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【寡婦年金の支給が停止】4つのケースを図を用いて説明

寡婦年金の支給停止
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寡婦年金の受給要件を満たしていても、支給が停止されている間は、寡婦年金を受給できません。

  • 妻が60歳未満の間
  • 遺族基礎年金を受給中
  • 遺族厚生年金を受給中
  • 遺族補償による6年間の停止

他の年金を受給中は寡婦年金が停止されます。

他の年金と寡婦年金の受給期間が重なっていなければ、寡婦年金も受給できます。

今回の記事では、寡婦年金の支給停止について説明しているので、停止要件を確認しておきましょう。

1.寡婦年金は妻が60歳になるまで支給停止

寡婦年金は60歳まで支給停止

寡婦年金の支給が停止されるケース1つ目は、妻の年齢が60歳未満の間です。

寡婦年金の支給要件を満たしていても、妻が60歳未満の間は支給が停止されます。

以下は、国民年金法の条文です。

(支給要件)
第四十九条 (省略)
3 六十歳未満の妻に支給する寡婦年金は、第十八条第一項の規定にかかわらず、妻が六十歳に達した日の属する月の翌月から、その支給を始める。

出典:e-Govウェブサイト(49条3項)

寡婦年金の支給が開始されるのは、妻が60歳になった月の翌月からです。

例えば、妻が40歳で寡婦年金の受給権を取得しても、実際に支給されるのは20年後になります。

寡婦年金は60歳まで支給停止

ただし、他の停止要件に該当する場合や、60歳前に受給権が消滅している場合は、60歳になっても寡婦年金は受給できません。

寡婦年金の停止要件だけでなく、消滅要件も確認しておきましょう。

 

2.遺族基礎年金を受給中は寡婦年金が支給停止

遺族基礎年金を受給するなら寡婦年金は支給停止

寡婦年金の支給が停止されるケース2つ目は、遺族基礎年金を受給中です。

遺族基礎年金と寡婦年金の支給要件を両方満たしても、同時には受給できません。

以下は、国民年金法の条文です。

(併給の調整)
第二十条 遺族基礎年金又は寡婦年金は、その受給権者が他の年金給付(付加年金を除く。)又は厚生年金保険法による年金たる保険給付(当該年金給付と同一の支給事由に基づいて支給されるものを除く。以下この条において同じ。)を受けることができるときは、その間、その支給を停止する。(後略)

出典:e-Govウェブサイト(国民年金法20条1項)

原則として、一人一年金なので、どちらかを選んで受給します。

したがって、遺族基礎年金を受給中は、寡婦年金の支給が停止されます。

2-1.寡婦年金よりも遺族基礎年金の支給額が高い

遺族基礎年金の方が支給額は多い

寡婦年金と遺族基礎年金の支給額を比べると、遺族基礎年金の方が高いです。

  • 寡婦年金:夫の老齢基礎年金×4分の3
    ※第1号被保険者期間のみで計算
  • 遺族基礎年金:795,000円 +子の加算額

遺族基礎年金と寡婦年金の支給要件を両方満たす場合は、遺族基礎年金を選びます。寡婦年金の支給は停止されますが、遺族基礎年金の方が支給額は高いです。

2-2.遺族基礎年金の受給後でも寡婦年金は受給できる

遺族基礎年金を受給しても、寡婦年金の受給権は消滅しません。

ですので、遺族基礎年金と寡婦年金の支給期間が重なっていなければ、遺族基礎年金の受給後に寡婦年金を受給できます。

【例題1】
遺族基礎年金の受給が50歳で終了した場合。

遺族基礎年金を受給後に60歳から寡婦年金を受給

60歳からは寡婦年金を受給できます。

【例題2】
遺族基礎年金の受給が62歳で終了した場合。

遺族基礎年金を受給後に62歳から寡婦年金を受給

62歳からは寡婦年金を受給できます。

遺族基礎年金を受給しても、寡婦年金の受給権は消滅しないので、年齢確認を忘れないでください。

 

3.遺族厚生年金を受給中は寡婦年金が支給停止

遺族厚生年金を受給するなら寡婦年金は支給停止

寡婦年金の支給が停止されるケース3つ目は、遺族厚生年金を受給中です。

遺族厚生年金と寡婦年金の支給要件を満たしても、両方は受給できません。

以下は、厚生年金法の条文です。

(併給の調整)
第三十八条 障害厚生年金は、その受給権者が他の年金たる保険給付又は国民年金法による年金たる給付(当該障害厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される障害基礎年金を除く。)を受けることができるときは、その間、その支給を停止する。(中略)遺族厚生年金の受給権者が他の年金たる保険給付(老齢厚生年金を除く。)又は同法による年金たる給付(老齢基礎年金及び付加年金、障害基礎年金並びに当該遺族厚生年金と同一の支給事由に基づいて支給される遺族基礎年金を除く。)を受けることができる場合における当該遺族厚生年金についても、同様とする。

