相続放棄の取消しはできるケースがあります。
相続放棄の撤回は認められないのですが、取消事項に該当している場合は別です。
ただし、相続放棄の取消しができる期間も決まっているので、後回しにせず手続きを済ませましょう。
今回の記事では、相続放棄の取消しについて説明しているので、あなたの相続放棄が該当しているか確認してください。
目次
1.相続放棄の申述に取消事由がある
相続放棄の申述に取消事由があれば、相続放棄を取消すことができます。
民法919条で相続放棄の撤回はできないと定めていますが、第2項で取消しができる場合について定めています。
以下が、主な取消事由です。
- 詐欺または脅迫があった
- 成年被後見人が相続放棄した
- 保佐人の同意を得ていない
それぞれ民法の条文で取消しが認められています。
1-1.詐欺または脅迫により相続放棄
第3者の詐欺または脅迫により相続放棄しているなら、相続放棄は取り消すことができます。
例えば、財産を独り占めにしたい他の相続人に脅されて相続放棄をした場合等です。
強迫による相続放棄なので、相続放棄は取り消すことができます。
1-2.成年被後見人が相続放棄をした
後見人は成年被後見人がした行為(日常生活に関する行為を除く)を取消すことができます。
成年被後見人が相続放棄をしているなら、後見人は相続放棄(法律行為)を取消すことができます。
1-3.保佐人の同意を得ずに相続放棄
被保佐人が保佐人の同意を得ずに相続放棄しているなら、保佐人は相続放棄を取消すことができます。
相続放棄は保佐人の同意を要する行為に該当するので、保佐人は相続放棄を取消すことができます。
関連記事を読む『民法13条1項(保佐人の同意が必要な重要な法律行為)』
2.相続放棄の取消し期間は決まっている
相続放棄の申述に取消事由があっても、取消しができる期間は決まっています。
相続放棄の取消期間を過ぎると、取消権は時効により消滅します。
- 追認できるときから6ヶ月経過
- 相続放棄のときから10年経過
上記のどちらかに該当すると、相続放棄は取り消すことができません。
2-1.追認できる時から6ヶ月経過で取消権は消滅
追認できる時から6ヶ月経過すると、相続放棄の取消権は時効により消滅します。
- 追認
- 不完全な法律行為を後から完全に有効にする意思表示のこと
例えば、第3者の詐欺により相続放棄したのであれば、詐欺に気付いてから6ヶ月経過すると取消権は消滅します。
取消権者が相続放棄を放置している以上、相続放棄を認めたと判断されます。
2-2.相続放棄から10年経過で取消権は消滅
相続放棄から10年経過すると、相続放棄は取り消すことができません。
例えば、第3者の詐欺により相続放棄した場合であっても、相続放棄から10年経過すると詐欺に気付いてなくても取消権は消滅します。
相続放棄の取消しが長期間可能になると、他の相続人や債権者に与える影響が大きいからです。
3.相続放棄の取消しも家庭裁判所の手続き
相続放棄の申述が取消事由に該当していても、取り消さなければ相続放棄は有効です。
そして、相続放棄を取り消すには、家庭裁判所に取消しを申述する必要があります。
相続放棄の取消しの申述とは、家庭裁判所に相続放棄取消申述書を提出することです。
家庭裁判所に相続放棄取消申述書を提出すると、家庭裁判所より照会書が届くので、指定期間内に返送してください。
※省略されることもあります。
家庭裁判所に取消事由が認められれば、相続放棄取消申述受理通知書が届きます。
4.相続放棄は詐害行為取消権で取り消せない
相続人(債務者)が相続放棄した場合に、債権者が相続放棄を詐害行為取消権で取消すことはできません。
例えば、亡くなった人に財産があるのに、相続人(債務者)が相続放棄した場合です。
たとえ債務者に返済する財産が無くても、相続放棄の取消しは認められません。
以下は、最高裁判所の判例です。
相続放棄するかどうかは相続人が決めることであり、債権者が相続を強制することはできません。
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5.さいごに
相続放棄の申述が取消事由に該当している場合は、相続放棄を取消すことが可能です。
ただし、相続放棄の取消しができる期間は限られます。
- 取り消しができる時から6ヶ月
- 相続放棄から10年
どちらかの期間を経過すると、相続放棄の取消しをすることはできません。
相続放棄の取消しをしたい場合は、期間経過前に家庭裁判所で手続きをしてください。