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相続放棄の撤回は認められない!事情に関わらず禁止されている

相続放棄の撤回
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残念ですが、相続放棄の撤回は認められません。

法律で禁止されているので、どんな事情があっても認められません。

ただし、申述が受理される前なら取り下げは可能です。

相続放棄を検討しているなら、撤回はできないと知っておきましょう。

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目次

1.相続放棄の撤回は法律で禁止

相続放棄の撤回は認められません。

相続放棄の撤回

有効に成立した相続放棄の効力を無くすこと

なぜなら、法律で禁止されているからです。

以下は、民法の条文です。

(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。

出典:e-Govウェブサイト(民法919条)

法律で禁止されている以上、相続放棄の撤回は絶対に認められません。

1-1.3ヶ月以内の期間でも撤回できない

民法915条1項の期間内とは、相続放棄の熟慮期間(3ヶ月)のこと。

以下は、民法の条文です。

第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
出典:e-Govウェブサイト(民法15条1項)

たとえ相続の開始を知った日から3ヶ月以内であっても、相続放棄が成立した後は撤回できません。

【事例】

知った日|令和6年5月4日
受理日 |令和6年5月28日
財産発見|令和6年6月4日

相続の開始を知った日から1ヶ月以内に相続放棄した。

しかし、相続放棄が受理された数日後に、定期預金が発見された。

財産が発見されたのは、相続の開始を知った日から3ヶ月以内ですが、相続放棄の撤回は認められません

財産が見つかる可能性があるなら、しっかりと調査しておきましょう。

1-2.債権者や他の相続人の同意は無関係

相続放棄を撤回することに、債権者や他の相続人が同意していても認められません。

法律で撤回を禁止しているのは、相続関係の安定や信頼が目的なので、同意の有無で結果が変わると混乱が生じるからです。

有効に成立した相続放棄は、利害関係人の同意があっても撤回できません。

2.相続放棄を撤回する事情は考慮されない

相続放棄の撤回は事情に関わらず認められない

相続放棄を撤回したい理由は人により違いますが、どんな事情があったとしても考慮されません。

  • プラスの財産が多いと分かった
  • 感情的な理由で放棄して後悔した
  • 相続順位が変更すると知らなかった

2-1.プラスの財産が多いと分かったケース

相続放棄を撤回したい理由で一番多いのが、プラスの財産が多いと分かったケースです。

  • 預貯金口座が見つかった
  • 不動産に価値があった

相続放棄した後に定期預金が見つかったや、不動産の購入希望者が現れたなどが考えられます。

または、マイナスの財産が思ったよりも少なかったので、結果としてプラスの財産が多くなった場合。

  • 借金は時効により消滅していた
  • 借金はすでに支払い済みだった

ただし、どちらの場合でも、相続放棄の撤回は認められません。

2-2.感情的な理由で放棄して後悔したケース

感情的な理由(相続人と仲が悪い)で相続放棄したが、後から考えると失敗だったと思う人もいます。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男
相続財産|不動産・預貯金
相続放棄|二男

相続人同士(兄弟間)の仲が悪いので、遺産分割協議は揉めると考えていた。

揉めてまで相続財産は欲しくなかったので、話し合いをする前に相続放棄を済ませた。

ところが、他の兄弟は冷静であり、相続財産を法律に従って分ける準備をしていた。

一時の感情で相続放棄した場合でも、有効に成立すると撤回できません。

本当に財産を相続するつもりがないのか、今一度考えてください。

2-3.相続順位が変更すると知らなかったケース

相続放棄の結果、相続順位が変更すると知らない人もいます。

実際、自分(自分達)だけが手続きをすれば解決できると考えていたが、後順位に相続権が移ると知って、相続放棄の撤回を相談に来る人がいるからです。

相続放棄の撤回は認められないので、その他の方法で解決を目指すしかありません。

まずは、後順位に連絡を取って、事情の説明から始めましょう。

具体的な解決方法に関しては、下記の記事を参考にしてください。

3.相続放棄の成立前なら撤回ではない

相続放棄の撤回は認められません。

ただし、相続放棄が成立する前なら、撤回になりません。

  • 相続放棄の申述が受理される前
  • 相続発生前に相続放棄の約束

3-1.申述の受理前なら申し立ての取り下げ

相続放棄が成立するのは、家庭裁判所に申述が受理された時(審判決定時)です。

したがって、申述が受理される前なら、申し立ての取り下げはできます。

以下は、家事事件手続法の条文です。

(家事審判の申立ての取下げ)
第八十二条 家事審判の申立ては、特別の定めがある場合を除き、審判があるまで、その全部又は一部を取り下げることができる。
出典:e-Govウェブサイト(家事事件手続法82条1項)

