亡くなった人に借金があれば、配偶者であっても相続放棄が必要かもしれません。
ですが、内縁の妻(事実婚)は、相続放棄を検討する必要がありません。事実上の配偶者は相続人にならないので、借金があっても関係ないからです。
ただし、亡くなった人が包括遺贈しているなら、借金も承継するので注意してください。負債額によっては遺贈放棄の手続きが必要です。
今回の記事では、内縁の妻と相続放棄について説明しているので、悩みを解決する参考にしてください。
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1.内縁の妻は相続放棄できない
亡くなった人に借金があっても、内縁の妻は相続放棄できません。
なぜなら、相続人以外だからです。相続放棄できるのは、亡くなった人の相続人に限られます。
1-1.内縁の妻は相続人に含まれない

内縁の妻は法律上の配偶者ではないので、相続人に含まれません。たとえ内縁関係が10年以上だったとしても、結論は同じです。
その代わり、内縁の妻は相続放棄できませんが、借金も相続しないので安心してください。
亡くなった人の借金が高額だったとしても、法律上の配偶者でなければ気にしなくて大丈夫です。
関連記事を読む『配偶者は相続放棄しても取得できる権利がある 』
1-2.相続放棄の申述書を提出しても却下
内縁の妻も相続人だと思い込んで、相続放棄の申述書を提出する人もいます。
ただし、家庭裁判所に申述書を提出しても、要件を満たしていないので却下されます。
※取り下げ書の提出を求められる。
万が一、間違えて相続放棄が認められても、法律上は何の影響もないです。
1-3.内縁の妻は借金以外も相続できない

内縁の妻は相続人ではないので、亡くなった人の借金を気にする必要はありません。
ただし、借金だけでなく、預貯金や不動産も相続できません。
【事例】
相続財産|預貯金500万円・借金300万円
配偶者 |内縁の妻
妻は借金300万円を相続しませんが、預貯金500万円も相続できません。
マイナスの財産(借金等)よりもプラスの財産(預貯金等)が多いなら、相続対策をしておきましょう。
2.内縁の妻に包括遺贈していれば遺贈放棄
亡くなった配偶者に借金があっても、内縁の妻は相続人ではないので、借金を相続しません。
ただし、遺言書で包括遺贈している場合は、内縁関係でも注意が必要です。
2-1.包括受遺者は借金も含めて取得する

亡くなった人から包括遺贈を受けた人(包括受遺者)は、相続人と同一の権利義務を有します。
以下は、民法の条文です。
(包括受遺者の権利義務) 第九百九十条 包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する。
つまり、亡くなった配偶者に借金があれば、内縁の妻であっても、包括遺贈の割合に応じて承継します。
以下は、内縁の妻に包括遺贈したケース。
【事例】
相続財産 |預貯金500万円・借金600万円
遺贈の種類|包括遺贈
遺贈の割合|全部
包括受遺者|内縁の妻
全財産を内縁の妻である○○(昭和○○年○月○日生、住所○○)に遺贈する。
【結果】
遺言により内縁の妻は預貯金500万円だけでなく、借金600万円も引き継ぎます。
預貯金だけでなく借金も引き継ぐので、借金の額によっては遺贈を断る必要があります。
関連記事を読む『包括遺贈は債務も承継するので借金の額には注意 』
2-2.内縁の妻が遺贈を放棄するなら家庭裁判所

内縁の妻が包括遺贈を放棄する場合、特定遺贈とは放棄の方法が違うので注意してください。
特定遺贈であれば放棄(拒否)の意思表示で効力が発生します。
それに対して、包括遺贈の放棄は、相続放棄と同じように家庭裁判所への申述が必要です。意思表示では効力が発生しません。
包括遺贈の放棄も3ヶ月以内なので、後回しにせず手続きを進めてください。
関連記事を読む『包括遺贈の放棄には家庭裁判所の手続きが必要 』
3.相続放棄と内縁の妻に関する注意点

内縁の妻と相続放棄に関する注意点を説明しておきます。
- 内縁の妻が連帯保証人なら義務は残る
- 内縁の妻に子がいるなら相続権の確認
それぞれ簡単に説明していきます。
3-1.内縁の妻が連帯保証人なら義務は残る
内縁の妻は相続人ではないので、亡くなった人に借金があっても関係ありません。
ただし、亡くなった人の連帯保証人になっている場合は別です。相続人としてではなく、連帯保証人として借金を返済する義務があります。
【事例】
主債務者 |亡くなった人
連帯保証人|内縁の妻
負債額 |500万円
内縁の妻は500万円を相続しませんが、連帯保証人として500万円を返済する義務は残ります。
連帯保証と相続放棄は別問題なので、勘違いしないように注意してください。
3-2.内縁の妻に子がいれば相続権の確認
内縁の妻に子がいる場合、亡くなった人の相続人に該当するかは、法律上の親子関係で判断します。
- 亡くなった人に認知されている
- 亡くなった人と養子縁組を結んでいる
上記のどちらかに該当すると、内縁の妻の子も相続放棄が必要になります。
関連記事を読む『相続放棄を子供がするなら個別に必要|同じ書類は1枚で大丈夫 』
亡くなった人に認知されている
内縁関係(事実婚)の夫婦に子が生まれても、当然には父親の子になりません。
したがって、父親が認知していなければ、子は相続人ではないので相続放棄も不要です。
一方、父親が認知しているなら、相続人となるので相続放棄も必要となります。
認知あり | 認知なし | |
---|---|---|
相続人 | ○ | × |
相続放棄 | 必要 | 不要 |
亡くなった人と養子縁組を結んでいる
内縁の妻の子が連れ子であっても、亡くなった人と養子縁組を結んでいれば、法律上の親子となります。
養子と実子に法律上の違いはないので、養子であっても相続放棄が必要になります。
実子 | 養子 | |
---|---|---|
相続人 | ○ | ○ |
相続放棄 | 必要 | 必要 |
関連記事を読む『養子縁組により相続放棄の機会は増える 』
4.まとめ
今回の記事では「内縁の妻と相続放棄」について説明しました。
内縁の妻は法律上の相続人ではないので、亡くなった人に借金があっても、相続放棄は不要です。
ただし、亡くなった人が内縁の妻に包括遺贈しているなら、借金も承継するので金額によっては遺贈放棄が必要になります。
内縁の妻に子がいる場合、亡くなった人との親子関係を確認してください。認知や養子縁組をしていれば、相続人となるので相続放棄も必要です。
内縁関係(事実婚)の相続は間違えやすいので、十分に注意してください。
相続放棄と内縁の妻に関するQ&A
- 子が未成年なら相続放棄の手続きは誰ができますか?
-
内縁の妻が親権者であれば法定代理人として行います。
- 内縁の妻に特定遺贈したら借金はどうなりますか?
-
借金は相続人が相続します。