負動産が存在しても相続放棄できる|財産の内容は問われない

負動産の相続放棄
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亡くなった人が不動産を所有していても、相続放棄している人はいます。

なぜなら、不動産が負動産(事実上のマイナス財産)になっているからです。

  • 処分(売却・贈与)ができない
  • 処分費用(取壊し費用)が高額

相続放棄するのに財産の内容や理由は問われないので、負動産があっても問題なく認められます。

負動産は相続放棄に影響しない

相続放棄すると相続人ではないので、負動産(事実上のマイナス財産)も相続しません。

不動産の相続がマイナスになるなら、今回の記事を参考にしてください。

記事作成者
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司法書士 小嶋高士
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目次

1.相続放棄は負動産があっても認められる

相続財産に負動産が含まれても相続放棄できる

相続財産の中に「負動産」があっても、相続放棄は認められます。

負動産

一般的には、以下のような不動産です。

  • 建物が著しく老朽化している家屋
  • 地価が著しく低い山林や田畑
  • 権利関係が複雑で売却が困難な不動産

なぜなら、相続放棄が認められるかどうかと、相続財産の内容は無関係だからです。

1-1.相続財産の内容は条件に含まれない

相続財産の内容は、相続放棄の条件に含まれていません。

次の2つが、相続放棄の条件です。

  1. 相続財産を処分(消費)していない
  2. 相続の開始を知った日から3ヶ月以内に申述書を提出

上記の条件を満たしていれば、相続財産に負動産が含まれていても、相続放棄は問題なく認められます。


▼被相続人

父親|8月24日死亡

▼相続財産

建物(築50年以上)
宅地(建て替えできない)

▼相続放棄

長男|9月21日
二男|9月21日

父親の相続財産は負動産しかなかったので、長男・二男は相続開始後すぐに相続放棄の手続きをした。


相続財産に負動産が含まれていても、相続放棄は自由にできるので安心してください。

1-2.相続放棄の理由が負動産でも問題ない

相続放棄の理由が負動産でも問題ない

相続放棄する理由は自由なので、負動産が不要という理由でも問題ありません。

  • 借金が多いから
  • 絶縁しているから
  • 不動産が不要だから

家庭裁判所が用意している申述書には、相続放棄の理由を書く欄もありますが、正直に不動産が不要と書いて大丈夫です。

実際、私が依頼を受けた相続放棄でも、過去に何度も不動産が不要と書いていますが、すべて問題なく認められています。

負動産が不要という理由でも、相続放棄は認められるので安心してください。

1-3.遺言書に負動産を相続させると書かれても可能

亡くなった人が遺言書を作成して、負動産を押し付けようとしても、相続人は相続放棄できます。

以下は、私が実際に相談を受けた際の会話です。

相談者

亡くなった父親が遺言書を作成しており、不要な田畑は私が相続する内容になっていました。

小嶋高士

遺言書で負動産を押し付けられても、相続放棄できるので安心してください。

相談者

「相続させる」と書いていても相続放棄できますか?

小嶋高士

遺言書に「相続させる」と書いていても、相続放棄はできます。

遺言書は亡くなった人の意思表示ですが、相続するかは相続人が判断します。負動産を相続したくなければ、相続放棄して問題ありません。

相続放棄した人は相続人ではないので、遺言書に書いてあっても相続させることはできないです。

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2.負動産を相続放棄する前に知っておくべき点

負動産を理由に相続放棄するなら、次の点を知っておいてください。

  1. 負動産に価値があっても撤回できない
  2. 負動産だけ選んで相続放棄はできない
  3. 次順位相続人に負動産が移ってしまう
  4. 負動産を調査するなら期間経過に注意

2-1.負動産に価値があっても撤回できない

相続放棄するつもりなら、本当に「負動産」なのか、一度確認しておいた方が良いでしょう。

なぜなら、後になって価値があると分かっても、相続放棄の撤回は認められないからです。

(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
出典:e-Govウェブサイト(民法919条)

▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |長男・二男

▼相続財産

預貯金|30万円
不動産|田舎の土地

土地の処分について不動産屋に相談したが、購入者を見つけるのは難しいと説明されたので、長男と二男は相続放棄を済ませた。

ところが、半年ほど経ってから、土地を資材置場に使いたいので、50万円で購入したいと近隣住民から連絡がきた。


相続放棄した後で、負動産に価値があると分かっても、相続放棄の撤回は認められません。

相続放棄する前に、本当に「負動産」なのか確認しておいた方が良いです。

2-2.負動産だけ選んで相続放棄はできない

相続放棄は相続自体を放棄する手続きなので、負動産だけ選んで放棄はできません。

もし負動産以外に取得したい財産があるなら、相続放棄は選べないです。


▼家族構成

被相続人|父親
相続人 |子ども

▼相続財産

預貯金|500万円
不動産|建物(築50年以上)

父親が所有していた建物は築50年以上経過しており、引取り先も見つからなかった。

負動産を手放す方法として相続放棄を検討したが、500万円も相続できなくなるので断念。

解体業者に見積もりを依頼した結果、200万円で取り壊し可能だったので、相続した後で負動産を処分した。


負動産だけ選んで放棄はできないので、他に相続したい財産があるなら、相続放棄は選べません。

勘違いして相続放棄すると、必要な財産も相続できなくなるので注意してください。

2-3.次順位相続人に負動産が移ってしまう

先順位相続人が全員相続放棄すると、負動産は次順位相続人に移ってしまいます。

なぜなら、相続放棄した人は初めから相続人ではないので、相続人を決め直すからです。


▼家族構成

被相続人  |父親
先順位相続人|子ども
次順位相続人|父親の兄弟

▼相続財産

不動産|建物(築50年以上)

父親が所有していた建物は築50年以上経過しており、引取り先も見つからなかったので、子は全員相続放棄しました。

子が全員相続放棄した結果、父親の負動産は父親の兄弟に移るので、父親の兄弟も負動産が不要であれば、各自相続放棄する必要があります。


次順位相続人と交流があるなら、前もって相続放棄する旨を教えておいた方がよいでしょう。

一般的に、次順位相続人も負動産は不要なので、相続放棄する必要があるからです。

2-4.負動産を調査するなら期間経過に注意

負動産の調査をするなら期間伸長の申立てもする

相続放棄を判断するために不動産を調査するなら、期間伸長の申立てをしておきましょう。

なぜなら、調査の結果、負動産だと判断できても、3ヶ月経過していると相続放棄できないからです。

期間伸長の申立ても3ヶ月以内なので、不動産の調査を決めた時点で、手続きをしてください。

期間伸長については、下記の記事で詳しく説明しています。

3.原則として相続放棄した人は負動産の保存義務を負わない

相続放棄した後も負動産の管理責任(保存責任)を負うのは、現に負動産を占有していた人です。

したがって、遠方に住んでいた人や、被相続人と生前ほとんど関わりがなかった人は、通常、相続放棄後の保存責任を心配する必要はありません。

3-1.負動産を占有していた人に限り義務を負う

相続放棄した後の管理責任については、民法の改正により誰が責任を負うのか明確になりました。

以下は、民法の条文です。

(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
出典:e-Govウェブサイト(民法940条1項)

負動産を現に占有していた場合は、財産を引き渡すまで保存責任を負います。
※管理から保存に名称も変更。

つまり、亡くなった人と離れて暮らしていた人や、生前に交流が無かった人に、相続放棄した後の保存義務はありません。

相続放棄した後に負動産を気にするのは、現に占有していた人だけです。

3-2.相続人または相続財産清算人に引き継ぐまで続く

負動産を現に占有していた人の保存義務は、相続人または相続財産清算人に引き継ぐまで続きます。

一般的に、負動産を相続する相続人は少ないので、相続財産清算人に引き継ぐケースが多いです。

ただし、相続財産清算人に引き継ぐためには、選任の申立てが必要になります。相続人全員が相続放棄しても、申立てをしなければ選任されません。

相続財産清算人の選任には、50万円から100万円程度の予納金が必要になるケースが多く、負動産(不動産)があると高額になりやすいので、申立てをする際は注意してください。