家庭裁判所に申述書を提出しても、受理される前なら相続放棄は成立していません。

もし、事情が変わって相続放棄を止めたいなら、今すぐ家庭裁判所に電話してください。受理されると取り下げはできないです。

注意提出から受理までの期間は家庭裁判所によっても違います。数日で受理されることもあるので、取り下げができる期間はわずかです。

3-2.相続発生前の約束に法律上の拘束力はない

相続発生前に、相続放棄の約束をしていても、法律上は何の拘束力もありません。

相続発生後に考え直して相続するのは自由です。

当然ですが、相続放棄の効力は発生していないので、撤回禁止の規定も適用されません。

4.相続放棄の取消しや無効は撤回ではない

非常に紛らわしいのですが、相続放棄の取消しや無効は撤回ではありません。

  • 取消し|申述に取消事由がある
  • 無効 |効力が発生していない

法律で禁止されているのは、有効に成立した相続放棄の撤回です。

4-1.取消事由があれば取り消しは可能

相続放棄の申述に取消事由があれば、取り消しは可能です。

以下は、民法の条文です。

(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
第九百十九条 相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
2 前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。

出典:e-Govウェブサイト(民法919条2項)

以下は、主な取消事由になります。

  • 詐欺または脅迫があった
  • 未成年者が法定代理人の同意を得ていない
  • 成年被後見人が相続放棄した
  • 後見監督人の同意を得ていない
  • 保佐人の同意を得ていない

相続放棄の申述自体に取消事由があるので、取り消しは可能です。

ただし、取り消しにも期限があるので、速やかに手続きを行ってください。

4-2.相続放棄が無効なら効力は発生していない

相続放棄が無効なら、初めから効力は発生していません。

無効

法律行為の効力は初めから発生していない

相続放棄していないので、撤回する行為自体が存在しません。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |長男・二男
相続放棄|二男

長男が財産を独り占めするため、二男の相続放棄申述書を作成して提出しました。

ですが、二男は相続放棄の申述をしていないので、何の効力も発生していません。

相続放棄の無効に関しては、家庭裁判所の手続きではなく、遺産分割協議や遺産分割訴訟の中で主張します。

5.相続放棄の撤回以外で財産を取得する方法

相続放棄した後に財産が見つかっても、撤回は認められません。

したがって、財産を取得するには、撤回以外の方法を考える必要があります。

  • 相続人が存在しない|特別縁故者
  • 相続人が存在する |贈与

上記の方法が成功する可能性は低いですが、ゼロではないので説明しておきます。

5-1.相続放棄した人が特別縁故者として取得

亡くなった人の相続人が全員相続放棄しているなら、特別縁故者として財産を取得できる可能性はあります。

ただし、相続人であったことは考慮されないので、亡くなった人と特別な縁故が必要です。生前の関係性が重要になるので、一部の相続人しか該当しないでしょう。

亡くなった人と生計を同一としていたや、療養看護をしていたなら、特別縁故者の可能性にかける価値はあります。

相続放棄と特別縁故者に関しては、下記の記事を参考にしてください。

5-2.相続人から財産を贈与してもらう

他の相続人が相続放棄していないなら、事情を説明して財産を贈与してもらいましょう。
※後順位が相続した場合を含む。

【事例】

被相続人|父親
相続人 |長男・二男・三男
相続財産|預貯金・借金
相続放棄|二男・三男

二男と三男は借金の方が多いと考えたので相続放棄した。

ところが、長男が財産を調査した結果、借金の方が少ないという事実が判明。

長男は財産を1人で相続するが、兄弟間で話し合って贈与するのは自由です。

もちろん、相続した人の同意が必要なので、成功する保障はありません。断れると財産は取得できないので、諦めるしかないです。

注意相続ではなく贈与なので、財産額によっては贈与税が発生します。

6.まとめ

今回の記事では「相続放棄の撤回」について説明しました。

有効に成立した相続放棄は、絶対に撤回できません。法律で禁止されているので、どんな事情があっても認められないです。

ただし、相続放棄の申述書が受理される前なら、申立ての取り下げはできます。

相続放棄の申述に取消事由がある場合や、行為自体が無効の場合は撤回には該当しません。

相続放棄を検討しているなら、絶対に撤回できないと覚えておいてください。

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