【共有持分の移転登記】申請書の記載例を用いて説明

共有持分の移転登記
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共有状態を解消するために持分を移転したときは、持分移転登記を申請しましょう。

持分移転登記を申請しなければ、不動産登記簿上では共有状態のままです。

また、持分移転登記を申請しなければ、持分移転を第3者に対抗できません。

共有持分を移転しているなら、必ず持分移転登記を申請しておきましょう。

今回の記事では、共有持分の移転登記について、申請書の記載例を用いて説明しています。

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目次

1.共有持分の移転登記は第3者対抗要件

共有持分を移転するなら、持分移転登記も申請しましょう。

なぜなら、持分移転登記を申請しなければ、不動産登記簿上では共有状態になるからです。

そして、不動産に関する権利(共有持分)の移転は、不動産登記をしなければ第3者に対抗できません。

(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

出典:e-Govウェブサイト(民法177条)

第3者に対抗できないだけで、当事者間では持分移転の効力は発生しています。

1-1.持分移転登記がなければ他の共有者にも対抗できない

持分移転を対抗できない第3者には、当事者以外の共有者も含まれます。

例えば、共有者が3人(A・B・C)いる不動産で、BからCに持分を移転したとします。

持分移転登記をしていなければ、Aから不動産の管理費を請求されたBは、持分移転をAに対抗することができません。

ただし、BはCに対して、Aから請求された管理費を支払うように請求できます。

共有持分を移転しているなら、持分移転登記を申請しておきましょう。

2.共有持分の移転登記を申請する人

共有持分の移転登記は2種類あり、持分移転の原因により登記を申請する人が違います。

  • 相続以外が原因:登記権利者と登記義務者
  • 相続が原因:不動産を取得する相続人

持分移転の原因によっては登記申請書の書き方も違うので、持分移転の原因には気を付けてください。

2-1.相続以外が原因なら登記権利者と登記義務者の共同申請

原則として、不動産の権利に関する登記は、登記権利者と登記義務者が共同で申請します。

(共同申請)
第六十条 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(不動産登記法60条)

共有持分の移転登記も権利に関する登記です。

  • 登記権利者:持分を得る人
  • 登記義務者:持分を失う人

例えば、共有者Aから共有者Bに持分を移転する場合、以下のようになります。

  • 登記権利者:B
  • 登記義務者:A

相続以外を原因とする持分移転登記の申請には、共有者の協力が必要になります。

2-2.相続が持分移転の原因なら相続人が申請

相続が持分移転の原因なら、共有持分の移転登記は相続人が申請します。

相続を原因とする共有持分の移転登記には、登記権利者や登記義務者は登場しません。

不動産の共有持分を取得するのが1人であれば、共有持分の移転登記も1人で申請できます。

3.共有持分の移転登記申請書の書き方(相続以外)

共有持分の移転登記を自分で申請するなら、申請書の書き方を確認しておいてください。

以下は、持分移転登記の申請書記載例です。

持分移転登記申請書(相続以外)

