自筆証書遺言の作成を検討しているなら、メリットとデメリットを知っておいてください。
どんな制度にもメリットとデメリットがあり、自筆証書遺言も例外ではありません。
例えば、簡単に作成できる点はメリットですが、無効要因が多い点はデメリットです。
メリットだけに目を向けると、デメリットを見逃しやすいので、両方を知っておく必要があります。
今回の記事では、自筆証書遺言のメリット・デメリットについて説明しているので、遺言書作成の参考にしてください。
目次
1.自筆証書遺言のメリットを4つ説明
自筆証書遺言の主なメリットは4つあります。
- すぐに作成できる
- 作成費用が少ない
- 内容を秘密にできる
- 遺言書の撤回も簡単
それぞれ説明していきます。
1-1.すぐに作成できるのはメリット
自筆証書遺言のメリット1つ目は、すぐに作成できるです。
自筆証書遺言は公正証書遺言と違い、公証役場に行く必要もありませんし、証人の手配も不要です。
ですので、あなたが作成しようと思えば、今すぐ作成できます。
自分が作成しようと判断した時に、すぐ作成できる点はメリットです。
1-2.作成費用の少なさはメリット
自筆証書遺言のメリット2つ目は、作成費用の少なさです。
自筆証書遺言は0円での作成も可能です。紙とペンがあれば作成できます。
ただし、0円での作成は現実的ではなく、一般的には以下の費用も発生します。
- 専門家の報酬
- 遺言書の保管料
上記の費用を加えても、公正証書遺言に比べると作成費用は低いです。
作成費用の少なさは、遺言者にとってメリットになります。
関連記事を読む『自筆証書遺言の費用は3つの段階で発生【作成・保管・使用】』
1-3.自筆証書遺言は内容を秘密にできる
自筆証書遺言のメリット3つ目は、内容を秘密にできるです。
自筆証書遺言は自分だけで作成できます。公正証書遺言のように公証人や証人も必要ありません。
そのため、内容を誰にも知られたくない場合は、自筆証書遺言を作成するメリットがあります。
ただし、内容を知られたくない場合でも、遺言書の存在は誰かに伝えた方が良いです。誰も見つけれない可能性があります。
1-4.自筆証書遺言の撤回は簡単
自筆証書遺言のメリット4つ目は、撤回するのも簡単です。
自筆証書遺言を撤回する方法は複数あります。一番簡単なのは、作成した遺言書を破って捨てるです。
以下は、民法の条文です。
遺言者が自筆証書遺言を破って捨てると、遺言は撤回したとみなされます。
自分で破って捨てるだけなので、手間も費用もかかりません。
簡単に撤回できるのも、自筆証書遺言のメリットといえます。
関連記事を読む『【自筆証書遺言の撤回方法は4つ】みなし規定もあるので注意』
2.自筆証書遺言のデメリットを6つ説明
自筆証書遺言の主なデメリットは6つあります。
- 無効要因が多い
- 死後に疑われやすい
- 問題に気付きにくい
- 訂正にもルールがある
- 紛失のリスク
- 相続発生後に検認が必要
それぞれ説明していくので、作成する前に確認しておいてください。
2-1.無効要因の多さはデメリット
自筆証書遺言のデメリット1つ目は、無効要因が多いです。
自筆証書遺言には成立要件が4つあり、どれか一つでも満たしていなければ、遺言書は無効になります。
上記の要件をすべて満たさなければ、内容に関わらず遺言書は無効です。
自筆証書遺言を作成した場合は、成立要件を満たしているか必ず確認してください。
関連記事を読む『【自筆証書遺言が無効】複数の要因があるので作成前に確認』
2-2.自筆証書遺言は死後に疑われやすい
自筆証書遺言のデメリット2つ目は、死後に疑われやすいです。
自筆証書遺言は公正証書遺言に比べて、死後に疑われやすくなります。
- 遺言書作成時の判断能力を疑われる
- 遺言者以外の介入を疑われる
