失踪宣告すると離婚ではなく死別による婚姻関係の消滅

失踪宣告と離婚
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失踪宣告により配偶者が死亡とみなされても、離婚は成立しません。

あくまでも、死亡による婚姻関係の消滅です。

失踪宣告の後に再婚は可能ですが、配偶者が生きていると婚姻関係は複雑になります。

行方不明の配偶者と離婚したいなら、失踪宣告ではなく離婚訴訟してください。

今回の記事では、失踪宣告と離婚について説明しているので、配偶者の生死が不明なら参考にしてください。

目次

1.失踪宣告により配偶者は死亡とみなす

失踪宣告が認められると、行方不明の配偶者は死亡とみなされます。

そして、配偶者の死亡により、以下の2つが発生します。

  • 婚姻関係の消滅
  • 配偶者の相続

生存配偶者にとって非常に重要なので、しっかりと確認しておいてください。

1-1.配偶者の死亡により婚姻関係は消滅

配偶者の死亡により婚姻関係は消滅

失踪宣告により配偶者が死亡とみなされると、生存配偶者は再婚可能となります。

なぜなら、失踪宣告により婚姻関係は消滅するので、生存配偶者は独身になるからです。

以下は、民法の条文です。

(重婚の禁止)
第七百三十二条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
出典:e-Govウェブサイト(民法732条)

失踪宣告により配偶者は死亡になっているので、重婚には該当しません。

1-2.配偶者の死亡により相続が発生

配偶者の死亡により相続発生

失踪宣告により配偶者が死亡とみなされると、亡くなった配偶者の相続が発生します。

以下は、相続人の組み合わせです。

  1. 配偶者と子ども
  2. 配偶者と直系尊属
  3. 配偶者と兄弟姉妹

遺言書が残されている場合は別ですが、配偶者と共同相続人で遺産分割協議が必要です。

配偶者が単独で財産を取得できる保障はないので、失踪宣告を検討しているなら注意してください。

2.失踪宣告では配偶者と離婚できない

失踪宣告では配偶者と離婚できない

行方不明の配偶者と離婚するために、失踪宣告を検討している人もいます。

夫と離婚したいので7年経過するのを待っています。

専門家

なぜ、7年待つ必要があるのですか?

7年経過したら失踪宣告で離婚できるからです。

実際、上記のような相談を受けたことがありますが、失踪宣告では離婚できません。

2-1.配偶者が死亡しても離婚にならない

配偶者が死亡しても離婚にならない

行方不明の配偶者が死亡しても、離婚は成立しません。死別により婚姻関係が消滅するだけです。

婚姻関係が消滅するなら離婚と同じだと思う人もいます。

ですが、配偶者が生きていた場合、婚姻関係は復活するという問題が残されます。

行方不明の配偶者と離婚したいなら、別の方法を検討してください。

2-2.行方不明の配偶者と離婚する方法

行方不明の配偶者と離婚するなら離婚訴訟

配偶者と離婚する方法は3つあります。

  • 協議離婚
  • 調停離婚
  • 裁判離婚

ただし、協議離婚と調停離婚は話し合いが必要なので利用できません。

したがって、行方不明の配偶者と離婚する方法は、裁判離婚(離婚訴訟)だけになります。

以下は、民法の条文です。

(裁判上の離婚)
第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
出典:e-Govウェブサイト(民法770条)

生死不明が長期間であれば、「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」を理由に離婚訴訟を提起できます。

生死不明の期間を満たしていれば、特に問題無く離婚は成立します。

配偶者と離婚したいなら、失踪宣告ではなく離婚訴訟をしてください。

3.配偶者と離婚せずに再婚していた場合

配偶者と離婚せずに再婚していた場合、配偶者が生きていると婚姻関係が複雑になります。
※失踪宣告を選んだ場合。

以下は、民法の条文です。

(失踪の宣告の取消し)
第三十二条 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
出典:e-Govウェブサイト(民法32条)

再婚がどうなるかは、善意・悪意によって違います。

  • 善意|生存を知らなかった
  • 悪意|生存を知っていた

3-1.善意であれば再婚に影響は無い

失踪宣告後の再婚は善意なら有効

失踪宣告の後に善意でした行為は、取消しがあっても影響ありません。

つまり、失踪宣告が取り消されても、再婚に影響は無いです。

ただし、相続により財産を取得している場合は、元の配偶者に返却する必要があります。

3-2.悪意であれば再婚は重婚となる

失踪宣告後の再婚は悪意なら無効

行方不明である配偶者の生存を知っていた(悪意)場合は、取消しにより再婚は重婚となります。

以下は、民法の条文です。

(重婚の禁止)
第七百三十二条 配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
出典:e-Govウェブサイト(民法732条)

失踪宣告の取消しにより、元の婚姻関係が復活するので、再婚は無効となります。

再婚相手と婚姻したい場合は、離婚を成立させた後で再婚しましょう。

4.失踪宣告と離婚訴訟の違い

失踪宣告と離婚訴訟の違い

行方不明の配偶者に対する、失踪宣告と離婚訴訟の主な違いです。

失踪宣告離婚訴訟
期間7年以上3年以上
生死死亡とみなす生死不明
相続発生する発生しない
再婚可能
生存婚姻に戻る離婚のまま
失踪宣告と離婚証の比較

失踪宣告に必要な期間は7年ですが、離婚訴訟なら3年で可能になります。

失踪宣告により行方不明の配偶者は死亡とみなされますが、離婚訴訟なら生死不明のままです。

失踪宣告では相続が発生するので、相続財産を取得できます。一方、離婚訴訟では財産分与により、財産を取得できます。

失踪宣告と離婚訴訟どちらであっても再婚可能です。

配偶者が生存していた場合、失踪宣告が取り消されると婚姻状態に戻ります。一方、離婚訴訟は配偶者が生存していても関係ありません。

5.配偶者が外国人でも同じ効力

行方不明になった配偶者が外国人でも、失踪宣告の効力は同じです。

  • 婚姻関係の消滅
  • 配偶者の相続発生

婚姻関係は消滅するので再婚も可能ですし、配偶者の相続も発生します。

ただし、日本人配偶者とは違う部分もあります。

  • 申立ての要件
  • 申立先の家庭裁判所
  • 失踪届の提出先

行方不明の配偶者が外国人なら、下記の記事を確認しておいてください。

6.まとめ

今回の記事では「失踪宣告と離婚」について説明しました。

失踪宣告により配偶者が死亡とみなされても、離婚は成立しません。

ただし、婚姻関係は消滅するので、再婚は可能になります。

再婚した後に失踪宣告が取り消されても、原則として再婚は有効です。生きていたことを知っていた場合、再婚は重婚となり無効となります。

行方不明の配偶者と離婚したいなら、離婚訴訟を提起してください。生死不明が3年以上であれば、離婚は認められます。

あなたの目的によって、失踪宣告または離婚訴訟を選んでください。

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