被相続人が亡くなってから10年後でも、相続の開始を知った日から3ヶ月以内なら相続放棄できます。

相続の開始を知らなかったケースは3つあります。
- 死亡を知らなかった
- 相続人だと知らなかった
- 相続財産に気付けなかった
相続放棄は相続の開始を知った日から3ヶ月以内なので、死亡から10年後であっても知らなけば期間は経過していないです。
今回の記事では、10年後の相続放棄について、3つのケースを説明しています。あなたに当てはまるケースがあれば諦める必要はありません。
記事作成者
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司法書士 小嶋高士
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1.相続放棄は期限内なら10年後でも可能

被相続人の死亡から10年後でも、相続放棄の期限内なら認められます。
なぜなら、相続放棄の期限と被相続人の死亡日に、直接の関係はないからです。
1-1.相続放棄の期間は知った日から3ヶ月以内
相続放棄できる期間は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。
(相続の承認又は放棄をすべき期間) 第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。(後略)
つまり、被相続人の死亡から10年後に相続の開始を知った場合、その日から3ヶ月以内が相続放棄できる期間になります。
死亡日 |平成26年8月11日
知った日|令和7年3月18日
相続放棄|令和7年4月25日
被相続人の死亡日は平成26年8月11日ですが、相続の開始を知った日が令和7年3月18日なので、相続人は令和7年4月25日に相続放棄しました。
被相続人の死亡日から10年以上経過していますが、知った日から3ヶ月以内なので期間内です。
相続放棄する場合、重要なのは被相続人の死亡日ではなく、相続の開始を知った日になります。
関連記事を読む『相続放棄の期間は3ヶ月以内【期間の開始日が重要】 』
1-2.いつが相続の開始を知った日になるのか
原則として、相続の開始を知った日とは、次の2つを満たした日になります。
- 被相続人の死亡を知った
- 自分が相続人になったと知った
配偶者や子どもであれば、被相続人の死亡を知った日が、相続の開始を知った日になります。
※被相続人の死亡を知れば自分が相続人だと分かる。
先順位相続人が存在する場合の直系尊属や兄弟姉妹は、死亡を知っただけでなく、先順位相続人が全員相続放棄したことを知った日が、相続の開始を知った日になります。
※先順位相続人が存在しない場合は死亡を知った日。
相続の開始を知った日については、下記の記事で詳しく説明しているので参考にしてください。
関連記事を読む『【相続の開始を知った日】相続放棄はいつからできるのか徹底解説』
2.死亡を知らなければ10年後でも相続放棄できる

被相続人の死亡を知らなかった場合、10年後でも相続放棄はできます。
一般的に、被相続人が亡くなると、相続人に死亡の連絡が来ます。
ですが、親族と疎遠な場合、死亡の連絡が来ないケースは珍しくありません。
- 親族が連絡先を知らなかった
- 親族が死亡の連絡をしなかった
被相続人の死亡を相続人に知らせる義務はないので、10年以上経ってから知る人もいます。
▼家族構成
被相続人|父親
相続人 |長男・二男
※長男は二男の連絡先を知らなかった
▼死亡を知った日
死亡日|平成25年7月21日
長男 |平成25年7月21日
二男 |令和8年3月18日
二男は親族と20年以上前から疎遠であり、長男も二男の連絡先を知らなかったので、葬儀の連絡もしなかった。
その後、長男は父親が残した不動産の名義を変更せずに使用していた。
しかし、相続登記が義務化されたので、遺産分割協議をするため、二男の住所を調べて書面を郵送した。
二男は長男からの書面で父親の死亡を知ったので、死亡日から10年経過していても相続放棄できます。
親族と疎遠になっていて、死亡を知るのが10年後であっても、相続人であることに違いはないので、相続したくない人は相続放棄できます。
関連記事を読む『相続放棄は絶縁状態の家族が亡くなっても必要 』
3.相続人だと知らなければ10年後でも相続放棄できる

2つ目のケースは、相続人だと知らなかった場合です。
亡くなったことは知っていても、自分が相続人になっていると知らなければ、10年後でも相続放棄できます。
- 先順位相続人の相続放棄を知らなかった
- 先順位相続人の不存在を知らなかった
- 代襲相続の発生を知らなかった
それぞれ事例を交えて説明していきます。
3-1.先順位相続人の相続放棄を知らなかった

次順位相続人(直系尊属・兄弟姉妹)が相続放棄できるのは、先順位相続人が全員相続放棄したことを知った日から3ヶ月以内です。
※先順位相続人が存在する場合。
したがって、先順位相続人の相続放棄を知らなければ、死亡日から10年経過していても問題ありません。
被相続人 |兄
死亡日 |平成26年4月28日
先順位相続人 |子ども
死亡を知った日|平成26年5月3日
放棄を知った日|令和7年2月13日
亡くなった兄の子ども(先順位相続人)とは交流がありませんでした。
兄の死亡から10年後に、債権者から書面が届き、兄の子が相続放棄していると知った。
書面が届いた日から3ヶ月以内であれば、弟は相続放棄できます。
先順位相続人の相続放棄を10年後に知った場合でも、3ヶ月以内なら相続放棄は可能です。
関連記事を読む『相続放棄を兄弟がするなら期限は2通りあるので気を付けよう 』
3-2.先順位相続人の不存在を知らなかった

