相続放棄したいが、自分の理由で認められるのか、不安に思われていませんか?
結論からいえば、相続放棄の理由は自由なので、何でも大丈夫です。
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法律上の決まりもないので、人それぞれ違います。
- 亡くなった人に借金がある
- 後から借金が見つかると困るから
- 相続に関わりたくないから
- 生前に縁を切っているから
- 他の相続人に相続させたいから
もちろん、上記以外の理由でも問題ありません。
今回の記事では、相続放棄に理由について説明しているので、悩みを解決する参考にしてください。
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1.相続放棄の理由は法律上の要件ではない
相続放棄を検討されている人から、以下のような質問を受けます。
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自分の理由でも相続放棄できますか?
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理由は要件ではないので大丈夫ですよ
法律上の要件に相続放棄の理由は含まれないので、認められるかどうかとは無関係です。
1-1.理由は相続放棄の条件に含まれない


家庭裁判所が相続放棄の申述を受理するかは、以下の条件を満たしているかで判断します。
- 相続財産を消費していない
- 相続の開始を知った日から3ヶ月以内
相続財産を消費せずに、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に申述書を提出すると、家庭裁判所は申述を受理します。
一方、どんな理由で相続放棄する場合でも、2つの条件を満たしていなければ、家庭裁判所は申述を却下します。
相続放棄で重要なのは理由ではなく、条件を満たすことなので、下記の記事でしっかりと確認しておいてください。
関連記事を読む『【相続放棄の条件は2つだけ】片方ではなく両方満たす必要がある 』
1-2.実務上は申述書に理由を記載する
相続放棄の理由は法律上の要件ではありません。ですが、実務上は申述書に理由を記載しています。
実際、家庭裁判所の窓口等で取得できる申述書にも、理由欄が用意されています。
家庭裁判所は申述書に記載された理由も見て、申述人の意思に間違いがないか確認しています。
したがって、あなたが放棄する理由を素直に書けば何の問題ありません。
2.具体的な相続放棄の理由8例


相続放棄する理由を何と表現していいか迷う人もいます。
そこで、実務で使用する主な相続放棄の理由を8例説明します。
- 債務超過
- 債務超過の疑いがある
- 被相続人と縁を切っている
- 相続に関わりたくない
- 被相続人と交流がない
- 不動産が不要
- 相続財産を分散させない
- 特別縁故者に譲るため
あなたに当てはまる理由があれば、申述書に記載してください。
2-1.債務超過(マイナスが多い)
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1つ目の理由は、債務超過(マイナスが多い)です。
亡くなった人の財産は、プラスもマイナスも含めて相続人が承継します。
以下は、民法の条文です。
(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
亡くなった人に預貯金等があっても、それ以上に借金があれば、債務超過を理由に相続放棄する人はいます。
借金の額は無関係なので少額でも可能
勘違いされる人も多いのですが、借金の額は相続放棄に影響しません。借金が少額でも可能です。
例えば、キャッシングの残債が10万円でも、相続放棄する相続人はいます。
インターネットが普及したことにより、昔よりも低料金で専門家に依頼できます。そのため、借金が少額であっても相続放棄を選ぶ人は増えています。
関連記事を読む『相続放棄すれば借金の返済義務も引き継がない』
借金の額が不明でも調べる必要はない
借金の額が不明であっても、相続放棄は認められます。
借金があることは知っているが、詳しい金額は知らないという相続人も珍しくないです。
相続放棄の申述書には「詳しい金額は不明」と書けば問題ありません。
関連記事を読む『相続放棄は財産が不明でも可能なので無理に探す必要はない』
2-2.債務超過の疑いがある
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2つ目の理由は、債務超過の疑いがあるです。
亡くなった人の借金は見当たらないが、疑いがあるので相続放棄する人もいます。
借金等の負債は後から見つかることもあり、疑いであっても理由になります。
債務が実際に有るかは関係ない
債務超過を理由に相続放棄する場合、債務が実際に有るかは関係ありません。
あくまでも、債務超過の疑いなので、超過していないケースもあります。
