相続手続をするのに遺産分割協議書を作成したいが、行方不明者がいて困っていませんか。
たとえ行方不明者の法定相続分が少しだったとしても、遺産分割協議から除外できません。
相続人の中に行方不明者がいるなら、先に別の手続きをする必要があります。
- 不在者財産管理人の選任申立て
- 失踪宣告の申立て
どちらの方法でも、最終的に遺産分割協議書を作成することは可能です。
ただし、デメリットもあるので、どちらを選ぶかは十分に気を付けてください。
今回の記事では、行方不明者がいる場合の遺産分割協議について説明しているので、相続の悩みを解決する参考にしてください。
目次
1.行方不明者でも遺産分割協議から除外できない
遺産分割協議書を作成するには、遺産分割協議が成立している必要があります。
そして、遺産分割協議の成立には、相続人全員の同意が必要です。
相続人の中に行方不明者がいると、相続人全員の同意が得られません。たとえ行方不明者の法定相続分が少なくても、行方不明者の同意がなければ遺産分割協議は不成立です。
相続人の中に行方不明者がいるなら、遺産分割協議をするために別の手続きが必要になります。
- 不在者財産管理人を選任して代わりに参加
- 失踪宣告をして行方不明者を死亡とみなす
次章からは、それぞれの方法について説明していきます。
2.行方不明者の財産管理人が遺産分割協議に参加
まずは、不在者財産管理人を選任して、行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加してもらう方法から説明します。
2-1.遺産分割協議書には不在者財産管理人が署名捺印
共同相続人は利害関係人として、不在者財産管理人の選任申立てができます。
なぜなら、不在者財産管理人が選任されなければ、いつまで経っても遺産分割協議ができないからです。
不在者財産管理人が選任されると、行方不明者に代わって遺産分割協議に参加します。遺産分割協議の成立要件である、相続人全員の参加を満たすことができます。
遺産分割協議が成立すれば、不在者財産管理人が遺産分割協議書に署名捺印します。
関連記事を読む『不在者財産管理人の選任申立て【手続きには数ヶ月かかる】』
2-2.不在者財産管理人の選任にはデメリットもある
不在者財産管理人を選任すると、行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加します。
ただし、不在者財産管理人にはデメリットもあります。
- 不在者財産管理人の申立てに予納金
- 行方不明者に法定相続分を確保
簡単にですが、説明していきます。
行方不明者の財産が少なければ予納金の負担
不在者財産管理人の選任申立てをする際に、家庭裁判所から予納金(20万~100万円)を求められる可能性があります。
予納金の額は行方不明者の財産によっても変わりますが、預貯金等が少なければ高額になりやすいです。
予納金を負担するのは申立人なのでデメリットになります。
関連記事を読む『不在者財産管理人の予納金は申立人の負担となる』
遺産分割協議で行方不明者に法定相続分を確保
原則として、不在者財産管理人は行方不明者のために、遺産分割協議で法定相続分を確保します。行方不明という理由では、行方不明者の取得分をゼロにはできません。
遺産分割の対象が預貯金等であれば分割できますが、不動産であれば代償分割にするなどの対策が必要です。
ただし、行方不明者の取得額が少額であれば、帰来時弁済型の遺産分割も可能になります。
関連記事を読む『【帰来時弁済型の遺産分割とは】不在者の帰来時に代償金を支払う』
3.行方不明者を死亡とみなし遺産分割協議から除く
次に、失踪宣告により行方不明者を死亡とみなして、遺産分割協議から除く方法について説明します。
3-1.死亡とみなされると遺産分割協議の参加者ではない
共同相続人が長期間(7年以上)行方不明になっているなら、失踪宣告により死亡とみなすことができます。
※特別失踪は1年以上。
共同相続人は死亡とみなされるので、遺産分割協議の参加者ではなくなります。
では、誰が遺産分割協議に参加するかというと、死亡とみなされた行方不明者の相続人です。
死亡とみなされた行方不明者の相続人が複数人存在するなら、相続人全員が遺産分割協議の参加者となります。
関連記事を読む『失踪宣告の手続き|申立ての要件を満たしているか』
3-2.失踪宣告の申立てにはデメリットもある
失踪宣告が認められると、行方不明者は遺産分割協議の参加者ではありません。
ただし、失踪宣告の申立てにはデメリットもあります。
- 利害関係人しか申立てできない
- 失踪宣告が認められるまで約1年
簡単にですが、説明していきます。
失踪宣告の申立ては利害関係人しかできない
失踪宣告の申立ては、誰でも出来るわけではなく、利害関係人に該当する人だけです。
共同相続人が利害関係人に該当しないケースもあるので、常に失踪宣告の申立てが認められるとは限りません。
失踪宣告の利害関係人に該当しない場合は、不在者財産管理人を検討しましょう。
関連記事を読む『失踪宣告の利害関係人の範囲|申立てができる人は限られる』
失踪宣告が認められるまで約1年かかる
失踪宣告の申立てをしてから、実際に死亡とみなされるまで約1年かかります。
つまり、遺産分割協議の参加者が変更するまで、約1年かかるということです。
失踪宣告では遺産分割協議を、すぐに成立させることはできません。
関連記事を読む『失踪宣告の流れ|審判確定までには8ヶ月から1年ぐらい必要』
4.遺言書なら行方不明者と遺産分割協議の問題は防げる
もし相続発生前であれば、遺言書を作成することで、行方不明者と遺産分割協議の問題を防げます。
なぜなら、亡くなった人が遺言書を作成しておけば、遺産分割協議は必要がないからです。
※遺言書の内容に問題があれば別です。
たとえ相続人の中に行方不明者がいても、遺言書の内容にしたがって相続手続をすれば問題ありません。
推定相続人の中に行方不明者がいるなら、遺言書を作成した方が費用面でも得になります。
遺言書には遺産分割協議を省くというメリットもあるので、財産額に関わらず作成しておきましょう。
5.さいごに
今回の記事では「行方不明者がいる場合の遺産分割協議」について説明しました。
相続人の中に行方不明者がいると、遺産分割協議が成立しません。当然ですが、遺産分割協議書の作成もできません。
遺産分割協議を成立させるには、別の手続きを済ませる必要があります。
- 不在者財産管理人を選任して代わりに参加
- 失踪宣告により行方不明者を死亡とみなす
どちらの方法でも遺産分割協議は成立します。
ただし、どちらの方法にもデメリットはあるので、相続人同士で話し合って決めてください。