失踪宣告により被保険者が死亡とみなされた場合でも、生命保険金の支払い要件は満たせます。
失踪宣告による死亡であっても、生命保険金は受け取れるので安心してください。
ただし、死亡とみなされるまで、保険料の支払いは続ける必要があります。
今回の記事では、失踪宣告と生命保険について説明しているので、保険金の受取を検討しているなら参考にしてください。
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1.失踪宣告でも生命保険金は受け取れる
失踪宣告により生命保険金が受け取れるのは、支払い要件を満たせるからです。
逆にいえば、失踪宣告しなければ、支払い要件が満たせません。
1-1.生死不明では支払い要件を満たせない
被保険者の生死が不明の間は、生命保険金の支払い要件が満たせません。
なぜなら、生命保険金の支払い要件は「被保険者の死亡」だからです。
たとえ生死不明が10年以上であっても、法律上は生存していると扱われるので、生命保険金は支払われません。
支払い要件を満たすには、法律上の死亡が必要になります。
1-2.失踪宣告により被保険者は死亡とみなされる
失踪宣告が認められると、被保険者は死亡とみなされます。
実際の生死は不明ですが、法律上は死亡になるので、生命保険金の支払い要件を満たせます。
失踪宣告による死亡であっても、生命保険金は受け取れるので安心してください。
1-3.戸籍に死亡が記載されたら保険金の請求
失踪宣告の審判が確定したら、市役所等に失踪届を提出してください。
失踪届を提出しなければ、戸籍に失踪宣告(死亡)が記載されないからです。
生命保険会社は戸籍で被保険者の死亡を確認するので、失踪届を提出していなければ、保険金は受け取れません。
以下は、生命保険金を受け取るまでの流れです。
- 失踪宣告の申立て
- 失踪宣告の審判確定
- 市役所等に失踪届の提出
- 保険会社に保険金を請求
生命保険金を受け取るまでには、時間がかかるので注意してください。
関連記事を読む『失踪宣告を戸籍に記載するには失踪届の提出が必要 』
1-4.団体信用生命保険でも保険金は支払われる
被保険者の加入している契約が、団体信用生命保険であっても保険金は支払われます。
一般的な生命保険契約との違いは、受取人が家族ではなく金融機関になっている点です。
被保険者が死亡とみなさると、生命保険会社から金融機関に保険金(住宅ローンの残額)が支払われるので、住宅ローンの返済は完了します。
関連記事を読む『失踪宣告により住宅ローンは支払えるが問題点もある 』
2.失踪宣告と生命保険に関する注意点
失踪宣告による生命保険金の受取を検討しているなら、注意点についても知っておいてください。
- 生命保険契約の継続が必要
- 失踪宣告が認められないリスク
- 普通失踪では特約が適用されない
- 生命保険契約の解約は契約者のみ
それぞれ簡単に説明していきます。
2-1.生命保険契約を継続させる必要がある
失踪宣告により生命保険金を受け取るには、契約を継続させる必要があります。
なぜなら、生死不明者が死亡とみなされても、契約が終了していると保険金は受け取れないからです。
失踪宣告が認められるには、最後に生存が確認できた日から7年以上経過する必要があります。
※特別失踪は除く。
つまり、生命保険契約を7年以上継続させなければ、生命保険金は受け取れません。
2-2.失踪宣告が認められる保障はない
失踪宣告による生命保険金の受取を、過度に期待するのは危険なので注意してください。
なぜかというと、失踪宣告が認められる保障はないからです。
- 7年経過する前に見つかる
- 家庭裁判所の調査で見つかる
失踪宣告を当てにして保険料を払い続けても、生死不明者が見つかれば生命保険金は受け取れません。
実際、私が受けた依頼でも、申立後の調査で見つかったケースはあります。
保険料の支払いを続けるなら、受け取れないリスクもあると知っておきましょう。
関連記事を読む『【失踪宣告の調査は2つある】それぞれ微妙に目的が違う 』
2-3.普通失踪だと特約は適用されない
失踪宣告が普通失踪の場合、生命保険契約に特約が付いていても適用されません。
失踪宣告では死亡原因が不明なので、特約の条件が満たせないからです。
生命保険金の金額を確認する際は、特約分を含まないように注意してください。
関連記事を読む『普通失踪とは生死不明が7年以上の人を死亡とみなす制度 』
2-4.生命保険契約の解約は契約者のみ
失踪宣告できるまで待つよりも、解約返戻金を受け取って生活費に充てたいと考える人もいます。
※契約の内容によって違います。
ただし、契約を解約できるのは契約者なので、家族であっても勝手に解約できません。
どうしても契約を解約したい場合は、生死不明者(契約者)に不在者財産管理人を選任する必要があります。
選任された不在者財産管理人は、家庭裁判所の許可を得て契約を解約できます。
解約返戻金が発生するケースであれば、不在者財産管理人も検討してください。
関連記事を読む『不在者財産管理人の権限外行為許可とは? 』
3.失踪宣告が取り消されると保険金の返還
生死不明者の生存が確認されると、失踪宣告を取消すことになります。
そして、失踪宣告が取り消されると、生命保険金を保険会社に返還する義務が発生します。
以下は、民法の条文です。
生死不明者が生存していれば、生命保険金の支払い要件を満たしていないので、受け取った保険金は返還となります。
3-1.生命保険金が手元に残っていない
失踪宣告が取り消された時点で、受け取った生命保険金が手元に残っていれば、保険会社に返還して問題解決となります。
一方、生命保険金が手元に残っていない場合は、問題が複雑になるの気を付けてください。
民法の条文では、「現に利益を受けている限度においてのみ」返還義務を負うと記載されています。
現に利益を受けているなので、現金が手元に残っていなくても、別の形で残っていれば返還義務が発生します。
例えば、生命保険金で不動産を購入していれば、不動産に形を変えて利益は残っています。
失踪宣告が取り消されたなら、保険会社と返還額について話し合う必要があります。
※金額で揉めたら弁護士の出番。
関連記事を読む『失踪宣告の後に生きていたことが判明すると相続はどうなる 』
3-2.失踪宣告が取り消されるリスク
失踪宣告により生命保険金を受け取っても、後になって取り消されるリスクは常にあります。
ですが、生死不明者の家族が生きていくのに、生命保険金が必要であれば、リスクを気にしても意味がないです。
仮に生命保険金の返還問題が発生したら、保険会社や弁護士と相談して解決しましょう。
関連記事を読む『失踪宣告を取消すには家庭裁判所の手続きが必要 』
4.まとめ
今回の記事では「失踪宣告と生命保険」について説明しました。
生命保険契約の被保険者が生死不明になっても、保険金の支払い要件は満たせません。
支払い要件を満たすには、失踪宣告により死亡とみなす必要があります。
被保険者が死亡とみなされると、生命保険金の受取も可能です。
ただし、以下の点には注意してください。
- 生命保険契約を継続させる
- 失踪宣告が認められないリスク
- 契約の解約やは契約者のみ
- 普通失踪では特約が適用されない
失踪宣告が取り消されると、保険金の返還問題も発生します。
失踪宣告を検討しているなら、デメリットも確認しておいてください。