相続放棄の理由が財産と無関係であれば、調査しなくても問題ありません。
財産調査は条件に含まれないので、相続放棄は認められるからです。
一方、相続放棄を判断するのに、財産調査が必要であれば、後悔しないように調べておきましょう。
今回の記事では、相続放棄と財産調査について説明しているので、悩みを解決する参考にしてください。
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1.相続放棄は財産調査しなくても認められる
亡くなった人の財産を調査しなくても、相続放棄は認められます。
なぜなら、相続放棄の条件に、財産調査は含まれないからです。
1-1.相続放棄の条件に財産調査は含まれない
相続放棄の条件は2つだけです。
- 相続財産を消費しない
- 申述書を3ヶ月以内に提出
上記を満たしていれば、調査の有無に関わらず認められます。
財産を調査するのは自由ですが、相続放棄の認否とは無関係です。
関連記事を読む『【相続放棄の条件は2つだけ】片方ではなく両方満たす必要がある』
1-2.相続財産が不明でも申述は受理される
相続財産が不明だと申述が受理されないと思い、財産を調査している人もいます。
ですが、財産を知っているかと、申述が受理されるかは無関係です。
【事例】
被相続人|父親
相続人 |子
相続財産|不明
父親とは40年以上会っておらず、親子の縁は切れているので相続放棄する。
財産が不明でも放棄したい理由があれば、わざわざ調査する必要はありません。
ちなみに、申述書には把握している財産を記載する欄がありますが、「不明」と書いて問題無いです。
関連記事を読む『相続放棄は財産が不明でも可能なので無理に探す必要はない』
2.調査しなくても相続放棄が判断できるなら不要
相続財産を調査しなくても、相続放棄の判断ができるなら、そもそも調べる必要がありません。
- 放棄の理由が財産とは無関係
- 負債が多いと分かっている
- 生活状況から調べる意味がない
上記の人は、調査せずに放棄して問題ありません。
2-1.相続放棄の理由が財産とは無関係
相続放棄の理由は自由なので、財産とは無関係にする人もいます。
- 亡くなった人と絶縁している
- 相続に関わりたくない
- 他の相続人に財産を譲るため
相続放棄の理由が財産と関係なければ、調査する意味はありません。
関連記事を読む『相続放棄の理由は自由|借金・安全・疎遠・不動産以外でも可能』
亡くなった人と絶縁している
亡くなった人との関係性(絶縁状態)で、相続放棄する人もいます。
個人的な感情が理由なので、財産は関係ありません。
関連記事を読む『相続放棄は絶縁状態の家族が亡くなっても必要』
相続に関わりたくない
相続に関わりたくないので、相続放棄する人もいます。
財産を取得するつもりがなければ、調査する必要は無いです。
関連記事を読む『相続に関わりたくないなら相続放棄がベストな根拠』
他の相続人に財産を譲るため
相続財産を他の相続人に譲るために、相続放棄する人もいます。
財産額に関わらず譲るつもりなら、調べる意味もありません。
2-2.明らかに負債の方が多いなら不要
すでに判明している負債が高額であれば、わざわざ財産を調査する必要はないでしょう。
【事例】
被相続人|父親
相続財産|預貯金(70万円)・負債(5,000万円)
5,000万円を超える財産が見つからなければ、調査の手間と費用が無駄になります。
相続財産を調査するのは、マイナス(負債)を上回る財産を見つけるためです。
したがって、見つかる可能性がなければ、財産を調査する意味もありません。
2-3.生活状況から考えて調べる意味が無い
亡くなった人の生活状況から考えて、調べる意味が無い人もいます。
- 生活保護費を受給していた
- 親族や知人からも借金している
亡くなった人が生活保護受給者
亡くなった人が生活保護費を受給していた場合、プラスの財産が見つかる可能性は低いです。
【事例】
被相続人|父親
相続財産|預貯金(3万円)・負債(20万円)
生活状況|亡くなるまでの10年間、生活保護で生活していた
10年以上働いておらず、財産が有るとは思えないので、調査せずに相続放棄した。
生活保護を受給していた以上、高額な財産が見つかると、不正受給による保護費の返還問題も発生します。
亡くなった人が生活保護受給者であれば、財産を調査するメリットは少ないでしょう。
関連記事を読む『生活保護者が死亡したら相続放棄を検討|返還義務や退去費用も請求される』
複数(親族や知人含む)から借金している
一般的に考えて、複数の消費者金融から借り入れがある人に、財産がある可能性は低いでしょう。
【事例】
被相続人|兄
相続財産|負債(500万円)
生活状況|複数の消費者金融から借り入れがある
親族や知人からも借金をしていたので、調査せずに相続放棄した。
親族や知人からも借金していると、トラブルになりやすいので注意してください。
3.財産調査してから相続放棄を判断するケース
相続財産を調査してから、相続放棄を判断するケースもあります。