それぞれ簡単にですが、説明していきます。

3-1.登記の目的は持分全部移転と記載

申請書に記載する登記の目的は、○○持分全部移転になります。

○○には持分を失う人の氏名を記載してください。

例えば、山田太郎さんの持分を取得するのであれば、「山田太郎持分全部移転」となります。

所有権移転とは違うので、記載する際は間違えないように注意してください。

3-2.登記原因は共有持分の移転理由により違う

申請書に記載する登記原因は、共有持分の移転理由により違います。

以下が、主な登記原因となります。

共有持分の移転理由は複数あるので、ご自身に該当する原因を記載してください。

3-3.共有持分を得る人が権利者で失う人が義務者

共有持分の移転登記に記載する、権利者と義務者は以下のようになります。

  • 権利者:共有持分を得る人
  • 義務者:共有持分を失う人

権利者の項目には、取得する持分も記載します。

住所は添付する住民票どおりに記載してください。

3-4.共有持分の移転登記に必要な添付書類

共有持分の移転登記に必要な添付書類は複数あります。

登記済証または登記識別情報

登記義務者の登記済証または登記識別情報を添付します。

登記済証または登記識別情報を添付できない場合は、理由を申請書に記載します。

以下は、登記識別情報を失念(紛失)したケースです。

登記識別情報を提供できない理由 失念

上記以外の理由としては、「不通知」や「失効」などがあります。

登記識別情報(登記済証)を提出できない場合は、法務局より登記義務者宛てに本人限定受取郵便で事前通知があります。

登記原因証明情報は持分移転の理由により違う

登記原因証明情報は、共有持分の移転理由により違います。

例えば、売買により持分が移転しているなら、売買契約書も登記原因証明情報の一部となります。

ただし、登記原因証明情報という書面を作成して、売買により持分を移転したことを証明することも可能です。

登記原因証明情報を自分で作成するなら、法務局のウェブサイトでひな形を確認しておきましょう。

登記義務者の印鑑証明書

共有持分の移転登記には、登記義務者の印鑑証明書が必要になります。

ただし、印鑑証明書には発行から3ヶ月以内という条件があるので、添付する際は発行日に気を付けてください。

ちなみに、登記義務者が持分移転登記に関する書面(登記原因証明情報や委任状等)に捺印する場合、実印で押印する必要があります。

登記権利者の住民票

住所証明書は持分を取得する登記権利者の住民票です。

不動産登記簿には住所が記載されるので、住所を証明するために住民票を添付します。

持分移転登記を委任するなら委任状

持分移転登記を委任するなら、委任状も添付書類となります。

例えば、登記義務者が登記権利者に申請を委任するなら、登記義務者の委任状を添付します。

委任せずに持分移転登記を申請するなら、委任状は添付書類となりません。

3-5.持分移転登記の申請を委任するなら代理人の記載

持分移転登記の申請を委任するなら、申請書に代理人の記載をします。

例えば、登記義務者が登記権利者に委任しているなら、以下のような記載になります。

登記申請書の代理人記載

代理せずに申請する場合は、申請人と記載して申請人2人の住所・氏名・押印・電話番号を記載してください。

注意登記義務者の押印は実印になるので注意してください。

3-6.課税価格は移転する持分割合で記載

課税価格の元となる不動産の評価額は、以下の書類で確認できます。

  • 固定資産課税明細書
  • 固定資産評価証明書

市役所等から郵送される固定資産課税明細書があれば、評価額を確認してください。

または、市役所等で固定資産評価証明書を取得して確認することもできます。

不動産の評価額が確認できれば、移転する持分割合を掛けて課税価格を計算します。

不動産の評価額×持分割合が課税価格

例えば、不動産の評価額が1,000万円で、移転する持分割合が2分の1の場合です。

1,000万円×2分の1=500万円

持分移転登記の課税価格は500万円となります。

3-7.共有持分移転の税率は原則として2%

共有持分の移転登記を申請するには、登録免許税という税金を納める必要があります。

原則として、課税価格の2%が登録免許税です。

例えば、課税価格が500万円であれば「500万円×2%」なので、登録免許税は10万円となります。

ただし、持分移転の原因が遺贈で、かつ、受遺者が相続人の場合は、課税価格の0.4%が登録免許税です。

登録免許税を計算する際は、原則と例外の違いに気を付けてください。

3-8.不動産の表示は登記事項証明書を書き写す

共有持分の移転登記申請書の最後は、不動産の表示になります。

不動産の表示に必要な情報は、不動産登記事項証明書を取得すれば確認できます。

共有不動産が土地であれば、以下の情報を記載します。

  • 不動産番号
  • 所在
  • 地番
  • 地目
  • 地積

共有不動産が建物であれば、以下の情報を記載します。

  • 不動産番号
  • 所在
  • 家屋番号
  • 種類
  • 構造
  • 床面積

不動産登記事項証明書を書き写せば問題ありません。

4.相続による共有持分の移転登記申請書の書き方

相続による共有持分の移転登記申請書は、相続以外を原因とする持分移転登記申請書とは書き方が違います。

以下は、相続による持分移転登記申請書の記載例です。

持分移転登記申請書(相続)

