死亡一時金とは、遺族に給付される年金の一種です。
亡くなった人に国民年金の第1号被保険者として保険料を納付した期間があれば、遺族は死亡一時金を受給できる可能性があります。
ただし、死亡一時金は請求しなければ支給されず、放置しておくと時効により消滅します。
今回の記事では、死亡一時金について説明しているので、疑問を解消する参考にしてください。
目次
1.死亡一時金は遺族給付の一種
死亡一時金とは、遺族に給付される年金の一種です。
上記をまとめて「遺族年金」と説明するケースもあります。
1-1.死亡一時金は国民年金制度の給付
亡くなった人に国民年金の第1号被保険者として保険料納付期間がある場合、要件を満たすと遺族に死亡一時金が支給されます。
一方、第1号被保険者として保険料を納付した期間がなければ、死亡一時金は支給されません。
まずは、第1号被保険者として納付期間があるか確認してください。
1-2.死亡一時金は掛け捨て防止が目的
なぜ、死亡一時金が支給されるかというと、保険料の掛け捨て防止が目的です。
国民年金の第1号被保険者として保険料を納付していても、年金を受給せずに亡くなる人もいます。
そのため、納付された保険料が無駄にならないように、残された遺族に一時金として支給します。
詳しい説明は各項目でしますが、亡くなった人や受給者の要件も、掛け捨て防止で考えると理解しやすいです。
関連記事を読む『死亡一時金がもらえないケースを4つに分類【図解記事】』
1-3.死亡一時金も法律で定められている
死亡一時金に関することは、国民年金法で定められています。
- 国民年金法52条の2:支給要件
- 国民年金法52条の3:遺族の範囲・順位
- 国民年金法52条の4:金額
死亡一時金が支給される要件や、受給できる遺族も国民年金法の条文を確認すれば分かります。
死亡一時金について調べるなら、一度は条文は読んでおきましょう。
2.死亡一時金の支給額は納付月数で決まる
死亡一時金の支給額は、亡くなった人が第1号被保険者として保険料を納付した月数で決まります。
関連記事を読む『死亡一時金はいくら支給されるのか?納付月数で金額が違う』
2-1.保険料の納付月数が最低36月以上必要
死亡一時金の発生には、保険料の納付月数が最低36月以上必要です。
納付月数を計算する際は、保険料が免除されている月数に注意してください。
保険料免除割合 | 計算に含む月数 |
---|---|
4分の1免除期間の月数 | 4分の3に相当する月数 |
半額免除期間の月数 | 2分の1に相当する月数 |
4分の3免除期間の月数 | 4分の1に相当する月数 |
保険料を全額免除されている期間は、死亡一時金を計算する際の月数に含みません。
【例題1】
保険料納付済期間が30ヶ月、全額免除期間が30ヶ月の場合。
30+0=30
納付月数は30月なので、死亡一時金は支給されません。
【例題2】
保険料納付済期間が30ヶ月、半額免除期間が30ヶ月の場合。
30+15=45
納付月数は45月なので、死亡一時金が支給されます。
保険料を免除されている期間がある場合は、計算間違いをしないように気を付けてください。
2-2.死亡一時金の額は6段階に分かれる
死亡一時金の支給額は、納付月数によって6段階に分かれています。
納付月数 | 金額 |
---|---|
36月以上180月未満 | 120,000円 |
180月以上240月未満 | 145,000円 |
240月以上300月未満 | 170,000円 |
300月以上360月未満 | 220,000円 |
360月以上420月未満 | 270,000円 |
420月以上 | 320,000円 |
亡くなった人の納付月数により、12万円から32万円と最大20万円の差があります。
付加保険料の納付月数が36月以上で加算
亡くなった人が付加保険料を36月以上納付していた場合、死亡一時金の支給額に8,500円を加算します。
ただし、付加保険料の加算は8,500円だけです。
3.死亡一時金の受取人は誰なのか?
