相続放棄の管轄は最後の住所地にある家庭裁判所|死亡地ではない

相続放棄の管轄
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相続放棄の管轄(申述書を提出する家庭裁判所)は、亡くなった人の最後の住所地で決まります。申述人の住所地や亡くなった場所ではありません。

相続放棄を管轄する家庭裁判所を表した図

最後の住所地は住民票上の住所で判断するので、亡くなった人の住所が分かる場合は住民票、分からない場合は戸籍の附票を取得してください。

最後の住所地が確認できたら、裁判所のホームページで管轄家庭裁判所を確認します。確認できたら窓口または郵送で相続放棄の申述書を提出しましょう。

今回の記事では、相続放棄の管轄について説明しているので、確認する際の参考にしてください。

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目次

1.相続放棄の管轄は最後の住所

相続放棄の管轄は被相続人の住所で決まる

相続放棄の管轄は、法律により定められています。

以下は、家事事件手続法の条文です。

第二百一条 相続の承認及び放棄に関する審判事件(別表第一の八十九の項から九十五の項までの事項についての審判事件をいう。)は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

出典:e-Govウェブサイト(家事事件手続法201条)

「相続が開始した地」がどこかというと、民法により定められています。

以下は、民法の条文です。

(相続開始の場所)
第八百八十三条 相続は、被相続人の住所において開始する。

出典:e-Govウェブサイト(民法883条)

上記2つの法律をまとめると、被相続人(亡くなった人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所が、相続放棄の申述書を提出する家庭裁判所になります。

