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遺贈の登記とは|不動産の取得を第3者に対抗する要件

遺贈の登記
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遺贈により不動産を取得しているなら、すでに遺贈の登記は済ませていますか。

まだ済ませていないなら、すぐに遺贈の登記を済ませましょう。

なぜなら、受遺者は不動産の名義を変更しなければ、第3者に対抗することができないからです。

今回の記事では、遺贈の登記について説明しているので、登記をまだ済ませていない場合は参考にしてください。

1.遺贈の登記は共同で申請する

遺贈による所有権移転登記は共同申請となります。

(共同申請)
第六十条 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(不動産登記法60条)

共同申請とは、登記権利者と登記義務者が共同して申請する登記のことです。

1-1.登記権利者は受遺者(不動産を取得する人)

遺贈により不動産を取得する受遺者が、所有権移転登記の登記権利者です。

不動産の権利を取得するのは受遺者なので、登記権利者は分かりやすいと思います。

1-2.登記義務者は相続人等

遺言者の権利義務を引き継ぐのは相続人です。

ですので、遺贈による所有権移転登記の登記義務者は相続人なのですが、遺言執行者が選任されている場合は遺言執行者が登記義務者となります。

(遺言執行者の権利義務)
第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法1012条)

遺言執行者が選任されていれば、受遺者と遺言執行者で共同申請します。

遺贈の義務者については下記の記事で詳しく説明しています。

 

2.遺贈の登記に必要な添付書類の確認

遺贈による所有権移転登記を申請する際には、複数の添付書類を用意する必要があります。

共通書類とケース別の書類です。

【共通書類】

  • 遺言書
    *検認が必要
  • 遺言者の死亡記載のある戸籍謄本
  • 遺言者の住民票除票(戸籍の附票)
    *住民票は本籍地記載
  • 不動産の登記済証(登記識別情報)
  • 受遺者の住民票
  • 固定資産評価証明書
    *最新年度

自筆証書遺言を法務局に保管していない場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

【ケース別の書類】

遺言執行者が義務者の場合

  • 遺言執行者の印鑑証明書
    *発行後3ヶ月以内
  • 遺言執行者選任の審判書
    *家庭裁判所が選任した場合

相続人が義務者の場合

  • 相続人全員の戸籍謄本
    *相続人であることを証明するため
  • 相続人全員の印鑑証明書
    *発行後3ヶ月以内

相続人全員が義務者になるのでご注意ください。

 

3.遺贈の登記にも登録免許税が発生する

不動産の所有権移転登記には、登録免許税という税金が必要になります。

登録免許税は以下の計算で求めます。

登録免許税の計算式
固定資産評価額×税率=登録免許税

3-1.固定資産評価額を調べる

登録免許税を計算するには、固定資産評価額を調べる必要があります。

固定資産評価額は、不動産の所有者に送付されている課税明細書か、市役所等で取得できる固定資産評価証明書で調べることができます。

最新年度の固定資産評価額を使用するので、取得する際はご注意ください。

3-2.税率は受遺者により違う

遺贈による所有権移転登記の税率は、受遺者により違います。

  • 相続人:0.4%
  • 第3者:2%

相続人が受遺者の場合は、相続を原因とする所有権移転登記と同じ税率になっています。実質的に相続と変わらないからです。

 

4.遺贈登記に関するその他の注意点

遺贈登記についての注意点です。

  • 登記は第3者対抗要件
  • 住所は一致しているか
  • 相続人の協力が得られない
  • 遺贈でも相続になることがある

4-1.登記は第3者対抗要件となる

遺贈の対象となっている不動産の所有権は、遺贈の効力発生と同時に受遺者に移転します。遺贈の効力発生は遺言者が亡くなった時です。

ですが、所有権移転を第3者(相続人以外)に対抗するには、所有権移転登記をする必要があります。

例えば、遺言者が亡くなって受遺者に移転登記をする前に、相続人が自分名義に変えて第3者に売却すると、受遺者と第3者は登記が対抗要件となります。

遺贈登記は対抗要件

遺贈による所有権移転登記を終了させなければ、第3者に対抗できないので注意してください。
*相続人に対しては登記未了でも対抗できます。

4-2.遺贈者の住所は一致しているか

遺贈者(遺言者)の登記簿上の住所と死亡時の住所が違うと、遺贈の登記をする前に住所変更登記をする必要があります。

なぜなら、登記簿上の情報(住所)を一致させなければ、遺贈の登記が認められないからです。

住所変更登記は遺言執行者・相続人・受遺者のいずれからも可能です。

4-3.相続人の協力が得られない場合

遺言執行者が選任されていない場合、遺言者の相続人全員が登記義務者となります。

ですが、連絡が取れないや相続人が非協力的である等により、遺贈の登記ができないこともあります。

そのような場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任を申立てることができます。その後、選任された遺言執行者と遺贈の登記をすれば大丈夫です。

ちなみに、遺言執行者の候補者として、受遺者自身を記載することも可能です。受遺者が遺言執行者に選任されれば、実質的に1人で遺贈登記をすることができます。

4-4.遺贈でも相続になることがある

一般的な遺言書では、相続人に対しては「相続させる」、第3者に対しては「遺贈する」と書きます。

しかしながら、相続人に対して「遺贈する」と書いても、遺贈自体は有効に成立します。所有権移転登記の登記原因も遺贈となります。

例外として、相続人全員に対して包括遺贈をしていた場合は、遺贈ではなく相続を登記原因とします。実質的に相続分の指定と変わらないからです。

 

5.さいごに

遺贈の登記は登記権利者(受遺者)と登記義務者(相続人等)の共同申請となります。遺言執行者が選任されていれば、受遺者と遺言執行者で遺贈の登記をします。

遺贈の登記には複数の書類が必要になります。戸籍謄本等は本籍地の役所でしか取得できないので、本籍地の確認をしておきましょう。

遺贈の登記を申請する際は、登録免許税という税金が発生します。不動産を遺贈する場合は、あらかじめ金額を計算していてください。

遺贈による所有権移転登記は第3者対抗要件になるので、遺贈の効力が発生したら速やかに行ってください。