残念ですが、相続放棄の撤回は認められません。
法律で禁止されているので、どんな事情があっても認められません。
ただし、申述が受理される前なら取り下げは可能です。
相続放棄を検討しているなら、撤回はできないと知っておきましょう。
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1.相続放棄の撤回は法律で禁止
相続放棄の撤回は認められません。
なぜなら、法律で禁止されているからです。
以下は、民法の条文です。
法律で禁止されている以上、相続放棄の撤回は絶対に認められません。
関連記事を読む『【相続放棄に関する民法の条文】その他の法律にも定めあり』
1-1.3ヶ月以内の期間でも撤回できない
民法915条1項の期間内とは、相続放棄の熟慮期間(3ヶ月)のこと。
以下は、民法の条文です。
たとえ相続の開始を知った日から3ヶ月以内であっても、相続放棄が成立した後は撤回できません。
【事例】
知った日|令和6年5月4日
受理日 |令和6年5月28日
財産発見|令和6年6月4日
相続の開始を知った日から1ヶ月以内に相続放棄した。
しかし、相続放棄が受理された数日後に、定期預金が発見された。
財産が発見されたのは、相続の開始を知った日から3ヶ月以内ですが、相続放棄の撤回は認められません
財産が見つかる可能性があるなら、しっかりと調査しておきましょう。
関連記事を読む『相続放棄の期間は3ヶ月以内【期間の開始日が重要】』
1-2.債権者や他の相続人の同意は無関係
相続放棄を撤回することに、債権者や他の相続人が同意していても認められません。
法律で撤回を禁止しているのは、相続関係の安定や信頼が目的なので、同意の有無で結果が変わると混乱が生じるからです。
有効に成立した相続放棄は、利害関係人の同意があっても撤回できません。
2.相続放棄を撤回する事情は考慮されない
相続放棄を撤回したい理由は人により違いますが、どんな事情があったとしても考慮されません。
- プラスの財産が多いと分かった
- 感情的な理由で放棄して後悔した
- 相続順位が変更すると知らなかった
2-1.プラスの財産が多いと分かったケース
相続放棄を撤回したい理由で一番多いのが、プラスの財産が多いと分かったケースです。
- 預貯金口座が見つかった
- 不動産に価値があった
相続放棄した後に定期預金が見つかったや、不動産の購入希望者が現れたなどが考えられます。
または、マイナスの財産が思ったよりも少なかったので、結果としてプラスの財産が多くなった場合。
- 借金は時効により消滅していた
- 借金はすでに支払い済みだった
ただし、どちらの場合でも、相続放棄の撤回は認められません。
2-2.感情的な理由で放棄して後悔したケース
感情的な理由(相続人と仲が悪い)で相続放棄したが、後から考えると失敗だったと思う人もいます。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男
相続財産|不動産・預貯金
相続放棄|二男
相続人同士(兄弟間)の仲が悪いので、遺産分割協議は揉めると考えていた。
揉めてまで相続財産は欲しくなかったので、話し合いをする前に相続放棄を済ませた。
ところが、他の兄弟は冷静であり、相続財産を法律に従って分ける準備をしていた。
一時の感情で相続放棄した場合でも、有効に成立すると撤回できません。
本当に財産を相続するつもりがないのか、今一度考えてください。
2-3.相続順位が変更すると知らなかったケース
相続放棄の結果、相続順位が変更すると知らない人もいます。
実際、自分(自分達)だけが手続きをすれば解決できると考えていたが、後順位に相続権が移ると知って、相続放棄の撤回を相談に来る人がいるからです。
相続放棄の撤回は認められないので、その他の方法で解決を目指すしかありません。
まずは、後順位に連絡を取って、事情の説明から始めましょう。
具体的な解決方法に関しては、下記の記事を参考にしてください。
関連記事を読む『相続放棄で親戚に迷惑をかけたくなければ4つの方法を検討』
3.相続放棄の成立前なら撤回ではない
相続放棄の撤回は認められません。
ただし、相続放棄が成立する前なら、撤回になりません。
- 相続放棄の申述が受理される前
- 相続発生前に相続放棄の約束
3-1.申述の受理前なら申し立ての取り下げ
相続放棄が成立するのは、家庭裁判所に申述が受理された時(審判決定時)です。
したがって、申述が受理される前なら、申し立ての取り下げはできます。
以下は、家事事件手続法の条文です。
