不動産の共有状態を解消する方法の1つに、共有持分の贈与があります。
持分を贈与する相手は自由に選ぶことができます。共有者以外の第3者に贈与する場合でも、共有者の同意は不要です。
ただし、不動産登記をしなければ、持分移転を共有者に対抗することができません。
今回の記事では、不動産共有持分の贈与について説明しているので、共有状態の解消を検討しているなら参考にしてください。
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【解消方法は複数ある】
1.持分の贈与は相手が受諾すると効力発生
不動産の共有持分を贈与するには、相手(受贈者)の受諾が必要です。
(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
したがって、あなたが不動産の共有持分を贈与したいと思っても、相手が受諾しなければ効力は発生しません。
1-1.持分を贈与する相手は自由に選べる
共有持分を贈与する相手は自由に選ぶことができます。
つまり、持分を共有者に贈与することもできますし、共有者以外の第3者に贈与することもできます。
不動産の共有持分を欲しい人がいれば、自由に贈与することが可能です。
1-2.持分を贈与するのに共有者の同意は不要
あなたの共有持分を贈与するのに、共有者の同意は不要です。
たとえ共有者が反対していても、共有者以外の第3者に贈与することはできます。
ただし、持分移転を共有者に対抗するには、不動産登記をする必要があります。
注意あなた以外の共有者が第3者に贈与する可能性もあります。
2.持分を贈与したら不動産登記を忘れずに申請
不動産の共有持分を贈与したなら、不動産登記を忘れずに申請しておきましょう。
なぜなら、不動産に関する権利の移転は、不動産登記をしなければ第3者に対抗することができないからです。
(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
当事者間では贈与の効力は発生していますが、第3者(当事者以外)に対抗するには不動産登記が必要になります。
2-1.不動産登記をしないと共有者にも対抗できない
不動産登記をしなければ、他の共有者に対しても持分取得を対抗できません。
不動産の共有者の一員が自己の持分を譲渡した場合における譲受人以外の他の共有者は民法一七七条にいう「第三者」に該当するから、右譲渡につき登記が存しないときには、譲受人は、右持分の取得をもつて他の共有者に対抗することができない。
つまり、共有持分を贈与されていても不動産登記をしていなければ、他の共有者に対して持分取得を主張することができません。
例えば、不動産の使用方法などは共有者間で話し合うのですが、登記をしていなければ参加することができません。
共有持分を贈与しているなら、持分移転登記を必ず申請しましょう。
2-2.持分贈与の登記は相手との共同申請
持分贈与による所有権移転登記は、贈与者と受贈者の共同申請となります。
持分贈与による所有権移転登記について、簡単にまとめています。
- 登記原因:持分贈与
- 登記権利者:持分を取得する人
- 登記義務者:持分を贈与する人
- 課税価格:固定資産評価額×贈与する持分
- 登録免許税:課税価格×2%
持分贈与の登記をするのにも、登録免許税という税金が発生します。あらかじめ確認しておいてください。
以下は、相続により不動産を共有にしたが、その後に持分を第3者に贈与した場合の不動産登記簿です。
*簡略化しています。
権利部(甲区)(所有権に関する事項) | |||
順位番号 | 登記の目的 | 受付年月日・受付番号 | 権利者その他の事項 |
1 | 所有権移転 | 令和元年5月25日 第2345号 | 原因 令和元年5月20日相続 共有者 住所〇〇 持分2分の1 A 共有者 住所〇〇 持分2分の1 B |
2 | B持分全部移転 | 令和3年7月5日 第3456号 | 原因 令和3年7月1日持分贈与 所有者 住所〇〇 持分2分の1 C |
①相続によって不動産がAとBの共有になっています。
②Bが持分をCに贈与したことにより、持分がCに移転しています。
関連記事を読む『【共有持分の移転登記】申請書の記載例を用いて説明』
3.持分を贈与すると受贈者に贈与税が課税される
不動産の持分を贈与すると、受贈者に贈与税が課税されます。
- 贈与税
- 個人から贈与により財産を取得した場合、その取得した財産に課税される税金のこと
不動産の評価額によっては贈与税が高額になるので、前もって受贈者に説明をしておく必要があります。
贈与税を考慮していない場合、不動産の持分を貰っても税金が払えないかもしれません。
不動産の持分を贈与するなら、贈与税の発生について税理士に確認しておきましょう。
4.不動産の共有持分を処分する他の方法
不動産の共有持分を贈与する以外にも、持分を処分する方法はあります。
- 共有持分の売却
- 共有持分の放棄
4-1.不動産の共有持分を売却する
不動産の共有持分は売却することもできます。
共有持分の贈与と同じく、売却相手は自由に選ぶことが可能です。
ただし、共有持分を購入したい人がいなければ、売却することはできません。共有持分は欲しいが金銭を用意できない人もいるので、共有持分の贈与しか選べないこともあります。
関連記事を読む『不動産の共有持分を売却するのに共有者の同意は不要』
4-2.不動産の共有持分を放棄する
不動産の共有持分を放棄することもできます。放棄した共有持分は共有者に移転します。
共有持分の贈与との違いは、自分の意思表示だけで効果が発生するということです。
*贈与は相手方の意思表示も必要。
ただし、共有持分放棄の登記は、共有者との共同申請となります。持分放棄は単独行為ですが、不動産登記をするには共有者の協力が必要です。
関連記事を読む『不動産の共有持分を放棄すると共有者に移るが注意点もある』
5.不動産の共有者が亡くなった場合
あなたが共有持分を贈与する前に、共有者が亡くなることもあります。
共有持分も相続財産なので、以下の人が取得する可能性があります。
- 遺贈による受遺者
- 法定相続人
- 特別縁故者
- 共有者
共有者が亡くなると共有状態は複雑になりやすいので、できる限り生前に共有状態は解消しておいた方が良いです。
関連記事を読む『不動産の共有名義人が死亡すると持分はどうなるのか?』
6.さいごに
不動産の共有持分を贈与する相手は、自由に選ぶことが可能です。共有者に贈与することもできますし、共有者以外の第3者に贈与することもできます。
たとえ共有者以外の第3者に贈与する場合でも、共有者の同意は不要となります。
不動産の共有持分を贈与した場合は、忘れずに不動産登記を申請しておきましょう。不動産登記をしなければ、持分移転を共有者に対抗することができません。
不動産の持分を贈与するなら、贈与税が発生するかどうかも確認しておいてください。贈与税は高額になりやすいので、持分を貰っても税金が払えないかもしれません。
不動産の共有状態を解消する方法として、持分贈与についても知っておいてください。