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寡婦年金とは遺族に給付される年金の一種【まとめ記事】

寡婦年金
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寡婦年金とは、遺族である妻に給付される年金の一種です。

亡くなった夫に国民年金の第1号被保険者として保険料を納付した期間があれば、妻は寡婦年金を受給できる可能性があります。

ただし、「亡くなった夫の要件」と「妻の要件」をすべて満たした場合のみです。

今回の記事では、寡婦年金について説明しているので、疑問を解消する参考にしてください。

目次

  1. 寡婦年金は遺族給付の一種
    1. 寡婦年金は国民年金制度の遺族給付
    2. 寡婦年金の目的は保険料の掛け捨て防止
    3. 寡婦年金は国民年金法で定められている
  2. 寡婦年金を受け取れるのは妻のみ
    1. 寡婦年金の受給者要件は3つ
    2. 寡婦年金が支給されるのは60歳から
  3. 寡婦年金の要件は亡くなった夫にもある
    1. 夫に第1号被保険者として10年以上の納付期間
    2. 夫が老齢基礎年金・障害基礎年金を受給していない
  4. 寡婦年金の支給額は夫の納付期間で決まる
  5. 寡婦年金の支給が消滅するケース
    1. 妻が65歳になると寡婦年金は終了
    2. 妻の事情が変われば寡婦年金は消滅
    3. 妻が老齢基礎年金を繰り上げ支給
  6. 寡婦年金は他の年金と同時に受給できない
    1. 遺族基礎年金や遺族厚生年金を受給中は支給停止
    2. 遺族である妻が死亡一時金を選択した
  7. 寡婦年金の請求手続き
    1. 寡婦年金の請求に必要な書類
    2. 寡婦年金請求書は市区町村役場に提出
  8. 寡婦年金は相続財産に含まれない
    1. 寡婦年金を受給しても相続財産は取得できる
    2. 相続放棄しても寡婦年金は受給できる
  9. まとめ

1.寡婦年金は遺族給付の一種

遺族給付は寡婦年金を含めて4種

寡婦年金とは、遺族に給付される年金の一種です。

上記をまとめて「遺族年金」と説明するケースもあります。

1-1.寡婦年金は国民年金制度の遺族給付

寡婦年金は国民年金制度の独自給付

寡婦年金は国民年金制度の遺族給付です。

したがって、亡くなった夫に第1号被保険者としての納付期間がなければ、寡婦年金は支給されません。

一方、亡くなった夫が第2号被保険者として保険料を納付していれば、遺族厚生年金を受給できる可能性があります。

被保険者の種別によって遺族給付の種類も違うので、まずは被保険者の種別を確認しましょう。

1-2.寡婦年金の目的は保険料の掛け捨て防止

寡婦年金の目的には、亡くなった夫が支払った保険料の掛け捨て防止が含まれます。

第1号被保険者として保険料を納付しても、年金を受給する前に亡くなる人もいるからです。

そのため、納付された保険料が無駄にならないよう、妻に寡婦年金として支給します。

詳しい説明は各項目でしますが、亡くなった人や遺族の要件も、掛け捨て防止で考えると理解しやすいです。

1-3.寡婦年金は国民年金法で定められている

寡婦年金に関することは、国民年金法で定められています。

  • 国民年金法49条:支給要件
  • 国民年金法50条:金額
  • 国民年金法51条:失権

寡婦年金が支給される要件や、支給額も国民年金法の条文を確認すれば分かります。

寡婦年金について調べるなら、一度は条文は読んでおきましょう。

 

2.寡婦年金を受け取れるのは妻のみ

寡婦年金を受け取れる遺族は妻のみ

寡婦年金は他の遺族給付と違い、受け取れるのは妻のみです。

ただし、妻であれば無条件で受け取れるわけではなく、複数の条件を満たす必要があります。

2-1.寡婦年金の受給者要件は3つ

寡婦年金の受給者要件

亡くなった人の妻が寡婦年金を受給するには、3つの要件を満たす必要があります。

  • 亡くなった夫に生計を維持されていた
  • 婚姻関係が10年以上
  • 遺族である妻が65歳未満

上記をすべて満たさなければ、寡婦年金を受給できる妻には該当しません。

亡くなった夫に生計を維持されていた

遺族である妻の収入が年額850万円未満であれば、収入要件は満たせます。

婚姻関係が継続して10年以上必要

婚姻期間が夫の死亡時に継続して10年以上必要なので、同じ人と離婚・再婚している場合は注意してください。

寡婦年金を受給できるのは65歳未満の妻

寡婦年金を受給できるのは65歳未満の妻です。夫が亡くなった時点で65歳以上の妻は、寡婦年金を受給できません。

2-2.寡婦年金が支給されるのは60歳から

遺族である妻が寡婦年金の受給要件を満たしていても、実際に支給されるのは60歳になってからです。

例えば、妻が40歳のときに夫が亡くなると、寡婦年金の支給まで20年待つ必要があります。

夫が亡くなった時点で妻の年齢が60歳以上であれば、死亡月の翌月から寡婦年金が発生します。

 

