相続人の中に行方不明の人がいるので、不在者財産管理人を選任しようと思うのは一般的です。実際、選任しなければ遺産分割協議を進めることが出来ないからです。
ただし、不在者財産管理人制度にもデメリットはあります。
- 予納金の納付
- 管理人候補者
- 手続きには時間がかかる
- 法定相続分の確保
- 仕事は問題解決まで続く
あなたが想像していた制度とは違う部分もあるので、実際に利用する前に確認しておいてください。
目次
1.予納金の納付が負担になる
1つ目のデメリットは、予納金の納付が負担になるです。
不在者財産管理人の選任申立てをする際に、家庭裁判所から予納金の納付を請求されることがあります。
予納金の額は個々の事例により違いますが、20万円から100万円ぐらいと言われています。
なぜ予納金が必要になるかというと、財産管理をするための費用に不足が発生する可能性もあるからです。不在者に預貯金等の財産が有れば問題ないのですが、無ければ申立人が予納金として負担することになります。
予納金が納付できなければ申立ては取下げとなります。
予納金は不在者財産管理人の業務終了後に余っていれば返還されます。
2.候補者が必ず選ばれるわけではない
2つ目のデメリットは、候補者が必ず選ばれるわけではないです。
不在者財産管理人の選任申立ての際に、財産管理人の候補者を立てることもできます。一般的には、親族の中に適任者がいれば候補者にすることが多いです。
ただし、不在者との関係性や利害関係の有無により、専門職(弁護士・司法書士等)を家庭裁判所が選ぶこともあります。
例えば、遺産分割協議をするために財産管理人が必要だとします。候補者が相続人なら行方不明者と利益相反に該当するので、専門職が財産管理人に選ばれるでしょう。
候補者が選ばれなかったことを理由に、申立てを取消すことはできません。
3.相続手続きまでには時間がかかる
3つ目のデメリットは、相続手続きまでには時間がかかるです。
遺産分割協議の為に選任申立てをしても、実際に相続手続が始まるまでには思っているよりも時間がかかります。
なぜなら、不在者財産管理人が選任されても直ぐに遺産分割ができるのではなく、権限外行為許可の申立ても必要となるからです。
不在者財産管理人は財産管理が仕事なので、遺産分割協議に参加する等の権限外の行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
ですので、相続手続までに数ヶ月はかかる可能性があります。申立てが遅くなれば選任も遅くなるので、なるべく早く申立てを済ませましょう。
4.不在者に法定相続分を確保する
4つ目のデメリットは、不在者に法定相続分を確保するです。
あなたが費用を支払って不在者財産管理人を選任しても、遺産分割協議で相続分が多くなるわけではないです。
なぜなら、原則として不在者財産管理人は不在者の為に、遺産分割協議で法定相続分を確保する必要があるからです。
例えば、行方不明の相続人が親の面倒を見ていなくても、行方不明者のために法定相続分を確保します。
法定相続分を確保できていない遺産分割案では、家庭裁判所から権限外行為の許可を得るのは難しいです。
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5.財産管理人の仕事は問題解決まで続く
5つ目のデメリットは、財産管理人の仕事は問題解決まで続くです。
不在者財産管理人の仕事は遺産分割協議が終わっても続きます。なぜなら、行方不明者の財産を管理するのが仕事だからです。
親族を不在者財産管理人の候補者とする際は、問題が解決するまで仕事が続くことを伝えておいてください。
以下の5つが終了事由です。
- 不在者が見つかった
- 財産管理人が選任された
- 死亡が確認された
- 失踪宣告された
- 財産が無くなった
不在者の財産管理をする必要が無くなれば、不在者財産管理人の仕事も終了となります。
終了事由の詳しい説明は下記の記事をご覧ください。
不在者財産管理人の管理業務が、いつ終了するのかはご存知でしょうか。不在者財産管理人の業務は、当初の目的(遺産分割協議等)が終わっても終了しません。管理業務が終了するのは、5つの終了事由のどれかに該当するまでです。 […]
6.さいごに
相続人の中に行方不明者がいると相続手続が進みません。選択の余地もなく不在者財産管理人を選任することも考えられます。
ただし、不在者財産管理人制度にはデメリットもあります。
- 予納金の負担
- 第3者が選ばれることもある
- 手続きに時間がかかる
- 法定相続分の確保
- 問題解決まで続く
上記の中でも、予納金の納付は申立人の負担となるので、最大のデメリットになります。
その他のデメリットも人によっては重要となるので、確認だけはしておいてください。