亡くなった人に借金があれば、ほとんどの相続人は相続放棄を検討します。
相続放棄が認められると、借金がいくらあっても関係ありません。
ただし、相続の開始を知った日から3か月経過すると、相続放棄できなくなるので期間経過には注意してください。
亡くなった人の借金額が不明でも相続放棄の手続きは可能です。
今回の記事では、相続放棄と借金について説明していますので、相続放棄する際の参考にしてください。
目次
1.亡くなった人の借金は相続人が引き継ぐ
亡くなった人の借金は相続人が返済義務を引き継ぎます。
借金が100万円であっても、あるいは1,000万円であっても結論は同じです。
相続したくないのであれば、3か月以内に相続放棄する必要があります。
1-1.離婚した親に借金があれば相続放棄が必要
両親が幼いころに離婚しており、亡くなった父親(母親)とは音信不通だったかもしれません。
ですが、亡くなった父親(母親)に借金があれば、子どもが相続することになります。たとえ50年以上会ったことがなくても、借金の督促状は子どもに届きます。
迷惑だと思うでしょうが、3か月経過してしまうと相続放棄できなくなります。関係ないと無視するのではなく、相続放棄の手続きを済ませてください。
1-2.絶縁状態でも借金があれば相続放棄が必要
亡くなった親や兄弟姉妹と絶縁状態になっている人もいます。
しかし、亡くなった人と絶縁状態であっても、借金は相続人が引き継ぐことになります。たとえ生前に絶縁状を作成していても、相続人であることに変わりはありません。
絶縁しているからといって、借金のお知らせを無視すると相続放棄できなくなります。絶縁していても相続放棄の手続きは必要です。
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2.相続放棄は借金額が不明でもできる
相続放棄するのに借金がいくら以上なければダメという法律はありません。
ですので、亡くなった人の借金額が不明(少額)であっても、相続放棄は問題なく認められます。
実際、私が依頼を受けている事例でも、亡くなった人の借金額は不明という人は多いです。
「借金の存在は知っているが金額は分からない」
「分かっている借金は10万円だが他にも有ると思う」
相続放棄する意思が決まっているなら、わざわざ借金額を調べる必要もありません。
相続放棄の申述書には分かっている範囲で財産を記載するので、借金額が不明であれば「不明」と記載するので大丈夫です。
亡くなった人の借金額が分からなくても、専門家に依頼して問題ありません。
3.共同相続人が相続放棄すると借金の負担額が増える
亡くなった人の借金が少額なので、相続放棄は不要と考える人もいます。
ただし、共同相続人がいる場合は、他の相続人も同じ考えなのか確認しておきましょう。
なぜかというと、他の相続人が相続放棄すると、法定相続分が変わるので借金の負担額も変わるからです。
例えば、亡くなった人の借金が10万円だったとします。相続人は4人いるので、借金は1人当たり2万5,000円相続します。
ですが、3人相続放棄すると、借金は1人で10万円相続することになります。
借金が2万5,000円だと思っていても、他の相続人が相続放棄すると自動的に借金の負担額は増えます。
たとえ亡くなった人の借金が少額であっても、他の相続人が全員相続放棄すれば1人で全額支払うことになります。
プラスの財産が確実に無い場合は、借金の額に関わらず相続放棄している人は多いです。
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4.借金を知らなかった場合は相続放棄できるのか?
亡くなったことは知っていたが、借金の存在は3か月経過してから知った場合、相続放棄できるのかご存知でしょうか。
個々の事例により違うのですが、借金の存在に気付くのが難しかった事情があれば、3か月経過していても相続放棄は可能です。
実際、私が依頼を受けた事例でも、8年前に亡くなった人の相続放棄が認められています。
ただし、無条件で認められるわけではないので、必ず相続放棄の専門家に相談してください。
借金に後から気付いた場合は、3か月経過していても諦めるのではなく、チャレンジすることをお勧めします。
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5.借金を理由に相続放棄するなら注意点もある
相続放棄することにより、亡くなった人の借金は相続しません。
ですが、借金を理由に相続放棄する場合には注意点もあります。
- 相続放棄は撤回できない
- 後順位相続人も相続放棄
- 連帯保証人は請求される
5-1.後から財産が見つかっても相続放棄は撤回できない
相続放棄は後から撤回することができません。
例えば、亡くなった父親に借金(100万円)があったので相続放棄。ところが、後から預貯金(200万円)が見つかりました。
預貯金が見つかったので相続放棄を撤回したいと思っても、絶対に認められることはありません。
借金を理由に相続放棄する場合は、財産が見つかっても撤回できない点に注意してください。
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5-2.後順位相続人も相続放棄しないと借金を請求される
亡くなった人に借金がある場合、先順位相続人だけでなく後順位相続人も相続放棄が必要になります。
なぜなら、先順位相続人が全員相続放棄すると、相続権は後順位相続人に移るからです。後順位相続人が相続放棄しなければ、債権者は後順位相続人に借金を請求します。
借金を相続しないのであれば、後順位相続人も3か月以内に相続放棄の手続きをしましょう。
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5-3.相続放棄しても借金の連帯保証人なら請求される
亡くなった人の連帯保証人になっている場合は、相続放棄しても連帯保証人として借金を請求されます。
例えば、亡くなった父親が借金をする際に、子どもが連帯保証人になっていた場合です。
相続放棄をすると債務者(父親)の地位は相続しませんが、連帯保証人であることに変わりはありません。債権者は連帯保証人(子ども)に借金を請求してきます。
借金を理由に相続放棄する場合は、連帯保証人についても確認しておきましょう。
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6.さいごに
相続放棄と聞けば借金を思い浮かべる人は多いです。
亡くなった人の借金は相続人が支払います。あなたが借りたわけではありませんが、相続人はすべての権利義務を引き継ぐからです。
借金を相続したくないのであれば、3か月以内に相続放棄の手続きをしてください。相続放棄すれば借金を相続することもありません。
借金が少額であっても相続放棄するのは自由です。借金額は相続放棄が認められるかに関係しません。
わざわざ借金額を調べる必要もないので、早めに手続きを進めましょう。