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失踪宣告の後に生きていたことが判明すると相続はどうなる

失踪宣告の後に生きていることが判明
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失踪宣告を受けた人が生きていた場合、法律関係がどうなるのかはご存知でしょうか。

行方不明者が生きていた場合は、失踪宣告の取消しにより失踪宣告前の状態に戻すことができます。

ただし、取消しにより財産の返還義務などが発生します。

今回の記事では、失踪宣告を受けた人が生きていた場合について説明しているので、失踪宣告を検討しているなら参考にしてください。

1.失踪宣告の取消しが必要

失踪宣告の後に生きていることが判明しても、失踪宣告の効力が消滅するわけではないです。

本人または利害関係人が、家庭裁判所に失踪宣告の取消し請求をする必要があります。失踪宣告が取り消されることにより、失踪宣告前の状態に戻ります。

行方不明者に関する相続も発生しなかったことになります。

ただし、失踪宣告の取消しにより以下の問題が生じます。

  • 取消し前にした行為の効力
  • 受け取った財産の返還

以下の項目では、2つの問題について詳しく説明していきます。

 

2.取消し前の行為に影響は無い

失踪宣告を取消しても、取消し前の行為に影響はありません。

(失踪の宣告の取消し)
第三十二条 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。

出典:e-Govウェブサイト(民法32条)

失踪宣告の取消しにより、すべてが無効になると社会に混乱が生じます。ですので、取消し前に善意でした行為には影響を及ぼしません。

2-1.善意であることが条件

失踪宣告の取消し前にした行為は、善意であることが条件となります。「善意」とは、善い行いという意味ではなく、知らなかったという意味です。

つまり、行方不明者が生きていることを、知らなかったことが条件となります。

2-2.再婚の効力も有効

失踪宣告の後に再婚していれば、取消しがあっても再婚は有効となります。

ただし、再婚した当事者双方が善意である場合です。どちらかが悪意(知っていた)であれば、再婚の効力は失われます。

 

3.受け取った財産に返還義務が生じる

失踪宣告が取り消されると、失踪宣告により受け取った財産を返還する必要があります。なぜなら、死亡により発生する財産は、生存していると発生しないからです。

ただし、返還が必要になるのは、現に利益を受けている限度のみとなります。

(失踪の宣告の取消し)
第三十二条
2 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。

出典:e-Govウェブサイト(民法32条)

現に利益を受けている(現存利益)については、間違えやすいので気を付けてください。

3-1.現存利益は形を変えて残っている

現に利益を受けているとは、同じ形で残っているという意味ではありません。

例えば、失踪宣告により100万円を受け取って、100万円をすべて生活費に使っても現存利益は100万円です。なぜなら、失踪宣告により得たお金を使うことにより、自分のお金を使わずに済んだという利益を得ているからです。

現存利益の判断は非常に難しいので、疑問があれば専門家に相談されることをお勧めします。

3-2.返還問題が生じる財産は主に2つ

失踪宣告の取消しにより、返還の問題が生じる財産は主に2つあります。

  • 生命保険金
  • 相続財産

①生命保険金

死亡により支払われる財産といえば生命保険金です。当然ですが、失踪宣告の取消しにより返還義務が発生します。

生命保険金は高額になりやすいので、返還義務が生じた際は気を付けてください。

また、住宅ローンの団体信用生命保険に加入していると、残存利益が残っているので注意しましょう。

団体信用生命保険
住宅ローンの契約者が死亡した場合、生命保険金で住宅ローンの残額を支払う保険

生命保険金で支払った住宅ローンの残額分が残存利益となります。

②相続財産

相続財産も失踪宣告の取消しにより返還義務が生じます。

ただし、親の失踪宣告により子どもが相続した財産については、親子の問題として解決することが多いでしょう。

 

4.生きていたことが判明する事例

生きていたことが判明する事例で多いのは、失踪宣告を受けた人が戸籍謄本を取得して気付くです。

戸籍の請求で失踪宣告に気付く

何らかの理由で戸籍謄本が必要になり、自分が失踪宣告を受けていることに気付きます。

例えば、生活保護の申請をするケースが考えられます。

行方不明者は日雇い労働で生活をしていることが多いです。なぜなら、普通に働いているなら雇用保険に記録が残るので、家庭裁判所が調べれば分かるからです。

しかし、体力的に働くことが難しくなった場合や、病気や怪我をした場合に生活保護を利用することになります。

生活保護の申請するために戸籍謄本を取得して、自分が失踪宣告を受けていることに気付きます。

 

5.まとめ

失踪宣告により行方不明者は死亡したとみなされます。ですが、後になって生きていたことが判明する場合もあります。

当然に失踪宣告の効力が失われるのではなく、家庭裁判所に取消し請求をする必要があります。

取消しにより失踪宣告前の状態に戻るのですが、問題が生じることもあります。

  • 取消し前にした行為の効力
  • 受け取った財産の返還

取消し前にした行為は、善意であれば影響はありません。受け取った財産については、残存利益があれば返還義務があります。

滅多に失踪宣告の取消しは起きませんが、問題が生じる可能性だけ知っておいてください。