相続放棄の手続きは、家庭裁判所から受理通知書が届けば完了です。
したがって、相続放棄をする人にとって、受理通知書は重要な書面といえます。
ですが、受理通知書を詳しく知っている人は、相続放棄の専門家以外では少ないです。
今回の記事では、相続放棄申述受理通知書について詳しく説明しているので、相続放棄を検討しているなら参考にしてください。
目次
1.相続放棄が受理されると通知される
相続放棄は家庭裁判所に申述書を提出して、受理されることにより認められます。
そして、相続放棄の申述が受理されると、申述人に対して家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届きます。複数人で同時に相続放棄をした場合でも、受理通知書は申述人ごとに届く。
家庭裁判所から受理通知書が届くことで、相続放棄が無事に受理されたと分かります。
相続放棄の手続きは受理通知書が届けば完了です。
以下の項目では、相続放棄申述受理通知書について詳しく説明していきます。
2.受理通知書には何が記載されているのか?
相続放棄申述受理通知書の文面は家庭裁判所により違います。
ただし、以下の4つは必ず記載されています。
- 事件番号
- 申述人
- 被相続人
- 相続放棄の受理日
以下は、受理通知書の記載例です。
通知書
事件番号 大阪家庭裁判所 令和4年(家)第〇〇〇〇〇号
事件名 相続放棄申述事件
申述人 〇〇 〇〇
被相続人 〇〇 〇〇
令和4年〇月〇日申述人の被相続人に対する相続放棄の申述を受理したので通知します。
相続放棄の申述を受理したと書いてあれば、相続放棄申述受理通知書になります。
受理通知書の記載内容は簡潔ですが、書面には使い道があるので捨てないように気をつけてください。
司法書士から一言家庭裁判所によっては、被相続人の本籍地や死亡日も記載されているようです。
3.受理通知書には使い道がある
相続放棄申述受理通知書は捨てずに保管しておきましょう。
なぜなら、受理通知書には使い道があるからです。
主に3つの使い道があります。
3-1.相続放棄の証明に使う
相続放棄申述受理通知書は、相続放棄していることの証明に使います。
具体的には、他の相続人や債権者に対して、受理通知書のコピーを渡して証明します。
勘違いされる人も多いのですが、相続放棄申述受理証明書は取得しなくても問題ありません。
実際、当事務所では年間150件ほど相続放棄の依頼を受けていますが、債権者に対しては受理通知書のコピーで対応できています。
※債権者は自分で証明書を取得できます。
関連記事を読む『相続放棄申述受理証明書が必要になる場面は少ない』
3-2.事件番号を確認するために使う
相続放棄の事件番号を確認するのに、相続放棄申述受理通知書を使います。
他の相続人(相続放棄しなかった相続人)が受理証明書を取得する際には、事件番号を伝えたり通知書のコピーを渡したりします。
※教える義務はありません。
なぜなら、相続放棄申述受理証明書を取得するには、申請書に事件番号を記載する必要があるからです。
相続人同士が疎遠でなければ、事件番号を教えるのに受理通知書を使いましょう。
関連記事を読む『相続放棄の有無照会|連絡が取れなくても事件番号は調べれる』
3-3.相続登記の添付書面に使う
相続放棄しなかった相続人が相続登記を申請する場合、他の相続人が相続放棄したことを証明する必要があります。
相続登記に受理通知書の原本を添付することで、相続放棄を証明することも可能と言われています。
ただし、法務局によっては受理証明書でなければ認めないそうなので、あらかじめ確認しておいた方が良いです。
関連記事を読む『相続放棄をした人がいると相続登記の添付書類は増える』
4.受理通知書に関する注意点
相続放棄申述受理通知書に関する注意点です。
4-1.受理通知書は普通郵便で届く
相続放棄申述受理通知書は普通郵便で届きます。
本人限定受取や書留で届くわけではないので、受理通知書が届いていることに気付かない人もいます。
相続放棄の申述書を提出した後は、家庭裁判所からの郵送物を見逃さないように気をつけてください。
司法書士から一言私が依頼を受けた相続放棄でも、受理通知書に気付いていない依頼人が複数人いました。
4-2.受理通知書はA4用紙1枚の書面
ほとんどの人は相続放棄申述受理通知書を初めて見ることになります。
家庭裁判所から送られてくる書面なので、特別な仕様または複数枚の書面で作成されていると思うかもしれません。
ですが、受理通知書はA4用紙1枚の普通の書面です。家庭裁判所からの普通郵便に普通の書面が入っています。
送られてきた書面の内容を読めば分かりますが、見ただけでは受理通知書と気づかないかもしれません。
4-3.受理通知書は再発行されない
相続放棄申述受理通知書は再発行されません。
たとえ本人(申述人)であっても、受理通知書は再発行されないので注意してください。
受理通知書を紛失して一番困るのは、事件番号が分からなくなることです。事件番号が分からなければ、受理証明書を取得することはできません。
受理通知書を紛失した後に受理証明書を取得する場合は、相続放棄の有無照会をして事件番号を知る必要があります。
相続放棄の有無照会をすると、相続放棄の有無だけでなく事件番号も分かります。
関連記事を読む『相続放棄の有無照会|連絡が取れなくても事件番号は調べれる』
5.受理通知書と受理証明書の違い
受理通知書と受理証明書の違いについて、簡単に説明しておきます。
受理通知書は相続放棄が受理されると送られてきます。
それに対して、受理証明書は請求しなければ発行されません。手数料も収入印紙150円分が必要です。
2つの書面の記載事項については、以下の表を参考にしてください。
受理通知書 | 受理証明書 | |
---|---|---|
事件番号 | 〇 | 〇 |
申述人の氏名 | 〇 | 〇 |
被相続人の氏名 | 〇 | 〇 |
申述の受理日 | 〇 | 〇 |
被相続人の本籍地 | × | 〇 |
被相続人の死亡日 | × | 〇 |
2つの書面の違いは、被相続人の本籍地と死亡日が記載されているかどうかです。
6.さいごに
家庭裁判所から受理通知書が届くことによって、相続放棄の手続きは完了します。
届いた受理通知書は、相続放棄の証明や事件番号を確認するのに使えます。
受理通知書は普通郵便で届きますので、間違えて捨てないように気をつけてください。
紛失した場合でも再発行はできないので、事件番号を確認する際は有無照会をしましょう。
相続放棄に関して疑問があれば、お気軽にお問い合わせください。