ですので、相続放棄の管轄を調べるには、亡くなった人の住民票を確認する必要があります。

1-1.相続人(申述人)の住所ではない

相続放棄の管轄は被相続人の住所地で決まるので、相続人(申述人)の住所地は関係ありません。

例えば、相続人の住所が大阪であっても、亡くなった人の住所が東京であれば、管轄は東京の家庭裁判所になります。

相続放棄に関係するのは、亡くなった人の最後の住所です。

相続人の住所地は相続放棄に関係しないので、勘違いしないよう注意してください。

1-2.亡くなった場所が住所とは限らない

亡くなった場所と住所が一致するとは限りません。

例えば、入院先の病院で亡くなった場合、死亡した場所は病院になります。ですが、住民票上の住所とは一致しません。

あくまでも、最後の住所地で管轄を決めるだけなので、亡くなった場所は関係ありません。

住民票または戸籍附票を取得して、最後の住所を確認してください。

1-3.住民票上の最後の住所で決まる

相続放棄の管轄は、住民票上の最後の住所で決まります。

たとえ実際に住んでいた場所が違っても、管轄は住民票の住所で判断するので注意してください。

例えば、亡くなる1年前に東京へ引っ越しているが、住民票は大阪市に残している場合です。

実際の住所は東京ですが、相続放棄の管轄は住民票で判断するので、大阪家庭裁判所が管轄となります。

実際に住んでいた場所ではなく、最後の住民票上の住所で管轄は決まります。

2.相続放棄の管轄を証明する書類

相続放棄の管轄は住民票または戸籍の附票で証明する

被相続人の最後の住所地は、亡くなった人の住民票(戸籍の附票)を取得して確認します。

ちなみに、相続放棄の添付書類として住民票(戸籍の附票)を提出するのは、家庭裁判所が管轄を確認するためです。

2-1.住所地が分かるなら住民票を取得

亡くなった人の住所が分かっているなら、住民票を取得してください。

窓口で取得する場合は別ですが、郵送で取得する場合は注意点が2つあります。

  • 自治体により発行手数料が違う
  • 定額小為替が必要になる

自治体により発行手数料が違う

住民票の発行手数料は、自治体により違うので注意してください。

一般的には300円ですが、200円や400円の自治体もあります。

あなたが住んでいる自治体と同じとは限らないので、郵送で請求する場合は事前に確認しておいてください。

定額小為替が必要になる

郵送で請求する場合は、現金の代わりに定額小為替が必要になります。
※クレジット決済対応の自治体も存在する。

定額小為替の購入先は、ゆうちょ銀行・郵便局の貯金窓口です。土曜・日曜は購入できないので、平日しか購入できません。

また、定額小為替の発行手数料として、1枚につき200円必要です。

2-2.住所地が不明なら戸籍の附票を取得

亡くなった人と疎遠だと、最後の住所地が分からないケースもあります。

最後の住所が分からなければ住民票は取得できないので、代わりに「戸籍の附票」を取得してください。

戸籍の附票

戸籍に記載されている人の住所が記載された書面

戸籍の附票にも住所は記載されているので、最後の住所地を証明する書類になります。

相続放棄申述書を提出する際に、戸籍の附票も一緒に提出してください。

戸籍の附票が取得できる役所

戸籍の附票は、本籍地のある市役所等で取得可能です。

例えば、被相続人の死亡戸籍が品川区にあるなら、戸籍の附票も品川区役所で取得します。

戸籍の附票で最後の住所を証明する場合は、死亡戸籍を取得する際に一緒に取得しておきましょう。

発行手数料は役所により違う

戸籍の附票の発行手数料は、自治体により違うので注意してください。

一般的には300円ですが、200円や400円の自治体もあるので、郵送で請求する場合は事前に確認しておいてください。

3.相続放棄の管轄家庭裁判所を調べる

住民票(除票)または戸籍の附票で最後の住所が分かったら、相続放棄の管轄家庭裁判所を調べます。

調べ方は簡単で、裁判所のホームページで確認するだけです。

3-1.裁判所のホームページで確認できる

相続放棄の管轄は裁判所のホームページで確認できます。

  1. 裁判所のホームページに移動
  2. 該当する都道府県を選択
  3. 該当する市区町村を探す
  4. 地方・家庭裁判所の欄を確認

①裁判所のホームページに移動

まずは、裁判所のホームページに移動します。

上記をクリックすると裁判所のホームページに移動できます。ネットで検索する場合は「裁判所の管轄区域」と検索すれば見つかります。