死亡一時金を受け取れる遺族とは、以下の2つを満たした遺族です。
- 亡くなった人と生計同一
- 受給順位の高い遺族
上記を満たした遺族が、死亡一時金の遺族(受給者)となります。
3-1.亡くなった人と生計を同一にしていた遺族
死亡一時金の受給要件1つ目は、亡くなった人と生計を同一にしていたです。
原則として、亡くなった人と住民票上の住所が同じであれば、生計同一と認められます。
ただし、住民票上の住所が違う場合でも、事情によっては生計同一と認められる可能性はあります。
3-2.死亡一時金を受給できる遺族には順位がある
死亡一時金の受給要件2つ目は、受給順位の高い遺族であること。
亡くなった人と生計を同一とする遺族が複数存在する場合、受給順位の高い遺族が死亡一時金を受給します。
例えば、配偶者と子どもが生計同一者に該当する場合、受給順位の高い配偶者が死亡一時金の受給権者です。
亡くなった人と生計が同一であっても、受給順位の低い遺族は受給できないので注意してください。
4.死亡一時金が受け取れないケース
亡くなった人が納付要件を満たしていて、かつ、遺族が存在する場合でも、死亡一時金を受給できないケースがあります。
- 死亡者が老齢または障害基礎年金を受給している
- 遺族が遺族基礎年金の受給権者に該当する
- 遺族である妻が寡婦年金を選択した
上記を図にすると、以下のようになります。
それぞれ説明していきます。
4-1.死亡者が老齢・障害基礎年金を受給している
亡くなった人が老齢基礎年金または障害基礎年金を受給していた場合、死亡一時金は支給されません。
なぜなら、生前に年金を受け取っているので、死亡一時金(掛け捨て防止)を支給する必要がないからです。
亡くなった人が年金を受給していたかは、死亡一時金の支給に大きく関係します。
4-2.遺族が遺族基礎年金の受給権者に該当する
遺族が遺族基礎年金の受給権者に該当する場合、死亡一時金は支給されません。
なぜなら、遺族基礎年金を受給できるので、死亡一時金(掛け捨て防止)を支給する必要がないからです。
遺族基礎年金が受給できなければ、死亡一時金の受給要件を満たしているか確認してください。
4-3.遺族である妻が寡婦年金を選択した
遺族である妻が、死亡一時金だけでなく寡婦年金の受給要件も満たす場合、妻の選択によりどちらか一つを支給します。
つまり、妻が寡婦年金を選べば、死亡一時金は支給されません。
寡婦年金を受給すると、死亡一時金は受給できなくなるので、選択する際は注意してください。
5.死亡一時金の請求手続き
死亡一時金を受給するには、請求手続きをする必要があります。
なぜなら、死亡一時金を受給できる遺族がいても、請求しなければ支給されないからです。
5-1.死亡一時金を請求する際に必要となる書類
死亡一時金を請求する際に必要となる書類は、以下のとおりです。
- 国民年金死亡一時金請求書
- 基礎年金番号通知書
- 戸籍謄本
- 世帯全員の住民票
- 死亡者の住民票(除票)
- 受取先金融機関の通帳等
国民年金死亡一時金請求書は、市区町村役場や年金事務所および年金相談センターの窓口にあります。
死亡一時金の請求書を取得する際に、窓口で必要書類の確認をしておくと、二度手間になりません。
5-2.死亡一時金請求書の提出先は市区町村役場
死亡一時金請求書の提出先は、住所地の市区町村役場役場です。
各市区町村役場には年金の窓口(保険年金課等)があり、死亡一時金請求書の提出先になります。
相続が発生すると戸籍を取得するため、市区町村役場に行くことが多いので、ついでに死亡一時金請求書も提出しておきましょう。
6.死亡一時金の受給権にも時効の定めあり
死亡一時金を受給する権利にも、消滅時効の定めがあります。
- Q.消滅時効
- A.一定期間を経過すると権利が消滅すること