遺言書作成時に遺言者が高齢であれば、判断能力(遺言能力)を疑われます。
遺言書の内容が特定の相続人に有利であれば、遺言者以外の介入を疑われます。
自筆証書遺言は疑われやすいので、デメリットを避けるのであれば、公正証書遺言を検討しましょう。
2-3.遺言書に問題があっても気付きにくい
自筆証書遺言のデメリット3つ目は、問題に気付きにくいです。
自筆証書遺言を自分だけで作成すると、遺言書の内容に問題があっても、自分では気付きにくいです。
- 成立要件を満たしていない
- 遺言事項とは関係ない記載
- 希望を叶えるには記載が足りない
成立要件については、すでに説明しているので省略します。
遺言書に何を書くかは本人が決めます。
ただし、法的効力が発生するかは別問題です。遺言事項は限られているので、好き勝手に書いても法的効力はありません。
遺言書には本人の希望を記載します。
ただし、希望を叶えるには、遺言書の記載が足りていないケースもあります。本人が勘違いしている以上、気付くのは難しいでしょう。
問題に気付くには、第3者のチェックが重要です。
関連記事を読む『遺言事項は法律で決まっている|14の項目について説明』
2-4.訂正のルールはデメリット
自筆証書遺言のデメリット4つ目は、訂正のルールです。
自筆証書遺言は訂正にも法律上のルールがあります。ルールに違反すると、訂正の効力は発生しません。
訂正の効力が発生しないだけでなく、遺言書自体が無効になる可能性もあります。訂正箇所が多いなら、書き直した方が安全です。
訂正のルールは、自筆証書遺言のデメリットになります。
関連記事を読む『自筆証書遺言の訂正にはルールがある【違反すると無効】』
2-5.自筆証書遺言には紛失のリスクがある
自筆証書遺言のデメリット5つ目は、紛失するリスクです。
自筆証書遺言を作成した後は、保管方法を考える必要があります。自宅で保管するのか、保務局で保管するのか、それとも誰かに預けるのか。
せっかく遺言書を作成しても、紛失してしまうと遺言書の効力は発生しません。
紛失以外にもリスクはあり、遺言書の作成を家族に黙っている場合、死後に遺言書が発見されない可能性もあります。
あるいは、家族が遺品を整理している際に、気付かずに捨てるかもしれません。
自筆証書遺言を紛失するリスクはデメリットになります。
自筆証書遺言は法務局に保管できますが、保管にもデメリットはあるので注意してください。
関連記事を読む『自筆証書遺言の保管制度にデメリットは7つ存在する』
2-6.相続手続きをするのに検認が必要
自筆証書遺言のデメリット6つ目は、相続手続き前に検認が必要です。
自筆証書遺言を相続手続きで使用する場合、原則として検認が必要です。
※法務局に保管した場合は不要。
- 遺言書の検認
- 相続人に遺言書の存在と内容を知らせ、遺言書の偽造や変造を防ぐための手続き
検認は家庭裁判所の手続きなので、手間と費用がかかります。すぐに相続手続きはできません。
相続手続きまでに時間がかかる点はデメリットになります。
関連記事を読む『【遺言書の検認】相続手続きを進めるのに必要な作業』
3.まとめ
今回の記事では「自筆証書遺言のメリット・デメリット」について説明しました。
どんな制度にもメリットとデメリットがあり、自筆証書遺言も例外ではありません。
自筆証書遺言の主なメリットは、以下の4つです。
- すぐに作成できる
- 作成費用が少ない
- 内容を秘密にできる
- 遺言書の撤回も簡単
それに対して、自筆証書遺言の主なデメリットは、以下の6つです。
- 無効要因が多い
- 死後に疑われやすい
- 問題に気付きにくい
- 訂正にもルールがある
- 紛失のリスク
- 相続発生後に検認が必要
メリットだけで自筆証書遺言を選ぶのではなく、デメリットも考慮して選んでください。