遺産分割協議や不動産売却を行うために、不在者財産管理人を選任するケースは多いです。
しかし、不在者財産管理人の権限は保存行為と管理行為に限られるので、処分行為等を行うには家庭裁判所の「権限外行為許可」を得る必要があります。
許可を得ずにした行為は無権代理となり、効力は無効となるので注意してください。
この記事では、権限外行為許可とは何か、どのような処分行為に許可が必要なのか、申立ての手続きや判断基準について解説します。権限外行為許可の申立てを検討している方は参考にしてください。
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1.不在者財産管理人の権限外行為には許可が必要

不在者財産管理人が権限外行為をするには、家庭裁判所の許可が必要になります。
権限外行為とは、保存行為と管理行為以外の行為です。
家庭裁判所の許可を得ずにした権限外行為は、無権代理なので無効となります。
1-1.保存行為と管理行為のみ権限を有する

不在者財産管理人は権限の定めのない代理人なので、民法により権限が定められています。
(権限の定めのない代理人の権限)
第百三条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
不在者財産管理人に認められる権限は、以下の2つです。
- 保存行為
- 管理行為(利用・改良)
- 保存行為
-
財産の価値を保存し、現状を維持する行為
- 管理行為
-
財産の保存、利用及び改良を目的をする行為
例えば、不在者が所有している不動産の修繕等は保存行為に該当するので、不在者財産管理人の権限で行えます。
不在者財産管理人が保存行為や管理行為をする場合、家庭裁判所の許可は不要です。
関連記事を読む『不在者財産管理人の権限は保存行為と管理行為のみ』
1-2.権限外行為は許可を得てから行う
不在者財産管理人の権限を越える行為が必要な場合、家庭裁判所の許可を得てください。
(管理人の権限)
第二十八条 管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。(省略)
原則として、不在者財産管理人は保存行為と管理行為のみ権限を有していますが、家庭裁判所の許可を得れば権限外行為も可能になります。
権限外行為をしてから許可を得るのではなく、許可を得てから権限外行為をするなので、順番を間違えないよう注意してください。
家庭裁判所の許可を得なければ、不在者財産管理人に権限外行為はできません。
1-3.家庭裁判所の許可を得ないと無権代理
不在者財産管理人が権限外行為(保存行為・管理行為以外)を、家庭裁判所の許可を得ずに行った場合、無権代理となります。
- 無権代理
-
代理権を持たない者が本人の代理人として行った法律行為のこと
(無権代理) 第百十三条 代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。
無権代理は無効となるので、許可を得ていない権限外行為も無効です。
無効な行為により相手方に損害が生じると、損害賠償請求される可能性もあるので注意してください。
2.権限外行為に該当する主な行為
不在者財産管理人の権限外行為に該当する主な行為を、4つ説明していきます。
- 不動産の売却
- 建物の取り壊し
- 遺産分割協議
- 相続放棄
上記以外にも権限外行為はありますので、疑問があれば勝手に行動せず家庭裁判所に確認してください。
2-1.不在者の不動産を売却する
不在者財産管理人が不在者の不動産を売却するには、家庭裁判所の許可を得る必要がります。
なぜなら、不動産の売却は処分行為なので、権限外行為に該当するからです。
▼不動産の概要
不動産 |土地(雑種地)
所有者 |不在者
使用状況|誰も使用していない
不在者の所有する土地が放置されている。
誰も使用していないが固定資産税は発生しており、不在者の財産(預貯金)も少なくなったので、売却を検討している。
不動産を売却する理由や売却金額に関わらず、許可は必要になるので注意してください。
ちなみに、不在者が不動産の共有持分を所有している場合も、同じ手続きが必要になります。
2-2.不在者の建物を取り壊す
不在者財産管理人が不在者の建物を取り壊すには、家庭裁判所の許可を得る必要がります。
なぜなら、取り壊しは処分行為なので、権限外行為に該当するからです。
▼不動産の概要
不動産 |建物※築40年
所有者 |不在者
使用状況|誰も住んでいない
不在者名義の建物が放置されており、誰も住んでおらず老朽化が進んでいるので、取り壊しを検討している。
建物の老朽化が進んでいて価値が低くなっていても、取り壊しには許可が必要です。
ちなみに、建物が未登記であっても、不在者の所有であれば同じ手続きが必要になります。
2-3.遺産分割協議を成立させる
不在者財産管理人が遺産分割協議を行い、協議を成立させるには家庭裁判所の許可を得る必要がります。
なぜなら、遺産分割協議の成立は共有財産(遺産共有)の処分であり、権限外行為に該当するからです。
▼相続の概要
被相続人|父親
相続人 |長男、二男(不在者)
▼相続財産
建物 |300万円
土地 |500万円
預貯金|1,000万円
▼遺産分割協議(案)
長男 |100万円、建物、土地
二男 |900万円
不在者財産管理人と長男は遺産分割について話し合い、二男(不在者)が法定相続分に相当する900万円を取得する分割内容にした。
遺産分割協議(話し合い)をすること自体に許可は不要ですが、協議を成立させるには許可が必要になります。