以下は、大阪家庭裁判所の相続財産清算人選任申立ての手引きの抜粋です。

申立費用及び予納金の項に記載のとおり、相続財産清算人選任申立て後、相続財産清算人選任の際に、管理費用及び清算人報酬として、おおむね100万円程度を申立人に予納していただきます。
出典:裁判所ウェブサイト(相続財産清算人選任申立ての手引き1-4)

相続財産清算人の選任申立てをするなら、100万円はかかると覚悟しておきましょう。

以下の記事では、相続財産清算人と予納金について詳しく説明しているので、参考にしてください。

4.相続放棄以外で負動産に対応したい

次のような事情がある場合は、負動産があっても相続放棄が選べない人もいます。

  • 負動産以外に相続したい財産がある
  • 後順位相続人に迷惑をかけたくない
  • すでに3ヶ月経過により単純承認している

上記のような場合は、負動産を相続した上で、以下の方法で処分することを検討しましょう。

  • 贈与(無料)で処分する
  • 相続土地国庫帰属を検討する
  • 自治体や法人への寄付を検討する

4-1.贈与(無料)なら欲しい人は意外と多い

負動産でも無料なら欲しい人はいる

負動産が土地の場合、贈与(無料)なら欲しいという人は意外と多いです。

実際、私が相談を受けていた事例でも、放置されている土地の隣に住んでいる人が、贈与なら欲しいと言ってくれました。

売買だと難しくても、贈与だと処分できるケースはあるので、とりあえず周りの人には聞いてください。

ただし、負動産が田畑だと、贈与にも農業委員会の許可が必要なので、無条件で贈与できるわけではありません。

4-2.相続土地国庫帰属制度を検討する

負動産が土地の場合、相続土地国庫帰属制度も対応策の一つになります。

相続土地国庫帰属制度を簡単に説明すると、お金を払って国に土地を引き取ってもらう制度です。

負動産が田畑や山林であっても、条件を満たせば国が引き取ってくれます。

もちろん、お金を支払う必要があるので、常に使えるわけではありません。どうしても土地が処分できない場合は、国庫帰属も検討してみてください。

4-3.自治体や法人への寄付を検討する

自治体や法人への寄付も選択肢の一つにはなりますが、現実的には難しいと考えています。

なぜなら、負動産は自治体や法人も欲しくないからです。
※欲しいのは価値のある不動産。

実際、自治体のホームページなどを確認すると、利用価値のある不動産や換価できる不動産なら、寄付の対象になり得ると書かれています。

ただし、寄付ができないか聞くのは無料なので、とりあえず聞いてみるのは良いと思います。

相続放棄と負動産に関するQ&A

相続放棄と負動産に関して、よくある質問と回答をまとめました。

負動産が複数あっても相続放棄できますか?

できます。不動産の数や内容に関係なく、相続放棄は認められます。

負動産に価値があっても相続放棄できますか?

できます。価値があるかどうかは関係ありません。

相続人が私一人でも負動産を相続放棄できますか?

できます。相続人の人数は関係ありません。

負動産の情報が不明な場合、申述書にはどのように記載するのでしょうか?

分かる範囲で記載すれば大丈夫です。「不明」と書いても問題ありません。

相続放棄のQ&Aについては、上記以外にもあるので参考にしてください。

6.まとめ

今回の記事では「負動産の相続放棄」について説明しました。

相続財産に負動産が含まれても、相続放棄は問題なく認められます。

ただし、本当に「負」動産かどうかは、確認しておくことをお勧めします。後から価値が有ると分かっても、相続放棄は撤回できないからです。

民法改正により、相続放棄した後に負動産の管理義務(保存義務)を負うのは、現に占有していた人になりました。疎遠だった人や会ったことも無い人は、原則として気にする必要がありません。

万が一、相続放棄が選べないなら、その他の方法で処分するしかないです。無料だと貰ってくれる人もいるので、諦めずに探してみましょう。

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