失踪宣告が認められても、戸籍に記載がなければ相続手続では使用できません。
戸籍に失踪宣告を記載するには、申立人による失踪届の提出が必要です。
失踪者の戸籍に「死亡とみなされる日」が記載されたら、相続手続で使用できます。
今回の記事では、失踪宣告と戸籍について説明しているので、疑問を解消する参考にしてください。
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1.失踪宣告の審判確定後に失踪届
失踪宣告を戸籍に記載するには、役所に失踪届の提出が必要です。
ただし、失踪届を提出できるのは、失踪宣告の審判確定後になります。
間違えやすいのですが、「審判決定」ではなく「審判確定」です。
1-1.審判決定の告知から2週間経過後に審判確定
家庭裁判所から審判書謄本が送られてきても、審判は確定していません。
失踪宣告の審判が確定するのは、審判決定の告知から2週間経過後です。
令和6年2月5日に審判が決定し、2月6日に審判書謄本が送達されました。
初日不算入により翌日(2月7日)から2週間が即時抗告の期間です。
期間満了日(2月20日)の翌日(2月21日)が審判確定日となります。
失踪宣告の審判に不服がある人は、2週間以内であれば即時抗告ができます。
関連記事を読む『失踪宣告の流れ|審判確定までには10ヶ月から1年ぐらい必要 』
1-2.家庭裁判所に確定証明書を請求
通常、審判書謄本と一緒に確定証明書の請求書が入っています。
確定証明書は失踪届を提出する際に必要なので、前もって家庭裁判所に請求してください。
審判確定前に請求した場合でも、審判確定後に郵送してくれます。
2.失踪届で戸籍に失踪宣告が記載される
失踪宣告の審判が確定しても、戸籍は自動的に変更されません。
生死不明者の戸籍に失踪宣告を記載するには、申立人が失踪届を提出する必要があります。
2-1.審判確定日から10日以内に届出
失踪届の届出期間は法律により、審判確定日から10日以内と決まっています。
以下は、戸籍法の条文です。
以下は、失踪宣告に63条1項の規定を準用したものです。
失踪宣告の裁判が確定したときは、裁判を請求した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
失踪届の届出先は、以下のどちらかの市区町村役場です。
- 失踪者の本籍地
- 申立人の住所地
すぐに届出できるように、前もって必要な書類等を準備しておきましょう。
関連記事を読む『失踪宣告の期間は複数あり起算日や期限もそれぞれ違う』
2-2.失踪届の提出に必要な書類等を準備
失踪宣告の審判が確定する前に、届出に必要な書類は準備しておきましょう。
- 失踪届の届出書
- 審判書謄本
- 確定証明書
失踪届の届出書
失踪届の届出書は役所にありますので、前もって確認しておいてください。
※届出書は全国共通です。
届出人とは、失踪宣告の申立人のことです。
「死亡とみなされる年月日」と「審判確定の年月日」は、審判書謄本と確定証明書を確認すれば分かります。
失踪宣告の審判書謄本
失踪宣告の審判が決定すると、家庭裁判所から審判書謄本が郵送されます。
以下は、審判書謄本で重要な部分です。
上記申立人からの失踪宣告申立事件について、当裁判所は、家事事件手続法148条3項の規定による公告の手続きをした上で、不在者は平成○○年○月○○日以来7年以上生死が分からないものと認め、次のとおり審判する。
上記の日付に7年を足した日が「死亡とみなされる日」です。
審判書に 記載された日 | 死亡と みなされる日 |
---|---|
平成20年9月18日 | 平成27年9月18日 |
平成25年10月23日 | 令和2年10月23日 |
平成27年7月12日 | 令和4年7月12日 |
審判書謄本には「死亡とみなされる日」が記載されていないので、失踪届に記入する際は注意してください。
関連記事を読む『失踪宣告による死亡日はいつなのか|相続発生日となるので重要 』
失踪宣告の確定証明書
失踪宣告の審判確定証明書が届いたら、審判確定日(確定年月日)を確認して失踪届に記入してください。
以下は、確定証明書で重要な部分です。
審判年月日 令和6年○月○日
確定年月日 令和6年○月○日
失踪届には確定年月日の日付を記入してください。審判年月日ではないので注意してください。
2-3.失踪届の提出は届出人以外でも大丈夫
失踪届の届出人は申立人ですが、役所に提出するのは誰でも大丈夫です。
届出人が忙しくて提出できないなら、家族が代わりに提出して問題ありません。
ちなみに、届出人以外が提出する場合でも、委任状は必要ないです。代理人ではなく使者として提出します。
3.戸籍の記載事項(失踪宣告)を確認
失踪届を提出すると戸籍の記載が変わるので、記載事項を確認しておきましょう。
何が変わるかというと、戸籍の身分事項欄に失踪宣告が記載され、失踪宣告に関する事項も記載されます。
以下は、戸籍の記載例です。
戸籍に死亡とみなされる日が記載されることで、戸籍を相続手続で使用できます。
死亡届を提出した場合との違いについては、下記の記事で詳細に説明しています。
関連記事を読む『死亡届により死亡が戸籍に反映される|死亡事項を図を用いて説明』
4.相続手続では失踪宣告が記載された戸籍を使用
死亡とみなされる日が記載された戸籍謄本等は、失踪者に関する相続手続で使用します。
- 銀行口座の解約等
- 相続登記の申請
- 遺族年金の支給開始
- 生命保険金の受け取り
上記の手続きをするには、失踪者の戸籍謄本等が必要です。
4-1.戸籍への記載には時間がかかる
役所に失踪届を提出しても、すぐに戸籍が変更されるわけではありません。
一般的には、提出して1週間から10日ほどかかります。
相続手続きを早く進めたい気持ちは分かりますが、一定期間経過してから戸籍を請求してください。
4-2.戸籍を取得したら記載を確認
失踪届の提出後に戸籍を取得したら、必ず「死亡とみなされる日」を確認してください。
失踪宣告に関する事項が記載されていなければ、相続手続きでは使用できません。
相続手続きで使用するのは、「死亡とみなされる日」が記載された戸籍です。
5.まとめ
今回の記事では「失踪宣告と戸籍」について説明しました。
失踪宣告の審判が確定したら、申立人は役所に失踪届を提出してください。
失踪届には「死亡とみなされる日」と「審判確定日」を記入するので、審判書謄本と確定証明書で確認します。
役所に失踪届を提出して、1週間から10日ほどで戸籍に失踪宣告が記載されます。
相続手続きで戸籍を取得した場合は、必ず「死亡とみなされる日」を確認してください。記載がなければ相続手続で使用できません。
失踪宣告と戸籍に関するQ&A
- 失踪宣告が戸籍に記載されているか分かりません。
-
役所へ戸籍を請求する際に聞けば教えてくれます。
- 役所に提出した審判書謄本は原本還付できますか?
-
できないそうです。