たとえ死亡一時金の受給要件を満たしていても、請求せずに放置しておく時効により消滅します。
6-1.死亡日の翌日から2年経過で受給権は消滅
死亡一時金の時効期間は、死亡日の翌日から2年間です。
死亡日の翌日から2年以内に請求しなければ、死亡一時金の受給権は時効により消滅します。
死亡一金の時効期間は2年なので、後回しにせず請求してください。
関連記事を読む『【死亡一時金の時効は2年】死亡日の翌日からスタートする』
6-2.死亡一時金と遺族年金では時効期間が違う
死亡一時金の時効期間は2年ですが、遺族年金の時効期間は5年です。
遺族年金の時効期間を2年だと勘違いすると、本来受給できる遺族年金を諦めることになります。
また、遺族年金に関しては、時効期間(5年)を経過していても、事情があれば遡って5年分は請求できます。
死亡一時金と遺族年金では時効期間が違うので、間違えないように注意してください。
関連記事を読む『遺族年金の消滅時効は5年|経過していても諦めずに請求』
6-3.失踪宣告による死亡一時金は時効起算日が違う
生死不明者が失踪宣告により死亡とみなされた場合でも、受給要件を満たしていれば死亡一時金が受給できます。
ただし、通常の死亡とは時効期間の起算日(スタート日)が違います。
失踪宣告により死亡一時金の受給権が発生する場合、時効期間は審判確定日の翌日から2年です。死亡とみなされる日の翌日ではありません。
失踪宣告により遺族年金(死亡一時金含む)が発生するなら、時効期間も確認しておいてください。
関連記事を読む『失踪宣告による死亡でも遺族年金は受給できる』
7.死亡一時金は相続財産に含まれない
死亡一時金は遺族に支給されるものであり、相続財産には含まれません。
ですので、相続人であっても、死亡一時金の遺族に該当しなければ受給できません。
7-1.遺言書でも死亡一時金の受給者は指定できない
死亡一時金は相続財産に含まれないので、遺言書でも受給者は指定できません。
たとえ遺言書に死亡一時金の受給者を記載しても、法律上の効力はありません。遺言書の記載とは関係なく、受給要件を満たした遺族が受給します。
※遺言書の記載事項は決まっています。
もし、亡くなった人と誰も生計を同一にしていなければ、死亡一時金を受給できる遺族は存在しません。
関連記事を読む『遺言事項は法律で決まっている|14の項目について説明』
7-2.相続放棄しても受給要件を満たせば受給できる
死亡一金は相続財産ではないので、相続放棄しても受給要件を満たせば受給できます。
また、死亡一時金だけでなく、遺族年金についても同じ理由で受給可能です。
死亡一時金等の年金は、相続とは無関係なので、相続放棄しても諦める必要はありません。
関連記事を読む『相続放棄しても遺族年金は受け取れる|受給要件と相続は無関係』
7-3.死亡一時金を受給しても相続税は課税されない
死亡一時金は相続財産に含まれないので、受給しても相続税は課税されません。
受給者が相続財産も取得している場合は、死亡一時金を除いた金額で相続税を計算します。
死亡一時金と相続税は無関係なので、相続税の計算に含めないように気を付けてください。
8.まとめ
今回の記事では「死亡一時金」について説明しました。
死亡一時金は遺族に支給される、国民年金制度の独自給付です。
ですので、亡くなった人に第1号被保険者として納付した期間がなければ、死亡一時金は支給されません。
死亡一時金の支給額は、保険料を納付した期間により違います。最低36ヶ月以上は納付期間が必要です。
死亡一時金を受給できるのは、「生計同一」と「優先順位」の2つを満たした遺族です。
ただし、亡くなった人が老齢基礎年金や障害基礎年金を受給していた場合や、遺族が遺族基礎年金を受給できる場合は、死亡一時金を受給できません。
死亡一時金を受給する権利にも時効があるので、忘れずに請求手続きをしてください。