出典:e-Govウェブサイト(厚生年金法38条1項)

原則として、一人一年金なので、どちらかを選んで受給します。

遺族厚生年金を受給するには、寡婦年金の受給を停止する必要があります。

3-1.遺族厚生年金の方が高いなら死亡一時金を選択

遺族厚生年金の方が支給額が多い場合

寡婦年金と遺族厚生年金を比べて、遺族厚生年金の方が高いなら、死亡一時金を検討してください。

なぜなら、遺族厚生年金を受給する場合でも、死亡一時金は受給できるからです。

寡婦年金よりも遺族厚生年金の方が高いなら、寡婦年金ではなく死亡一時金を選択した方が得になります。

ただし、寡婦年金と遺族厚生年金の支給額については、年金事務所等でしっかりと確認してください。

3-2.遺族厚生年金を停止すれば寡婦年金は受給できる

寡婦年金の方が支給額が多い場合

遺族厚生年金よりも寡婦年金の支給額が高い場合、寡婦年金の受給期間(60歳から65歳まで)だけ遺族厚生年金を停止します。

例えば、夫の死亡時に妻が55歳だった場合です。

遺族厚生年金と寡婦年金を切り替えて受給

55歳から60歳までは遺族厚生年金を受給して、60歳から65歳までは寡婦年金を受給。65歳からは遺族厚生年金の受給を再開します。

寡婦年金の支給額が高い場合は、遺族厚生年金の停止も検討してください。

 

4.労働基準法の遺族補償で寡婦年金は支給停止

遺族補償が発生すると死亡日から6年は支給停止

寡婦年金の支給が停止されるケース4つ目は、労働基準法の遺族補償が行われる場合です。

夫が業務上死亡すると、労働基準法の規定により、遺族(妻)に遺族補償が行われます。

以下は、労働基準法の条文です。

(遺族補償)
第七十九条 労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金の千日分の遺族補償を行わなければならない。

出典:e-Govウェブサイト(労働基準法79条)

ただし、労働基準法の規定により遺族補償が行われる場合、寡婦年金の支給は停止されます。

4-1.夫の死亡日から6年間は支給が停止される

夫が業務上死亡すると、死亡日から6年間は寡婦年金の支給が停止します。

以下は、国民年金法の条文です。

(支給停止)
第五十二条 寡婦年金は、当該夫の死亡について第四十一条第一項に規定する給付が行われるべきものであるときは、死亡日から六年間、その支給を停止する。
(支給停止)
第四十一条 遺族基礎年金は、当該被保険者又は被保険者であつた者の死亡について、労働基準法の規定による遺族補償が行われるべきものであるときは、死亡日から六年間、その支給を停止する。

出典:e-Govウェブサイト(国民年金法52条・41条1項)

寡婦年金の支給は停止されますが、代わりに遺族補償を受け取れます。

4-2.妻の年齢によっては寡婦年金も受給できる

労働基準法の遺族補償が行われる場合でも、妻の年齢によっては寡婦年金も受給できます。

なぜなら、夫の死亡日から6年経過後に、寡婦年金の受給期間(60歳から65歳)があれば、寡婦年金は受給できるからです。

【例題1】
夫の死亡時に妻の年齢が50歳だった場合。

遺族補償の支給停止が60歳前に終了

56歳で遺族補償の停止期間は終了しているので、60歳から寡婦年金を受給できます。

【例題2】
夫の死亡時に妻の年齢が55歳だった場合。

遺族補償により61歳まで寡婦年金の支給停止

61歳で遺族補償の停止期間は終了するので、61歳からは寡婦年金を受給できます。

夫が業務上死亡した場合、寡婦年金の受給期間と重なっているか確認しましょう。

 

5.まとめ

今回の記事では「寡婦年金の支給停止」について説明しました。

遺族である妻が寡婦年金の受給権を有していても、支給が停止されている間は受給できません。

  • 妻が60歳未満の間
  • 遺族基礎年金を受給中
  • 遺族厚生年金を受給中
  • 遺族補償による6年間の停止

遺族基礎年金や遺族厚生年金に関しては、寡婦年金との選択です。寡婦年金を選んだ場合は、遺族基礎年金や遺族厚生年金の支給が停止されます。

遺族基礎年金の受給終了後や、遺族補償による6年間の停止期間終了後に、寡婦年金の受給期間が残っていれば受給可能です。

寡婦年金には受給停止や受給権消滅があるので、しっかりと確認しておいてください。