生死不明者が失踪宣告により死亡とみなされた場合でも、要件を満たしていれば遺族に遺族年金が支給されます。
ただし、受給要件を判断する日が、通常の死亡とは違います。
また、失踪宣告による遺族年金についても、消滅時効の規定は適用されるので、注意が必要です。
今回の記事では、失踪宣告と遺族年金について説明しているので、生死不明者がいるなら参考にしてください。
目次
1.失踪宣告による遺族年金の要件判断日
失踪宣告により死亡とみなされた場合でも、要件を満たしていれば遺族年金は支給されます。
ただし、要件を満たしているか判断する時期が、通常の死亡とは違います。
以下は、国民年金法の条文です。
上記をまとめると、以下のようになります。
関連記事を読む『失踪宣告により生死不明者は死亡とみなされる【まとめ記事】』
1-1.行方不明になった日で判断する要件
行方不明になった日で判断する要件は、以下の3つです
- 保険料納付要件(行方不明になった日の前日)
- 生計維持関係(行方不明になった当時)
- 被保険者の資格(行方不明になった日)
上記については、死亡日を行方不明になった日と読み替えて、遺族年金の要件を判断します。
なぜなら、死亡とみなされる日(死亡日)で判断すると、保険料納付要件や生計維持関係を満たせないからです。
例えば、被保険者が7年以上生死不明であれば、死亡当時に生計維持関係は成立しません。
残された家族が遺族年金を受給できるように、行方不明になった日で判断します。
1-2.死亡とみなされる日で判断する要件
死亡とみなされる日で判断する要件は、以下の3つです。
- 身分関係
- 年齢
- 障害の状態
遺族年金は死亡により支給されるので、身分関係や年齢等は死亡とみなされる日で判断します。
例えば、死亡とみなされた人に子どもがいる場合、年齢(18歳未満)は行方不明時ではなく、死亡とみなされる日の年齢です。
行方不明時や審判確定日で計算すると年齢を間違えるので、死亡とみなされる日で計算してください。
ちなみに、普通失踪と特別失踪では、死亡とみなされる日が違います。
死亡とみなされる日については、下記の記事で説明しています。
関連記事を読む『失踪宣告による死亡日はいつなのか|相続発生日となるので重要』
2.失踪宣告による遺族年金にも消滅時効
遺族年金を受給する権利にも、消滅時効が定められています。
- 消滅時効
- 一定期間を経過すると権利が消滅すること
遺族年金については、5年間請求しなければ時効により消滅します。
関連記事を読む『遺族年金の消滅時効は5年|経過していても諦めずに請求』
2-1.死亡とみなされる日の翌日から時効がスタート
失踪宣告による遺族年金は、死亡とみなされる日の翌日から消滅時効がスタートします。行方不明になった日や審判確定日ではありません。
ただし、死亡とみなされる日の翌日から5年経過していても、請求時から5年に遡って遺族年金は請求できます。
例えば、失踪宣告の審判が確定した時点で、死亡とみなされる日から6年経過していた場合。
遡って請求できる遺族年金は、請求時から5年分です。前半の約1年は時効により消滅しています。
失踪宣告により遺族年金が支給される場合、行方不明の期間によっては時効消滅する部分も発生します。
2-2.死亡一時金は審判確定日の翌日から2年で時効
遺族年金と死亡一時金では、失踪宣告に関する消滅時効が違います。
- 時効期間:2年
- 時効の起算日:審判確定日の翌日
消滅時効の期間だけでなく、時効の起算日も違います。
時効期間 | 起算日 | |
---|---|---|
遺族年金 | 5年 | 死亡とみなす日の翌日 |
死亡一時金 | 2年 | 審判確定日の翌日 |
失踪宣告により死亡一時金が受給できる場合は、2年経過する前に請求してください。
関連記事を読む『【死亡一時金の時効は2年】死亡日の翌日からスタートする』
3.死亡の推定だと遺族年金の支給が早い
生死不明になった原因によっては、失踪宣告よりも早く遺族年金が支給されます。
なぜなら、死亡の推定という規定があるからです。
以下は、国民年金法の条文です。
上記を分かりやすく説明すると、以下のようになります。
死亡が確認できなくても、死亡と推定して遺族年金を支給する規定です。遺族年金の要件は、推定された死亡日で判断します。
ちなみに、事故による生死不明には、認定死亡という規定もあるので、失踪宣告との違いを確認しておいてください。
関連記事を読む『【認定死亡と失踪宣告の違い】4つのポイントで比較説明』
4.まとめ
今回の記事では「失踪宣告と遺族年金」について説明しました。
失踪宣告により死亡とみなされた場合でも、要件を満たせば遺族年金を受給できます。
ただし、要件判断日が通常の死亡とは違います。
納付要件 | 行方不明日の前日 |
生計維持関係 | 行方不明時 |
被保険者の資格 | 行方不明日 |
身分関係 | 死亡とみなされる日 |
年齢 | 死亡とみなされる日 |
障害の状態 | 死亡とみなされる日 |
遺族年金の受給要件を満たしている場合、消滅時効にも気を付ける必要があります。
遺族年金の消滅時効は、死亡とみなされる日の翌日からスタートします。審判確定日ではないので注意してください。