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【相続放棄の手続きは家庭裁判所】その他の方法では成立しない

相続放棄の手続き
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相続放棄は家庭裁判所の手続きであり、その他の方法では成立しません。

相続人同士で書面の作成、債権者へ放棄の意思表示等では不成立です。

相続放棄の手続きは、相続の開始を知った日から3ヶ月以内の期間制限があり、期間を1日でも経過すると単純承認とみなされます。書類の準備にも時間がかかるので、後回しにするのは危険です。

今回の記事では、相続放棄の手続きについて説明しているので、しっかりと確認しておいてください。

目次

1.相続放棄は家庭裁判所の手続き

相続放棄するには、家庭裁判所の手続きが必要になります。

以下は、民法の条文です。

(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法938条)

相続放棄する人は、家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出してください。

家庭裁判所の手続き以外で、相続放棄はできません。

1-1.その他の方法では相続放棄できない

家庭裁判所の手続き以外で、相続放棄は成立しない

その他の方法(家庭裁判所の手続き以外)で、相続放棄は成立しません。

以下は間違えやすい方法です。

  • 相続人同士の話し合い
  • 書面を作成して署名捺印
  • 債権者に相続放棄の意思表示

家庭裁判所の手続き以外で、相続放棄する方法はないと覚えておきましょう。

相続人同士の話し合いでは成立しない

相続人同士の話し合いで、相続放棄の意思表示をしても、相続放棄は成立しません。

相続人同士で遺産分割協議しているのと同じです。

書面を作成して署名捺印しても成立しない

相続人同士で書面を作成して、署名捺印(実印)をしても、相続放棄は成立しません。

相続人の間では有効ですが、あくまでも別の法律行為です。

債権者に相続放棄の意思表示

債権者に意思表示をしても、相続放棄は成立しません。

意思表示後に正式な手続きをしなければ、借金の相続が確定します。

1-2.手続きをする管轄家庭裁判所は決まっている

相続放棄の管轄は住民票上の住所で判断

相続放棄の申述書を提出する先は、亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

最後の住所地は実際に住んでいた場所ではなく、住民票の住所で判断します。あくまでも、裁判所の管轄を決めているだけです。

【事例1】
被相続人が大阪市の病院で亡くなった場合。

大阪市の病院に長期間入院していても、住民票の住所が堺市であれば、堺市を管轄する家庭裁判所に相続放棄申述書を提出します。

どこで死亡したかではなく、どこに住民票があったかで判断します。

【事例2】
被相続人が単身赴任先で亡くなった場合。

単身赴任先の横浜市で亡くなっても、住民票が大阪市であれば、大阪市を管轄する家庭裁判所に相続放棄申述書を提出します。

単身赴任の期間に関わらず、住民票の住所で管轄家庭裁判所を判断します。

亡くなった人の住民票は、手続きの必要書類となるので、忘れずに取得してください。

1-3.相続放棄の手続費用は限られる

相続放棄の手続費用は限られており、裁判所手数料は800円です。

ただし、裁判所手数料は現金で支払うのではなく、収入印紙で800円を納めます。

収入印紙は郵便局でも購入でき、400円を2枚購入するのが分かりやすいです。
※800円という額面はない。

裁判所手数料以外では、家庭裁判所に予納郵券を納める必要があります。

予納郵券の額は約470円です。管轄家庭裁判所により金額が違うので、事前に確認しておきましょう。

1-4.相続放棄の手続きは郵送でも可能

管轄家庭裁判所が遠方の場合や、平日の昼間に家庭裁判所へ行けない場合、郵送でも手続きは可能です。

例えば、大阪に住んでいる相続人が、東京の家庭裁判所に直接提出するのは非現実的なので、郵送で申述書を提出して問題ありません。

窓口または郵送どちらの提出方法であっても、相続放棄の効力に違いはないです。

2.相続放棄の手続期間は決まっている

相続放棄の手続期間は、法律により3ヶ月以内と決まっています。

以下は民法の条文です。

(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
出典:e-Govウェブサイト(民法915条)