ただし、プラスが多かったとしても、撤回はできないので注意してください。
被相続人の生活状況で使用する
被相続人に借金があるか不明だが、生前の生活状況から不安に思う人もいます。
- ギャンブル好きだった
- 過去に借金があった
- 自己破産したことがある
- 過去に連帯保証人だった
- 生活保護を受けていた
- 会社を倒産させている
上記の人が亡くなってプラスの財産が無ければ、不安しか残りません。
そのため、「債務超過の疑いがある」を理由に相続放棄しています。
2-3.被相続人と縁を切っている
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3つ目の理由は、被相続人と縁を切っているです。
相続財産の内容ではなく、個人的な感情が理由の場合に使用します。
被相続人と疎遠になっている
昔に比べると、両親が離婚している人も多いので、親と数十年以上会っていない子もいます。兄弟姉妹であっても同じです。
そのため、親や兄弟姉妹が亡くなっても、疎遠(縁が切れている)を理由に放棄する人もいます。
生前に被相続人と絶縁している
生前に被相続人と絶縁していても、相続人として権利義務を承継します。
したがって、相続するつもりがなければ、絶縁を理由に相続放棄して問題ありません。
関連記事を読む『相続放棄は絶縁していた親が亡くなっても必要【相続で縁を切る】』
2-4.相続に関わりたくない
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4つ目の理由は、相続に関わりたくないです。
あなたが財産を取得するつもりがなくても、相続人である以上は相続手続きに関わる必要があります。
*書面に署名捺印して印鑑証明書を添付するなど。
相続手続きに関わりたくない
相続放棄をすると初めから相続人ではないので、相続手続に関わる必要が無くなります。
遺産分割協議書への署名捺印や印鑑証明書の添付も不要になるので、関りたくない人にとってはメリットです。
関連記事を読む『相続に関わりたくないなら相続放棄がベストな理由』
共同相続人との関係が疎遠
疎遠な親族と関わりたくないので、相続放棄している人もいます。
亡くなった人によっては、兄弟姉妹や甥姪が共同相続人になるからです。共同相続人と疎遠であっても、相続人である以上は関わる必要があります。
疎遠な親族と関わりたくなければ、「相続に関わりたくない」を理由に相続放棄して問題ありません。
2-5.被相続人と交流がない
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5つ目の理由は、被相続人と交流がないです。
被相続人がおじ・おばだと、交流がない(会ったことがない)人も多いので、相続放棄の理由となります。
知らない人から財産を相続したくない人もいますし、生前の生活状況が分からないので不安に思う人もいます。
2-6.不動産(共有持分を含む)が不要
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6つ目の理由は、不動産が不要だからです。
亡くなった人が不動産を所有していても、相続人にとって不要であれば、相続放棄の理由となります。
シンプルに不動産が要らない
シンプルに不動産が要らない人もいます。
- 不動産が田舎にある
- 田畑を使用する予定がない
- 不動産を所有しない主義
不動産が要らない理由も人それぞれです。
不動産以外の財産も考慮したうえで、不要であれば相続放棄しましょう。
不動産に価値がない(負動産)
不動産に価値がなければ、相続してもマイナスになります。
- 固定資産税の支払い
- 処分費用が高額になる
不動産が処分できなくても、固定資産税の支払いは発生します。金額は低いと思いますが、保有している限り支払いは続きます。
一方、不動産が処分(取り壊し)できても、費用が高額になる場合もあります。取り壊し費用が高額なので、相続放棄を選択する人は珍しくありません。
関連記事を読む『負動産が含まれても相続放棄できる|財産の内容は問われない』
2-7.相続財産を分散させない
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7つ目の理由は、相続財産を分散させないためです。
使用するケースは少ないですが、特定の相続人に相続させたい場合等に使用します。
あるいは、相続人の人数が多いので、相続財産を分散させると少額になるケースです。
配偶者に全財産を取得させたい
亡くなった人の配偶者と子どもが相続人なら、遺産分割協議で配偶者に取得させれば良いです。
一方、配偶者と兄弟姉妹(甥・姪)が相続人だと、関係性が遠いのでお互いに気を使います。
配偶者から全財産を取得したいとは言いにくいですし、兄弟姉妹(甥・姪)から自主的に譲るとも言いにくいです。
気まずい会話をするぐらいなら、相続放棄した方が楽だと考える人もいます。
不動産の共有持分が相続財産