家庭裁判所に申述書を提出しても、受理される前なら相続放棄は成立していません。
もし、事情が変わって相続放棄を止めたいなら、今すぐ家庭裁判所に電話してください。受理されると取り下げはできないです。
関連記事を読む『相続放棄の取り下げは可能だが僅かな時間しかなく難しい』
3-2.相続発生前の約束に法律上の拘束力はない
相続発生前に、相続放棄の約束をしていても、法律上は何の拘束力もありません。
相続発生後に考え直して相続するのは自由です。
当然ですが、相続放棄の効力は発生していないので、撤回禁止の規定も適用されません。
関連記事を読む『相続放棄が生前に認められることは無く例外も存在しない』
4.相続放棄の取消しや無効は撤回ではない
非常に紛らわしいのですが、相続放棄の取消しや無効は撤回ではありません。
- 取消し|申述に取消事由がある
- 無効 |申述に無効原因がある
法律で禁止されているのは、有効に成立した相続放棄の撤回です。
4-1.取消事由があれば取り消しは可能
相続放棄の申述に取消事由があれば、取り消しは可能です。
以下は、民法の条文です。
以下は、主な取消事由になります。
- 詐欺または脅迫があった
- 未成年者が法定代理人の同意を得ていない
- 成年被後見人が相続放棄した
- 後見監督人の同意を得ていない
- 保佐人の同意を得ていない
相続放棄の申述自体に取消事由があるので、取り消しは可能です。
ただし、取り消しにも期限があるので、速やかに手続きを行ってください。
関連記事を読む『取消事由に該当すれば相続放棄も取消し可能【債権者は不可】』
4-2.申述に無効原因が存在する
相続放棄の申述に無効原因があれば、無効を主張できます。
ただし、取消しと違い無効の手続きは存在せず、訴訟の中で主張する必要があります。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |長男・二男
相続放棄|二男
長男が財産を独り占めするため、二男の相続放棄申述書を作成して提出しました。
ですが、二男は相続放棄の申述をしていないので、無効を主張できます。
相続放棄の無効に関しては、家庭裁判所の手続きではなく、遺産分割審判や遺産分割訴訟の中で主張してください。
関連記事を読む『相続放棄の無効を争うことは可能!訴訟の中で主張する必要がある』
5.相続放棄の撤回以外で財産を取得する方法
相続放棄した後に財産が見つかっても、撤回は認められません。
したがって、財産を取得するには、撤回以外の方法を考える必要があります。
- 相続人が存在しない|特別縁故者
- 相続人が存在する |贈与
上記の方法が成功する可能性は低いですが、ゼロではないので説明しておきます。
5-1.相続放棄した人が特別縁故者として取得
亡くなった人の相続人が全員相続放棄しているなら、特別縁故者として財産を取得できる可能性はあります。
ただし、相続人であったことは考慮されないので、亡くなった人と特別な縁故が必要です。生前の関係性が重要になるので、一部の相続人しか該当しないでしょう。
亡くなった人と生計を同一としていたや、療養看護をしていたなら、特別縁故者の可能性にかける価値はあります。
相続放棄と特別縁故者に関しては、下記の記事を参考にしてください。
関連記事を読む『特別縁故者には相続放棄をした相続人も要件を満たせば該当する』
5-2.相続人から財産を贈与してもらう
他の相続人が相続放棄していないなら、事情を説明して財産を贈与してもらいましょう。
※後順位が相続した場合を含む。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男
相続財産|預貯金・借金
相続放棄|二男・三男
二男と三男は借金の方が多いと考えたので相続放棄した。
ところが、長男が財産を調査した結果、借金の方が少ないという事実が判明。
長男は財産を1人で相続するが、兄弟間で話し合って贈与するのは自由です。
もちろん、相続した人の同意が必要なので、成功する保障はありません。断れると財産は取得できないので、諦めるしかないです。
6.まとめ
今回の記事では「相続放棄の撤回」について説明しました。
有効に成立した相続放棄は、絶対に撤回できません。法律で禁止されているので、どんな事情があっても認められないです。
ただし、相続放棄の申述書が受理される前なら、申立ての取り下げはできます。
相続放棄の申述に取消事由がある場合や、行為自体が無効の場合は撤回には該当しません。
相続放棄を検討しているなら、絶対に撤回できないと覚えておいてください。