相続財産に不動産(実家)があっても、相続放棄を選んでいる人が増えています。
- 実家が田舎にあるので相続放棄
- 実家と縁を切っているので相続放棄
- 実家がマイナス財産なので相続放棄
他の相続人(兄弟姉妹)が相続するのであれば、実家を相続放棄しても問題ありません。
ただし、相続人全員が相続放棄すると、実家の管理義務が問題として残ります。
今回の記事は、実家の相続放棄について説明しているので、相続放棄を検討しているなら参考にしてください。
目次
1.実家を相続放棄する人は増加している
昔に比べると実家を相続放棄する人は増加しています。
なぜかというと、相続放棄の件数自体が増加しているからです。
※毎年20万人以上が相続放棄しています。
実家を相続放棄する理由はさまざまですが、大きく分けると3つあります。
- 実家が田舎にあるので相続放棄
- 実家と縁を切っているので相続放棄
- 実家がマイナス財産なので相続放棄
1-1.実家が田舎にあるので相続放棄
地方から出てきて何十年も生活している人は、親が亡くなっても実家に戻る可能性は低いです。
そのため、実家で親と同居している兄弟姉妹がいるなら、実家を譲る意味もあり相続放棄しています。
相続放棄すると他の財産も取得できないのですが、預貯金が100万円ぐらいであれば葬儀費用で消費されます。実家で暮らしていた兄弟姉妹が葬儀の段取りをするので、よほど預貯金が高額でなければ残らないと思います。
相続放棄しなくても問題無いと思われるかもしれませんが、実家を相続しない場合でも相続手続(遺産分割協議)には参加しなくてはいけません。煩わしい手続きを嫌がって相続放棄する人もいます。
ちなみに、実家を兄弟姉妹と共有にするのは、デメリットが多いのでお勧めできません。
関連記事を読む『不動産(実家)を共有名義にするのはデメリットが多い』
1-2.実家と縁を切っているので相続放棄
実家を相続放棄するというよりは、実家と縁を切っているので相続放棄する人も多いです。
「親と縁を切っているので相続財産を知りません
「実家が残っているかどうかも知りません」
親と縁を切っていれば、親の財産について知らないのは当然です。
相続放棄の申述書に記載するのは、「知っている相続財産」なので知らなくても問題ありません。「不明」や「知らない」と記載しても、相続放棄は受理されます。
関連記事を読む『相続放棄は絶縁状態の家族が亡くなっても必要』
1-3.実家がマイナス財産なので相続放棄
実家がマイナス財産なので、相続放棄を検討している人もいます。
なぜなら、実家は建築してから数十年以上経過していることが多く、資産価値がほとんどないことも珍しくないからです。
実家に住む人にとっては価値はありますが、住まない人には価値がありません。その他の財産が無ければ、取り壊し費用の分だけマイナス財産となります。
また、亡くなった人の借金が後から見つかる可能性もあるので、実家に資産価値が無ければ相続するメリットは少ないです。
ただし、実家を相続放棄しても、実家の管理義務の問題は残ります。
2.実家を相続放棄しても管理義務の問題は残る
他の相続人が実家を相続する場合は問題ありません。
ですが、あなたを含めて相続人全員が相続放棄すると、実家の管理義務が問題として残ります。
相続放棄後の管理義務については、下記の記事で説明しています。
関連記事を読む『【相続放棄後の管理義務】法改正後は責任者が明確になる』
2-1.実家の解体費用と相続財産管理人の選任費用を比べる
実家の管理義務が残ってしまうと、最終的には相続財産管理人を選任することになります。
相続財産管理人が選任されると、実家の管理義務は相続財産管理人が引き継ぎます。
ただし、相続財産管理人を選任するには、申立人が予納金を負担する必要があります。
予納金の額は相続財産の内容によって違うのですが、50万円から100万円ぐらいと言われています。
※家庭裁判所によっても違います。
実家の解体費用と比べて予納金の額が低ければ、相続放棄して相続財産管理人を選任する方が金銭面では得があります。
関連記事を読む『相続財産管理人の費用は3つに分かれる』
2-2.相続放棄後に実家の片付けをするのは保存行為
相続放棄後に実家の片付けをするのは、保存行為なので管理義務に含まれています。
ゴミを処分するのも問題ないですし、草むしりや枝切りも保存行為に該当します。
ただし、相続放棄した後に実家を取り壊すことはできません。実家の取り壊しは処分行為に該当します。
あくまでも実家の保存行為のみ認められているので、相続財産管理人の選任申立てを検討してください。
関連記事を読む『相続放棄は財産の保存行為をした場合でも認められる』
3.実家を相続放棄しても相続財産以外は持ち出せる
実家を相続放棄しても、実家の中にある相続財産以外の物は持ち出せます。
例えば、以下の物が該当します。
- 自分の私物
- 仏壇や位牌等(祭祀財産)
- 家族写真(財産的価値が無い)
実家に自分の私物を置いていれば、相続放棄しても自分の財産なので持ち出せます。
仏壇や位牌は相続財産ではなく祭祀財産に該当するので、相続放棄しても持ち出せます。
家族写真等は財産的価値が無いので、形見分けとして貰っても大丈夫です。
何が相続財産に該当するか不明であれば、専門家に相談してみてください。
4.さいごに
亡くなった親が不動産(実家)を所有していても、相続放棄する人は増えています。
- 実家が田舎にあるので相続放棄
- 実家と縁を切っているので相続放棄
- 実家がマイナス財産なので相続放棄
上記の理由に共通しているのは、相続放棄する人が実家に住んでいない点です。
相続放棄して他の兄弟姉妹に実家を譲る人もいれば、実家と縁を切っているので相続放棄する人もいます。
ただし、相続人全員が相続放棄する場合は、実家の管理義務が問題として残ります。
実家の解体費用や相続財産管理人の選任費用等を比べたうえで、相続放棄を判断した方が良いです。