相続放棄は口約束や書面の作成では効力が発生しない

相続人が相続放棄すると口約束しても、相続放棄の効力は発生しません。約束を書面に残していても結論は同じです。

相続放棄は家庭裁判所に申述書が受理されない限り、絶対に認められないからです。

相続放棄の手続きをすると約束した場合、相続発生前であれば無効となります。相続発生後であれば有効ですが、約束を守らなければ相続放棄の効力は発生しません。

今回の記事では、相続放棄の口約束について説明しているので、正しい情報を確認しておいてください。

1.口約束では相続放棄の効力は発生しない

相続放棄の効力が発生するのは、家庭裁判所に相続放棄の申述書が受理された時です。

したがって、相続人同士の口約束では相続放棄の効力は発生しません。

以下は、民法の条文です。

(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法938条)

たとえ家族全員の前で約束しても、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出しない限り、相続放棄が認められることはありません。

 

2.書面で約束しても相続放棄の効力は発生しない

相続放棄を口約束ではなく書面にしても、相続放棄の効力が発生しない点は同じです。

たとえ書面を公正証書で作成しても、相続放棄の効力は発生しません。

そもそも、家庭裁判所に申述書が受理されない限り、相続放棄の効力は発生しないので、公正証書かどうかの問題ではありません。

約束では相続放棄の効力は発生しないと覚えておきましょう。

次章からは、「相続放棄の申述書を家庭裁判所に提出する」という約束の有効・無効について説明していきます。

 

3.相続発生前に相続放棄することを約束しても無効

相続発生前(生前)に相続放棄することを約束しても、法律上は何の効力も発生しません。

例えば、兄弟の間で父親が亡くなった際の相続について、あらかじめ相続放棄することを約束していても、法的拘束力は一切ありません。

相続放棄を生前に約束しても無効

たとえ約束を書面に残していても、相続開始後に次男は相続を選ぶことができます。

以下は、裁判例です。

相手方が被相続人Aの生前、前記遺留分放棄許可の申立をした際に、被相続人Aの相続をする意思のないことを表明したことは前記のとおりである。しかしながら、相続開始前の相続放棄は法律上なんらの効力も有しないのであるから、遺留分放棄許可申立の際における相手方の相続放棄の意思表明は法律的効力を有しない。単なる遺留分放棄の縁由にすぎないものというほかない。

出典:東京高裁昭和54年1月24日決定(判例タイムズ380号158項)

生前に相続放棄はできないので、生前に相続放棄の意思を表明しても法律上は何の効力も無いです。

相続または相続放棄の決断は、相続発生後でなければできません。

 

4.相続発生後に相続放棄の約束は有効だが・・・

相続が発生した後で、相続放棄の約束をするのは有効です。すでに相続は発生しているので、当然に無効になるわけではありません。

ただし、相続放棄の約束をしても、相手が守るかどうかは別問題です。

仕事が忙しいなどを理由に、3ヶ月経過するまで何もしない可能性もあります。本当に忙しいかは本人しか分からないです。

以下は、民法の条文です。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法915条)

相続の開始を知った日から3ヶ月が経過すると、単純承認したとみなされるので、相続放棄は認められないです。

1章で説明したとおり、相続放棄の約束をしただけでは、相続放棄の効力は発生しません。相手が約束を守らなければ、相続放棄の効力が発生することはないです。

 

5.相続分の放棄は口約束でも効力が発生する

相続放棄と似た言葉に「相続分の放棄」があります。

相続分の放棄
自分の相続分を他の相続人に放棄すること

相続放棄と相続分の放棄は別の法律行為なので、相続分の放棄なら口約束でも効力が発生します。

ただし、相続分の放棄についても、相続発生の前後で結論が違うので注意してください。

5-1.相続分の放棄は意思表示だけで効力発生

相続分の放棄は、相続人の意思表示だけで効力が発生します。

つまり、相続人同士の口約束や書面での合意書作成でも、相続分の放棄は有効に成立しています。

相続放棄のように家庭裁判所の手続きは不要ですし、3ヶ月以内という期間制限もありません。

ちなみに、他の相続人が相続放棄の約束をしていた場合、相続分の放棄と考える余地はあります。

5-2.相続発生前にした相続分の放棄は無効

相続発生前にした相続分の放棄は無効となります。

なぜなら、相続分の放棄ができるのは相続人だからです。相続発生前は相続人ではないので、相続分の放棄も認められません。

また、同じ理由で、相続発生前に相続分の放棄を約束しても無効になります。

 

6.さいごに

今回の記事では「口約束による相続放棄」について説明しました。

相続放棄は家庭裁判所に申述書が受理されなければ、絶対に認められません。

したがって、口約束では相続放棄の効力は発生しません。当事者間で書面を作成していても結論は同じです。

相続発生前に相続放棄の約束をしても、法律上は何の効力もありません。たとえ約束をしていても、相続を選らぶことができます。

一方、相続発生後に相続放棄の約束をするのは有効ですが、守るかどうかは別問題です。相手が約束を守らなければ、相続放棄の効力は発生しません。

相続放棄の効力発生は間違えやすいので、正しい情報を知っておいてくださいい。

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