- 相続財産が見つかる可能性がある
- 共同相続人の説明が信用できない
- 調査せずに放棄すると後悔する性格
あなたが上記に該当するなら、調査した方が良いかもしれません。
3-1.相続財産が見つかる可能性がある
相続財産を調査して見つかる可能性があるなら、調査結果を踏まえて相続を判断しましょう。
- 資産運用(投資等)をしていた
- 複数の口座で資産を管理していた
- 亡くなった人の親が資産を保有していた
上記に該当するような人なら、気づいていない財産があるかもしれません。
ただし、あくまでも可能性なので、見つかる保障はないです。
3-2.共同相続人の説明が信用できない
通常、亡くなった人と同居していた相続人や、面倒を見ていた相続人(近くに住んでいた相続人)から、相続財産の説明を受けます。
ただし、共同相続人の説明が信用できない人もいます。
父親には借金が500万円以上ある。
借金するような性格ではなかったけど
共同相続人の説明が信用できないら、個人信用情報機関へ照会してください。通常の借入であれば、照会結果で確認できます。
3-3.調査せずに放棄すると後悔する性格
相続放棄した後に、財産が見つかる可能性はあります。
ただし、相続放棄の撤回は認められないので、財産は取得できません。見つかった財産が高額でも、結論は同じです。
相続人の性格にもよりますが、調査せずに後悔する可能性があるなら、納得できるまで調査してください。
関連記事を読む『相続放棄の撤回はできない【法律で禁止されている】』
4.相続放棄前の財産調査で気を付ける点
相続放棄する前に財産調査する場合、気を付ける点が複数あります。
- 調査に時間がかかると3ヶ月経過する恐れ
- 財産調査しても単純承認とはみなされない
- 調査しても見つからない財産は存在する
財産を調査する前に、確認しておいてください。
4-1.期間経過に備えて期間伸長の申立て
相続財産を調査するのであれば、期間伸長の申立てもしてください。
なぜなら、相続財産の調査に時間がかかると、3ヶ月の期間を経過する恐れがあるからです。
相続の開始を知った日から3ヶ月を経過すると、単純承認(通常の相続)とみなされ、相続放棄は認められません。
相続放棄の可能性があるなら、財産調査と期間伸長はセットで考えましょう。
関連記事を読む『【相続放棄の期間延長】どのくらい伸ばせるかは事情により違う』
4-2.財産を調査しても単純承認ではない
単純承認とみなされるのが怖くて、財産調査していない人もいます。
財産を調査すると相続放棄できないので困ってます。
ですが、相続財産を調査しても、単純承認とはみなされません。
以下は、民法の条文です。
相続放棄する前に財産を調査する権利は、法律により認められています。
財産調査しても相続放棄は認められるので安心してください。
4-3.調査しても見つからない財産はある
相続財産を調査しても、すべての財産が見つかるとは限りません。
なぜなら、全財産を見つける方法は存在しないからです。どんなに調べても、見つかっていない財産が存在する可能性はあります。
- 探す側に知識が必要な財産
- 切手やコイン等のコレクション
※一般の人には価値が分からない - 個人間の金銭消費貸借
- 名義が変わっていない不動産
探す人に知識が必要な財産
探す人に知識が必要な財産は、調査しても見つかりにくいです。
例えば、ネット銀行で口座を開設しているや、暗号資産に投資している場合。
ネット銀行や暗号資産の知識がなければ、調査対象にならないので見つけにくいでしょう。
切手やコイン等のコレクション
切手やコイン等のコレクションは、興味が無い人にとってはゴミと同じです。
高価な価値が有ったとしても、気付かなければ価値は0円として処分されます。
個人間の金銭消費契約
個人間の金銭消費貸借は、個人信用情報機関に問い合わせても判明しません。
したがって、借用書を見つけるか、相手が言ってくるのを待つしかないです。
名義が変わっていない不動産
不動産の名義が変わっていなければ、亡くなった人名義で探しても見つかりません。
例えば、祖父名義や曾祖父名義で放置されており、亡くなった父親も共有者の一人だった場合。
固定資産税の通知が別の共有者に届いていれば、探しても見つからないです。
5.まとめ
今回の記事では「相続放棄と財産調査」について説明しました。
相続放棄するのに財産調査は必須ではありません。調査しなくても判断できるなら不要です。
- 財産以外の理由で放棄する
- 負債の方が多いと確信がある
- 生活状況から考えて財産がない
もちろん、調査結果を踏まえた上で、判断しても問題ありません。
相続放棄する前に財産を調査するなら、期間伸長の申立てはしておきましょう。
調査しても見つからない財産はあるので、最終的には自分の判断となります。
相続放棄と財産調査に関するQ&A
- 他の相続人が財産を調査中でも相続放棄できますか?
-
相続放棄できます。
- 財産を調査しないと相続放棄できないと説明されました。
-
財産を調査するかは相続人の自由です。