高齢者消除と失踪宣告は、行方不明者に関係する手続です。
ですが、2つの手続きは目的が違うので、要件や効力にも違いがあります。
行方不明者に関する戸籍を取得するのであれば、違いについて知っておいてください。
今回の記事では、高齢者消除と失踪宣告の違いについて説明しているので、悩みを解決する参考にしてください。
1.高齢者消除と失踪宣告では目的が違う
高齢者消除と失踪宣告の違い1つ目は、目的です。
- 高齢者消除は戸籍上の整理
- 失踪宣告は行方不明者の死亡
高齢者消除と失踪宣告では、目的が違います。
1-1.高齢者消除は戸籍の整理が目的
高齢者消除の目的は、戸籍の整理です。
行方不明者が生存していると考えられない年齢になっても、死亡届(失踪届)が提出されない限り、戸籍はいつまでも残り続けます。
そこで、戸籍を整理するため、高齢者消除が実務上認められています。
戸籍に高齢者消除が記載されると、行方不明者は除籍されるので、戸籍を整理することが可能です。
1-2.失踪宣告は行方不明者の死亡が目的
失踪宣告の目的は、行方不明者の死亡です。
行方不明者の死亡が確認できない限り、何十年経過しても戸籍上は生存扱いとなります。
そこで、行方不明者を死亡とみなすため、家庭裁判所に失踪宣告の申立てが可能です。
失踪宣告の審判確定後に、失踪届を市役所に提出すると、行方不明者は死亡により戸籍から除籍されます。
関連記事を読む『失踪宣告による死亡日はいつなのか|相続発生日となるので重要』
2.高齢者消除と失踪宣告では対象者の年齢が違う
高齢者消除と失踪宣告の違い2つ目は、対象者の年齢です。
- 高齢者消除は90歳以上が対象
- 失踪宣告の対象に年齢要件はない
高齢者消除と失踪宣告では、対象者の年齢に違いがあります。
2-1.高齢者消除は90歳以上が対象となる
高齢者消除という言葉どおり、高齢者が対象になります。
何歳から対象になるかというと、90歳以上の行方不明者です。
- 90歳以上100歳未満
- 100歳以上
- 120歳以上
年齢により高齢者消除の要件は違いますが、最低でも90歳以上からが高齢者消除の対象となります。
関連記事を読む『高齢者消除の対象は120歳以上だけでなく他の年齢も対象となる』
2-2.失踪宣告の対象に年齢要件はない
失踪宣告の対象となる行方不明者に、年齢要件はありません。
その代わり、行方不明期間に要件があります。
たとえ行方不明者が100歳以上であっても、行方不明期間を満たしていなければ、失踪宣告は利用できません。
一方、行方不明期間を満たしていれば、行方不明者が20歳代でも30歳代でも失踪宣告は可能です。
3.高齢者消除と失踪宣告では相続の開始に違い
高齢者消除と失踪宣告の違い3つ目は、相続の開始です。
- 高齢者消除は死亡の推定
- 失踪宣告は死亡とみなす
高齢者消除と失踪宣告では、相続の開始に違いがあります。
3-1.高齢者消除されても相続は開始しない
行方不明者の戸籍に高齢者消除が記載されても、相続は開始しません。
なぜなら、高齢者消除されても、行方不明者に死亡の効力は発生しないからです。あくまでも、戸籍上の整理をするため、死亡している可能性が高い高齢者を除籍しています。
行方不明者が死亡していない以上、高齢者消除されても相続は開始しないです。
関連記事を読む『高齢者消除では相続を証明できないので相続手続もできない』
3-2.失踪宣告により相続は開始する
失踪宣告により行方不明者の相続は開始します。
なぜなら、失踪宣告の審判が確定すると、行方不明者は死亡とみなされるからです。
行方不明者の戸籍にも「死亡とみなされた日」が記載されるので、相続手続でも使用できます。
行方不明者の相続を開始させたいなら、失踪宣告の申立てを検討しましょう。
関連記事を読む『失踪宣告により相続が開始する|相続人の変更に注意!』
4.高齢者消除と失踪宣告では取消方法が違う
高齢者消除と失踪宣告の違い4つ目は、取消方法です。
- 高齢者消除は届出をするだけ
- 失踪宣告は取消しの審判が必要
高齢者消除と失踪宣告では、取消方法に違いがあります。
4-1.高齢者消除は届出により訂正される
高齢者消除の記載がされた後で、行方不明者の死亡が確認されたり、失踪宣告が確定することもあります。
そして、行方不明者の死亡届(失踪届)が提出された場合、高齢者消除は錯誤により訂正されます。
市役所等の手続きとして訂正されるので、届出人が何かするわけではありません。
4-2.失踪宣告を取消すには審判が必要
失踪宣告の審判が確定した後で、行方不明者の生存または死亡が確認されることもあります。
ただし、行方不明者の生存(死亡)が確認できても、失踪宣告の記載は削除されません。
失踪宣告を取消すには、家庭裁判所に失踪宣告の取消しを申し立てる必要があります。取消しの審判が確定すれば、戸籍から失踪宣告の記載を削除できます。
関連記事を読む『失踪宣告を取消すには家庭裁判所の手続きが必要』
5.まとめ
今回の記事では「高齢者消除と失踪宣告の違い」について説明しました。
高齢者消除 | 失踪宣告 | |
---|---|---|
目的 | 戸籍の整理 | 死亡とみなす |
年齢 | 90歳以上 | 無し |
相続 | × | ○ |
取消 | 届出 | 審判 |
高齢者消除の目的は、戸籍の整理です。失踪宣告の目的は、行方不明者を死亡とみなすことです。
高齢者消除は戸籍の整理をしているだけなので、行方不明者の相続は発生しません。失踪宣告は行方不明者を死亡とみなすので、相続が発生します。
高齢者消除を取消すには、届出をするだけで訂正されます。失踪宣告を取消すには、家庭裁判所の審判が必要です。
高齢者消除と失踪宣告は行方不明者に関する手続ですが、内容はまったく違うので確認しておいてください。
高齢者消除と失踪宣告に関するQ&A
- 高齢者消除されている人に失踪宣告できますか?
-
できます。
- 高齢者消除が記載された戸籍で相続登記できますか?
-
できないです。