事実婚では遺言書の作成が重要になります。
事実婚の配偶者は相続人ではないので、遺言書等の相続対策をしなければ、財産を取得できないからです。
遺言書を作成する際は、書き方にも注意してください。何も考えずに遺言書を書くと、後からトラブルも発生します。
今回の記事では、事実婚の遺言書について説明しているので、遺言書を作成する前の参考にしてください。
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1.事実婚と遺言書はセットで考える
法律婚ではなく事実婚を選んでいる夫婦であれば、遺言書を作成している人も多いでしょう。
なぜなら、事実婚の配偶者は相続人でないので、遺言書等の相続対策が必須だからです。
1-1.事実婚の配偶者は相続人ではない
事実婚の配偶者は相続人に含まれません。事実婚が何十年であっても結論は同じです。
ですので、相続対策をしなければ、事実婚の配偶者は相続財産を取得できません。
配偶者に財産を残したくない人は別ですが、事実婚と相続対策はセットで考える必要があります。
関連記事を読む『事実婚の相続では配偶者に財産を残す対策が必須となる』
1-2.遺贈の相手は事実婚の配偶者も可能
遺言書で遺贈できる相手に、法律上の決まりはありません。
相続人以外の第三者にも遺贈できるので、事実婚の配偶者に遺贈するのも可能です。
遺言書に配偶者への遺贈を書いておけば、配偶者も相続財産を取得できます。
ただし、遺言書の書き方には十分に注意してください。せっかく遺言書を作成しても、内容によってはトラブルを招く可能性もあります。
2.事実婚の遺言書は書き方も重要
事実婚の配偶者に財産を遺贈する場合、遺言書の書き方も重要です。
2-1.財産を書き忘れると配偶者は取得できない
事実婚の配偶者に特定の財産だけ残したいなら、遺言書に特定の財産を記載すれば大丈夫です。
遺言書
遺言者は、遺言者の有する下記の不動産を、遺言者の事実婚の妻○○○○(生年月日、住所)に遺贈する。
※不動産の表示省略
遺言書に記載された不動産に関しては、事実婚の配偶者が取得できます。
ただし、遺言書に書き忘れた財産があると、配偶者は当該財産を取得できません。
例えば、遺言者が定期預金の存在を忘れていた場合、配偶者は定期預金を取得できません。定期預金は相続人が相続します。
配偶者に特定の財産だけ遺贈するなら、財産の書き忘れが無いか確認してください。
関連記事を読む『【特定遺贈とは】遺言書に財産を特定して記載する』
2-2.配偶者に全財産を遺贈なら遺留分に注意
遺言書で事実婚の配偶者に全財産を遺贈するなら、相続人の遺留分に注意してください。
遺言書
遺言者は、遺言者の有する全財産を、遺言者の事実婚の妻○○○○(生年月日、住所)に遺贈する。
事実婚の配偶者に全財産を遺贈しても、遺留分を有する相続人は、配偶者に金銭を請求できます。
遺留分を有している相続人は、「子ども」と「直系尊属」だけです。兄弟姉妹は遺留分を有していないので、兄弟姉妹が相続人の場合は気にする必要がありません。
以下は、遺留分の割合です。
相続人 | 遺留分 |
---|---|
子ども | 2分の1 |
直系尊属 | 3分の1 |
兄弟姉妹 | 無し |
※法律上の配偶者が存在しない場合です。
例えば、全財産(預貯金1,000万円) を配偶者に遺贈しても、子どもは500万円を配偶者に請求できます。
事実婚の配偶者に全財産を遺贈する場合は、相続人の遺留分を確認しておきましょう。
関連記事を読む『遺留分侵害額請求権とは金銭を請求する権利』
2-3.配偶者に一部包括遺贈すると遺産分割協議
遺留分の請求を避けるため、遺留分を除いた割合で配偶者に遺贈する人もいます。
例えば、遺言者に実子がいるので、遺留分2分の1を除いた割合で遺贈した場合です。
遺言書
遺言者は、遺言者の有する全財産の2分の1を、遺言者の事実婚の妻○○○○(生年月日、住所)に遺贈する。
上記のような遺言書を書いてしまうと、相続発生後に事実婚の配偶者と子どもで遺産分割協議を行う必要があります。
なぜなら、全財産の2分の1では、具体的にどの財産を取得するのか不明だからです。遺産分割協議により財産の取得者を決めます。
事実婚の配偶者と実子が友好であれば別ですが、疎遠だと遺産分割協議で揉めやすいです。
遺産分割協議を避けたいなら、特定遺贈または全部包括遺贈にしておきましょう。
関連記事を読む『包括遺贈の受遺者は遺産分割協議の参加者となる』
2-4.遺言執行者の指定がないと相続手続きが面倒
事実婚の配偶者に財産を遺贈するなら、遺言執行者の指定もしておきましょう。
遺言書
遺言者は、この遺言の遺言執行者として、遺言者の事実婚の妻○○○○(生年月日、住所)を指定する。
遺言執行者の指定がなければ、相続手続きが面倒になります。
例えば、配偶者に不動産を遺贈した場合、遺言執行者を指定していなければ、相続人全員が遺贈の登記義務者となります。
※家庭裁判所に遺言執行者の選任申立ても可能。
それに対して、遺言執行者を指定しておけば、遺言書執行者が登記義務者となります。
※配偶者を遺言執行者に指定できる。
配偶者に遺贈するなら、遺言執行者の指定もしておきましょう。
関連記事を読む『遺言執行者は遺贈登記だけでなく相続登記も申請できる』
3.事実婚の遺言書を書くタイミングは?