②該当する都道府県を選択

次に、該当する都道府県を選択します。

以下は、裁判所のホームページに移行した後の画面です。

裁判所の管轄区域を調べる画面の画像
裁判所ホームページ|裁判所の管轄区域

北海道から順番に並んでいるので、該当する都道府県を見つけたら、選択(クリック)してください。

③該当する市区町村を探す

続いて、該当する市区町村を探します。

以下は、東京都を選択した後の画面です。

東京都内の管轄区域表 | 裁判所

東京都の自治体が並んでいるので、最後の住所地に該当する自治体を探してください。

④地方・家庭裁判所の欄を確認

最後に、地方・家庭裁判所の欄を確認します。

以下は、最後の住所が東京都品川区だった場合です。

裁判所ホームページ|東京都内の管轄区域表

地方・家庭裁判所の欄を確認すると、東京家庭裁判所と記載されています。

したがって、相続放棄の管轄は東京家庭裁判所です。

3-2.相続放棄の管轄が支部の場合もある

被相続人の最後の住所地によっては、家庭裁判所の支部が管轄の場合もあります。

例えば、最後の住所地が大阪府堺市だった場合です。

以下は、堺市が記載されている箇所です。

裁判所ホームページ|大阪府内の管轄区域表

地方・家庭裁判所の欄を確認すると、支部が設置されており、大阪家庭裁判所堺支部と記載されています。
※支部が設置されている場合は支部が管轄。

したがって、相続放棄の管轄は大阪家庭裁判所堺支部です。

3-3.ホームページを見ても分からなければ電話

裁判所のホームページを読んでも管轄が分からない場合は、家庭裁判所に電話して確認しましょう。

最後の住所が東京都なら東京家庭裁判所、大阪府なら大阪家庭裁判所に電話すれば、管轄を教えてもらえます。

家庭裁判所に電話する場合、繋がりにくい時間帯も存在するので、時間を空けて電話するなどしてください。

4.管轄家庭裁判所に申述書を提出

管轄家庭裁判所が確認できたら、申述書と添付書類を用意して提出してください。

申述書の提出方法は、窓口または郵送どちらでも大丈夫です。

4-1.家庭裁判所の窓口で提出する

管轄家庭裁判所が近くにあるなら、窓口で提出するのが簡単でしょう。

ただし、受付時間は家庭裁判所によって少し違うので、行く前に確認した方が安全です。

窓口で提出する場合のポイントは2つあります。

  • 窓口に提出するのは誰でもよい
  • 収入印紙や予納郵券は事前に購入

窓口に提出するのは誰でもよい

相続放棄の申述書を作成するのは相続人(依頼を受けた専門家)ですが、窓口に提出するのは相続放棄する人以外でも大丈夫です。

例えば、相続人が仕事で窓口に行けないなら、家族が代わりに提出しても問題ありません。

第3者が提出する場合でも、委任状等は不要です。窓口に申述書を提出するのは代理行為ではなく、使者としての行為になるからです。

収入印紙や予納郵券は事前に購入

相続放棄の申述書を提出する際は、収入印紙(800円分)と予納郵券を事前に購入しておいてください。

なぜなら、提出先の家庭裁判所に、印紙や切手の販売所があるとは限らないからです。
※販売所の無い家庭裁判所が多い。

収入印紙と予納郵券は郵便局の窓口で購入できるので、家庭裁判所に行く前に購入しておきましょう。

4-2.申述書は郵送でも提出できる

相続放棄の申述書は郵送でも提出できます。

家庭裁判所の窓口に行く時間の無い人や、家庭裁判所が遠方にある場合などは郵送で提出します。

ただし、申述書を郵送で提出する場合は、以下の2点に注意してください。

  • 配達日数を計算に入れておく
  • 追跡可能な郵送方法にする

郵送した申述書が3ヶ月以内に到着するか、必ず確認してから発送してください。遠方に普通郵便で発送すると3日~4日かかります。

また、申述書が家庭裁判所に到着しても連絡は来ないので、追跡可能な郵送方法にした方が良いです。私はレターパックプラスで提出しています。

申述書を郵送で提出する場合は、以下の記事を参考にしてください。

5.相続放棄の管轄に関する5つの注意点

相続放棄の管轄に関する注意点を5つ説明します。

ご自身で相続放棄の手続きをする場合は、以下を確認しておいてください。

  • 取得した住民票が死亡時か確認する
  • 住民票や附票が廃棄されている場合
  • 住民票や戸籍附票は1枚で大丈夫
  • 最後の住所地が外国だと管轄が存在しない
  • 管轄が分からなくても3ヶ月以内

