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【相続放棄の照会書(回答書)】記載内容について詳細に説明

相続放棄の照会書
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相続放棄申述書を家庭裁判所に提出すると、照会書(回答書)が届きます。

自分で相続放棄の手続きをした場合、家庭裁判所からの書面に驚く人もいます。慌ててネットを検索し、照会書(回答書)について調べる人も多いです。

ただし、ネット上には照会書(回答書)の詳しい情報がありません。書き方が分からず、困っている人もいるでしょう。

あるいは、不安を煽る記事を読み、不安になっているかもしれません。

ですので、相続放棄を年間で約200件担当している司法書士が、経験に基づいて照会書(回答書)について詳しく説明します。
※相談を含めれば250件以上。

今回の記事では、相続放棄の照会書について説明しているので、回答される際の参考にしてください。

目次

1.相続放棄の照会書とは確認書面

まず初めに、相続放棄の照会書について説明します。

相続放棄の照会書を分かりやすく言えば、家庭裁判所からの確認書面です。

相続放棄は重大な手続きなので、家庭裁判所も申述人(本人)に意思確認や事情確認をします。

1-1.相続放棄の照会書はいつ届くのか

相続放棄の申述書を家庭裁判所に提出してから、照会書が届くまでの期間は特に決まっていません。

家庭裁判所にもよりますが、私の経験では1週間から1ヶ月ぐらいの間に届くことが多いです。もちろん、遠方の家庭裁判所に提出している場合は、郵送に時間がかかります。

ちなみに、送られてくる書類を「照会書」、返送する書類を「回答書」と分けて説明しています。家庭裁判所によっては、照会書と回答書が1枚になっているケースもあります。

1-2.相続放棄の照会書は普通郵便で届く

相続放棄の照会書は、家庭裁判所から普通郵便で届きます。速達や書留ではありません。

照会書は一般的な封筒で送付されるので、封筒に記載されている文字を読まなければ、家庭裁判所からだと気付かない可能性もあります。

相続放棄の申述書を提出した後は、郵送物のチェックを忘れないように注意してください。

2.家庭裁判所により相続放棄の照会書は内容が違う

相続放棄の照会書は、家庭裁判所により内容が違います。

照会書は各家庭裁判所が作成しているので、全国共通ではないからです。

ただし、基本的な内容は同じになります。

  • 相続放棄の申述書が提出されていますが、本人の意思で間違いないですか?
  • 相続放棄の手続きをしたのは誰ですか?
  • 相続放棄をすると全財産を放棄することになりますが、ご存知でしょうか?
  • 被相続人(亡くなった人)の死亡を知った日はいつですか?
  • 被相続人(亡くなった人)の財産を使いましたか?
  • 相続放棄される理由は何ですか?

上記のような質問が記載されているので、指示されたとおりに答えていきます。

2-1.照会書の答え方も家庭裁判所により違う

照会書の質問に対する答え方も、各家庭裁判所により違います。

【チェックを入れる】
相続放棄はあなたの意思ですか?

□はい □いいえ

【丸を付ける】
相続財産を消費しましたか?

はい  いいえ

【具体的に記載する】
誰から死亡を聞きましたか?

(        )

