亡くなった親と絶縁していても、子は相続人になるので権利義務を引き継ぎます。
ただし、死亡を知った日から3ヶ月以内に、申述書を家庭裁判所に提出すれば、子であっても相続人にならないです。
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借金や不動産があっても相続しませんし、遺産分割協議に参加する必要もありません。
相続放棄しない限り絶縁していても相続人なので、縁を切りたいなら手続きをしてください。
今回の記事では、絶縁していた親の相続放棄について、詳しく説明しているので参考にしてください。
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1.親と絶縁していても相続人になる
亡くなった親と絶縁していても、子どもは相続人になります。
絶縁は当事者間の問題であり、誰が相続人になるかとは無関係だからです。
- 親子の絶縁状が公正証書でも相続人
- 親に会ったことがなくても相続人
- 親の戸籍から分籍していても相続人
- 再婚相手の養子になっていても相続人
関連記事を読む『法定相続人の第1順位は子ども|相続分の割合は全員同じ』
1-1.親子の絶縁状が公正証書でも相続人
家族と絶縁する際に絶縁状を作成する人もいます。
- 絶縁状
-
付き合いを絶つと宣言した書面のこと
ただし、絶縁状に法的な効力はありません。
たとえ親との絶縁状を公正証書で作成していても、親が亡くなれば子は相続人となります。
令和〇年〇月〇日
〇〇 〇〇 様
絶縁状
私(〇〇〇〇)は、あなたとの親子の縁を切ります。
あなたの財産も不要なので、相続放棄します。
〇〇 〇〇 ㊞
絶縁状に「相続放棄」という言葉が書いてあっても、法律上の効力は一切ないので注意してください。
1-2.親に会ったことがなくても相続人
亡くなった親に一度も会ったことが無い人もいます。
ですが、親が亡くなれば子は相続人です。面識の有無は関係ありません。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |長女
相続財産|借金300万円
父親と母親は婚姻しておらず、父親(長女を認知)とは一度も会ったことがない。
借金の督促状が届き、父親が亡くなったことを知った。
郵送物等に相続人という記載があれば、無視せずに内容を確認してください。
1-3.親の戸籍から分籍していても相続人
親と絶縁するために、親の戸籍から分籍している人もいます。
- 戸籍の分籍
-
親の戸籍から抜けて、自分を筆頭者とする別の戸籍を作る手続き
ただし、戸籍の分籍をしても、相続関係に影響はなく、親が亡くなれば子は相続人です。
分籍とは戸籍上の手続きであり、絶縁の効力が発生するわけではありません。
親の戸籍から抜けていても、相続放棄の手続きは必要になります。
1-4.再婚相手の養子になっていても相続人
父親と母親が離婚した後に、子を引き取った母親(父親)が再婚している場合、再婚相手と養子縁組しているのは珍しくありません。
子が幼少の頃に再婚していれば、親とは実親ではなく養親(再婚相手)という認識の人もいます。
ですが、絶縁期間が何十年だったとしても、実親が亡くなれば子は相続人です。
親の再婚相手と養子縁組をしていても、実親の相続放棄は必要になります。
関連記事を読む『養子縁組しても元の親の相続には原則として影響しない』
2.相続放棄すると相続では縁を切る
絶縁していた人が亡くなった場合、相続で縁を切りたいなら、相続放棄してください。
- 亡くなった人の子でも相続人にならない
- 絶縁が理由でも相続放棄は認められる
- 相続財産の内容を知らなくても問題ない
2-1.亡くなった人の子でも相続人にならない
絶縁している親の相続放棄をすると、子であっても相続人になりません。
以下は、民法の条文です。
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
初めから相続人ではないので、絶縁していた親から何も引き継ぎません。
相続放棄の手続きすれば、絶縁していた親と相続では縁を切れます。
関連記事を読む『相続放棄を子供がするなら個別に必要|同じ書類は1枚で大丈夫』
2-2.絶縁が理由でも相続放棄は認められる
相続放棄する理由は自由なので、絶縁が理由でも問題なく認められます。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |長男、二男、長女
相続財産|預貯金(3,000万円)、不動産等
長男は父親と絶縁しており20年以上会っていない。
