失踪宣告により配偶者が死亡とみなされても、離婚は成立しません。
あくまでも、死亡による婚姻関係の消滅です。
失踪宣告の後に再婚は可能ですが、配偶者が生きていると婚姻関係は複雑になります。
行方不明の配偶者と離婚したいなら、失踪宣告ではなく離婚訴訟してください。
今回の記事では、失踪宣告と離婚について説明しているので、配偶者の生死が不明なら参考にしてください。
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1.失踪宣告により配偶者は死亡とみなす
失踪宣告が認められると、行方不明の配偶者は死亡とみなされます。
そして、配偶者の死亡により、以下の2つが発生します。
- 婚姻関係の消滅
- 配偶者の相続
生存配偶者にとって非常に重要なので、しっかりと確認しておいてください。
1-1.配偶者の死亡により婚姻関係は消滅
失踪宣告により配偶者が死亡とみなされると、生存配偶者は再婚可能となります。
なぜなら、失踪宣告により婚姻関係は消滅するので、生存配偶者は独身になるからです。
以下は、民法の条文です。
失踪宣告により配偶者は死亡になっているので、重婚には該当しません。
1-2.配偶者の死亡により相続が発生
失踪宣告により配偶者が死亡とみなされると、亡くなった配偶者の相続が発生します。
以下は、相続人の組み合わせです。
- 配偶者と子ども
- 配偶者と直系尊属
- 配偶者と兄弟姉妹
遺言書が残されている場合は別ですが、配偶者と共同相続人で遺産分割協議が必要です。
配偶者が単独で財産を取得できる保障はないので、失踪宣告を検討しているなら注意してください。
関連記事を読む『【失踪宣告による相続】誰が相続人なのか間違えないように注意 』
2.失踪宣告では配偶者と離婚できない
行方不明の配偶者と離婚するために、失踪宣告を検討している人もいます。
夫と離婚したいので7年経過するのを待っています。
なぜ、7年待つ必要があるのですか?
7年経過したら失踪宣告で離婚できるからです。
実際、上記のような相談を受けたことがありますが、失踪宣告では離婚できません。
2-1.配偶者が死亡しても離婚にならない
行方不明の配偶者が死亡しても、離婚は成立しません。死別により婚姻関係が消滅するだけです。
婚姻関係が消滅するなら離婚と同じだと思う人もいます。
ですが、配偶者が生きていた場合、婚姻関係は復活するという問題が残されます。
行方不明の配偶者と離婚したいなら、別の方法を検討してください。
2-2.行方不明の配偶者と離婚する方法
配偶者と離婚する方法は3つあります。
- 協議離婚
- 調停離婚
- 裁判離婚
ただし、協議離婚と調停離婚は話し合いが必要なので利用できません。
したがって、行方不明の配偶者と離婚する方法は、裁判離婚(離婚訴訟)だけになります。
以下は、民法の条文です。
生死不明が長期間であれば、「配偶者の生死が3年以上明らかでないとき」を理由に離婚訴訟を提起できます。
生死不明の期間を満たしていれば、特に問題無く離婚は成立します。
配偶者と離婚したいなら、失踪宣告ではなく離婚訴訟をしてください。
3.配偶者と離婚せずに再婚していた場合
配偶者と離婚せずに再婚していた場合、配偶者が生きていると婚姻関係が複雑になります。
※失踪宣告を選んだ場合。
以下は、民法の条文です。
再婚がどうなるかは、善意・悪意によって違います。
- 善意|生存を知らなかった
- 悪意|生存を知っていた
3-1.善意であれば再婚に影響は無い
失踪宣告の後に善意でした行為は、取消しがあっても影響ありません。
つまり、失踪宣告が取り消されても、再婚に影響は無いです。
ただし、相続により財産を取得している場合は、元の配偶者に返却する必要があります。
関連記事を読む『失踪宣告の後に生きていたことが判明すると相続はどうなる 』
3-2.悪意であれば再婚は重婚となる
行方不明である配偶者の生存を知っていた(悪意)場合は、取消しにより再婚は重婚となります。
以下は、民法の条文です。
失踪宣告の取消しにより、元の婚姻関係が復活するので、再婚は無効となります。
再婚相手と婚姻したい場合は、離婚を成立させた後で再婚しましょう。
4.失踪宣告と離婚訴訟の違い
行方不明の配偶者に対する、失踪宣告と離婚訴訟の主な違いです。
失踪宣告 | 離婚訴訟 | |
---|---|---|
期間 | 7年以上 | 3年以上 |
生死 | 死亡とみなす | 生死不明 |
相続 | 発生する | 発生しない |
再婚 | 可能 | |
生存 | 婚姻に戻る | 離婚のまま |
失踪宣告に必要な期間は7年ですが、離婚訴訟なら3年で可能になります。
失踪宣告により行方不明の配偶者は死亡とみなされますが、離婚訴訟なら生死不明のままです。
失踪宣告では相続が発生するので、相続財産を取得できます。一方、離婚訴訟では財産分与により、財産を取得できます。
失踪宣告と離婚訴訟どちらであっても再婚可能です。
配偶者が生存していた場合、失踪宣告が取り消されると婚姻状態に戻ります。一方、離婚訴訟は配偶者が生存していても関係ありません。
5.配偶者が外国人でも同じ効力
行方不明になった配偶者が外国人でも、失踪宣告の効力は同じです。
- 婚姻関係の消滅
- 配偶者の相続発生
婚姻関係は消滅するので再婚も可能ですし、配偶者の相続も発生します。
ただし、日本人配偶者とは違う部分もあります。
- 申立ての要件
- 申立先の家庭裁判所
- 失踪届の提出先
行方不明の配偶者が外国人なら、下記の記事を確認しておいてください。
関連記事を読む『失踪宣告は外国人の配偶者も可能|日本人とは違う部分も多い』
6.まとめ
今回の記事では「失踪宣告と離婚」について説明しました。
失踪宣告により配偶者が死亡とみなされても、離婚は成立しません。
ただし、婚姻関係は消滅するので、再婚は可能になります。
再婚した後に失踪宣告が取り消されても、原則として再婚は有効です。生きていたことを知っていた場合、再婚は重婚となり無効となります。
行方不明の配偶者と離婚したいなら、離婚訴訟を提起してください。生死不明が3年以上であれば、離婚は認められます。
あなたの目的によって、失踪宣告または離婚訴訟を選んでください。