3.寡婦年金の要件は亡くなった夫にもある

寡婦年金の被保険者要件

遺族である妻が寡婦年金を受給するには、亡くなった夫の要件も満たす必要があります。

  • 第1号被保険者としての納付期間が10年以上ある
  • 老齢基礎年金および障害基礎年金を受給していない

亡くなった夫が上記を満たしていなければ、妻は寡婦年金を受給できません。

3-1.夫に第1号被保険者として10年以上の納付期間

亡くなった夫の第1号被保険者としての納付期間が10年以上必要です。

「納付済期間」+「免除期間」=納付期間

納付期間が10年に達していなければ、遺族である妻に寡婦年金は支給されません。

3-2.夫が老齢基礎年金・障害基礎年金を受給していない

亡くなった夫が老齢基礎年金または障害基礎年金を受給していると、妻に寡婦年金は支給されません。

なぜなら、寡婦年金は「保険料の掛け捨て防止」が目的に含まれるので、夫が年金を受給しているなら不要だからです。

夫の死亡日が令和3年3月31日以前の場合、障害基礎年金の要件が「受給権者であったことがない」になります。

 

4.寡婦年金の支給額は夫の納付期間で決まる

寡婦年金の支給額は、亡くなった夫の保険料納付期間で決まります。

以下は、国民年金法の条文です。

(年金額)
第五十条 寡婦年金の額は、死亡日の属する月の前月までの第一号被保険者としての被保険者期間に係る死亡日の前日における保険料納付済期間及び保険料免除期間につき、第二十七条の規定の例によつて計算した額の四分の三に相当する額とする。

出典:e-Govウェブサイト(国民年金法50条)

寡婦年金の支給額は夫の老齢基礎年金の4分の3

亡くなった夫の老齢基礎年金の4分の3に相当する金額が、妻が受給する寡婦年金の金額になります。

ただし、夫の老齢基礎年金を計算する際の納付期間は、第1号被保険者としての納付期間だけです。第2号被保険者として保険料を納付していても、寡婦年金の受給額には関係ありません。

 

5.寡婦年金の支給が消滅するケース

寡婦年金の受給権が消滅する要件

亡くなった人の妻が寡婦年金の受給権を取得しても、特定の要件に該当すると消滅します。

  • 妻が65歳に達する
  • 妻が亡くなる
  • 妻が再婚する
  • 妻が養子になる
  • 妻が老齢基礎年金を繰り上げ支給

それぞれ説明していきます。

5-1.妻が65歳になると寡婦年金は終了

寡婦年金の受給権は65歳で消滅

寡婦年金の受給権は、妻が65歳に達すると消滅します。

寡婦年金の受給を始めたのが60歳以降だったとしても、65歳に達すると寡婦年金の受給権は消滅です。

妻の年齢によっては、寡婦年金を受給できる期間は短くなります。

5-2.妻の事情が変われば寡婦年金は消滅

寡婦年金を受給している妻の事情が変わると、寡婦年金の受給権は消滅します。

  • 妻が亡くなる
  • 妻が再婚する
  • 妻が養子になる

妻が亡くなっても寡婦年金は相続できない

妻が亡くなると寡婦年金は消滅します。

したがって、65歳になる前に妻が亡くなっても、寡婦年金の受給権は相続できません。

妻が再婚すると寡婦年金は消滅

妻が再婚すると寡婦年金は消滅します。

寡婦年金を受給する前であっても、再婚すると寡婦年金は受給できません。

妻が養子になる(例外あり)

妻が養子縁組により養子になると、寡婦年金の受給権は消滅します。

ただし、養親が直系血族または直系姻族の場合は除きます。

例えば、亡くなった夫の父親と養親縁組をしても、寡婦年金の受給権は消滅しません。亡くなった夫の父親は直系姻族に該当します。

誰の養子になるかで結論が変わるので、養子縁組をする際は注意してください。

5-3.妻が老齢基礎年金を繰り上げ受給

妻が自分の老齢基礎年金を繰り上げ受給すると、65歳到達前であっても寡婦年金は消滅します。

そもそも、寡婦年金が65歳到達で消滅するのは、妻が自分の年金を受給できる年齢に達するからです。

65歳到達前であっても、自分の年金を受給できるのであれば寡婦年金は消滅します。

 