二男の依頼した弁護士より書面が届き、父親の死亡と相続財産の内容を知ったが、絶縁しているので長男は相続放棄した。
亡くなった人に負債(借金等)がなくても、絶縁を理由に相続放棄できます。
相続するかどうかの判断は、あなたが自由に決めて問題ありません。
関連記事を読む『相続放棄の理由は自由!関わりたくない場合の書き方も説明』
2-3.相続財産の内容を知らなくても問題ない
亡くなった人と絶縁状態であれば、相続財産の内容を知らなくて当然です。
ただし、相続放棄は相続財産の内容を知らなくても認められるので、何の問題もありません。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |長男、二男、三男
相続財産|不明
三男は父親と絶縁しており30年以上会っていない。
親戚から父親が亡くなったらしいと聞いたので、相続放棄の手続きをした。
絶縁を理由に相続放棄する人は、相続財産の内容に興味のない人が大半なので、調べずに手続きを進めても問題ないです。
関連記事を読む『相続放棄は財産が不明でも可能なので無理に探す必要はない』
3.絶縁している親の相続放棄をする手続き

絶縁していた親の相続放棄をする手続きについて説明します。
- 家庭裁判所に申述書を提出
- 相続の開始を知った日から3ヶ月以内
- 相続放棄の申立手数料は800円
- 親の死亡戸籍と住民票を取得
3-1.家庭裁判所に申述書を提出
相続放棄は家庭裁判所に申述書を提出しなければ認められません。
- 家族への意思表示
- 絶縁状の作成
家族(他の相続人)に意思表示をしても、相続放棄の効力は発生しません。
以下は、よくある間違えです。

父とは絶縁しているので相続放棄します。二度と連絡してこないでください
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分かりました
家族(他の相続人)に伝わったのは「相続放棄の手続きをする」という部分です。
電話等で意思表示しても相続人なので、家庭裁判所に申述書を提出していなければ、相続手続きに参加する必要があります。
相続手続きに参加したくないなら、家庭裁判所に申述書を提出してください。
関連記事を読む『【相続放棄の手続きは家庭裁判所】その他の方法では成立しない』
3-2.相続の開始を知った日から3ヶ月以内
絶縁した親の相続放棄をするには、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に、申述書を家庭裁判所に提出する必要があります。
申述書を提出せずに3ヶ月経過すると、単純承認したとみなされ相続放棄できないからです。
- 単純承認
-
亡くなった人の権利義務をすべて引き継ぐこと
相続の開始を知った日とは、絶縁した親の死亡を知った日です。
つまり、親の死亡を知った日から3ヶ月以内に、相続放棄の申述書を提出する必要があります。
死亡を知った日については、【4.絶縁していた親の死亡を知った日】で説明しています。
関連記事を読む『相続放棄の期間は3ヶ月|いつまでなのか確認しておこう』
3-3.相続放棄の申立手数料は800円
相続放棄の申立手数料は、相続財産の内容に関わらず800円です。
ただし、申立手数料は現金ではなく、収入印紙(800円分)で納めます。
申立てには予納郵券も必要になるので、郵便局で一緒に購入するのが楽でしょう。
収入印紙と予納郵券については、下記の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『相続放棄の収入印紙と予納郵券を図を用いて説明』
3-4.親の死亡戸籍と住民票を取得
絶縁していた親の相続放棄する場合、必要な戸籍等は3つです。
- 親の戸籍(死亡記載)
- 親の住民票(除票)
- 自分の戸籍
親の死亡戸籍で相続の発生を確認、親の住民票(除票)で家庭裁判所の管轄を確認、自分の戸籍で相続人の確認をします。
ただし、亡くなったのが絶縁していた兄弟姉妹だった場合は、上記の戸籍だけでは足らず、追加の戸籍が必要になるので注意してください。
相続放棄の戸籍については、下記の記事で詳しく説明しているので、参考にしてください。
関連記事を読む『相続放棄には戸籍謄本が必要!誰がするかで枚数が違う』
4.絶縁していた親の死亡を知った日


亡くなった親と絶縁状態であれば、死亡当日に知るケースは少ないでしょう。
実際、私が受けている相続放棄の依頼でも、数年以上経過してから死亡を知ったケースは珍しくありません。
死亡を知った日から3ヶ月以内であれば、問題なく認められるので安心してください。
- 借金や税金の督促状が届いた
