デザイン変更に伴い、表示が一部崩れています。

自筆証書遺言の『日付』について判例等を交えて説明

自筆証書遺言の日付
  • URLをコピーしました!

自筆証書遺言には日付を記載する必要があります。

万が一、遺言書に日付が記載されていなければ、遺言者の意思に関係なく自筆証書遺言は無効です。

一般的に、日付は西暦・和暦どちらかを用いて遺言書の末尾に記載します。別の記載方法も可能ですが、無効になる可能性もあるので気を付けてください。

今回の記事では、自筆証書遺言の日付について説明しているので、遺言書を作成する際の参考にしてください。

1.自筆証書遺言には日付を自書する

まず初めに、自筆証書遺言の成立要件は4つあります。

たとえ遺言書の内容に問題が無くても、日付が抜けていると自筆証書遺言は無効です。

以下は、民法の条文です。

(自筆証書遺言)
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(民法968条1項)

遺言書の日付についても、遺言者が自書しなければなりません。

したがって、日付印で日付を表示しても、自筆証書遺言の要件は満たしていません。

 

2.自筆証書遺言に記載する日付の書き方

日付に関して民法で決められているのは、「遺言者が日付を自書する」だけです。

したがって、細かい部分に関しては、過去の判例等を参考にするしかありません。

2-1.自筆証書遺言の日付は西暦・和暦どちらでも大丈夫

遺言書に記載する日付は、西暦・和暦どちらでも大丈夫です。

なぜなら、どちらの記載方法を用いても、日付は特定できるからです。

例えば、「2022年7月15日」または「令和4年7月15日」どちらの記載であっても、遺言書の作成日は特定できます。

自筆証書遺言に西暦・和暦以外で日付を記載するメリットはないです。

自筆証書遺言の日付を略記で記載

自筆証書遺言に「R4.7.15」のような略記で記載するのは止めたほうがいいです。

日付の特定はできると思いますが、わざわざ分かりにくい記載をするメリットがありません。

誰が読んでも日付が分かるように、年月日を用いて日付を記載しましょう。

2-2.自筆証書遺言に年と月だけ記載しても無効

 遺言書

(省略)

令和4年7月 ○○ ○○ 印

自筆証書遺言に「年」と「月」は記載されているが「日」の記載が無い場合、自筆証書遺言は無効となります。

以下は、判例です。

自筆遺言証書に年月の記載はあるが日の記載がないときは、右遺言書は民法968条1項にいう日付の記載を欠く無効のものと解するのが、相当である。

出典:最高裁判所昭和52年11月29日判決

自筆証書遺言には遺言書の作成日を記載するので、「日」が記載されていなければ特定できません。

当たり前かもしれませんが、自筆証書遺言を書いた後は抜けがないか確認しておきましょう。

2-3.自筆証書遺言の日付に吉日と記載すると無効

 遺言書

(省略)

令和4年7月吉日 ○○ ○○ 印

自筆証書遺言の日付に「吉日」と記載すると、日付が特定できないので無効となります。

以下は、判例です。

自筆遺言証書の日付として「昭和四拾壱年七月吉日」と記載された証書は、民法九六八条一項にいう日付の記載を欠くものとして無効である。

出典:裁判所ウェブサイト(昭和54年5月31日最高裁判所第一小法廷)

自筆証書遺言に「吉日」と記載しても、遺言書の作成日が特定できないので「日付」にはなりません。

 

3.日付は自筆証書遺言のどこに記載するのか?

自筆証書遺言のどこに「日付」を記載するのかは、法律上決まっていません。

3-1.一般的には自筆証書遺言の末尾に日付を記載

一般的には、以下のように遺言書の末尾に記載することが多いです。

 遺言書

(省略)

令和4年7月15日 ○○ ○○ 印

自筆証書遺言の末尾に日付・氏名・押印があれば、第3者が遺言書を読むときも分かりやすいです。

ただし、末尾以外に日付を記載しても、自筆証書遺言が無効になるわけではありません。

3-2.自筆証書遺言を封入した封筒に日付を記載

自筆証書遺言に日付が記載されていなくても、自筆証書遺言を封入した封筒に日付が記載されていれば有効とした事例があります。

なぜかというと、自筆証書遺言と封筒を一体とみなして、封筒の日付を自筆証書遺言の日付と判断したからです。

ただし、結果として有効になっただけなので、自筆証書遺言を作成するなら遺言書に日付を記載してください。

自筆証書遺言と封筒が一体とみなされなければ、原則どおり自筆証書遺言は無効となるからです。

 

4.自筆証書遺言の日付と作成日が違う

自筆証書遺言に記載する日付とは、遺言書の作成日のことです。

ただし、遺言書に記載した「日付」と作成日が違う場合でも、有効と判断されることはあります。

4-1.自筆証書遺言の日付が誤記であると容易に判明

自筆証書遺言の日付が誤記であっても、誤記であると容易に判明するなら無効にはなりません。

以下は、判例です。

自筆遺言証書に記載された日付が真実の作成日付と相違しても、その誤記であること及び真実の作成の日が遺言証書の記載その他から容易に判明する場合には、右日付の誤りは遺言を無効ならしめるものではない。

出典:最高裁昭和52年11月21日判決

明らかに日付の書き間違えと判明するなら、誤記であっても自筆証書遺言は無効になりません。

過去には、以下のような書き間違えもありました。

遺言書

(省略)

昭和四拾四拾年○月○日 ○○ ○○ 印

昭和44年を漢数字で書こうとして、間違って拾(十)を2回書いています。

元号の書き間違えも存在します。

遺言書

(省略)

正和○○年○月〇日 ○○ ○○ 印

正和(しょうわ)も日本の元号の一つなのですが、明らかに昭和の書き間違えだと判断できます。

4-2.自筆証書遺言の日付と押印の日が違う

自筆証書遺言の日付と押印した日が違う場合、遺言書の作成日と日付が違うことになります。
※押印が無ければ遺言書は成立していない。

ただし、遺言書の成立日と違う日付が記載されているからといって、すべてが無効になるわけではないです。

以下は、判例です。

遺言者が,入院中の日に自筆証書による遺言の全文,同日の日付及び氏名を自書し,退院して9日後(全文等の自書日から27日後)に押印したなど判示の事実関係の下においては,同自筆証書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに同自筆証書による遺言が無効となるものではない。

出典:裁判所ウェブサイト(令和3年1月18日最高裁判所第一小法廷)

判明している事実関係によっては、作成日以外の日付が記載されていても有効になる可能性があります。

注意死後のトラブルを避けるためにも、日付と押印は同じ日にしましょう。

 

5.さいごに

自筆証書遺言が成立するには、遺言書に日付を記載する必要があります。

日付が記載されていなければ、自筆証書遺言は無効となります。

日付に関する注意点は、以下の3つです。

  • 日付は西暦・和暦どちらかで記載
  • 日付は遺言書の末尾に記載
  • 日付は遺言書の作成日を記載

遺言書は法律上の文書なので、第3者が読んでも分かるように記載します。

たとえ日付であっても、不明瞭な記載はするべきではありません。