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失踪宣告による死亡でも遺族年金は受給できる

失踪宣告と遺族年金
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生死不明者が失踪宣告により死亡とみなされた場合でも、要件を満たしていれば遺族に遺族年金が支給されます。

ただし、受給要件を判断する日が、通常の死亡とは違います。

また、失踪宣告による遺族年金についても、消滅時効の規定は適用されるので、注意が必要です。

今回の記事では、失踪宣告と遺族年金について説明しているので、生死不明者がいるなら参考にしてください。

1.失踪宣告による遺族年金の要件判断日

失踪宣告により死亡とみなされた場合でも、要件を満たしていれば遺族年金は支給されます。

ただし、要件を満たしているか判断する時期が、通常の死亡とは違います。

以下は、国民年金法の条文です。

(失踪宣告の場合の取扱い)
第十八条の四 失踪の宣告を受けたことにより死亡したとみなされた者に係る死亡を支給事由とする給付の支給に関する規定の適用については、第三十七条、第三十七条の二、第四十九条第一項、第五十二条の二第一項及び第五十二条の三第一項中「死亡日」とあるのは「行方不明となつた日」とし、「死亡の当時」とあるのは「行方不明となつた当時」とする。ただし、受給権者又は給付の支給の要件となり、若しくはその額の加算の対象となる者の身分関係、年齢及び障害の状態に係るこれらの規定の適用については、この限りでない。

出典:e-Govウェブサイト(国民年金法18条の4)

上記をまとめると、以下のようになります。

失踪宣告による遺族年金の要件判断時期

1-1.行方不明になった日で判断する要件

行方不明日で判断する遺族年金の受給要件

行方不明になった日で判断する要件は、以下の3つです

  • 保険料納付要件(行方不明になった日の前日)
  • 生計維持関係(行方不明になった当時)
  • 被保険者の資格(行方不明になった日)

上記については、死亡日を行方不明になった日と読み替えて、遺族年金の要件を判断します。

なぜなら、死亡とみなされる日(死亡日)で判断すると、保険料納付要件や生計維持関係を満たせないからです。

例えば、被保険者が7年以上生死不明であれば、死亡当時に生計維持関係は成立しません。

残された家族が遺族年金を受給できるように、行方不明になった日で判断します。

1-2.死亡とみなされる日で判断する要件

死亡とみなされる日で判断する遺族年金の受給要件

死亡とみなされる日で判断する要件は、以下の3つです。

  • 身分関係
  • 年齢
  • 障害の状態

遺族年金は死亡により支給されるので、身分関係や年齢等は死亡とみなされる日で判断します。

例えば、死亡とみなされた人に子どもがいる場合、年齢(18歳未満)は行方不明時ではなく、死亡とみなされる日の年齢です。

行方不明時や審判確定日で計算すると年齢を間違えるので、死亡とみなされる日で計算してください。

ちなみに、普通失踪と特別失踪では、死亡とみなされる日が違います。

死亡とみなされる日については、下記の記事で説明しています。

 

2.失踪宣告による遺族年金にも消滅時効

遺族年金を受給する権利にも、消滅時効が定められています。

消滅時効
一定期間を経過すると権利が消滅すること

遺族年金については、5年間請求しなければ時効により消滅します。

2-1.死亡とみなされる日の翌日から時効がスタート

失踪宣告による遺族年金は、死亡とみなされる日の翌日から消滅時効がスタートします。行方不明になった日や審判確定日ではありません。

ただし、死亡とみなされる日の翌日から5年経過していても、請求時から5年に遡って遺族年金は請求できます。

例えば、失踪宣告の審判が確定した時点で、死亡とみなされる日から6年経過していた場合。

遡って請求できる遺族年金は5年分

遡って請求できる遺族年金は、請求時から5年分です。前半の約1年は時効により消滅しています。

失踪宣告により遺族年金が支給される場合、行方不明の期間によっては時効消滅する部分も発生します。

2-2.死亡一時金は審判確定日の翌日から2年で時効

遺族年金と死亡一時金では、失踪宣告に関する消滅時効が違います。

  • 時効期間:2年
  • 時効の起算日:審判確定日の翌日

消滅時効の期間だけでなく、時効の起算日も違います。

失踪宣告による遺族年金と死亡一時金
時効期間 起算日
遺族年金 5年 死亡とみなす日の翌日
死亡一時金 2年 審判確定日の翌日

失踪宣告により死亡一時金が受給できる場合は、2年経過する前に請求してください。

 

3.死亡の推定だと遺族年金の支給が早い

生死不明になった原因によっては、失踪宣告よりも早く遺族年金が支給されます。

なぜなら、死亡の推定という規定があるからです。

以下は、国民年金法の条文です。

(死亡の推定)
第十八条の三 船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた際現にその船舶に乗つていた者若しくは船舶に乗つていてその船舶の航行中に行方不明となつた者の生死が三箇月間分らない場合又はこれらの者の死亡が三箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期が分らない場合には、死亡を支給事由とする給付の支給に関する規定の適用については、その船舶が沈没し、転覆し、滅失し、若しくは行方不明となつた日又はその者が行方不明となつた日に、その者は、死亡したものと推定する。航空機が墜落し、滅失し、若しくは行方不明となつた際現にその航空機に乗つていた者若しくは航空機に乗つていてその航空機の航行中に行方不明となつた者の生死が三箇月間分らない場合又はこれらの者の死亡が三箇月以内に明らかとなり、かつ、その死亡の時期が分らない場合にも、同様とする。

出典:e-Govウェブサイト(国民年金法18条の3)

上記を分かりやすく説明すると、以下のようになります。

死亡の推定による遺族年金の支給

死亡が確認できなくても、死亡と推定して遺族年金を支給する規定です。遺族年金の要件は、推定された死亡日で判断します。

ちなみに、事故による生死不明には、認定死亡という規定もあるので、失踪宣告との違いを確認しておいてください。

 

4.まとめ

今回の記事では「失踪宣告と遺族年金」について説明しました。

失踪宣告により死亡とみなされた場合でも、要件を満たせば遺族年金を受給できます。

ただし、要件判断日が通常の死亡とは違います。

失踪宣告による要件判断日
納付要件 行方不明日の前日
生計維持関係 行方不明時
被保険者の資格 行方不明日
身分関係 死亡とみなされる日
年齢 死亡とみなされる日
障害の状態 死亡とみなされる日

遺族年金の受給要件を満たしている場合、消滅時効にも気を付ける必要があります。

遺族年金の消滅時効は、死亡とみなされる日の翌日からスタートします。審判確定日ではないので注意してください。