- 不動産等に関する連絡が届いた
- 戸籍を取得して死亡を知った
4-1.借金や税金の督促状が届いた
亡くなった親だけでなく、他の親族とも絶縁状態になっていると、借金や税金の督促状が届いて、死亡に気づく人もいます。
- 消費者金融や銀行からの書面
- 依頼を受けた弁護士からの書面
- 市役所等からの書面
上記の郵送物は、実際の依頼でも聞くことが多いです。
郵送物は相続放棄の申述で利用するので、失くさないように保管しておいてください。
司法書士や弁護士に相談する際も、郵送物を持参すると話が伝わりやすいです。
4-2.不動産等に関する連絡が届いた
絶縁していた親の不動産に関する連絡が届いて、死亡を知るケースもあります。
- 固定資産税に関する書面
- 不動産の管理に関する書面
- 未払い家賃に関する書面
親が不動産を所有していた場合、固定資産税に関する書面や、放置されている不動産の管理に関する書面が届きます。
一方、親が賃貸不動産に住んでいた場合、未払い家賃や原状回復費用の請求が届きます。
不動産に関する書面が届いた場合でも、知った日から3ヶ月以内であれば、相続放棄はできるので安心してください。
4-3.戸籍を取得して死亡を知った
戸籍を取得した際に、親の死亡を知る人もいます。
- 別の用途で戸籍を取得
- 親の生死を確認するために取得
戸籍を取得した日から3ヶ月以内であれば、相続放棄は問題なく認められます。
私が受けた依頼では、失踪宣告の申立てをするのに親の戸籍を取得したところ、2年前に死亡していたというケースがありました。
ちなみに、戸籍の取得で死亡を知った場合、相続放棄の手続きでは「取得した戸籍」を使用してください。
取得した戸籍には発行日が記載されているので、家庭裁判所が日付を確認するからです。
5.絶縁していた親の借金等に後から気付いた


原則として、絶縁していた親の相続放棄は、死亡を知った日から3ヶ月以内にする必要があります。
ただし、借金等の存在に気づけなかった事情があれば、死亡を知った日から3ヶ月経過していても、相続放棄は認められる可能性があります。
- 親の生活状況から判断していた
- 相続財産は無いと聞いていた
- 探したが見つからなかった
関連記事を読む『相続放棄は後から借金に気付いても認められるのか?』
5-1.親の生活状況から判断していた
絶縁していた親が生活保護を受けていた場合、相続財産は無いと判断する人が多いです。
ですが、生活保護を受けていても、借金がある人もいますし、価値の無い不動産(田畑・山林)を所有している人もいます。
あるいは、生活保護費の返還請求や退去費用の請求が来るケースもあります。
生活保護を受けていたので相続財産は無いと判断していたなら、相続放棄は認められる可能性が高いので、諦めずに手続きをしてください。
関連記事を読む『生活保護者が死亡したら相続放棄を検討|返還義務や退去費用も請求される』
5-2.相続財産は無いと聞いていた
絶縁していた親の相続財産は無いと聞いていたので、相続放棄の手続きをしていなかった人もいます。
- 他の相続人から聞いていた
- 内縁の妻(夫)から聞いていた
私が受けた依頼では、絶縁していた母親の内縁の夫から相続財産は何も無いと聞いていたケースがありました。実際は借金があり督促状が届いて気付いた。
何も無いと聞いていたのであれば、死亡を知ってから3ヶ月経過していても、相続放棄は認められる可能性が高いです。
5-3.探したが見つからなかった
絶縁していた親の相続財産を探しても見つからなかった場合、相続放棄していなくても不思議はありません。
- 親とは違う名義の不動産があった
- 個人間でお金の貸し借りをしていた
親と違う名義の不動産とは、祖父母やおじ・おば名義のまま放置されている不動産のこと。
※所有権は親に移転している。
個人間の貸し借りは信用情報機関にも登録されないので、調査しても分かりません。
探しても見つからない相続財産は存在するので、気付いた日から3ヶ月以内に相続放棄すれば問題ないです。
5.絶縁した親や兄弟姉妹の死亡連絡がきた
親や兄弟姉妹と絶縁していても、あなたに死亡連絡が来る可能性はあります。
そこで、死亡連絡を受けた後の対応について説明しておきます。
- 死亡連絡に対応する義務はない
- 遺骨の引き取りと相続放棄は無関係
- 退去費用等は絶縁していても請求される
5-1.死亡連絡に対応する義務はない
役所や警察等から死亡連絡がきても、対応する義務はありません。
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父親である〇〇さんが亡くなりました。警察署に来てもらえますか?