亡くなった人が不動産を単独所有していたなら、遺産分割協議で不動産の所有者を決めれます。
それに対して、亡くなった人が不動産の共有持分を所有していた場合、遺産分割協議では単独所有にできません。相続した後で、共有問題を解決する必要があります。
わざわざ共有問題に関わりたくないなら、相続放棄する理由となります。
関連記事を読む『共有名義不動産の持分を相続すると共有者になる 』
2-8.特別縁故者に譲るため
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8つ目の理由は、特別縁故者に譲るためです。
原則として、亡くなった人に相続人がいると、特別縁故者は財産を取得できません。
ですが、相続人が全員相続放棄すると、特別縁故者も財産を取得できます。
※家庭裁判所に認められた場合。
私が経験したケースは少ないですが、特別縁故者に譲るために放棄する人もいます。
特別縁故者に該当する人がいる
相続人が全員相続放棄しても、特別縁故者に該当する人がいなければ、誰も財産を取得できません。
たとえ相続放棄の理由が特別縁故者に譲るであっても、家庭裁判所が特別縁故者を認める保障はないです。
相続して贈与すると贈与税が発生
確実に特別縁故者に財産を譲りたいなら、相続して贈与すればよいと考える人もいます。
ですが、理由は何であれ、贈与なので贈与税が発生します。
財産が高額だと贈与税も高額になるので、特別縁故者と相談して決めてください。
3.どんな理由でも相続放棄の手続きは同じ


相続放棄する理由は人それぞれですが、相続放棄の手続きは全員同じです。
- 家庭裁判所に申述書を提出
- 相続の開始を知った日から3ヶ月以内
- 相続放棄の申立手数料は800円
- 集めた戸籍等で相続の証明
3-1.家庭裁判所に申述書を提出する
どんな理由で相続放棄する場合でも、家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。
以下は、民法の条文です。
(相続の放棄の方式) 第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
以下は、よくある間違えです。
- 債権者に相続放棄の意思表示
- 相続人同士で相続放棄の話し合い
- 家族に対して絶縁状を作成した
家庭裁判所への申述は法律上の要件なので、申述書を提出しない限り、絶対に相続放棄は認められません。
どんな理由で相続放棄するかは自由ですが、申述書の提出だけは忘れずに行ってください。
関連記事を読む『【相続放棄の手続きは家庭裁判所】その他の方法では成立しない』
3-2.相続の開始を知った日から3ヶ月以内
家庭裁判所に申述書を提出できる期間は、どんな理由で相続放棄する場合でも、相続の開始を知った日から3ヶ月以内になります。
申述書を提出せずに3ヶ月経過すると、単純承認したとみなされ相続放棄は認められないです。
- 単純承認
-
亡くなった人の権利義務をすべて引き継ぐこと
原則として、相続の開始を知った日は、以下になります。
相続人 | 知った日 |
---|---|
先順位相続人 | 死亡を知った日 |
後順位相続人 | 先順位相続人の 相続放棄を知った日 |
どんな理由で相続放棄する場合でも、3ヶ月以内という期限だけは守ってください。
関連記事を読む『相続放棄の期間は3ヶ月以内|絶対に経過しないよう早めに行動』
3-3.理由に関わらず申立手数料は800円
相続放棄の理由に関わらず、申立手数料は800円です。
ただし、申立手数料は現金ではなく、収入印紙(800円分)で納めます。
申立てには予納郵券も必要になるので、郵便局で一緒に購入するのが楽です。
収入印紙と予納郵券については、下記の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『相続放棄の収入印紙と予納郵券を図を用いて説明』
3-4.集めた戸籍等で相続の証明
「相続に関わりたくない」や「亡くなった人と絶縁している」が理由であっても、自分が相続人であるとの証明は必要です。
具体的には、戸籍等で相続の証明をします。
以下は、親の相続放棄で必要な戸籍等です。
- 親の戸籍(死亡記載)
- 親の住民票(除票)
- 自分の戸籍
親の死亡戸籍で相続の発生を確認、親の住民票(除票)で家庭裁判所の管轄を確認、自分の戸籍で相続人の確認をします。
ただし、亡くなった人が兄弟姉妹やおじ・おばだった場合は、上記の戸籍だけでは足りず、他の戸籍も必要になるので注意してください。
関連記事を読む『相続放棄には戸籍謄本が必要!誰がするかで枚数が違う』
4.相続放棄申述書の理由の記入例
相続放棄を自分で申請する人もいるので、理由の書き方についても説明しておきます。
以下は、家庭裁判所で取得できる申述書です。2枚目の左下が相続放棄の理由欄となります。


相続放棄の理由が用意されているので、該当する理由があれば○を付けます。
- 被相続人から生前に贈与を受けている
