限定承認と単純承認は相続するという点では同じですが、違う部分も多いです。
亡くなった人に負債があった場合、単純承認と限定承認では負担額が違います。
また、単純承認を選ぶのに手続きは不要ですが、限定承認を選ぶには家庭裁判所の手続きが必要です。
今回の記事では、限定承認と単純承認について説明しているので、相続する際の参考にしてください。
目次
1.限定承認と単純承認はどちらも相続である
まず初めに、限定承認と単純承認はどちらも相続となります。
ですので、限定承認と単純承認どちらを選んでも、相続人であることに変わりはありません。限定承認をしても相続人のままです。
では、限定承認と単純承認の何が違うかというと、主に以下の2つが違います。
- 負債の負担額が違う
- 手続きの方法が違う
同じ相続でも限定承認と単純承認では違う部分があるので、選ばれる際は注意してください。
ちなみに、相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったとみなされます。
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2.限定承認と単純承認では負債の負担額が違う
限定承認と単純承認の主な違い1つ目は、負債の負担額が違うです。
いわゆるマイナス財産については、限定承認と単純承認で違いがあります。
2-1.単純承認はマイナス財産(負債)も全額負担する
単純承認をした相続人は、亡くなった人の権利義務をすべて引き継ぎます。
以下は、民法の条文です。
亡くなった人に借金があれば、相続人が借金も全額相続します。
例えば、亡くなった人に借金が1億円あれば、単純承認をした相続人が1億円も引き継ぎます。
現実的には、明らかに借金が多ければ、相続人は相続放棄を選ぶでしょう。
2-2.限定承認は相続財産を限度にマイナス財産(負債)を負担する
限定承認をした相続人は、相続財産を限度に亡くなった人の負債を弁済する義務を負います。
以下は、民法の条文です。
例えば、亡くなった人の財産が、プラスの財産(100万円)とマイナス財産(1億円)であれば、100万円を限度に弁済する義務を負います。
限定承認をした相続人は、マイナスの財産も相続するのですが、プラスの財産を限度に弁済するという条件付きです。
3.限定承認と単純承認では手続きに違いがある
限定承認と単純承認の主な違い2つ目は、手続きに違いがあるです。
限定承認と単純承認を比べた場合、負債の負担額だけなら限定承認の方が優れています。
ですが、限定承認はほとんど選ばれていません。年間100万人以上の人が亡くなっていますが、限定承認は約700件しかありません。
限定承認が選ばれない最大の理由は、手続きが複雑だからです。
3-1.限定承認は相続人全員で選ぶ必要がある
単純承認ではなく限定承認を選ぶには、相続人全員で選ぶ必要があります。
誰か1人でも単純承認を選ぶと、他の相続人も限定承認を選ぶことができません。
したがって、相続人の人数が多くなるほど、限定承認を選ぶのが難しくなります。
また、相続人同士が不仲だと協力を得られないので、限定承認を選ぶことができないでしょう。
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3-2.限定承認を選ぶには3か月以内の期間制限がある
単純承認ではなく限定承認を選ぶには、相続の開始から3か月以内に家庭裁判所へ申立書を提出する必要があります。
相続人が複数人存在するなら、3か月以内に全員の意見を一致させてください。
相続の開始から何もせずに3か月経過すると、単純承認をしたとみなされます。
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3-3.限定承認は清算手続きに手間がかかる
家庭裁判所に限定承認が認められた後は、清算手続きをする必要があります。
- 官報公告
- 債権者への催告
- 換価手続き
- 債権者等への支払い
限定承認をした場合は、必ず官報公告をします。官報公告の費用だけでも約5万円かかります。
負債の額が預貯金よりも多ければ、動産や不動産の換価手続きも必要です。
プラスの財産よりもマイナスの財産が多く、かつ、債権者等が複数存在するなら、按分計算により支払います。
4.さいごに
限定承認と単純承認はどちらも相続です。限定承認を選んでも相続人であることに変わりはありません。
簡単に説明するなら、限定承認は負債額の負担について条件付きの相続です。
単純承認なら全額負担するのですが、限定承認なら相続財産を限度に負担します。
ただし、相続手続きでは限定承認の方が、圧倒的に手間がかかります。手間だけでなく費用も増えるのが欠点です。
限定承認と単純承認で迷われているなら、早めに専門家にご相談ください。