遺言書を書くタイミングに決まりはありません。80歳で書く人もいますし、40歳で書く人もいます。
ですが、事実婚の遺言書に関しては、できる限り早く書いた方が良いでしょう。
なぜかというと、事実婚の配偶者は相続人ではないからです。遺言書を書く前に亡くなると、配偶者は財産を1円も取得できません。
遺言書を書くタイミングは、自分が亡くなって配偶者が困るかどうかで判断します。
遺言書が無くても配偶者が困らないのであれば、遺言書の作成を後回しにしても問題ありません。
※今日亡くなっても困らない場合。
一方、自分名義の不動産に住んでいる等の事情があれば、遺言書は今すぐにでも作成すべきです。
事実婚と法律婚では遺言書の重要性が違います。後回しにするリスクも事実婚の方が高いので、できる限り早めに作成しましょう。
4.事実婚で財産を取得する方法(遺言書以外)
事実婚の配偶者が相続財産を取得する方法は、遺言書以外にも存在します。
- 配偶者に生前贈与しておく
- 相続人がいないなら特別縁故者
ただし、上記にはデメリットもあるので、注意してください。
4-1.配偶者に生前贈与するなら相続は無関係
事実婚の配偶者に残したい財産があるなら、生前に渡しておくのも方法の一つです。
生前に渡しておけば相続は無関係なので、事実婚であっても問題ありません。
生前贈与のメリット
生前贈与なら財産を確実に配偶者へ渡せます。
また、贈与は口頭でも成立するので、すぐに渡すことも可能です。
生前贈与のデメリット
配偶者に渡す財産額によっては、配偶者に贈与税が発生します。
また、財産を受け取った配偶者が先に亡くなる可能性もあるので、多額の財産を渡しにくいです。
4-2.特別縁故者制度は相続対策ではない
事実婚の配偶者が財産を取得する方法として、特別縁故者制度も挙げられます。
- 特別縁故者制度
- 亡くなった人と特別の縁故があった人に財産を渡す制度
ただし、特別縁故者制度は、相続対策ではありません。正しい遺言書を作成していれば、特別縁故者制度を頼る必要もないです。
特別縁故者制度のメリット
特別縁故者制度は死後の手続きなので、亡くなった人が遺言書等を作成していなくても、相続財産を取得できる可能性があります。
特別縁故者制度のデメリット
特別縁故者制度は、相続人が1人でも存在すると利用できません。
また、相続人が存在しない場合でも、家庭裁判所に特別縁故者と認められなければ、相続財産は取得できません。
関連記事を読む『特別縁故者は『相続人がいる場合』に該当すると取得できない』
5.まとめ
今回の記事では「事実婚の遺言書」について説明しました。
事実婚の配偶者は相続人ではないので、遺言書等の相続対策は必須です。
遺言書で配偶者に遺贈しておけば、事実婚であっても財産を取得できます。
ただし、遺言書の書き方には注意してください。書き方によっては、トラブルを招く可能性があります。
遺言書以外の方法でも財産は取得できますが、デメリットも多いです。できる限り遺言書を書いておきましょう。