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限定承認と単純承認は何が違うのか?【相続する点は同じ】

限定承認と単純承認の違い
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限定承認と単純承認は相続するという点では同じですが、違う部分も多いです。

亡くなった人に負債があった場合、単純承認と限定承認では負担額が違います。

また、単純承認を選ぶのに手続きは不要ですが、限定承認を選ぶには家庭裁判所の手続きが必要です。

今回の記事では、限定承認と単純承認について説明しているので、相続する際の参考にしてください。

1.限定承認と単純承認はどちらも相続である

まず初めに、限定承認と単純承認はどちらも相続となります。

ですので、限定承認と単純承認どちらを選んでも、相続人であることに変わりはありません。限定承認をしても相続人のままです。

では、限定承認と単純承認の何が違うかというと、主に以下の2つが違います。

  • 負債の負担額が違う
  • 手続きの方法が違う

同じ相続でも限定承認と単純承認では違う部分があるので、選ばれる際は注意してください。

ちなみに、相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったとみなされます。

 

2.限定承認と単純承認では負債の負担額が違う

限定承認と単純承認の主な違い1つ目は、負債の負担額が違うです。

いわゆるマイナス財産については、限定承認と単純承認で違いがあります。

2-1.単純承認はマイナス財産(負債)も全額負担する

単純承認をした相続人は、亡くなった人の権利義務をすべて引き継ぎます。

以下は、民法の条文です。

(単純承認の効力)
第九百二十条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

出典:e-Govウェブサイト(民法920条)

亡くなった人に借金があれば、相続人が借金も全額相続します。

例えば、亡くなった人に借金が1億円あれば、単純承認をした相続人が1億円も引き継ぎます。

現実的には、明らかに借金が多ければ、相続人は相続放棄を選ぶでしょう。

2-2.限定承認は相続財産を限度にマイナス財産(負債)を負担する

限定承認をした相続人は、相続財産を限度に亡くなった人の負債を弁済する義務を負います。

以下は、民法の条文です。

(限定承認)
第九百二十二条 相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法922条)

例えば、亡くなった人の財産が、プラスの財産(100万円)とマイナス財産(1億円)であれば、100万円を限度に弁済する義務を負います。

限定承認をした相続人は、マイナスの財産も相続するのですが、プラスの財産を限度に弁済するという条件付きです。

限定承認と単純承認の負担額

 

3.限定承認と単純承認では手続きに違いがある

限定承認と単純承認の主な違い2つ目は、手続きに違いがあるです。

限定承認と単純承認を比べた場合、負債の負担額だけなら限定承認の方が優れています。

ですが、限定承認はほとんど選ばれていません。年間100万人以上の人が亡くなっていますが、限定承認は約700件しかありません。

限定承認が選ばれない最大の理由は、手続きが複雑だからです。

3-1.限定承認は相続人全員で選ぶ必要がある

単純承認ではなく限定承認を選ぶには、相続人全員で選ぶ必要があります。

誰か1人でも単純承認を選ぶと、他の相続人も限定承認を選ぶことができません。

したがって、相続人の人数が多くなるほど、限定承認を選ぶのが難しくなります。

また、相続人同士が不仲だと協力を得られないので、限定承認を選ぶことができないでしょう。

3-2.限定承認を選ぶには3か月以内の期間制限がある

単純承認ではなく限定承認を選ぶには、相続の開始から3か月以内に家庭裁判所へ申立書を提出する必要があります。

相続人が複数人存在するなら、3か月以内に全員の意見を一致させてください。

相続の開始から何もせずに3か月経過すると、単純承認をしたとみなされます。

3-3.限定承認は清算手続きに手間がかかる

家庭裁判所に限定承認が認められた後は、清算手続きをする必要があります。

  • 官報公告
  • 債権者への催告
  • 換価手続き
  • 債権者等への支払い

限定承認をした場合は、必ず官報公告をします。官報公告の費用だけでも約5万円かかります。

負債の額が預貯金よりも多ければ、動産や不動産の換価手続きも必要です。

プラスの財産よりもマイナスの財産が多く、かつ、債権者等が複数存在するなら、按分計算により支払います。

 

4.さいごに

限定承認と単純承認はどちらも相続です。限定承認を選んでも相続人であることに変わりはありません。

簡単に説明するなら、限定承認は負債額の負担について条件付きの相続です。

単純承認なら全額負担するのですが、限定承認なら相続財産を限度に負担します。

ただし、相続手続きでは限定承認の方が、圧倒的に手間がかかります。手間だけでなく費用も増えるのが欠点です。

限定承認と単純承認で迷われているなら、早めに専門家にご相談ください。