遺族給付の一種である寡婦年金には、支給要件が5つあります。
5つのうち夫の要件が2つ。
- 第1号被保険者として納付期間が10年以上ある
- 老齢基礎年金または障害基礎年金を受給していない
残りの3つは妻の要件です。
- 夫に生計を維持されていた
- 婚姻関係が継続して10年以上
- 夫の死亡時に妻が65歳未満
5つの要件をすべて満たさなければ、寡婦年金は支給されません。
今回の記事では、寡婦年金の支給要件について説明しているので、疑問を解消する参考にしてください。
目次
1.寡婦年金の支給要件は夫が2つ
寡婦年金の支給要件は5つあり、そのうち2つが夫の要件です。
以下は、国民年金法の条文です。
- 第1号被保険者として納付期間が10年以上ある
- 老齢基礎年金または障害基礎年金を受給していない
亡くなった夫が上記の要件を満たしていなければ、寡婦年金は支給されません。
1-1.夫の納付期間が10年以上必要
寡婦年金の支給要件1つ目は、夫の納付期間が10年以上必要です。
納付期間は「保険料納付済期間」と「保険料免除期間」を合算した期間になります。
ただし、第1号被保険者としての納付期間のみです。第2号被保険者として保険料を納付していても、寡婦年金には関係ありません。
【例題】
第1号被保険者として9年、第2号被保険者として20年納付している場合。
第1号被保険者としての納付期間が10年に満たないので、寡婦年金の支給要件は満たせません。
被保険者の納付期間を計算する際は、第1号被保険者の期間だけを計算してください。
関連記事を読む『寡婦年金の金額はいくら?【夫の老齢基礎年金×4分の3】』
1-2.夫が自分の年金を受給していない
寡婦年金の支給要件2つ目は、夫が自分の年金を受給していないです。
夫が老齢基礎年金または老齢厚生年金を受給していると、寡婦年金は支給されません。
なぜなら、寡婦年金の目的には「保険料の掛け捨て防止」が含まれているからです。夫が老齢基礎年金(障害基礎年金)を受給しているなら、納付した保険料は無駄になっていません。
ですので、夫が自分の年金を受給していると、寡婦年金の支給要件は満たせません。
注意夫の死亡が令和3年3月31日以前の場合、夫が障害基礎年金の受給権者でも寡婦年金は支給されません。
2.寡婦年金の支給要件は妻が3つ
寡婦年金の支給要件は5つあり、そのうち3つが妻の要件です。
以下は、国民年金法の条文です。
- 夫に生計を維持されていた
- 婚姻関係が継続して10年以上
- 夫の死亡時に妻が65歳未満
妻が上記の要件を満たしていなければ、寡婦年金は支給されません。
2-1.夫の死亡時に生計を維持されていた
寡婦年金の支給要件3つ目は、夫に生計を維持されていたです。
妻が夫に生計を維持されていたと判断するには、2つの要件を満たす必要があります。
①夫と妻の生計が同一
生計維持の判断要件1つ目は、夫と妻の生計が同一です。
原則として、夫と妻の住所が同一であれば、生計は同一だったと判断されます。
事情があって住所が別だった場合、事情を説明することで生計が同一だと認められるケースもあります。
②妻の収入が一定額未満
生計維持の判断要件2つ目は、妻の収入が一定額未満です。
妻の前年収入が850万円未満、または前年所得が655.5万円未満であれば、収入要件は満たせます。
2-2.夫との婚姻期間が継続して10年以上
寡婦年金の支給要件4つ目は、夫との婚姻期間が継続して10年以上です。
遺族基礎年金や遺族厚生年金と違い、寡婦年金は婚姻期間も支給要件となっています。
婚姻期間が継続して10年以上なので、離婚後に再婚しても婚姻期間は合算できません。
例えば、婚姻して5年後に離婚、その後再婚して5年後に夫が亡くなった場合。
夫との婚姻期間は継続して5年なので、寡婦年金の支給要件は満たせません。
寡婦年金の支給には、婚姻期間が継続して10年以上必要です。
2-3.夫の死亡時に妻が65歳未満
寡婦年金の支給要件5つ目は、妻が65歳未満です。
夫の死亡時に妻が65歳未満でなければ、寡婦年金は支給されません。
なぜ65歳未満かというと、妻が65歳以上であれば自分の年金(老齢年金)を受給できるからです。自分の年金を受給できる妻は、寡婦年金の支給要件を満たせません。
寡婦年金が支給されるか確認する際は、忘れずに妻の年齢も確認してください。
ちなみに、寡婦年金の受給権を有していも、妻の年齢が65歳に到達すると受給権は消滅します。
3.失踪宣告による寡婦年金の要件判断日
失踪宣告により夫が死亡とみなされた場合でも、要件を満たしていれば寡婦年金は支給されます。
ただし、一般的な死亡とは、要件判断日が少し違います。
以下は、国民年金法の条文です。
寡婦年金の「生計維持要件(生計同一)」に関しては、行方不明になった日で判断します。
なぜなら、死亡とみなされた日(死亡日)で判断すると、生計維持要件を満たせないからです。
残された妻が寡婦年金を受給できるように、行方不明になった日で判断します。
4.まとめ
今回の記事では「寡婦年金の支給要件」について説明しました。
寡婦年金の支給要件は5つあり、夫が2つで妻が3つです。
- 第1号被保険者としての納付期間が10年以上ある
- 老齢基礎年金または障害基礎年金を受給していない
- 夫に生計を維持されていた
- 婚姻関係が継続して10年以上
- 夫の死亡時に妻が65歳未満
上記をすべて満たさなければ、寡婦年金は支給されません。
まずは、支給要件を一つ一つ確認してください。