亡くなった人と疎遠になっていれば、先順位相続人の存在が不明な場合もあります。
先順位の存在が不明だと、自分が相続人だと判断できません。
- 被相続人の家族構成を知らなかった
- 先順位相続人が存在すると思っていた
私はどちらのケースも経験しましたが、相続放棄は無事に認められました。
被相続人の家族構成を知らなかった
被相続人が兄弟姉妹やおじ・おばの場合、家族構成を知らなければ、自分が相続人か判断できません。
▼家族構成
被相続人 |兄(異父兄)
死亡日 |平成26年4月28日
死亡を知った日|平成26年7月12日
先順位相続人 |不明
異父兄が亡くなったと親戚から聞いたが、異父兄の家族構成を知らないので、自分が相続人だと気付けなかった。
被相続人の死亡は知っていても、自分が相続人だと気付けなければ、10年後でも相続放棄は可能です。
先順位相続人が存在すると思っていた
被相続人に子がいる場合、原則として直系尊属や兄弟姉妹は相続人になりません。
ただし、被相続人よりも先に亡くなっている場合は別です。
▼家族構成
被相続人 |兄
死亡日 |平成26年4月28日
死亡を知った日|平成26年7月12日
先順位相続人 |子ども
30年以上疎遠だった兄が亡くなったと親戚から聞いたが、兄には子どもがいたので、自分が相続人だとは思わなかった。
ところが、子どもは先に亡くなっており、自分(弟)が相続人になっていた。
兄の子どもが亡くなっていると知らなければ、自分が相続人とは気付けません。
先順位相続人が亡くなっている場合、先順位相続人の死亡戸籍も必要になるので、忘れずに取得してください。
3-3.代襲相続の発生を知らなかった

被相続人よりも相続人が先に亡くなっていると、代襲相続が発生します。
ただし、相続人が先に亡くなっていると知らなければ、代襲相続が発生していると気付けません。
▼家族構成
被相続人|祖母(父方)
相続人 |父親※行方不明
父親とは絶縁状態であり、祖母が亡くなった際も連絡を取らなかった。
祖母の死亡から10年後に、市役所から固定資産に関する書面が孫に届いたので、戸籍を取得して確認したところ、父親が祖母より先に亡くなっていると気付いた。
父親が亡くなっていると気付いた日から3ヶ月以内であれば、代襲相続人として祖母の相続放棄はできます。
ちなみに、父親の死亡にも気付いたので、父親も相続放棄するなら3ヶ月以内です。
私の経験上、代襲相続の発生に気付いていない人は珍しくありません。気付いた日から3ヶ月以内に相続放棄すれば大丈夫です。
関連記事を読む『相続放棄は代襲相続人も必要!手間が増えるので早めに準備 』
4.相続財産に気付けなければ10年後でも可能性有り

3つ目のケースは、相続財産に気付けなかった場合です。
1つ目・2つ目のケースと違い、相続放棄できる可能性が有るになります。
なぜなら、「被相続人の死亡」と「自分が相続人」の両方を知っているからです。
原則として、相続の開始を知った日から3ヶ月経過しているので、単純承認したとみなされ相続放棄できません。
例外として、相続財産に気付けなかった事情が認められると、10年後であっても可能です。
個別の事情になるのですが、参考までに3つ紹介します。
- 被相続人の財産は無いと聞いていた
- 生活状況から財産は無いと思い込んでいた
- 相続財産を探したが見つからなかった
あなたのケースに該当するかもしれないので、確認しておいてください。
4-1.被相続人の財産は無いと聞いていた

被相続人の財産は無いと聞いていれば、気付けなかった事情になり得ます。
- 被相続人の同居者から聞いた
- 被相続人の後見人から聞いた
- 被相続人の親族から聞いた
実際、私が受けた依頼の中にも、相続財産は無いと聞いていたのに、後から財産が見つかったケースがあります。
▼相続関係
被相続人|母親
相続人 |子ども
生活状況|母親は内縁の夫と同居
相続財産|特に無し
亡くなった母親と子どもは別々に暮らしており、同居していた内縁の夫から財産は何も無いと聞いていた。
ところが、後になって母親宛に借金の督促状が届いていると、内縁の夫が伝えてきた。
※郵送物は内縁の夫が捨てていた。
亡くなった母親の借金に気付くのは難しいので、知った日から3ヶ月以内に相続放棄しました。
相続財産が無いと聞いていたなら、その旨を家庭裁判所に説明して相続放棄しましょう。
4-2.生活状況から相続財産は無いと思い込んでいた

