していても、先順位相続人がいれば相続放棄できません。

なぜなら、先順位相続人がいれば、後順位相続人は相続人に該当しないからです。

【事例】

被相続人|兄
相続財産|借金
先順位 |兄の子ども
後順位 |弟・妹

亡くなった兄に借金があっても、兄の子どもが相続放棄しなければ、弟や妹は相続人ではないので、相続放棄できないです。

後順位相続人が相続放棄できるのは、先順位相続人が全員相続放棄したことを知った日から3ヶ月以内です。

2-3.法律上の相続人以外は相続放棄できない

相続放棄できるのは、法律上の相続人に該当する人だけです。

どんなに親しかったとしても、法律上の相続人以外は相続放棄できません。

  • 内縁の妻(事実上の配偶者)
  • 認知されていない子
  • 再婚相手の連れ子
  • 従兄弟(従姉妹)

相続人以外は、相続放棄を心配する必要がないです。

3.家庭裁判所の手続き以外では相続放棄できない

家庭裁判所以外の手続きでは相続放棄できない

3つ目のケースは、相続放棄とは違う手続きをした。

相続放棄するには、家庭裁判所に申述書を提出して、受理される必要があります。

したがって、家庭裁判所以外の手続きでは、相続放棄できないです。

3-1.意思表示では相続放棄できない

他の相続人や債権者に対して、相続放棄の意思表示をしても、相続放棄できないです。

遺産分割協議書に意思表示を記載しても、相続放棄の効力は発生しません。

意思表示以外に何もしていなければ、期間の経過により単純承認したとみなされるでしょう。

3-2.相続分の放棄は別の法律行為

勘違いしやすいのですが、「相続分の放棄」と「相続放棄」は別の法律行為です。

相続分の放棄

自分の相続分を他の相続人に放棄する

相続分の放棄をしても、相続人であることに変わりはありません。

相続分の放棄では、相続放棄できないので、勘違いしないように注意してください。

4.意思能力がないと相続放棄できない

4つ目のケースは、相続放棄を判断できる能力がないです。

相続放棄も法律行為なので、意思能力(判断能力)が必要になります。

【事例】

被相続人|兄
相続人 |弟(87歳)
意思能力|重度の認知症

相続人は重度の認知症であり、相続発生(兄の死亡)の事実が理解できていない。

相続を理解できない以上、相続放棄はできない。

認知症等により意思能力がないなら、成年後見人を選任して、代わりに相続放棄してもらいます。

注意が必要なのは、「認知症だから相続放棄できない」ではないです。

認知症の人であっても、相続放棄が理解できるなら問題ありません。

5.事情があって相続放棄できない

5つ目のケースは、相続放棄できない事情があるです。

1つ目から4つ目までとは意味合いが違います。本当は相続放棄したいが、事情があってできないケースになります。

  • 取得したい財産がある
  • 次順位に移ると困る

上記に該当するなら、相続放棄以外の方法を検討する必要があります。

5-1.どうしても取得したい相続財産がある

取得したい相続財産があるなら、相続放棄できません。

なぜなら、特定の財産だけ相続して、他の財産は放棄するという選択はできないからです。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |配偶者(母親)・子
相続財産|不動産・借金

父親には借金があったので相続放棄したいが、住む場所がないので不動産は取得したい。

相続放棄すると不動産は取得できないです。

どうしても財産を取得したいなら、「単純承認」または「限定承認」のどちらかを、選ぶしかありません。

5-2.次順位の相続人に移ると困る

次順位の相続人に相続が移ると困るので、相続放棄できないケースです。

【事例】

被相続人|父親
相続財産|借金(少額)
先順位 |子
後順位 |父親の兄弟姉妹

父親に借金があるので相続放棄したいが、後順位の伯父や伯母は高齢なので、手続きをするのが難しい。

後順位(親戚)からのクレームが嫌で、相続放棄できず悩んでいる人もいます。

順位変更と親戚に関しては、下記の記事も参考にしてください。

6.相続放棄できないと勘違いするケース

最後に、相続放棄できないと勘違いするケースも説明しておきます。

意外と間違えやすいので、ご自身に該当しないか確認しておいてください。

  • 死亡日から3ヶ月経過している
  • 亡くなった人に借金がない
  • 遺産分割の話し合いをした
  • 他の相続人が相続を選んだ

6-1.死亡日から3ヶ月経過ではない

相続人

父親の死亡を先日知りましたが、死亡日から1年以上経過しています。相続放棄できないですか?

期間経過により単純承認とみなされるのは、相続の開始を知った日から3ヶ月経過です。

死亡日から3ヶ月経過ではないので、勘違いして諦めないように注意してください。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |子
死亡日 |令和2年3月18日
知った日|令和6年6月5日

父親とは交流がなかったので、相続の開始を知った日は死亡日よりも数年遅いです。

ですが、知った日から3ヶ月以内であれば、相続放棄は問題無く認められます。

たとえ死亡日から10年以上経過していても、知った日から3ヶ月以内であれば、相続放棄できます。

6-2.相続放棄の理由は借金以外でも大丈夫

相続人

亡くなった父親に借金はありませんが、相続したくありません。
相続放棄できないですか?

相続放棄する理由として借金は一番分かりやすいです。

ですが、相続放棄の理由は自由なので、借金が無くても認められます。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |子
相続財産|不動産・預貯金

亡くなった父親とは縁を切っており、相続するつもりが無かったので相続放棄した。

亡くなった人に借金が無くても、相続放棄は自由にできます。

6-3.遺産分割の話し合いは問題ない

相続人

他の相続人と遺産分割の話し合いをしたら、相続放棄できないですか?

遺産分割協議が成立すると、相続財産の処分となり、単純承認したとみなされます。

ただし、遺産分割を話し合っただけでは、相続財産の処分とはなりません。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |長男・二男・長女
相続財産|不動産

父親が亡くなった後、相続人3人で話し合ったが、長男と次男が揉めて話し合いは決裂した。

長女は不動産を取得する気もなく、揉め事に巻き込まれたくないので相続放棄した。

遺産分割協議が成立していなければ、相続放棄できます。

6-4.全員で相続を選ぶ必要はない

相続人

他の姉妹は相続したいそうです。私だけ相続放棄できないですか?

他の相続人が相続を選んでも、あなたは相続放棄できます。

相続の判断は各相続人が個々にするので、他の相続人の判断は関係ありません。
※限定承認は除く。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |長男・二男・長女
相続財産|不動産・借金
相続放棄|二男・長女

父親の財産は長男が相続するので、二男と長女は相続放棄した。

他の相続人と意見が一致しなくても、相続放棄できるので安心してください。

7.まとめ

今回の記事では「相続放棄できないケース」について説明しました。

相続放棄できない原因は人それぞれです。

  • 単純承認したとみなされた
  • 相続人に該当しない
  • 家庭裁判所以外の手続き
  • 意思能力(判断能力)がない
  • できない事情がある

なぜ、できないかを理解しておけば、対応策を考えることもできます。

また、相続放棄できないと勘違いしているケースも多いので、今回の記事を参考にしてください。

目次