6.寡婦年金は他の年金と同時に受給できない

年金には併給調整という決まりがあり、寡婦年金も例外ではありません。

6-1.遺族基礎年金や遺族厚生年金を受給中は支給停止

遺族である妻が遺族基礎年金や遺族厚生年金を受給している間、寡婦年金は併給調整により停止されます。

ただし、遺族基礎年金等の受給期間と、寡婦年金の受給期間(60歳以上65歳未満)が重なっていなければ、受給は可能です。

例えば、妻が45歳から50歳まで遺族基礎年金を受給していても、60歳から寡婦年金を受給できます。

妻が他の年金を受給している期間は、寡婦年金の支給が停止すると覚えておきましょう。

6-2.遺族である妻が死亡一時金を選択した

妻が死亡一時金を選択すると寡婦年金は受給できない

遺族である妻が、寡婦年金の受給要件を満たしている場合、死亡一時金の受給要件も満たしています。

ただし、寡婦年金と死亡一時金は、妻の選択によりどちらか一つしか支給されません。

つまり、妻が死亡一時金を選べば、寡婦年金は支給されません。

死亡一時金を受給すると、寡婦年金は受給できないので、選択する際は注意してください。

 

7.寡婦年金の請求手続き

寡婦年金を受給するには、請求手続きをする必要があります。

なぜなら、寡婦年金を受給できる妻がいても、請求しなければ支給されないからです。

7-1.寡婦年金の請求に必要な書類

寡婦年金を請求する際に必要となる書類は、以下のとおりです。

  • 寡婦年金請求書
  • 基礎年金番号通知書
  • 戸籍謄本
  • 世帯全員の住民票
  • 死亡者の住民票(除票)
  • 請求者の収入が確認できる書類
  • 受取先金融機関の通帳等

国民年金寡婦年金請求書は、市区町村役場や年金事務所および年金相談センターの窓口にあります。

全国の年金事務所は、以下の日本年金機構のホームページで検索できます。

日本年金機構のホームページ』に移動します。

7-2.寡婦年金請求書は市区町村役場に提出

寡婦年金請求書の提出先は、住所地の市区町村役場役場です。
※年金事務所および年金相談センターでも可能。

各市区町村役場には年金の窓口(保険年金課等)があり、寡婦年金請求書の提出先になります。

戸籍謄本や住民票を取得する際に役所へ行くので、ついでに寡婦年金請求書も提出しましょう。

 

8.寡婦年金は相続財産に含まれない

寡婦年金は相続財産に含まれない

寡婦年金は遺族である妻に支給されるものであり、相続財産には含まれません。

したがって、相続と寡婦年金は無関係です。

8-1.寡婦年金を受給しても相続財産は取得できる

亡くなった人が遺言書を残していない場合、相続人が複数なら遺産分割協議が必要です。

遺産分割協議で相続人は法定相続分を主張できます。

以下は、法定相続分の割合です。

  • 妻(2分の1):子ども (2分の1)
  • 妻(3分の2):直系尊属(3分の1)
  • 妻(4分の3):兄弟姉妹(4分の1)

例えば、妻と子どもが相続人で相続財産が1,000万円、妻が寡婦年金を受給できる場合。

妻は「1,000万円×2分の1=500万円」を主張できます。

寡婦年金は相続財産ではないので、寡婦年金を受給しても、妻は法定相続分を主張できます。

8-2.相続放棄しても寡婦年金は受給できる

寡婦年金は相続財産ではないので、妻が相続放棄しても受給要件を満たせば受給できます。

また、寡婦年金だけでなく、他の遺族年金についても同じ理由で受給可能です。

寡婦年金等の遺族給付は相続と無関係なので、相続放棄しても諦める必要はありません。

 

9.まとめ

今回の記事では「寡婦年金」について説明しました。

寡婦年金は遺族である妻に支給される、国民年金制度の独自給付です。

寡婦年金を受給するには、「夫の要件」と「妻の要件」をすべて満たす必要があります。

以下は、夫の要件です。

  • 夫が第1号被保険者として10年以上納付している
  • 夫が老齢基礎年金・障害基礎年金を受給していない

以下は、妻の要件です。

  • 夫に生計を維持されていた
  • 婚姻期間が継続して10年以上
  • 妻が65歳未満である

寡婦年金の支給額は、夫の老齢基礎年金×4分の3です。

ただし、妻が他の年金を受給している間は、寡婦年金の支給は停止されます。

寡婦年金が受給できるのは60歳からなので、事情によっては死亡一時金を選択した方が得かもしれません。

寡婦年金について疑問があれば、お近くの年金事務所に相談してみましょう。