相続放棄をしたいが、自分の理由で認められるのか不安に思われていませんか。
結論から言えば、相続放棄の理由は何でも大丈夫です。
法律上でも理由は決まっていませんし、当事務所へ依頼されるお客様の理由もさまざまです。
- 亡くなった人に借金がある
- 後から借金が見つかると困るから
- 相続に関わりたくないから
- 生前に縁を切っているから
- 他の相続人に相続させたいから
もちろん、上記以外の理由でも問題ありません。
今回は、実際に私が受けている依頼の中から、相続放棄の理由として多い3つを中心に説明しています。
1.借金は一番分かりやすい理由
1つ目の理由は、亡くなった人に借金があるです。
亡くなった人の財産はプラスの財産もマイナスの財産(借金など)も含めて、相続人が引き継ぎます。
(相続の一般的効力)
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
借金は一番分かりやすい相続放棄の理由ですが、私が司法書士になる前に思っていたのとは少し違いました。
何が違うかというと、借金の額が想像とは違いました。
1-1.借金が少額でも相続放棄はできる
勘違いされる人も多いのですが、借金が少額であっても相続放棄はすることができます。
借金で思い浮かべる金額は人によって違うと思いますが、相続放棄の理由となる借金の額は10万円ぐらいです。キャッシングの残額などが該当する金額となります。
インターネットが普及したことにより、昔よりも低料金で相続放棄の依頼ができるようになっています。
そのため、借金が少額であっても相続放棄を選ぶ人が増えています。
1-2.借金をすべて把握することはできない
借金で一番怖いのは、どんなに調べてもすべてを把握することはできないことです。個人間で借りているお金に関しては、当事者しか知らないので後から判明することがあります。
今は少ないと思いますが連帯保証人の問題もあります。
何が問題かというと、主債務者が支払っている限り請求されないからです。そのため、連帯保証の存在に気付くことが難しいです。
2.財産が無いので安全のために放棄する
2つ目の理由は、財産が無いので安全のためです。
亡くなった人に借金があるかどうかは不明だが、プラスの財産が無いので安全のために相続放棄する人も多いです。
なぜなら、借金などの負債は後から判明することもあるからです。
実際、みかち司法書士事務所に相続放棄を依頼される人の約半数は、安全のためというのが相続放棄の理由となります。後から面倒ごとに巻き込まれる可能性があるなら、今のうちに相続放棄をしておきたいそうです。
以下は依頼人が不安に思われた、亡くなった人の特徴となります。
- ギャンブル好きだった
- 過去に借金があった
- 自己破産したことがある
- 過去に連帯保証人になったことがある
- 生活保護を受けていた
- 会社を倒産させている
プラスの財産が確実に無いのであれば、後は借金や連帯保証の可能性が残るだけになります。
ですので、実際には借金が無くてもプラスの財産も無いので、安全のために相続放棄を利用されているようです。
注意プラスの財産が後から見つかっても撤回はできません。
関連記事を読む『相続放棄と生活保護の関係|借金以外にも気を付けておこう』
関連記事を読む『相続放棄と連帯保証人の関係は間違えやすい』
3.疎遠なので関わりたくない
3つ目の理由は、疎遠なので関わりたくないです。
疎遠を理由に相続放棄する人には複数のケースがあります。
- 亡くなった人と疎遠である
- 亡くなった人と会ったことがない
- 相続人同士が疎遠である
3-1.亡くなった人と縁を切っている
「亡くなった人と縁を切っているので相続するつもりがない」という理由も多いです。「財産額も知らないし興味がない」と言われる人もいます。
昔に比べると離婚している人が増えているので、親と数十年会っていない子どもさんも増えています。自分が子どものときに出ていった人とは、関わりたくないそうです。
ちなみに、相続放棄をするのに財産額や借金の額は知らなくても問題ありません。
絶縁している人の相続に関わらないのであれば、相続放棄の手続きをしておきましょう。
関連記事を読む『相続放棄は絶縁状態の家族が亡くなっても必要』
3-2.亡くなった人と会ったことがないから
「亡くなった人に会ったことがないから」という理由もあります。
亡くなった人が伯父・伯母のケースで多いです。
親が親戚付き合いをしていなければ、親の兄弟姉妹に会ったことがない人もいます。あるいは、子どもの頃に離婚していれば、兄弟姉妹の存在すら知らないでしょう。
実際、私も母親に兄弟姉妹がいるのか知りません。
会ったことがない人の相続に関わりたくないので、相続放棄する人もいます。
3-3.相続人同士が疎遠なので顔を会わせたくない
相続人同士が疎遠なので、相続放棄することもあります。
亡くなった人の相続人である以上、実際には財産を取得しなくても相続手続きには関与しなくてはいけません。
