寡婦年金の支給額がいくらになるかは、夫が受給するはずだった老齢基礎年金が関係します。
「夫の老齢基礎年金×4分の3=寡婦年金」
ただし、夫の老齢基礎年金を計算する際に用いるのは、第1号被保険者として納付期間のみです。第2号被保険者として納付していても、寡婦年金の金額には反映されません。
今回の記事では、寡婦年金の支給額について説明しているので、事例等を参考にしてください。
目次
1.寡婦年金は夫の老齢基礎年金×4分の3
寡婦年金がいくら支給されるかは、夫が受給予定だった老齢基礎年金により決まります。
「夫の老齢基礎年金×4分の3」が、妻に支給される寡婦年金の金額です。
以下は、国民年金法の条文です。
なぜ寡婦年金の支給額に、夫の老齢基礎年金が関係するかというと、保険料の掛け捨て防止です。
夫が国民年金を受給する前に亡くなると、納付した保険料が無駄になります。掛け捨てを防止する目的もあり、妻に寡婦年金として還元しています。
一方、夫が生前に国民年金(老齢基礎年金・障害基礎年金)を受給している場合、寡婦年金は支給されません。
寡婦年金の支給要件に関しては、以下の記事を参考にしてください。
関連記事を読む『【寡婦年金の支給要件は5つ】夫と妻にそれぞれ要件がある』
2.寡婦年金の金額は第1号被保険者期間のみ反映
寡婦年金の支給額は「夫の老齢基礎年金×4分の3」ですが、老齢基礎年金を計算する際に用いるのは、第1号被保険者としての期間のみです。
つまり、亡くなった夫が第2号被保険者として保険料を納付していても、寡婦年金の支給額には反映されません。
夫に第1号および第2号被保険者として納付期間がある場合、第2号被保険者の期間は除いて老齢基礎年金を計算します。
【例題1】
夫の保険料納付期間は、第1号が10年、第2号が10年。
寡婦年金を計算する場合は、第1号の10年だけを用いて老齢基礎年金を計算します。
【例題2】
夫の保険料納付期間は、第2号が20年。
第1号被保険者としての納付期間がないので、寡婦年金は支給されません。
【例題3】
夫の保険料納付期間は、第1号が9年、第2号が11年。
第1号被保険者としての納付期間が9年しかないので、寡婦年金は支給されません。
※納付期間が10年以上必要。
亡くなった夫の保険料納付期間が長くても、第1号被保険者としての納付でなければ、寡婦年金の支給額には反映されません。
3.寡婦年金がいくらになるか実際に計算
寡婦年金がいくらになるのか、複数の事例を元に計算していきます。
3-1 .納付済期間だけなら寡婦年金の計算は簡単
夫の保険料納付期間が納付済期間だけなら、寡婦年金の計算は難しくありません。
納付済期間を上記の式に当てはめて計算すると、寡婦年金の支給額が分かります。
【例題1】
第1号被保険者として納付済期間が480月の場合。
795,000円×(480分の480)×4分の3=596,250円
寡婦年金は596,250円です。
【例題2】
第1号被保険者として納付済期間が360月の場合。
795,000円×(480分の360)×4分の3=447,188円
寡婦年金は447,188円です。
【例題3】
第1号被保険者として納付済期間が240月の場合。
795,000円×(480分の240)×4分の3=298,125円
寡婦年金は298,125円です。
【例題4】
第1号被保険者として納付済期間が120月の場合。
795,000円×(480分の120)×4分の3=149,063円
寡婦年金は149,063円です。
保険料納付期間が納付済期間だけであれば、計算式に納付済期間を当てはめるだけです。
3-2.寡婦年金の金額には免除期間も反映される
夫の保険料納付期間に免除期間が含まれると、寡婦年金の計算が複雑になります。
なぜ計算が複雑かというと、保険料の免除時期によって、免除期間の反映割合が違うからです。
免除割合 | 平成21年3月 以前 |
平成21年4月 以降 |
---|---|---|
4分の1免除 | 6分の5 | 8分の7 |
半額免除 | 3分の2 | 4分の3 |
4分の3免除 | 2分の1 | 8分の5 |
全額免除 | 3分の1 | 2分の1 |
免除期間の月数は、そのまま計算に含めるのではなく、反映割合に応じて計算に含めます。ただし、免除された時期によって、反映割合が違います。
言葉で説明するより、実際に計算した方が分かりやすいので、例題を参考にしてください。
【例題1】
納付済期間が240月、平成21年3月以前に4分の1免除期間が12月、平成21年4月以降に4分の1期間が12月の場合。
12×6分の5=10 (平成21年3月以前)
12×8分の7=10.5(平成21年4月以降)
10+10.5=20.5 (免除期間の月数)
240+20.5=260.5
795,000円×(480分の260.5)×4分の3=323,590円
寡婦年金は323,590円です。
【例題2】
納付済期間が240月、平成21年3月以前に半額免除期間が12月、平成21年4月以降に半額免除期間が12月の場合。
12×3分の2=8
12×4分の3=9
8+9=17
240+17=257
795,000円×(480分の257)×4分の3=319,242円
寡婦年金は319,242円です。
夫の納付期間に免除期間が含まれる場合、免除割合と時期が重要なので、間違えないように気を付けてください。
注意免除された部分以外を納付していなければ未納期間です。
4.付加保険料は寡婦年金の金額に影響しない
亡くなった夫が付加保険料を納付していても、寡婦年金の支給額には影響しません。
- 付加保険料
- 国民年金の第1号被保険者が、定額保険料に上乗せして納付する保険料
たとえ付加保険料の納付が何十年だったとしても、寡婦年金の支給額は増えません。
ただし、同じ国民年金制度の遺族給付であっても、死亡一時金の支給額には付加保険料が影響します。
付加保険料の納付月が36月以上あれば、死亡一時金に8,500円が追加されます。
死亡一時金の支給額については、下記の記事を参考にしてください。
関連記事を読む『死亡一時金はいくら支給されるのか?納付月数で金額が違う』
5.まとめ
今回の記事では「寡婦年金の支給額」について説明しました。
寡婦年金の支給額は、夫が受給する予定だった老齢基礎年金の4分の3。
ただし、老齢基礎年金を計算する際に用いる期間は、第1号被保険者としての納付期間のみです。たとえ第2号被保険者として何十年納付していても、寡婦年金の支給額には影響しません。
寡婦年金の元となる老齢基礎年金を計算する際は、納付免除割合と時期に注意してください。年金に反映する月数に違いがあります。