自筆証書遺言を法務局に保管できるようになっています。
ですが、どんな制度にもデメリットは存在します。あるいは、思っていたのと違う部分があるかもしれません。
今回の記事では、遺言書保管制度のデメリットを7つ説明しているので、預ける際の参考にしてください。
目次
1.保管できる法務局は決まっている
1つ目のデメリットは、保管できる法務局は決まっていることです。
全国の法務局で遺言書の保管を扱っているわけではなく、特定の法務局でのみ遺言書の保管をしています。遺言書の保管を扱っている法務局を、遺言書保管所といいます。
遺言書保管所は法務省のホームページから確認できます。
『遺言書保管所一覧』でホームページに移動します。
遺言書保管所の中から自由に選ぶのではなく、以下の3つから選ぶことになります。
- 遺言者の住所地を管轄する遺言書保管所
- 遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所
- 遺言者が保有する不動産を管轄する遺言書保管所
近所に法務局があっても、遺言書保管所でなければ保管できません。住んでいる場所によっては、遺言書保管所に行くのも大変かもしれません。
2.本人が法務局に行く必要がある
2つ目のデメリットは、本人が法務局に行く必要があるです。
遺言者が自筆証書遺言の保管制度を利用する場合、遺言書保管所に自ら行く必要があります。
家族が代理人として保管申請をすることも認められていません。
法務局に行くことが体力的に難しくなっていれば、保管制度を利用することは難しくなります。
また、体力的には問題なくても、法務局は平日の昼間しか空いていないので、時間的に無理な人もいます。
3.写真付きの本人確認証明書が必要
3つ目のデメリットは、写真付きの本人確認証明書が必要です。
遺言書を保管する際に本人確認をするのですが、写真付きの本人確認証明書を提示する必要があります。
- 運転免許証
- 運転経歴証明書
- マイナンバーカード
上記は写真付きの本人確認証明書に該当します。
保険証は写真付きではないので、運転免許証を取得されていなければ、マイナンバーカードを取得することになります。
マイナンバーカードの発行手数料は無料ですが、発行するのに時間がかかるのでご注意ください。
4.遺言書の様式等に定めがある
4つ目のデメリットは、遺言書の様式等に定めがあるです。
自筆証書遺言ならすべて保管できるわけではなく、様式等のルールを守っている遺言書のみ保管できます。
以下が主なルールです。
- A4サイズである
- 文字が読みづらい模様や色彩でないこと
- 余白が必要
*上部5mm、下部10mm、左20mm、右5mm - 片面のみに記載
- ページ番号が必要
- ホッチキス等で綴じていない
すでに作成している遺言書が上記に該当しない場合、新しく作成し直す必要があります。
5.内容の確認はしてくれない
5つ目のデメリットは、内容の確認はしてくれないです。
自筆証書遺言を保管する際に、法務局は以下の3つだけチェックします。
- 本文が自筆されているか
- 署名捺印されているか
- 日付が記載されているか
上記をチェックするのは、自筆証書遺言の要件を満たしているかを判断するためです。満たしていなければ保管できません。
つまり、3つの要件以外については、法務局は一切関与しません。たとえ遺言書の内容に問題があっても、指摘することなく黙って受け取るだけです。当然ですが、内容について質問しても答えてもらえません。
自筆証書遺言を保管する前に、遺言の内容に問題が無いかのチェックは受けた方がいいです。
6.氏名や住所等の変更届が面倒
6つ目のデメリットは、氏名や住所等の変更届が面倒です。
自筆証書遺言を遺言書保管所に保管する際に、氏名や住所等を登録することになります。登録した情報に変更があると、変更の届出をする必要があります。
主な登録事項は以下です。
- 遺言者の氏名・住所・本籍
- 受遺者の氏名・住所
- 遺言執行者の氏名・住所
- 死亡時通知人の氏名・住所
上記の情報が変更するたびに、変更の届出をするのは非常に面倒だと思います。
ちなみに、変更の届出をしなかったからといって、遺言書が無効になるわけではないです。
7.相続人等に原本は返還されない
7つ目のデメリットは、相続人等に原本は返還されないです。
遺言者が亡くなった後に相続人等ができるのは、遺言書証明情報の交付請求です。原本の返還請求をすることはできません。
つまり、法務局に自筆証書遺言を保管すると、相続人等に原本を渡すことはできなくなります。
自筆証書遺言を作成されている人の中には、遺言書の紙にこだわりを持って作成している人もいます。ですが、法務局に保管すると、相続人等の手元に渡ることはありません。
法務局に遺言書を保管するなら、普通の紙で作成した方が良いです。
7.さいごに
自筆証書遺言を法務局に保管するメリットはあります。ですが、デメリットも当然あります。
- 保管できる法務局は決まっている
- 本人が法務局に行く必要がある
- 写真付きの本人確認証明書が必要
- 遺言書の様式等に定めがある
- 内容の確認はしてくれない
- 氏名や住所等の変更届が面倒
- 相続人等に原本は返還されない
人によっては気にしない内容かもしれませんし、諦める材料になるかもしれません。
どんな制度にも欠点はあるので、利用する前に一度確認しておいてください。