上記の条文は重要なので、しっかりと確認しておいてください。

2-1.相続の開始を知った日から3ヶ月以内

相続放棄の手続きは相続の開始を知った日から3ヶ月以内

相続放棄の手続期間は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。

知った日からなので、相続の開始を知らなければ3ヶ月はスタートしません。

例えば、亡くなった人と疎遠で死亡を知らなかった場合。

亡くなった人と疎遠であれば、死亡を知らなくても不思議はありません。

死亡日から何年経過していても、知った日から3ヶ月以内であれば、相続放棄できます。

相続の開始を知らないなら、手続期間は過ぎていないので、勘違いしないように注意してください。

2-2.期限を1日でも過ぎると手続きはできない

相続の開始を知った日から3ヶ月以内に相続放棄しなければ、単純承認したとみなされます。

単純承認

無条件ですべてを相続すること

たとえ1日でも期限を過ぎると、相続放棄はできません。絶対に期限を経過しないように注意してください。

2-3.手続期間は申立てにより延長もできる

相続放棄の手続期間は3ヶ月以内ですが、申立てにより延長もできます。

ただし、期間延長の申立ても、相続の開始を知った日から3ヶ月以内が期限です。

また、期間延長の申立てをしても、認めるかどうかは家庭裁判所の判断になります。期間延長の理由によっては、却下される可能性もあります。

3.相続放棄の手続きに必要な書類

相続放棄の手続き書類は申述書と戸籍

相続放棄の手続きには、必要書類が2つあります。

  • 相続放棄の申述書
  • 戸籍等一式

上記を用意して、家庭裁判所に提出します。

3-1.必要書類1つ目は申述書

相続放棄をするには、家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。家庭裁判所の窓口で意思表示をしても、相続放棄にはなりません。

相続放棄の申述書は、家庭裁判所の窓口やホームページで取得できます。

相続放棄の申述書に必要事項を記載し、収入印紙800円分を貼り付けて提出してください。

3-2.必要書類2つ目は戸籍等一式

相続放棄の申述書を提出する際には、戸籍等を添付書類として一緒に提出します。

なぜなら、相続放棄できるのは相続人だけなので、戸籍等で相続関係を証明する必要があるからです。

相続放棄に必要な戸籍等は、相続人ごとに違います。

【事例1】
子どもが相続放棄する場合は、以下の戸籍等を提出します。

  • 親の戸籍  |死亡を証明
  • 親の住民票 |管轄を証明
  • 子どもの戸籍|相続を証明

親の戸籍と子どもの戸籍が同じであれば、子どもの戸籍は省略できます。

【事例2】
弟が相続放棄する場合は、以下の戸籍等を提出します。

  • 兄の戸籍 |死亡と先順位を証明
    ※出生から死亡まで全部
  • 兄の住民票|管轄を証明
  • 親の戸籍 |死亡を証明
  • 弟の戸籍 |相続を証明

