遺言書があっても相続放棄できる!公正証書遺言でも強制できない

相続放棄と遺言書
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亡くなった人が遺言書を作成していても、相続人が相続放棄を選ぶのは自由です。

たとえ、遺言書に相続させると書いていても、相続は強制できません。

相続放棄した人が相続する予定だった財産は、他の相続人が取得します。

今回の記事では、相続放棄と遺言書について説明しているので、悩みを解決する参考にしてください。

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目次

1.遺言書が存在しても相続放棄できる

亡くなった人の遺言書が存在しても、相続放棄は問題なくできます。

なぜなら、相続(相続放棄)するかは、遺言者ではなく相続人が決めるからです。

1-1.遺言書でも相続は強制できない

遺言書は亡くなった人の意思表示ですが、相続するかは相続人が判断します。

遺言書に「相続させる」と書いても、相続の強制はできません。

遺言書

遺言者は、遺言者の有する下記の不動産を、長男○○(生年月日)に相続させる

所在   ○○市○区○○町○丁目
地番   ○○番○
地目   宅地
地積   120.00㎡

令和○年○月○日
○○ ○○ 

上記の遺言書は、長男が相続人であれば効力を発生しますが、相続人でなければ効力は発生しません。
※相続放棄すると相続人ではない。

亡くなった人が遺言書を作成していても、相続は強制されないので安心してください。

1-2.公正証書遺言でも相続放棄は可能

亡くなった人の作成した遺言書が公正証書遺言でも、相続が強制されるわけではなく、相続放棄は自由に選べます。

公証人が作成しているので、特別な強制力があると勘違いする人もいますが、自筆証書遺言と何も変わりません。

遺言者(亡くなった人)の意思表示が公正証書遺言であっても、相続するかどうかは相続人が判断します。

2.相続放棄しても遺言書自体は有効

遺言書の記載された人が相続放棄しても遺言書は有効

遺言書に記載された人が相続放棄しても、遺言書自体は有効です。

したがって、相続放棄と関係ない部分については、遺言書の記載どおり効力が発生します。

遺言書

第1条 遺言者は、遺言者の有する下記の不動産を、長男○○(生年月日)に相続させる。

所在   ○○市○区○○町○丁目
地番   ○○番○
地目   宅地
地積   120.00㎡

第2条 遺言者は、遺言者の有する下記の不動産を、二男○○(生年月日)に相続させる。

所在   ○○市○区○○町○丁目
地番   ○○番○
地目   雑種地
地積   150㎡

令和○年○月○日
○○ ○○ 

長男が相続放棄すると、第1条の部分は効力が発生しません。

一方、第2条の部分は、相続放棄とは無関係なので、遺言書の記載どおり二男が雑種地を相続します。

相続放棄した人がいても、遺言書は無効にならないので、勘違いしないように注意してください。

3.相続放棄すると財産は相続人が取得

相続放棄により効力が発生しなくなった部分の財産は、遺言書に記載されていない財産と同じ扱いになります。

したがって、原則どおり相続人(相続放棄した人は除く)が相続します。

3-1.相続人が複数なら遺産分割協議

相続人(相続放棄した人は除く)が複数なら、遺産分割協議により財産の取得者を決めます。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男
相続財産|不動産
遺言書 |不動産は長男に相続させる
相続放棄|長男

長男が相続放棄すると、二男と三男の遺産分割協議により、不動産の取得者を決めます。

相続放棄した人は遺産分割協議に参加しません。

したがって、遺産分割協議書にも署名捺印はしないので、勘違いしないように注意してください。

3-2.予備的遺言が記載されている場合

遺言書に予備的遺言が記載されている場合は、遺言書の記載どおり効力が発生します。

遺言書

遺言者は、遺言者の有するすべての不動産を、長男○○(生年月日)に相続させる。
ただし、長男○○が相続放棄した場合は、二男○○(生年月日)に相続させる。

令和○年○月○日
○○ ○○ 

長男に相続させるつもりだが、相続放棄する可能性もあるので、予備的に二男を記載していた場合です。

  1. 長男が相続→不動産は長男が取得
  2. 長男が相続放棄→不動産は二男が取得

相続放棄を想定して予備的遺言を記載するケースは少ないですが、第2候補が存在するなら記載しておきましょう。

4.相続放棄した人と遺言書の検認

亡くなった人の遺言書が、公正証書遺言または法務局保管の自筆証書遺言以外の場合、家庭裁判所の検認手続きが必要になります。

そして、相続放棄しても検認に関係するケースはあります。

4-1.遺言書を保管していると検認の義務

相続放棄した人(相続放棄する人)が遺言書の保管者だった場合、検認の請求をする義務があります。

以下は、民法の条文です。

(遺言書の検認)
第千四条 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
出典:e-Govウェブサイト(民法1004条1項)

相続放棄すると相続人ではないのですが、保管者としての義務は別問題です。

相続放棄したから(相続放棄するから)といって、遺言書を放置しないように注意してください。

4-2.出席確認の通知が届いても関係なし

遺言書の保管者または相続人が、家庭裁判所に検認の請求をすると、相続人全員に出席確認の通知が届きます。

ただし、相続放棄した人(相続放棄する人)は、通知が届いても関係ありません。
申立人の場合は除きます。

なぜなら、出席できるのは相続人だけなので、相続放棄した人は出席できないからです。

相続放棄する前なら出席できますが、強制ではないので無視しても問題ありません。

5.相続放棄と遺言書に関する注意点

相続放棄と遺言書に関する注意点は3つ

相続放棄と遺言書に関する注意点を3つ説明します。

間違いやすいので、しっかりと確認しておいてください。

5-1.3ヶ月経過すると遺言書どおり相続

相続の開始を知った日から3ヶ月経過すると、単純承認とみなされ相続放棄できません。

そして、単純承認とみなされると、遺言書の記載どおり財産を相続します。

相続するつもりがなければ、期間が経過する前に相続放棄してください。

5-2.遺言書に書いていない財産も相続できない

相続放棄すると相続人ではないので、遺言書に書いていない財産も相続できません。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男
相続財産|田畑・預貯金
遺言書 |田畑は長男に相続させる
相続放棄|長男

田畑が不要なので相続放棄すると、遺言書に書いていない預貯金も相続できないです。

遺言書に書かれた財産だけ、選んで相続放棄はできません。

遺言書の内容だけでなく、相続財産全体で判断してください。

5-3.遺言書が見つかっても撤回できない

相続放棄した後で、自分に有利な遺言書が発見されても、相続放棄の撤回はできません。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |長男・その他7人
相続財産|預貯金
相続放棄|長男
遺言書 |預貯金は長男に相続させる

相続人が多いので相続放棄したら、自分に有利な遺言書が見つかった。

相続放棄の撤回は法律により禁止されているので、遺言書が見つかった場合でも認められません。

相続放棄する前に、遺言書の有無は確認しておいてください。

6.まとめ

今回の記事では「相続放棄と遺言書」について説明しました。

亡くなった人が遺言書で財産の取得者を決めても、相続人は自由に相続放棄できます。

ただし、相続放棄すると、遺言書に書かれていない財産も相続できないです。遺言書記載の財産だけ放棄するわけではありません。

相続放棄した人が取得する予定だった財産は、他の相続人が取得します。複数人であれば遺産分割協議で取得者を決めてください。

相続放棄の撤回は遺言書が理由でも認められません。後悔しないように、しっかりと確認しておきましょう。

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