- 生活が安定している
- 遺産が少ない
- 遺産を分散させたくない
- 債務超過のため
- その他
例えば、財産を1人が相続するのであれば、遺産を分散させたくない。借金が理由であれば、債務超過のためになります。
1から5以外であれば、6のその他に理由を書きます。
4-1.関わりたくない場合の書き方
「相続に関わりたくない」は用紙に印字されていないので、その他欄に記入してください。
6 その他(相続に関わりたくない)
関わりたくない理由は書かなくて大丈夫です。
私が依頼を受けたケースでも、上記のように記載しています。もちろん、すべて認められているので安心してください。
4-2.被相続人と疎遠な場合の書き方
相続放棄の理由が疎遠の場合、書き方は複数あります。
6 その他(被相続人と縁を切っている)
6 その他(被相続人と交流がない)
6 その他(被相続人と会ったことがない)
疎遠な理由も人それぞれなので、自分に合う内容を書けば大丈夫です。
5.相続放棄の理由で間違えやすい点
相続放棄の理由に関して、間違えやすい点も説明しておきます。
- 各相続人で理由が違っても問題ない
- 放棄の理由を裏付ける書面等は不要
- 理由が間違っていても撤回できない
5-1.各相続人で理由が違っても問題ない
相続放棄を複数人がする場合、理由がそれぞれ違っても問題ありません。
なぜなら、相続放棄するかは個々の判断だからです。何を基準に判断するかも人によって違います。
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相続に関わりたくないから
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被相続人と縁を切っているから
相続放棄の理由が違っても却下されないので、意図して同一にする必要はないです。
5-2.放棄の理由を裏付ける書類等は不要
相続放棄の理由が何であれ、裏付ける書類等は必要ありません。
【事例】
相続財産|預金(100万円)、借金(500万円)
相続放棄|債務超過が理由
債務超過が理由であっても、債務を証明する書面は不要です。
相続放棄の理由は法律上の要件ではないので、証拠となる書類等も求められていません。
不要な書類を集めるのに時間がかかると、3ヶ月経過する危険があるので注意してください。
5-3.理由が間違っていても撤回できない
相続放棄の理由が間違っていても、撤回は認められないです。
以下は、民法の条文です。
第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
【事例】
相続財産|預金(100万円)、借金(500万円)
相続放棄|債務超過が理由
債務超過を理由に相続放棄した後で、定期預金(1,000万円)が見つかった。
債務超過という理由は間違っていたのですが、相続放棄の撤回は認められません。
家庭裁判所に申述が受理された後は、絶対に撤回できないです。
関連記事を読む『相続放棄の撤回は認められない!事情に関わらず禁止されている』
6.司法書士に相続放棄を依頼するメリット
司法書士に相続放棄を依頼する主なメリットには、以下があります。
- 戸籍や住民票を探して取得
- 相続放棄申述書の作成
- 家庭裁判所への提出
- 上申書(3ヶ月経過)の作成
上記以外にも、相続放棄する理由を確認する点が挙げられます。
以下は、実際に合った事例です。
※家族構成は変更。
被相続人|A
相続人 |配偶者、長男、二男、三男
長男から相続放棄したい旨の相談があったので、理由を確認したところ、配偶者に財産を集中させたいとのことでした。
念のため、亡くなったAさんの家族関係を確認したところ、Aの弟の存在を聞けました。
長男は気付いていなかったのですが、子ども(長男・二男・三男)が全員相続放棄すると、Aの弟に相続が移ります。つまり、配偶者とAの弟が相続人になります。
長男に説明した結果、二男と三男だけ相続放棄になりました。
勘違いして相続放棄しようとする人もいるので、司法書士に依頼(相談)するメリットはあります。
7.まとめ
今回の記事では「相続放棄の理由」について説明しました。
相続放棄する理由は自由です。法律上の決まりはないので、素直に理由を書いて問題ありません。
- 亡くなった人に借金がある
- 借金があるかもしれない
- 疎遠なので関わりたくない
- 不動産(持分)が不要だから
借金が相続放棄の理由としては分かりやすいですが、直接的ではなく間接的な理由として使われることも多いです。実際にあるかは分からないが、後から判明すると困るので相続放棄をする人もいます。
相続放棄が認められるかどうかと、相続放棄の理由は無関係です。相続したくないのであれば、相続放棄して問題ありません。
相続放棄の理由に関するQ&A
- 相続放棄の理由を複数書いても問題ないですか?
-
禁止する決まりはありません。
- 他の相続人が相続放棄した理由を知ることはできますか?
-
知ることはできません。