遺言書で遺言執行者が指定されていなくても、慌てる必要はありません。
遺言執行者の選任申立ては、相続人や受遺者から申し立てることができます。
選任申立ては強制ではありませんが、遺言書の内容によっては遺言執行者が必要になります。
今回の記事では、遺言執行者の選任について説明しているので、遺言執行者がいないなら参考にしてください。
目次
1.遺言執行者がいなければ選任申立てができる
遺言執行者が存在しなければ、家庭裁判所に選任申立てをすることができます。
遺言執行者が存在しないケースには、以下があります。
- 遺言書で指定していない
- 指定した人が辞退した
- 遺言執行者が辞任した
- 遺言執行者を解任した
- 遺言執行者が死亡した
遺言書で指定していなかった場合だけでなく、就任していた遺言執行者が辞任・解任・死亡した場合も、家庭裁判所に選任申立てをすることができます。
2.家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てをする
家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てをするなら、以下を確認しておきましょう。
- 申立先の家庭裁判所
- 利害関係人が申立て
- 戸籍謄本や収入印紙の準備
2-1.遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
遺言執行者の選任申立先は自由に選べるわけでなく、法律により決められています。
相続を開始した地とは、遺言者の最後の住所地のことです。
ですので、遺言執行者の選任申立ては、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
2-2.申立ができるのは利害関係人
遺言執行者の選任申立てができるのは、利害関係を有している人だけです。
主な利害関係人は、以下のとおりです。
- 相続人
- 受遺者
- 相続人・受贈者の債権者
上記以外の人でも、遺言執行者の選任に利害関係があれば可能です。
2-3.戸籍謄本や収入印紙の準備
遺言執行者の選任申立ての際には、申立書以外にも複数準備する物があります。
- 遺言者の戸籍謄本または除籍謄本
- 遺言者の住民票(除票)
- 遺言書の写し
- 利害関係を証する資料
- 候補者の住民票
- 収入印紙(800円分)
- 予納郵券
*家庭裁判所により違う
相続人が申立てする場合は、利害関係を証する資料が相続人の戸籍謄本になります。
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3.遺言執行者の選任申立書で候補者を推薦できる
遺言執行者の選任申立書で、遺言執行者の候補者を推薦することもできます。
ただし、注意点が2つあります。
- 遺言執行者を選ぶのは家庭裁判所
- 欠格事由に該当する人は無理
3-1.遺言執行者を選ぶのは家庭裁判所
遺言執行者の選任申立書で候補者を推薦しても、誰を遺言執行者にするかは家庭裁判所が決めます。
候補者がそのまま遺言執行者に選任されることもありますし、家庭裁判所が専門家(弁護士)を選任することもあります。
相続人同士で揉めているケースなどでは、第3者である専門家を選ぶ可能性が高いでしょう。
3-2.欠格事由に該当する人はなれない
遺言執行者の候補者は親族でも大丈夫ですが、法律上で禁止されている人もいます。
未成年者と破産者は遺言執行者になれないので、候補者を推薦する場合は気をつけてください。
4.遺言執行者の選任申立ては司法書士に依頼できる
遺言執行者の選任申立ては、司法書士に依頼することも可能です。
ご自身で手続きをする時間がなければ、司法書士に依頼することで必要な書類も収集してくれます。
また、遺言書の内容に不動産があれば、不動産の名義変更も同じ司法書士に依頼できます。
遺言執行者の選任について疑問があれば、司法書士に相談してみましょう。
5.遺言執行者を選任しないことも可能
遺言執行者がいない場合でも、選任申立ては強制ではありません。
なぜなら、遺言執行者を選任しなくても、相続人全員が協力すれば財産名義の変更はできるからです。
例えば、不動産名義を受遺者に移転するのも、相続人全員が登記義務者になれば可能となります。
ただし、遺言執行者でなければ出来ないこともあります。
- 遺言認知の届出
- 相続人の廃除
- 相続人の廃除の取消し
上記が遺言書に記載されているときは、遺言執行者の選任申立てをしましょう。
遺言執行者を選任しないことも可能ですが、遺言書の内容によっては選任申立が必要です。
6.さいごに
遺言執行者がいなければ、家庭裁判所に選任申立てができます。
遺言書で指定していない場合だけでなく、辞任・解任・死亡した場合も含みます。
申立ができるのは、相続人や受遺者などの利害関係人です。
遺言執行者の選任申立ては強制ではありませんが、相続人同士で揉めている場合等は、第3者を選任した方が遺言書の内容を執行しやすいです。