相続以外を原因とする持分移転登記申請書との違いについて説明していきます。

4-1.共有持分移転の登記原因は相続

相続による共有持分の移転なので、登記原因は相続になります。

登記原因の日付は、相続発生日(死亡日)を記載してください。

遺産分割協議による相続であっても、遺産分割協議の成立日ではなく相続発生日になります。

例えば、相続発生日が令和3年8月1日で、遺産分割協議の成立日が令和4年5月10日であれば、登記原因の日付は令和3年8月1日となります。

間違えて遺産分割協議の成立日を記載しないように気を付けてください。

4-2.共有持分を取得する相続人を記載する

亡くなった人から共有持分を取得する相続人を記載します。

記載する内容は、以下になります。

  • 被相続人の氏名
  • 相続人の住所
  • 相続する持分割合
  • 相続人の氏名

カッコ書きで被相続人を記載して、相続人の住所と移転する持分及び氏名を記載します。

相続人が自分で申請するなら、押印と連絡先の電話番号も記載してください。

4-3.相続による共有持分移転登記の添付情報

相続による共有持分移転登記の添付書類は、相続の内容によっても違うので気を付けてください。

登記原因証明情報は相続の内容により違う

共有持分の相続登記に添付する登記原因証明情報は、相続の内容により3つに分かれます。

  • 法定相続分での相続
  • 遺言書による相続
  • 遺産分割協議による相続

法定相続人が1人だけの場合は、法定相続分での相続に該当します。

例えば、遺言書による相続であれば、遺言書も登記原因証明情報の一部になります。

あるいは、遺産分割協議による相続であれば、遺産分割協議書が登記原因証明情報の一部になります。

具体的な添付書類については、下記の記事で説明しています。

共有持分の相続登記に添付する住民票は2つ

共有持分の相続登記に添付する住民票は2つあります。

  • 共有持分を取得する相続人の住民票
  • 被相続人の住民票(除票)

住民票を添付する理由に違いがあります。

共有持分を取得する相続人の住民票

不動産登記簿には住所が記載されるので、共有持分を取得する相続人の住民票を添付します。

共有持分を取得しない相続人の住民票は不要です。

被相続人の住民票(除票)

相続登記の申請には被相続人の住民票(除票)を添付します。

不動産登記簿に記載されている被相続人の住所と最後の住所が一致していれば問題ないです。

ですが、住所が一致しない場合は、別の書面が必要になるケースもあります。

遺産分割協議による相続なら印鑑証明書を添付

相続による持分移転登記の申請で印鑑証明書が必要になるのは、遺産分割協議により持分の取得者を決めた場合です。

なぜかというと、遺産分割協議書には相続人全員が実印で押印する必要があるからです。

遺産分割協議書に相続人全員が実印で押印したことを証明するために、相続人全員の印鑑証明書が添付書類となります。

代理人に委任するなら代理権証書

相続による持分移転登記の申請を代理人に依頼するなら、代理権証書(委任状)が添付書類となります。

登記の申請を司法書士に依頼する場合、委任状は司法書士が用意します。

4-4.相続による共有持分の移転登記は0.4%

相続による共有持分の移転登記に必要な登録免許税は、「課税価格×0.4%」で求めることができます。

例えば、共有持分の課税価格が500万円であれば、登録免許税は以下になります。

500万円×0.4%=2万円

相続以外を原因とする持分移転登記とは税率が違うので、登録免許税を計算する際は注意してください。

5.さいごに

共有持分を移転したなら、共有持分の移転登記を忘れずに申請しましょう。

共有持分の移転登記を申請しなければ、当事者以外の第3者に持分移転を対抗することができません。

持分移転登記は原因により、申請人や申請書の書き方に違いがあります。

ご自身で登記を申請する場合は、法務局のひな形や今回の記事を参考にしてみてください。

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