失踪宣告が認められると、行方不明の配偶者は死亡とみなされます。
配偶者の死亡により婚姻関係は消滅するので、失踪宣告の後に再婚をすることは可能です。
ですが、あくまでも死別と同じ扱いなので、配偶者と離婚したわけではありません。離婚をしたい場合は失踪宣告ではなく、離婚訴訟を提起する必要があります。
2つの違いについて確認しておいてください。
1.失踪宣告により死亡とみなされる
失踪宣告が認められると、行方不明者は死亡とみなされます。
死亡とみなされることにより、配偶者には以下の2つが関係します。
- 婚姻関係の消滅
- 相続の発生
1-1.配偶者の死亡により婚姻関係は消滅
配偶者が死亡とみなされると、婚姻関係は消滅します。
ですので、離婚したわけではないですが、配偶者の死亡により独身となります。
婚姻関係は消滅しているので、失踪宣告の後に再婚をすることは可能です。
1-2.配偶者の死亡により相続が発生
配偶者が死亡とみなされることにより、相続が発生します。
行方不明になった人が遺言書を残している場合は別ですが、通常は相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。
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2.再婚後に失踪宣告が取り消された場合
失踪宣告が認められた後に、行方不明者の生存が確認されることもあります。行方不明者または利害関係人は、失踪宣告の取消しを申し立てることができます。
関連記事を読む『失踪宣告を取消すには家庭裁判所の手続きが必要』
では、失踪宣告の後に再婚していた場合は、どうなるのでしょうか。
(失踪の宣告の取消し)
第三十二条 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
失踪宣告の後に善意でした行為は、取消しがあっても影響がありません。つまり、失踪宣告の取消しがあっても、再婚には影響がありません。
注意行方不明者が生きていることを知っていた場合は、取消しにより行方不明者との婚姻関係が復活します。
3.離婚するなら離婚訴訟が必要
失踪宣告が認められても、配偶者と離婚するわけではありません。
ですので、行方不明になっている配偶者と離婚したい場合は、失踪宣告ではなく別の方法をとる必要があります。
離婚の方法は主に3つです。
- 協議離婚
- 調停離婚
- 裁判離婚
協議離婚と調停離婚は話し合いなので、行方不明の相手には使えません。3つ目の裁判離婚を検討することになります。
ただし、離婚の訴えは自由にできるわけではないです。
(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
法律で決められている要件に該当する場合のみ、離婚の訴えを提起することができます。
失踪宣告を検討するぐらい配偶者が行方不明であれば、「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」を理由に離婚訴訟を提起できます。
訴えが認められると配偶者との離婚が成立します。
4.失踪宣告と離婚訴訟の違い
行方不明の配偶者に対する、失踪宣告と離婚訴訟の主な違いです。
失踪宣告 | 離婚訴訟 | |
---|---|---|
行方不明の期間 | 7年以上 | 3年以上 |
配偶者の生死 | 死亡とみなす | 行方不明 |
相続 | 発生する | 発生しない |
再婚 | 可能 | 可能 |
配偶者が生存 | 元に戻る | 変わらない |
失踪宣告では相続が発生するので、相続財産を取得することができます。一方、離婚訴訟では財産分与により、財産を取得することは可能です。
失踪宣告と離婚訴訟のどちらであっても、認められた後に再婚することは可能です。
配偶者が生存していた場合、失踪宣告が取り消されると元に戻ります。一方、離婚訴訟では何も変わりません。
5.さいごに
失踪宣告により配偶者が死亡とみなされても、離婚したわけではありません。
ですので、配偶者の生存が確認されて、失踪宣告が取り消されると婚姻関係も元に戻ります。行方不明である配偶者と離婚したい場合は、離婚訴訟を提起して認められる必要があります。
あなたの目的によって、失踪宣告または離婚訴訟のどちらかを選んでください。