5-1.取得した住民票が死亡時か確認する

亡くなった人の住民票を取得した場合、死亡時の住民票かどうか確認してください。

なぜなら、自分の知っていた住所から移転している人もいるからです。住所移転でも住民票は除票になるので、管轄を間違える可能性があります。

実際、私が依頼を受けたケースでも、依頼人から聞いた住所で住民票を取得したら、亡くなる前に住所を変更しており、死亡時の住民票とは違いました。

死亡時の住民票であれば、住民票の備考欄等に死亡という文字が記載されています。

亡くなった人と疎遠だった場合、取得した住民票が死亡時かどうか確認しておいてください。

5-2.住民票や戸籍附票が廃棄されている

被相続人の死亡から年数が経過していると、住民票や戸籍附票が廃棄されており、取得できないケースもあります。

なぜなら、かつては住民票や戸籍附票の保存期間が5年だったからです。
※法改正により150年に延長。

例えば、被相続人の死亡から10年後に相続の開始を知った場合、住民票や戸籍附票が廃棄されている可能性があります。

住民票や戸籍附票が廃棄されている場合は、以下の書面が取得できないか確認してください。

  • 死亡届記載事項証明書
  • 不動産登記事項証明書

死亡届には住民票の住所が記載されるので、死亡届記載事項証明書を取得すれば、死亡時の住民票の住所が分かります。

不動産に関するお知らせで死亡を知った場合は、不動産登記事項証明書を取得して、登記簿上の住所を最後の住所として相続放棄するケースもあります。

私は両方のケースを経験済みですが、相続放棄は無事に認められています。住民票や戸籍附票が廃棄されていても、相続放棄はできるので安心してください。

5-3.管轄を証明する書面は1枚で大丈夫

相続放棄の管轄を証明する書面は1枚で大丈夫です。

したがって、住民票または戸籍附票のどちらかを添付すれば問題ありません。

また、複数人の相続人が相続放棄する場合、すでに提出済みの書面は省略できるので、住民票(戸籍附票)を複数枚提出する必要はありません。

住民票または戸籍附票のどちらを提出するかは、申述人が自由に決めて問題ないです。

5-4.最後の住所地が外国だと管轄が存在しない

亡くなった人の最後の住所地が外国だった場合、原則として相続放棄できません。

なぜなら、管轄する家庭裁判所が存在しないからです。

例外として、日本で相続放棄する事情がある場合は、その旨を説明したうえで手続きできます。

例えば、日本で借金をしていた人が、亡くなる3年前に外国へ移住していた場合です。最後の住所地が日本ではないので、管轄する家庭裁判所が存在しません。

ですが、日本に借金が存在する以上、相続放棄する必要があります。

借金が存在する旨を上申書等で説明したうえで、東京家庭裁判所に申述書を提出してください。

外国が最後の住所地だった場合、事情がなければ相続放棄できないので注意してください。

5-5.管轄が分からなくても3ヶ月以内

相続放棄の管轄が分からなくても、3ヶ月以内という提出期間は変わりません。

例えば、亡くなった人と疎遠だったので、住民票(戸籍の附票)の取得に時間がかかったとしても、3ヶ月以内に申述書を提出する必要があります。

相続の開始を知った日から3ヶ月経過すると、単純承認したとみなされ、申述書を提出しても却下されます。

亡くなった人と疎遠だと、管轄を調べるにも時間がかかるので、後回しにしないよう注意してください。

6.相続放棄を司法書士に依頼するメリット

相続放棄を司法書士に依頼するメリットは複数ありますが、管轄を気にする必要がない点も挙げられます。

  • 戸籍や住民票を探して取得
  • 相続放棄申述書の作成
  • 家庭裁判所への提出
  • 上申書(3ヶ月経過)の作成

司法書士に依頼しておけば、住民票や戸籍の附票も取得してくれますし、管轄家庭裁判所にも提出してくれます。

司法書士に依頼する人は、相続放棄の管轄がどこかを気にする必要もありません。

ご自身で管轄を調べるのに不安があれば、相続放棄の依頼を検討してみてください。

相続放棄の依頼を検討してみる

7.まとめ

今回の記事では「相続放棄の管轄」について説明しました。

相続放棄の管轄(申述書の提出先)は、亡くなった人の最後の住所地で決まります。申述人の住所地ではありません。

最後の住所地は住民票または戸籍附票で証明するので、取得しやすい方で大丈夫です。住民票は住所地の市役所等で、戸籍附票は戸籍の存在する市役所等で取得できます。

市役所等が遠方の場合や、窓口に行く時間が無い場合は、郵送でも取得可能です。定額小為替が必要になるので、前もって準備しておいてください。

最後の住所地が確認できたら、裁判所のホームページで管轄を調べてください。申述書の提出期限は3ヶ月以内なので、早めに管轄を調べて提出しましょう。

相続放棄の管轄に関するQ&A

住民票に本籍地の記載は必要ですか?

記載が無くても相続放棄できています。

住民票と戸籍附票なら、どちらを提出した方が認められやすいですか?

変わらないです。管轄を確認する書面なので、審判には影響しません。

管轄を間違えて提出すると却下されますか?

管轄家庭裁判所に移送されるはずです。

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