*書面に署名捺印して印鑑証明書を添付するなど。
ですが、他の相続人と疎遠なので相続手続に関わりたくない人もいます。相続放棄をすると初めから相続人ではないので、相続手続に関わる必要が無くなります。
注意自分の相続分を放棄するのと相続放棄は違うので注意してください。
4.その他の理由でも問題なし
相続放棄をする理由は自由なので、借金・安全・疎遠以外で相続放棄する人もいます。
以下は、実際にあった相続放棄の理由です。
- 不動産を相続する人が決まっている
- 亡くなった人の配偶者に財産をすべて取得させたい
- 生活に余裕があるため
4-1.不動産を相続する人が決まっている
不動産を相続する人が決まっていると、その他の相続人は相続放棄することがあります。
遺産分割協議で不動産を相続する人を決めてもいいのですが、住宅ローンなどが残っていると不都合が生じます。
なぜなら、住宅ローンは負債なので、相続人全員が法定相続分で相続することになるからです。たとえ遺産分割協議で不動産を相続する人を決めても、住宅ローンは全員が相続することになります。
不動産以外に財産が無ければ、不動産を相続しない人は相続放棄した方が安全でしょう。
4-2.亡くなった人の配偶者に財産をすべて取得させたい
亡くなった人の相続人が、配偶者と兄弟姉妹(甥・姪)の場合です。
遺産分割協議をして配偶者に全財産を取得させることはできます。ただし、配偶者からは全財産を取得したいとは言いにくいです。
お互いに気を使いながら遺産分割協議をするのであれば、自主的に相続放棄をする方が楽です。
配偶者以外が全員相続放棄すれば、遺産分割協議も不要になります。
配偶者に余計な気を使わせたくないという理由で、相続放棄している人もいます。
4-3.生活が安定しているので財産は不要
分かりやすい理由ですが、生活が安定しているので相続放棄する人もいます。
遺産分割協議などの相続手続きが面倒だからという理由も混ざっています。
亡くなった人の財産を貰う気が無ければ、相続放棄する方が簡単です。
5.実際に依頼されている人の統計
みかち司法書士事務所に相続放棄を依頼されている人の理由です。

当事務所に依頼される人の理由で一番多いのは、安全の為に相続放棄をするです。安全が一番多い理由としては、定額料金にして安くしているのが影響しています。
あくまでも保険(予防策)として相続放棄をしたいので、できる限り費用を低く抑えたいという気持ちがあるからです。
6.自分で申請する際の理由の書き方
相続放棄を自分で申請する人もいるので、理由の書き方についても説明しておきます。
初めにも説明しているとおり、相続放棄が受理されるかどうかと、相続放棄の理由は無関係となります。どのような理由であっても問題ありません。
以下は、家庭裁判所で取得できる申述書です。2枚目の左下が相続放棄の理由欄となります。
6-1.相続放棄の理由は用意されている
相続放棄の理由が用意されているので、該当する理由があれば○を付けます。
- 被相続人から生前に贈与を受けている
- 生活が安定している
- 遺産が少ない
- 遺産を分散させたくない
- 債務超過のため
- その他
例えば、財産を1人が相続するのであれば、遺産を分散させたくない。借金が理由であれば、債務超過のためになります。
1番から5番以外であれば、その他に理由を書きます。
6-2.その他の理由であれば素直に書く
その他の理由であれば、素直に書きましょう。
以下は、依頼を受けた際に書いている理由です。
- 債務超過の疑いがある
- 遺産分割協議に参加したくない
- 生前に交流がないから
- 亡くなった人と縁を切っている
上記以外でも、相続放棄したい理由を素直に書いて大丈夫です。
7.相続放棄の理由が関わりたくない場合の書き方
相続放棄を検討されている人からの質問で多いのが、「相続に関わりたくないを理由に相続放棄できますか?」になります。
結論から言えば、まったく問題ありません。相続放棄する理由は自由なので、相続に関わりたくなければ相続放棄して大丈夫です。
相続放棄申述書の理由欄にも、「相続に関わりたくない」と素直に記載してください。細かい事情を記載する必要もありません。
実際、私が依頼を受けた場合でも、理由欄に「相続に関わりたくない」だけを記載しています。もちろん相続放棄は全て認められています。
相続放棄するかどうかは相続人の自由なので、相続に関わりたくなければ相続放棄しましょう。
8.さいごに
相続放棄をする理由は自由です。相続放棄が認められるかと、相続放棄をする理由は無関係となります。
借金が相続放棄の理由としては分かりやすいですが、直接的ではなく間接的な理由として使われることも多いです。実際にあるかは分からないが、後から判明すると困るので相続放棄をするなどです。
ただし、相続放棄にはデメリットもあるので、選ばれる前には確認しておいてください。
相続放棄の理由は何でも大丈夫ですが、期間制限はあるので早めに行動する必要があります。