寡婦年金に関することは、国民年金法で定められています。
- 国民年金法49条:寡婦年金の支給要件
- 国民年金法50条:寡婦年金の支給額
- 国民年金法51条:受給権の消滅
寡婦年金の支給要件や支給額も、国民年金法の条文に記載されています。
今回の記事では、寡婦年金と法律に関して説明しているので、不明点があれば条文を確認してみましょう。
関連記事を読む『寡婦年金とは遺族に給付される年金の一種【まとめ記事】』
目次
寡婦年金の支給要件(国民年金法49条)
国民年金法49条では、寡婦年金の支給要件を定めています。
条文の記載は多いですが、寡婦年金の支給要件を定めている重要な部分なので、下記の記事も参考にしてください。
関連記事を読む『【寡婦年金の支給要件は5つ】夫と妻にそれぞれ要件がある』
夫と妻それぞれに要件(国民年金法49条1項)
国民年金法49条1項では、夫と妻の要件を定めています。
寡婦年金の支給要件(夫)
夫の要件は2つあります。
- 第1号被保険者として10年以上の納付期間
- 老齢基礎年金・障害基礎年金を受給していない
亡くなった夫に第1号被保険者として、10年以上の納付期間が必要です。
老齢基礎年金(障害基礎年金)を夫が受給していると、妻は寡婦年金を受給できません。
寡婦年金の支給要件(妻)
妻の要件は3つあります。
- 夫に生計を維持されていた
- 婚姻期間が継続して10年以上
- 妻の年齢が65歳未満
生計維持要件に関しては、国民年金法49条2項で定めています。
婚姻期間が継続して10年以上なので、亡くなる直前に再婚しても寡婦年金は受給できません。
夫が亡くなった時点で、妻が65歳以上であれば寡婦年金は受給できません。
寡婦年金の生計維持要件(国民年金法49条2項)
国民年金法49条2項では、37条の2第3項の規定を準用しています。
上記の条文をまとめると、以下になります。
- 夫と妻の生計が同一である
- 妻の収入が一定額以下である
厚生労働大臣が定める金額とは、収入が年額850万円または所得が年額655.5万円です。
つまり、夫と妻の住所が同じで、かつ、妻の収入が850万円未満であれば、生計維持維持要件は満たせます。
寡婦年金の支給開始日(国民年金法49条3項)
国民年金法49条3項では、寡婦年金の支給開始日について定めています。
寡婦年金は妻が60歳になった月の翌月から支給されます。
夫が亡くなった当時、妻が60歳未満であれば、60歳になるまで寡婦年金は支給されません。
関連記事を読む『【寡婦年金の支給が停止】4つのケースを図を用いて説明』
寡婦年金の支給額(国民年金法50条)
国民年金法の50条では、寡婦年金の支給額を定めています。
上記を簡単に説明すると、夫の老齢基礎年金の4分の3が寡婦年金の支給額です。
ただし、老齢基礎年金の額は、第1号被保険者としての「納付済期間」と「免除期間」で計算します。
たとえ第2号被保険者として納付した期間があっても、寡婦年金の支給額には影響しません。
関連記事を読む『寡婦年金の金額はいくら?【夫の老齢基礎年金×4分の3】』
寡婦年金の受給権を失権(国民年金法51条)
国民年金法51条では、寡婦年金の受給権消滅について定めています。
上記の条文をまとめると、以下になります。
- 妻が65歳に達すると消滅
- 妻が死亡すると消滅
- 妻が再婚すると消滅
- 妻が養子になると消滅
養子に関しては、直系血族または直系姻族の養子になる場合を除きます。
例えば、妻が祖父母の養子になっても、寡婦年金の受給権は消滅しません。一方、妻が伯父の養子になると、寡婦年金の受給権は消滅します。
ちなみに、妻が養親なら寡婦年金の受給権は消滅しません。
寡婦年金と遺族補償の調整(国民年金法52条)
国民年金法52条では、寡婦年金と遺族補償の調整について定めています。
夫が業務上亡くなると、労働基準法の規定により遺族補償が給付されます。
ただし、遺族補償が給付される場合、死亡日から6年間は寡婦年金の支給が停止します。
寡婦年金と死亡一時金(国民年金法52条の6)
国民年金法52条の6では、寡婦年金と死亡一時金の選択について定めています。
寡婦年金の受給要件を満たす妻は、死亡一時金の受給要件も満たしています。
ただし、寡婦年金と死亡一時金を両方受給することはできず、妻の選択によりどちらかを受給します。
寡婦年金を選択すると死亡一時金は受給できず、死亡一時金を選択すると寡婦年金は受給できません。
関連記事を読む『死亡一時金とは遺族に給付される年金の一種【まとめ記事】』
故意に死亡させると支給されない(国民年金法71条1項)
国民年金法71条1項では、寡婦年金の給付制限について定めています。
妻が夫を故意に死亡させた場合、寡婦年金は支給されません。
当たり前かもしれませんが、法律で定められています。
老齢基礎年金の繰上げで寡婦年金は消滅(附則9条の2第5項)
国民年金法附則9条の2第5項では、老齢基礎年金の繰上げと寡婦年金の消滅について定めています。
以下は、国民年金法の附則です。※条文の下にあります。
寡婦年金の受給権者が65歳未満であっても、老齢基礎年金を繰上げ受給すると、寡婦年金の受給権は消滅します。
意外と知らない人も多い条文なので、しっかりと確認しておきましょう。
まとめ
今回の記事では「寡婦年金に関する法律」について説明しました。
寡婦年金に関することは、国民年金法で定められています。
- 国民年金法49条:寡婦年金の支給要件
- 国民年金法50条:寡婦年金の支給額
- 国民年金法51条:受給権の消滅
国民年金法を日常生活で読むことは少ないですが、寡婦年金について不明な点があれば、まずは条文を確認しましょう。