質問の答えが用意されていてチェックを入れるタイプや、自分で記入するタイプなどがあります。

申述人であれば答えられる内容なので、相続放棄申述書に記入した内容と同じように答えてください。

2-2.照会書の質問数も家庭裁判所により違う

相続放棄の照会書に記載されている質問数も、家庭裁判所により違います。

一般的には3から5ぐらいの質問数です。

相続放棄の事情(3ヶ月経過)によっては、質問数が増えていきます。
※家庭裁判所の確認事項が増える。

ちなみに、私の経験で一番少なかった質問数は1問です。「はい」に〇を書いたら終了でした。

3.死亡日から3ヶ月経過しているなら回答書に事情を書く

被相続人の死亡日から3ヶ月経過している場合、家庭裁判所から詳しく聞かれます。

なぜかというと、相続放棄できる期間は、相続の開始を知った日から3ヶ月以内だからです。

家庭裁判所は被相続人と申述人の生前の関係を知りません。そのため、家庭裁判所は知った日を確認するため、「いつ」「どのような経緯」で知ったのかを聞いてきます。

3-1.証明できる書類があれば回答書に添付して返送

債権者からの書面のコピーを家庭裁判所に提出

亡くなった人の死亡を書面で知った場合、書面のコピーを回答書に添付して返送します。

例えば、亡くなった人と疎遠であり、借金の督促状で死亡を知った場合です。

一般的に、借金の督促状には作成日が記載されています。作成日から自宅に到達した日が推測できます。

死亡を知った日と作成日に矛盾が無ければ、督促状が死亡を知った日を証明する書類となります。家庭裁判所に督促状のコピーを返送します。

ちなにみ、専門家に相続放棄を依頼している場合、相続放棄の申述書を提出する際に一緒に提出していることが多いです。

3-2.電話連絡で死亡を知った場合は回答書に記入

警察からの電話で死亡を知ったなら回答書に事情を記載

亡くなった人の死亡を電話で知った場合は、回答書に〇月〇日に電話で死亡を知ったと書いてください。

例えば、警察からの電話で死亡を知った場合です。

亡くなった人が1人暮らしをしていると、発見が遅れることもあります。警察からの連絡があった時には、死亡日から3ヶ月を経過していることも珍しくないです。

回答書には、〇月〇日に警察からの電話で死亡を知ったと記載します。

自治体や親族からの電話で死亡を知った場合も、同じように記載して問題ありません。

司法書士から一言回答書に相続の開始を電話で知ったと書いても、相続放棄が不受理になったことはないです。

4.相続財産を消費しているなら回答書に嘘は書かない

相続財産を消費している場合、回答書には正直に記載しましょう。

なぜなら、回答書は家庭裁判所に保管されるので、嘘を書くと記録として残るからです。

万が一、債権者から相続放棄取消しの裁判を起こされると、相続財産の消費を黙っていたことが不利になる可能性があります。

4-1.葬儀費用を支払ったなら回答書に記載

相続財産から葬儀費用を支払っている場合は、回答書に記載してください。

以下は、回答書の記入例です。

葬儀費用の領収書を回答書と一緒に返送します。領収書は捨てないように保管しておいてください。

4-2.相続財産清算人は相続財産を調査する

相続人が全員相続放棄すると、相続財産清算人が選任されるケースもあります。
※旧相続財産管理人。

選任された相続財産清算人は、相続財産の調査をします。

亡くなった人の預貯金口座から不明な引き出しがあれば、相続財産清算人も気付くでしょう。

相続放棄申述書や回答書の記載も確認できるので、矛盾があれば申述人に連絡を取ってきます。

場合によっては、相続放棄の取消しにも繋がるので、回答書には正直に記載してください。

5.相続放棄の回答書には申述書と同じ印鑑で押印

回答書には相続放棄申述書に使用した印鑑で押印

相続放棄の回答書には申述人が署名捺印をします。

回答書に使用する印鑑は、申述書に使用した印鑑と同じです。印鑑も本人確認としてチェックされます。

相続放棄申述書に使用した印鑑が認印なら回答書にも認印、実印なら回答書にも実印で押印してください。

5-1.相続放棄の申述書に使用した印鑑が分からない

相続放棄申述書に使用した印鑑が分からない場合もあります。認印を複数所有していると起こりやすいです。

印鑑が分からない場合は、家庭裁判所に電話で対応を確認します。家庭裁判所により対応は違いますが、印鑑の形などを教えてくれることがあります。

例えば、丸形や細長い形、大きいや小さいなどで、使用した印鑑が分かるかもしれません。

私の経験上ですが、印鑑が分からないことを正直に伝えたケースで、相続放棄が不受理になったことはありません。

6.相続放棄の照会書が省略されるケース

相続放棄申述書提出後の流れ

家庭裁判所が本人確認を兼ねて送ってくる照会書は、省略されることもあります。

家庭裁判所の取り扱いなので理由は分かりませんが、私の経験では以下のように分かれています。

  • 死亡日から3ヶ月以内なら省略する
  • 専門家に依頼しているなら省略する
  • 事情に関係なく必ず郵送する

照会書が省略される場合は、相続放棄申述受理通知書が届いたら終了となります。

相続放棄申述受理通知書が届いたら、相続法申述受理証明書を取得することもできます。あるいは、債権者に受理通知書のコピーを郵送することで、相続放棄を知らせることも可能です。

6-1.照会書の代わりに電話で確認する

家庭裁判所によっては、照会書ではなく電話で確認する場合もあります。

申述人(本人)に電話で確認できれば照会書は省略です。電話で確認できなければ、原則どおり照会書を送付してきます。

もし家庭裁判所から着信があれば、照会書の省略かもしれないので、折り返しの電話をしてください。

7.照会書の内容が自分の相続放棄とかみ合わない

家庭裁判所から送付された照会書の内容が、自分の相続放棄とかみ合わなくて困っている人もいます。

実は、照会書の内容は各家庭裁判所のひな形により作成されているので、相続放棄の内容とかみ合わないことは珍しくありません。

例えば、以下のようなケースです。

【相続放棄の内容】

被相続人と会ったことがなく、相続財産の内容も知らない。関わる気がないので相続放棄の申述書を提出した。

【照会書の内容】

被相続人の負債を知った日はいつですか?誰から負債の存在を知りましたか?
※知らないという選択肢が用意されていない。

上記のような照会書は珍しくありません。私なら空いている箇所に負債は知らないと記載します。

照会書の内容によっては、強引に回答欄を埋めることも必要です。申述書に記載した内容と違わなければ、問題無いと考えています。

8.回答書を返送しなければ最終的に相続放棄は却下

相続放棄の回答書を返送しない場合、相続放棄は最終的に却下されます。

私が依頼を受けたケースで却下はありません。ですが、一度だけ却下されたという相談を電話で受けたことがあります。

申述人は専門家に依頼せず、自分で相続放棄の申述書を提出しました。

ですが、照会書(回答書)の存在を知らなかったので、家庭裁判所からの書面も読まずに放置していました。相続放棄は終了したと勘違いしていたそうです。

家庭裁判所から電話もかかっていましたが、知らない電話番号なので出なかった。

数か月後、相続放棄は却下されたそうです。

家庭裁判所は回答書が返送されない限り、相続放棄の申述を受理できません。照会事項に答えていない状態では、手続上の問題で受理できないからです。

相続放棄の照会書(回答書)には返送期限も記載されているので、届いたら後回しにせず返送しましょう。

9.まとめ

今回の記事では「相続放棄の照会書」について説明しました。

相続放棄の申述書を家庭裁判所に提出すると、照会書(回答書)が郵送されます。

照会書の内容は各家庭裁判所により違いますが、基本的な内容は同じです。

ですので、ご自身で相続放棄された場合は、今回の記事を参考にして回答してください。

司法書士などの専門家に依頼されている場合は、回答書の記入サポートも料金に含まれているはずなので、依頼した専門家にお尋ねください。

相続放棄の照会書に関するQ&A

回答書の返送日を過ぎてしまいました。却下されるのでしょうか?

すぐに返送してください。家庭裁判所にも電話を入れておきましょう。

回答書の記載だけ相談は可能ですか?

可能です。1度目は無料になります。

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