父親とは縁を切っているの関わるつもりがありません
親や兄弟姉妹と絶縁している事情は人それぞれなので、関わるつもりがない旨を伝えて問題ありません。
ただし、死亡の事実を知った(相続の開始を知った)ので、相続の判断はする必要があります。
相続放棄するつもりなら、死亡連絡から3ヶ月以内に申述書を提出してください。
5-2.遺骨の引き取りと相続放棄は無関係
あなたに死亡連絡が来る前に火葬されている場合、遺骨の引き取りを求められるケースもあります。
遺骨を引き取るかどうかは個人の自由なので、相続放棄は気にせず判断して大丈夫です。
遺骨の引き取り | 効力 |
---|---|
遺骨を引き取った | 単純承認ではない 相続放棄できる |
遺骨の引き取りを 拒否した | 相続放棄ではない 申述書の提出は必要 |
遺骨の引き取っても単純承認とはみなされません。
ただし、引き取りを拒否しても相続放棄にはならないので、申述書の提出は必要になります。
関連記事を読む『遺骨の引き取りは相続放棄に影響しない!拒否した場合も注意が必要』
5-3.退去費用等は絶縁していても請求される
絶縁状態だった親族の死亡連絡を受けた際は、退去費用等の存在に注意してください。
なぜなら、親や兄弟姉妹が賃貸不動産に住んでいた場合、退去費用等も相続人に支払い義務があるからです。
すでに説明したとおり、絶縁状態でも相続人になるので、退去費用に関する督促状が届くケースはあります。
※督促状で相続の開始を知る人もいます。
死亡の連絡や遺骨の引き取りを無視しても相続人なので、退去費用を支払いたくなければ、相続放棄の手続きをしてください。
6.相続放棄と絶縁に関する注意点
絶縁していた親の相続放棄について、注意点を3つ説明していきます。
- 生前に相続放棄はできない
- プラスの財産も相続できない
- 受理された後は撤回できない
6-1.絶縁状態でも生前に相続放棄はできない
親や兄弟姉妹と絶縁状態であっても、生前に相続放棄はできません。
なぜなら、相続放棄できるのは相続人だけだからです。親が生きている間は相続人になりません。
たとえ財産を取得するつもりがなくても、相続の発生前は手続きができないです。家庭裁判所に申述書を提出しても、却下(取下げ)になります。
相続の開始を知ってから3ヶ月以内に、相続放棄の手続きをするしかありません。
関連記事を読む『相続放棄が生前に認められることは無く例外も存在しない』
6-2.プラスの財産(預貯金や不動産)も相続できない
相続放棄とは個別の財産を放棄する手続きではなく、相続を放棄する手続きです。
したがって、絶縁状態であった親や兄弟姉妹にプラスの財産(預貯金や不動産)あっても、相続放棄すると相続できません。
【事例】
被相続人|父親
相続放棄|二男
相続財産|調べていない
父親と次男は絶縁状態であり、親族から父親が死亡したと連絡があったので、財産を調べずに相続放棄した。
ところが、父親には定期預金(1,000万円)があった。
二男は相続人ではないので、定期預金を相続できません。
相続財産を調べずに手続きするのは自由ですが、後悔しないように注意してください。
6-3.申述が受理された後は撤回できない
絶縁状態だった人が亡くなると、感情的になって相続放棄する人もいます。
ただし、家庭裁判所に申述が受理された後は、理由に関わらず撤回できないです。
以下は、民法の条文です。
第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
「冷静になって考えたら財産が欲しくなった」「知らなかった財産が見つかった」、どんな理由であれ撤回は認められません。
相続放棄の撤回については、以下の記事で詳しく説明しています。
関連記事を読む『相続放棄の撤回は認められない!事情に関わらず禁止されている』
7.絶縁している家族の相続放棄を依頼
絶縁している家族(親や兄弟姉妹)の相続放棄は、専門家に依頼できます。
専門家に依頼するメリットとしては、以下が挙げられます。
- 戸籍や住民票を探して取得してくれる
- 相続放棄申述書の作成をしてくれる
- 家庭裁判所への提出をしてくれる
