亡くなった人の相続に関わりたくない人もいます。
「亡くなった人と疎遠だった」や「共同相続人と疎遠だから」など事情はさまざまです。
ただし、相続に関わりたくなくても、相続人である以上は関係者となります。
- 共同相続人からの連絡を無視する
- 共同相続人からの書面に署名捺印する
- 相続放棄して相続人ではなくなる
私の経験上、連絡を無視するや書面に署名捺印するはリスクが大きいので、相続放棄をお勧めします。
なぜ相続放棄がお勧めなのか、無視や署名捺印のリスクと一緒に説明していきます。
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1.相続に関わりたくなくても関係者
あなたが相続に関わりたくなくても、相続人であれば強制的に関係者となるので、共同相続人は連絡を取ってきます。
なぜなら、相続手続き(遺産分割協議書の作成等)には、相続人全員の協力が必要だからです。
たとえ1円も相続するつもりがなくても、あなたの協力がなければ相続手続きはできません。
そこで、あなたが取るべき行動は、3つ考えられます。
- 共同相続人からの連絡を無視する
- 共同相続人からの書面に署名捺印する
- 相続放棄して相続と無関係になる
私なら1と2は選びません。相続に関わりたくない(相続する気がない)なら、リスクが大きすぎるからです。3を選ぶのがベストだと考えます。
次章から、それぞれの行動について具体的に説明していきます。
2.連絡を無視しても根本的な解決にならない

1つ目の行動は、共同相続人からの連絡を無視するです。
共同相続人と疎遠になっている場合、連絡を無視する相続人もいます。
その後、無視された共同相続人が取るべき手段は、2つあります。
- 遺産分割調停の申立てをする
- 相続手続きを諦めて放置する
2-1.遺産分割調停の申立てをする
あなたが連絡を無視するからといって、遺産分割協議からは除外できません。共同相続人がどうしても相続手続きを進めたいなら、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをするでしょう。
あなたにも家庭裁判所から書面が届きます。届いた書面を無視すると、最終的には家庭裁判所が遺産分割の内容を決めます。
ただし、あなたも相続人の1人なので、何かしらの財産を取得する可能性が高いです。
※相続財産の内容によります。
2-2.相続手続きを諦めて放置する
あなたが相続手続きに協力しなければ、共同相続人も諦めて放置するかもしれません。
ただし、相続手続きを放置されると、遺産共有の状態になります。
もし相続財産に不動産が含まれていれば、あなたも不動産の共有者(所有者)です。固定資産税の納税義務も発生しますし、建物が古くなり近隣に迷惑をかければ取り壊しを請求されます。
相続手続きに協力しないからといって、相続と無関係にはなりません。
3.相続に関わりたくないから署名捺印は危険

2つ目の行動は、共同相続人からの書面に署名捺印するです。
あなたが相続財産を取得するつもりがなくても、共同相続人は書面への署名捺印を求めてきます。
- 遺産分割協議書
- 遺産分割協議証明書
- 相続分放棄書(贈与書)
- 特別受益証明書
- 銀行の手続用紙
いずれの書面であっても、署名捺印(実印)と印鑑証明書の返送を求められるでしょう。
ただし、相続に関わりたくないからといって、安易に署名捺印するのは危険です。意味を理解したうえで、どうするか決めてください。
3-1.署名捺印しても相続人であることに変わりはない
共同相続人からの書面に署名捺印しても、あなたが相続人であることに変わりはありません。
署名捺印した書面の内容によっては、問題が残されているケースもあります。
銀行の書面に署名捺印してもその他は残る

銀行の手続き書面に署名捺印しても、その他の相続財産とは無関係です。
共同相続人が預貯金だけ欲しい場合は、その他の相続財産を放置する可能性があります。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |長男・二男・長女
相続財産|定期預金(1,000万円)・不動産
署名捺印|銀行の手続き書面
長女は長男と仲が悪かったので関わりたくなかったが、定期預金の解約に署名捺印が必要と言われたので、実印で押印して印鑑証明書を返送した。
20年後、独身だった長男が亡くなり、市役所より固定資産税の通知が長女に届いた。
不動産は父親名義で放置されており、長男・二男・長女で共有状態になっていた。
あくまでも銀行の手続き書面なので、不動産等は共同相続人で共有となります。
固定資産税を支払っている人がいると、通知も届かないので気付きにくいです。
遺産分割協議書に記載されていない財産は相続

遺産分割協議書に署名捺印しても、書面に記載されていない相続財産は遺産共有のままです。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |長男・長女・二女
相続財産|不動産A・B・C
署名捺印|不動産A・Bが記載された遺産分割協議書
長女と二女は相続するつもりがなかったので、長男から郵送された遺産分割協議書に署名捺印した。
長男が亡くなった後に不動産Cが共有状態だと気付いた。
遺産分割協議書に署名捺印しても相続人なので、分割未了の財産があれば共有になります。
共同相続人から書面が送られてきたら、相続財産を確認したうえで署名捺印してください。
3-2.亡くなった人の負債は法定相続分で請求できる