被相続人の生活状況によっては、気付けなかった事情になり得ます。
- 生活保護費を受給していた
- 家族が生活費を援助していた
以下は、実際にあった事例です。
▼相続関係
被相続人|父親
相続人 |子ども
生活状況|生活保護で数年間生活していた
生活状況から判断して財産は無いと思っていたら、10年以上前に連帯保証人になっていた事実が判明した。
※主債務者が死亡したことで判明。
上記のような生活状況で、被相続人に財産が無いと思い込んでいたなら、家庭裁判所にその旨を説明して相続放棄しましょう。
関連記事を読む『生活保護者が死亡したら相続放棄を検討|返還義務や退去費用も請求される 』
4-3.相続財産を探したが見つからなかった

相続発生時に相続財産を探していれば、気付けなかった事情になり得ます。
- 被相続人宛ての郵便物をチェックした
- 被相続人の口座履歴をチェックした
- 個人信用情報機関に開示請求した
以下は、実際にあった事例です。
▼相続関係
被相続人|母親
相続人 |子ども
財産調査|郵便物や口座履歴を確認
亡くなった母親は年金暮らしであり、相続財産も特に見つからなかった。
ところが、母親の死亡から10年後に、親戚から連絡があり、田畑や山林の持分を一部所有していると分かった。
※不動産名義は祖父名義。
固定資産税の通知も届いておらず、母親から不動産の存在も聞いたことがなかったので、知った日から3ヶ月以内に相続放棄した。
実際に探しても見つからない以上、相続財産が無いと判断しても仕方がないです。
相続財産の存在を知った日から3ヶ月以内に、相続放棄の手続きをしてください。
5.相続放棄を10年後にする際の注意点
被相続人の死亡から10年後に相続放棄する場合、注意点が2つあります。
- 申述書に知った日を記載
- 知った経緯を説明する
非常に重要なので、しっかりと確認しておいてください。
5-1.申述書に相続の開始を知った日を記載
相続放棄の申述書には、「相続の開始を知った日」を記載する欄があるので、間違えずに記載してください。
勘違いして被相続人の死亡日を記載すると、3ヶ月経過していると判断され、却下される可能性もあります。
以下は、申述書の見本です。
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被相続人の死亡から10年経過していれば、1は該当しないので、2・3・4の中から該当するものに〇を付けます。
▼家族構成
被相続人|父親
相続人 |長男
※父親とは30年以上疎遠
▼相続の開始を知った日
死亡日 |平成25年12月16日
知った日|令和8年2月13日
※死亡を知った日
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父親の死亡を通知で知った場合は、死亡の通知を受けた日に〇を付けます。
被相続人の死亡から10年経過している場合、知った日を間違えずに記載してください。
5-2.家庭裁判所に知った経緯を説明
被相続人の死亡から10年後に相続放棄する場合、家庭裁判所に知った経緯を説明する必要があります。
※先順位の相続放棄から3ヶ月以内を除く。
なぜなら、申述書と戸籍だけでは、個別の事情が分からないからです。
被相続人|父親
死亡日 |平成26年4月28日
相続人 |子ども
申述日 |令和7年2月29日
以下は、家庭裁判所に対する事情説明です。
両親の離婚後は母親に引き取られており、父親とは離婚後に一度も会ったことがありません。
令和7年2月10日、○○市より固定資産に関する書面が届き、父親が亡くなっていると知りました。
上記のケースでは、「死亡を知らなかった事情」と「死亡を知った経緯」を説明しています。
専門家は「上申書」という言葉を使いますが、事情を説明した書面で問題ありません。
ご自身で相続放棄の手続きをするなら、事情説明も必要だと覚えておきましょう。
関連記事を読む『相続放棄の上申書は事例ごとに内容が違う|3つのケースを説明 』
6.10年後の相続放棄に関するQ&A
10年後の相続放棄に関して、よくある質問と回答をまとめました。
他の事務所で10年も経っているから無理と言われました。
知った日から3ヶ月以内であれば相続放棄できます。
死亡から20年経っていても可能ですか?
知った日から3ヶ月以内なら何十年後でも相続放棄できます。
他の相続人は10年前に相続放棄していても可能ですか?
知った日から3ヶ月以内なら可能です。知った日は相続人ごとに判断されます。
上申書を作成しないと相続放棄は無理ですか?
無理ではありません。照会書が届くので事情を説明すれば大丈夫です。
相続放棄のQ&Aについては、上記以外にもあるので参考にしてください。

7.まとめ
今回の記事では「10年後の相続放棄」について説明しました。
死亡から10年経過していても、相続の開始を知った日から3ヶ月経過していなければ、相続放棄は可能です。
- 死亡を知らなかった
- 相続人だと知らなかった
- 相続財産に気付けなかった
当然ですが、死亡を知らなければ問題ありません。
先順位相続人が存在する場合は、自分が相続人だと気付いた日から3ヶ月以内です。
相続財産に気付けなかった事情があれば、死亡や相続人だと知っていても、相続放棄できる可能性はあります。
死亡から10年経過していても、相続放棄を諦めるには早いです。