許可の申立てをする際は遺産分割協議(案)も提出する必要があり、原則として不在者に法定相続分の確保が求められます。
2-4.不在者の代わりに相続放棄をする
不在者財産管理人が相続放棄するには、家庭裁判所の許可を得る必要がります。
なぜなら、相続放棄は財産法上の効果を目的とする行為だからです。
※行為の性質で判断している。
▼相続の概要
被相続人|父親
相続人 |長男、二男(不在者)
▼相続財産
預貯金|100万円
借金 |500万円
父親の相続を放棄しなければ、二男(不在者)は借金を相続することになる。
相続放棄の理由が債務超過(マイナスの方が多い)であれば、許可は問題なく得られます。
一方、債務超過でない場合は、特段の事情が必要になると考えられます。
ちなみに、債務超過なのに相続放棄を怠り不在者に損害が発生した場合、不在者財産管理人が賠償責任を負うという見解もあるので注意してください。
3.不在者財産管理人の権限外行為許可の申立て
家庭裁判所への「不在者財産管理人の権限外行為許可の申立て」について説明していきます。
- 家庭裁判所への申立て手続き
- 家庭裁判所の判断基準は2つ
- 審判書は権限外行為の添付書類
専門家以外が不在者財産管理人に選任している場合は、しっかりと確認しておいてください。
3-1.家庭裁判所への申立て手続き
家庭裁判所への申立て手続きについて説明していきます。
権限外行為許可の申立先は、不在者財産管理人の選任申立てをした家庭裁判所です。
申立てに必要な書類等は以下となります。
- 申立書
- 収入印紙(800円)
- 予納切手※家庭裁判所により違う
- 権限外行為に関する資料
権限外行為に関する資料とは、遺産分割協議書(案)・売買契約書(案)や財産の価格を証明する資料などです。
家庭裁判所から追加書類の提出を求められた場合は、速やかに提出してください。
3-2.家庭裁判所の判断基準は2つある
家庭裁判所が権限外行為に許可するかは、2つの判断基準があります。
- 必要性・相当性が認められるか
- 不在者に明らかな不利益がないか
権限外行為をする必要性・相当性があり、かつ、不在者に明らかな不利益が発生しなければ、許可するというイメージです。
例として、不在者の不動産を売却するケースで説明します。
▼不在者の財産
建物 |500万円
宅地 |800万円
雑種地|500万円
預貯金|5万円
不在者は不動産を有しており、固定資産税が約20万円発生している。
しかし、預貯金は5万円まで減っており、固定資産税を支払えないので、雑種地を売却したいと考えていた。近隣の不動産会社に依頼したところ、500万円で買主が見つかった。
不在者財産管理人は不動産売却の許可を得て、雑種地を売却した。
▼必要性・相当性
不動産を売却しなければ、固定資産税が支払えないので、売却する必要性はある。建物や宅地よりも雑種地の方が、売却する相当性があります。
▼不利益の有無
売却金額は500万円であり、雑種地の時価相当額なので、不在者に明らかな不利益は発生しない。
あくまでも判断基準なので、絶対ではありませんが、家庭裁判所の考え方を知っておいてください。
3-3.審判書が権限外行為の添付書類となる
権限外行為許可審判の申立てが認められると、家庭裁判所から審判書謄本が送られてきます。
許可審判書謄本は権限外行為(遺産分割協議や不動産売買)の添付書類となるので、失くさないよう注意してください。
▼遺産分割協議
不動産|長男
預貯金|二男(不在者)
※不在者財産管理人が参加
遺産分割協議が有効に成立したと証明するには、以下の書類を添付する必要があります。
| 添付書類 | 確認 |
|---|---|
| 戸籍一式 | 相続人 |
| 遺産分割協議書 | 遺産分割内容 |
| 印鑑証明書 | 参加者の意思 |
| 選任審判書謄本 | 不在者財産管理人 |
| 許可審判書謄本 | 権限外行為の許可 |
選任審判書謄本と許可審判書謄本はセットで必要になります。どちらか一方だけでは足りないので、手続きをする際は両方用意してください。
4.権限外行為許可に関するQ&A
不在者財産管理人の権限外行為許可について、よくある質問と回答をまとめました。
権限外行為許可まで、どのくらい時間がかかりますか?
権限外行為の内容に問題がなければ、申立てから1ヶ月もかかりません。
権限外行為許可が認められないケースはありますか?
あります。主に2つのケースです。
- 不在者に明らかな不利益がある場合
- 必要性・相当性が認められない場合
権限外行為許可の申立ては誰がしますか?
不在者財産管理人が申立人となります。
不在者が戻ってきた場合、権限外行為の効力はどうなりますか?
有効です。許可を得て行った権限外行為は、不在者が戻ってきても効力を失いません。
5.まとめ
不在者財産管理人は、原則として保存行為と管理行為の権限しか認められておらず、遺産分割協議への参加や不動産の売却などの処分行為を行うには、家庭裁判所の権限外行為許可を得る必要があります。
許可が得られるかは、以下の2つが判断基準です。
- 必要性・相当性が認められるか
- 不在者に明らかな不利益がないか
権限外行為許可を得ずに処分行為を行った場合、無権代理行為として無効です。不在者財産管理人は不在者の財産を適切に管理する義務があるので、処分行為が必要な場合は必ず事前に許可を得てください。
何が処分行為に該当するか不明であれば、分からないまま進めるのではなく、専門家(弁護士・司法書士)や家庭裁判所に相談しましょう。