相続人同士が相続財産の分割で同意しても、亡くなった人の債権者は法定相続分で負債を請求できます。
つまり、あなたが1円も取得しないという書面に署名捺印しても、債権者には関係ありません。あくまでも、相続人同士の間では有効というだけです。
以下は、実際にあった事例になります。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |配偶者・長男・長女
相続財産|預貯金(100万円)・不動産・負債(300万円)
遺産分割|長男が全財産を相続する
長女は実家と疎遠になっていたので、長男から郵送された書面に署名捺印した。
数年後、債権者からの督促状が自分(長女)に届くので不審に思い、専門家に相談して負債を相続している事実に気付いた。
債権者は法定相続分にしたがって、各相続人に請求できます。
配偶者|300万円×2分の1=150万円
長男 |300万円×4分の1=75万円
長女 |300万円×4分の1=75万円
何も相続する気がなければ、書面に署名捺印するのは危険なので止めた方が良いです。
関連記事を読む『【遺産分割協議書に債務を記載】債権者には対抗できない!』
4.相続に関わりたくない人は相続放棄がベスト

3つ目の行動は、相続放棄して相続人ではなくなるです。
相続専門の司法書士として言えるのは、相続に関わりたくない人は相続放棄がベストです。

相続放棄すれば、相続手続きに関わらないですし、相続財産も取得しません。
4-1.相続放棄が優れている理由は3つ
相続放棄が優れている理由は3つあります。
- 相続人ではなくなるので無関係
- 実印ではなく認印で大丈夫
- 共同相続人の協力は不要
相続人ではなくなるの無関係
相続放棄すると、初めから相続人ではなかったみなされます。
したがって、相続人ではないので、相続手続きにも関係しないです。共同相続人からの書面に署名捺印する必要もありません。
また、共同相続人が一部の相続財産を放置しても、相続人ではないので関係ありません。
実印ではなく認印で大丈夫
相続に関わりたくない人からすると、共同相続人に印鑑証明書を渡したくないと思うのは当然です。あるいは、印鑑登録をしていないので、わざわざ登録するのが面倒だと思う人もいるでしょう。
一方、相続放棄は認印で可能なので、印鑑証明書の取得や印鑑登録は不要です。
関連記事を読む『相続放棄するのに印鑑証明書は不要【認印で大丈夫!】』
共同相続人の協力は不要
相続放棄はあなたが単独で行う手続きなので、共同相続人に協力を求める必要はありません。
当然ですが、共同相続人の同意等も不要です。仮に共同相続人が反対しても、相続放棄は自由にできます。
「相続に関わりたくない」という理由でも相続放棄は可能なので、共同相続人に一切関わりたくなら相続放棄しましょう。
関連記事を読む『相続放棄の理由は自由|借金・安全・疎遠・不動産以外の理由も可能』
4-2.相続放棄のデメリットも知っておこう
どんな制度にも欠点はあるので、相続放棄にもデメリットはあります。
- 家庭裁判所の手続きが必要
- 相続の開始を知った日から3ヶ月以内
- 相続放棄の撤回は認められない
家庭裁判所の手続きが必要
相続放棄には家庭裁判所の手続きが必要です。
自分で書面を作成して相続放棄の意思表示をしても、相続放棄できないので注意してください。
関連記事を読む『【相続放棄の手続きは家庭裁判所】その他の方法では成立しない』
相続の開始を知った日から3ヶ月以内
相続放棄できるのは、相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。
何もせずに3ヶ月経過してしまうと、単純承認とみなされ相続人であることが確定します。
関連記事を読む『相続放棄の期間は3ヶ月以内【期間の開始日が重要】』
相続放棄の撤回は認められない
一度相続放棄すると、理由に関係なく撤回は認められません。
思っていたよりも相続財産が多かったとしても、相続できないので注意してください。
関連記事を読む『相続放棄の撤回はできない【法律で禁止されている】』
5.まとめ
今回の記事では「相続に関わりたくない場合の行動」について説明しました。
相続に関わりたくない人も相続人である以上、相続手続きの関係者です。
- 共同相続人からの連絡を無視する
- 共同相続人からの書面に署名捺印する
- 相続放棄して相続人ではなくなる
連絡を無視しても相続人ですし、書面に署名捺印しても相続人なので、あなたの望む結果ではないでしょう。
相続に関わりたくない(相続する気がない)なら、相続放棄がベストです。
相続放棄すれば相続人ではないので、相続手続きに関わりません。共同相続人に印鑑証明書を渡す必要もありません。
相続に関わりたくないと悩んでいるなら、相続放棄を検討してみてください。
相続に関わりたくないに関するQ&A
- 家族と絶縁していても協力は必要ですか?
-
絶縁していても相続人であれば関係者です。
- 生前に財産は取得しないと伝えてあります。
-
伝えていても相続手続きの参加者です。
- 相続財産を知らなくても相続放棄できますか?
-
相続放棄できます。