- 上申書(3ヶ月経過)を作成してくれる
一方、デメリットは、報酬が発生する点です。
絶縁していて関わりたくない人や、戸籍収集等の時間が取れない人は、専門家への依頼を検討してみてください。
亡くなった人の本籍や住所が分からなくても、専門家に依頼しておけば探して取得してくれます。
みかち司法書士事務所では、相続放棄を定額料金で受けています。悩みや疑問があれば、お気軽にお問い合わせください。
8.絶縁した親や兄弟の相続放棄をしなかった場合
絶縁した親や兄弟姉妹の相続放棄をしなかった場合について、3つのポイントを説明していきます。
- 絶縁でも遺産分割協議から除外できない
- 遺産分割未了なら遺産共有となる
- 負債は法定相続分により相続する
8-1.絶縁でも遺産分割協議から除外できない
亡くなった親や兄弟姉妹と絶縁していても、遺産分割協議から除外できません。
したがって、相続放棄していない限り、他の相続人は遺産分割協議への協力を求めてきます。
たとえ財産を相続するつもりがなくても、相続手続きには協力する必要があります。
具体的には、遺産分割協議書等に署名捺印(実印)して、印鑑証明書と一緒に渡すという作業が発生します。
あなたが相続人である以上、遺産分割協議には参加する義務があるので注意してください。
8-2.遺産分割未了なら遺産共有となる
亡くなった人が不動産を所有していた場合、遺産分割未了なら遺産共有となります。
そして、遺産共有の状態で放置していると、後々面倒になる可能性があります。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |長男・二男
相続財産|田畑・山林
二男は長男とも絶縁状態であり、父親の遺産分割協議への協力を断り、相続放棄もしていなかった。
10年後、独身であった長男が亡くなったので、二男だけが田畑・山林の所有者となった。
相続放棄していない限り相続人なので、不動産は自動的に共有となります。
遺産分割協議をしない間に、他の共有者(他の相続人)が亡くなった場合、あなただけが所有者として取り残される可能性があります。
不動産が欲しい場合は別ですが、遺産分割協議または相続放棄、どちらかは選んだ方が良いです。
8-3.負債は法定相続分により相続する
絶縁していた親に負債があった場合、遺産分割協議の内容に関わらず、法定相続分により負債を相続します。
以下は、実際にあった失敗例です。
※家族構成は変えています。
【失敗例】
被相続人|父親
相続人 |長男・長女
相続財産|不明
長女は家族と絶縁しており、20年以上交流が無かった。
父親が亡くなったと長男から連絡があり、遺産分割協議書への署名捺印と印鑑証明書の添付を求められた。
※長男が全財産を取得するという内容。
絶縁していた父親の財産を取得するつもりも無かったので、何も考えずに署名捺印して送り返した。
7年後、長男が亡くなり、父親の借金の督促状が長女の元に届くようになった。
※長女も借金の2分の1を相続している。
長男が生きていた間は、長男が借金を支払っていたので、長女の元には届いていなかった。
財産は何も取得しないという遺産分割協議書だったとしても、負債は法定相続分で相続しています。
絶縁していた親の生活状況を知っていたなら別ですが、安易に署名捺印するのは危険なので止めた方が良いです。
9.まとめ
今回の記事では「絶縁していた親の相続放棄」について説明しました。
亡くなった親と絶縁していても、子は相続人になります。何十年会っていなくても、親が亡くなれば子は相続人です。
絶縁状の作成、戸籍の分籍、養子縁組により名字が変わっている等は、相続に関係ありません。
相続で縁を切るなら、相続放棄の手続きをしてください。
絶縁していた親の死亡を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述書を提出すれば、相続放棄は認められます。
死亡を知らせる郵送物が届いたら、無視するのではなく、相続または相続放棄の判断をしましょう。
相続の判断をせずに放置していると、後から困るケースもあるので、絶対に止めてください。