兄の出生から死亡までの戸籍で、先順位相続人(兄の子)の有無を証明します。

戸籍は本籍地の役所でしか取得できないので、本籍地が遠方の場合は気を付けてください。
*郵送でも取得できます。

相続放棄に必要な戸籍等については、下記の記事を参考にしてください。

4.相続財産の内容に関わらず手続きは同じ

相続財産の内容は亡くなった人により違います。不動産(建物・土地)を残す人もいれば、負債(借金)を多く残す人もいます。

ですが、相続放棄の手続きは、相続財産の内容に関わらず同じです。

4-1.相続財産が不動産(建物・土地)でも変わらない

亡くなった人の相続財産が建物や土地であっても、相続放棄の手続きに変わりはありません。

不動産の種類(戸建・マンション・宅地・田畑等)や評価額による違いもないです。

ちなみに、相続財産に不動産が含まれていても、不動産登記事項証明書は不要なので、法務局で取得する必要はありません。

4-2.負債(借金)の額は手続きに影響しない

相続放棄の理由として借金は一番分かりやすいですが、金額はまったく関係ありません。

負債が100万円でも10万円でも、家庭裁判所は手続きを認めてくれます。

たとえ負債が0円であっても、相続放棄はできるので安心してください。

5.相続放棄の手続きを流れで確認

相続放棄の流れは5つに分かれる

相続放棄の流れは5つに分かれます。

STEP
相続の開始を知った日

相続の開始を知った日から、3ヶ月の期間はスタートします。

死亡日から何ヶ月経過していても、相続の開始を知らなければ、3ヶ月はスタートしていません。

STEP
必要な戸籍等の収集

家庭裁判所に相続人であることを証明するため、戸籍等一式を収集します。

相続人によって必要な戸籍等は違うので、収集にかかる時間も違います。後回しにせず収集を開始しましょう。

STEP
管轄家庭裁判所に提出

必要書類である申述書と戸籍等を収集したら、管轄家庭裁判所に提出します。

相続の開始を知った日から3ヶ月以内に提出できれば問題ありません。

提出方法は窓口または郵送どらでも大丈夫です。

STEP
家庭裁判所から照会書が届く

家庭裁判所に申述書を提出すると、照会書が届きます。
※省略されるケースあり。

照会書には質問が記載されているので、回答して返送してください。

STEP
受理通知書が送付される

問題なく手続きが終了すれば、家庭裁判所から受理通知書が送付されます。

受理通知書が届けば、相続放棄の手続きは終了です。

より詳細な流れについては、下記の記事を参考にしてください。

6.相続放棄の手続きは専門家に依頼できる

相続放棄の手続きは、専門家に依頼することも可能です。

相続放棄の準備をする時間が取れない人や、集める戸籍が多く面倒な人は、専門家への依頼を検討してください。

6-1.司法書士に相続放棄を依頼する費用

司法書士に相続放棄の手続きを依頼した場合、専門家報酬が発生します。

専門家報酬は自由設定なので、金額に決まりはありません。高く設定している人もいますし、低く設定している人もいます。

あえて相場を記載するなら、約3万円から5万円です。ただし、事例によっても金額は変わるので、依頼する際に確認してください。

6-2.弁護士に相続放棄を依頼するケース

私は司法書士ですが、弁護士に相続放棄の依頼をした方が良いケースも説明しておきます。

  • 亡くなった人の債権者と揉めている
  • 賃貸物件の連帯保証人に法外な請求がある

上記に該当するなら、初めから弁護士に依頼した方が良いでしょう。

注意相続放棄の費用とは別に費用が発生します。

亡くなった人の債権者と揉めている

原則として、相続放棄している相続人に対して、取り立てをする債権者はいません。
※私が依頼を受けたケースでは1人もいない。

ですが、亡くなった人が悪質な債権者から借金をしていた場合、相続放棄しても家族に請求する可能性はあります。

あるいは、個人間の貸し借りで、貸主が相続放棄に納得せず、家族に対してしつこく請求するケースも考えられます。

債権者が法律を無視するような人であれば、弁護士に依頼した方が問題を解決しやすいです。

賃貸物件の連帯保証人に法外な請求がある

亡くなった人の相続人が賃貸物件の連帯保証人になっていた場合、相続放棄しても連帯保証人として請求されます。

そして、亡くなった人が孤独死などをしていると、賃貸物件の退去費用が高額になります。不動産会社によっては、法外な金額を請求してきます。

賃貸物件の退去費用で不動産会社と交渉する必要があるので、初めから弁護士に相談した方がよいでしょう。

7.相続放棄の手続きで気を付ける点

相続放棄の手続きで気を付ける点も説明しておきます。

  • 相続放棄の手続きは生前にできない
  • 戸籍の収集は時間との勝負
  • 相続人が複数なら相続放棄はそれぞれ必要
  • 個人で手続きするなら勉強も忘れずに

7-1.相続放棄の手続きは生前にできない

相続放棄の手続きは生前にできない

相続放棄できるのは相続人だけなので、生前(相続発生前)に手続きはできません。

家庭裁判所に申述書を提出しても、相続発生前を理由に却下されます。

相続放棄の手続きは、相続の開始を知った日から3ヶ月以内です。

7-2.戸籍(書類)の収集は時間との勝負

戸籍(書類)の収集は時間との勝負になります。

なぜかというと、3ヶ月の期間を1日でも経過すると、家庭裁判所は相続放棄の申述を却下するからです。

亡くなった人の兄弟姉妹や甥姪が相続放棄する場合、必要な戸籍等も多く時間がかかるので、後回しにせず収集を開始してください。

7-3.相続人が複数なら個々に必要

相続放棄するかは各相続人が決めます。

したがって、相続放棄の手続きも各相続人が行ないます。申述書も各相続人がそれぞれ作成します。

他の相続人が相続放棄しても、あなたの相続放棄は別に必要です。

相続の開始を知った日も相続人ごとに判断するので、間違えて3ヶ月経過しないように注意してください。

7-4.個人で手続きをするなら勉強も忘れずに

個人で相続放棄の手続きをするなら、相続放棄の勉強も忘れずにしてください。

なぜなら、相続放棄の効力を間違えている人が多いからです。

相続放棄は借金を放棄する手続きではなく、相続を放棄する手続きになります。

相続放棄の手順だけ確認しても、内容は理解できません。個人で相続放棄するなら、勉強もしておきましょう。

8.まとめ

今回の記事では「相続放棄の手続き」について説明しました。

相続放棄は家庭裁判所の手続きであり、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に申述書を提出して行います。その他の方法では相続放棄できません。

相続人であることを証明するために、戸籍等も一緒に提出します。必要な戸籍は相続人によって違うので、相続人によっては収集に時間がかかります。

相続放棄の手続きは専門家に依頼できるので、時間が確保できない人は依頼も検討してください。

相続放棄の手続きを自分でするなら、相続放棄の勉強も忘れずにしておきましょう。

相続放棄の手続きに関するQ&A

相続放棄の手続きはどこに相談すれば良いですか?

当事務所に相談して問題ありません。

兄弟姉妹の相続放棄は手間がかかりますか?

本籍の移転歴で手間は変わります。地元ですべて取得できれば手間はかからないです。

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