住宅ローンの契約者が行方不明となっても、支払いは免除されません。
失踪者が団体信用生命保険に加入していても、行方不明の間は支給事由に該当しないからです。
生命保険金の支給事由に該当するには、失踪宣告の申立てをして、契約者(失踪者)を死亡とみなす必要があります。
今回の記事では、失踪宣告と住宅ローンについて説明しているので、契約者が行方不明なら参考にしてください。
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1.契約者の失踪と住宅ローンの問題
住宅ローンの契約者が失踪すると、さまざまな問題が発生します。
- 住宅ローンの支払い
- 不動産が処分できない
- 連帯保証人の責任は残る
それぞれ簡単に説明していきます。
1-1.住宅ローンの支払いは免除されない
契約者の失踪で一番困るのが、住宅ローンの支払いです。
住宅ローンの契約者が行方不明になっても、支払いは免除されません。
したがって、不動産が必要であれば、支払いを続けてください。支払いを止めてしまうと、最終的には競売により処分されます。
1-2.所有者が行方不明だと不動産は処分できない
当然ですが、不動産を処分できるのは所有者です。
※共有であれば共有者全員の同意。
住宅ローンの契約者(所有者)が行方不明だと、不動産は処分できません。たとえ住宅ローンの支払いが理由だったとしてもです。
どうしても処分したいのであれば、不在者財産管理人を選任する必要があります。
関連記事を読む『不在者財産管理人が不動産を売却するには許可が必要 』
1-3.連帯保証人としての責任は別問題
契約者と連帯保証人の責任は別問題なので、契約者が失踪しても連帯保証人の責任は残ります。
つまり、家族が連帯保証人になっていると、家族に住宅ローンの請求がきます。支払えなければ、家族の財産も差押えの対象となり得ます。
住宅ローンを完済するまで、連帯保証人の責任は残り続けます。
2.失踪宣告により住宅ローンの問題を解決
失踪者が団体信用生命保険に加入しているなら、失踪宣告により住宅ローンの問題は解決できます。
なぜなら、失踪宣告により失踪者は「死亡とみなされる」からです。
2-1.住宅ローンの契約者が死亡とみなされる
失踪宣告の審判が確定すると、失踪者(契約者)は死亡とみなされます。
以下は、民法の条文です。
法律上、「死亡」と「死亡とみなす」に違いはないので、契約者は死亡したとして手続きを進めます。
2-2.団体信用生命保険で住宅ローンの支払い
失踪宣告により団体信用生命保険の加入者は死亡になるので、生命保険金の支給事由に該当します。
したがって、生命保険金で住宅ローンが支払えます。
契約者の家族が失踪宣告を検討するのも、保険金で住宅ローンを支払うためです。
ただし、失踪宣告が認められるには、生死不明が一定期間必要であり、簡単ではありません。
関連記事を読む『失踪宣告でも生命保険金は受け取れるが契約の継続は必要 』
3.失踪宣告を頼りすぎるのは危険
失踪宣告が認められるための期間は、生死不明になった原因により違います。
一般的な行方不明は普通失踪になります。
したがって、契約者が生死不明になってから、7年間は住宅ローンを支払う必要があります。
※厳密には8年ぐらい必要。
3-1.住宅ローンを払い続ける資力があるか
住宅ローンを支払い続ける資力がなければ、失踪宣告は選ばない方が良いでしょう。
貯金を切り崩して1年・2年支払っても、最終的には滞納になるからです。
※不動産は競売により処分されます。
自分や家族の収入(貯金)で住宅ローンが支払えるなら、失踪宣告を検討する価値があります。
3-2.失踪宣告が認められるとは限らない
失踪宣告まで7年なら支払えると考えた人は、リスクについても知っておいてください。
なぜなら、失踪宣告が認められるとは限らないからです。
- 7年経過する前に見つかる
- 申立後に家庭裁判所が見つける
それぞれ簡単に説明していきます。
7年経過する前に失踪者が見つかる
生死不明の期間が7年経過する前に、失踪者が見つかる(戻ってくる)可能性はあります。
失踪者が見つかるのは喜ばしいのですが、住宅ローンを支払える状態なのかは別問題です。
住宅ローンが支払えないのであれば、失踪宣告以外で解決するしかありません。
申立後に家庭裁判所が失踪者を見つける
失踪宣告の申立てをすると、家庭裁判所も失踪者を探します。
具体的には、以下に情報が登録されていないか照会をかけます。
- 免許センター
- 警察
- ハローワーク
雇用保険から失踪者を見つけるケースはあります。
また、失踪者が見つからなくても、7年以内に記録が残っていれば、失踪宣告の要件が満たせなくなります。
住宅ローンを7年間支払っても、失踪宣告が認められる保障はないです。
関連記事を読む『【失踪宣告の調査は2つある】それぞれ微妙に目的が違う 』
4.失踪宣告の取消しと保険金の問題
失踪宣告により住宅ローンが支払われた場合でも、失踪者(契約者)が生存している可能性はあります。
そして、契約者の生存により、失踪宣告が取り消されると、生命保険金の返還問題が発生します。
関連記事を読む『失踪宣告を取消すには家庭裁判所の手続きが必要 』
4-1.失踪宣告により得た財産の返還義務
失踪宣告が取り消された場合、財産(生命保険金)を返還する義務が発生します。
以下は、民法の条文です。
契約者は死亡していないので、受け取った生命保険金を返還するのは当然です。
契約者の生存を知らなったとしても、返還義務は発生するので注意してください。
4-2.金銭が残っていなくても利益は残っている
失踪宣告により発生した保険金は、住宅ローンの残額に充当しているので、手元には残っていません。
では、保険金を返さなくて良いかというと、そうではありません。
本来であれば、住宅ローンの残額を支払う必要があったのに、失踪宣告により支払わずに済んでいます。
つまり、「支払わなくて済んだ分」が利益として残っているので、保険会社に返還する必要があります。
5.失踪宣告せずに住宅ローンを完済した
失踪宣告せずに住宅ローンを完済した場合、別の問題が発生します。
家族が住宅ローンを支払っても、不動産の名義は行方不明者のままです。住むだけなら問題ありませんが、処分する際には名義を変更する必要があります。
- 不在者財産管理人を選任して買い取る
- 失踪宣告して相続を発生させる
- 共有なら所在不明共有者持分取得
住宅ローンの支払いが済んでも、失踪宣告を利用するケースはあります。どの方法を利用するか、しっかりと考えておきましょう。
6.まとめ
今回の記事では「失踪宣告と住宅ローン」について説明しました。
住宅ローンの契約者が失踪しても、支払いは無くなりません。滞納が続けば、不動産は競売にかけられ処分されます。不動産が必要であれば、住宅ローンの支払いを続けてください。
行方不明が一定期間経過すると、失踪宣告により契約者は死亡とみなされます。団体信用生命保険に加入しているなら、保険金で住宅ローンは支払われます。
ただし、失踪宣告を頼りすぎるのは危険です。途中で見つかる可能性や、申立後に見つかる可能性もあります。失踪者が見つかれば失踪宣告は認められません。
失踪宣告が認められた後に失踪者が見つかると、保険金を返還する必要があります。手元に現金が残っていなくても、住宅ローンの残額分が現存利益になると考えられます。
住宅ローンの契約者が失踪しているなら、今回の記事を参考にしてみてください。
失踪宣告と住宅ローンに関するQ&A
- 住宅ローンついて家族は銀行と交渉できますか?
-
法律上は交渉できないです。
- 認定死亡の場合はどうなりますか?
-
認定死亡でも生命保険金は支払われます。