遺言執行者の選任申立てを家庭裁判所にすることもできる

遺言執行者の選任申立て
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遺言書で遺言執行者が指定されていなくても、慌てる必要はありません。

遺言執行者の選任申立ては、相続人や受遺者から申し立てることができます。

選任申立ては強制ではありませんが、遺言書の内容によっては遺言執行者が必要になります。

今回の記事では、遺言執行者の選任について説明しているので、遺言執行者がいないなら参考にしてください。

1.遺言執行者がいなければ選任申立てができる

遺言執行者が存在しなければ、家庭裁判所に選任申立てをすることができます。

(遺言執行者の選任)
第千十条 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法1010条)

遺言執行者が存在しないケースには、以下があります。

  • 遺言書で指定していない
  • 指定した人が辞退した
  • 遺言執行者が辞任した
  • 遺言執行者を解任した
  • 遺言執行者が死亡した

遺言書で指定していなかった場合だけでなく、就任していた遺言執行者が辞任・解任・死亡した場合も、家庭裁判所に選任申立てをすることができます。

2.家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てをする

家庭裁判所に遺言執行者の選任申立てをするなら、以下を確認しておきましょう。

  • 申立先の家庭裁判所
  • 利害関係人が申立て
  • 戸籍謄本や収入印紙の準備

2-1.遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

遺言執行者の選任申立先は自由に選べるわけでなく、法律により決められています。

(管轄)
第二百九条 遺言に関する審判事件(別表第一の百二の項から百八の項までの事項についての審判事件をいう。)は、相続を開始した地を管轄する家庭裁判所の管轄に属する。

出典:e-Govウェブサイト(家事事件手続法209条)

相続を開始した地とは、遺言者の最後の住所地のことです。

ですので、遺言執行者の選任申立ては、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。

2-2.申立ができるのは利害関係人

遺言執行者の選任申立てができるのは、利害関係を有している人だけです。

(遺言執行者の選任)
第千十条 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。

出典:e-Govウェブサイト(民法1010条)

主な利害関係人は、以下のとおりです。

  • 相続人
  • 受遺者
  • 相続人・受贈者の債権者

上記以外の人でも、遺言執行者の選任に利害関係があれば可能です。

申立てには利害関係が必要

2-3.戸籍謄本や収入印紙の準備

遺言執行者の選任申立ての際には、申立書以外にも複数準備する物があります。

  • 遺言者の戸籍謄本または除籍謄本
  • 遺言者の住民票(除票)
  • 遺言書の写し
  • 利害関係を証する資料
  • 候補者の住民票
  • 収入印紙(800円分)
  • 予納郵券
    *家庭裁判所により違う

相続人が申立てする場合は、利害関係を証する資料が相続人の戸籍謄本になります。

3.遺言執行者の選任申立書で候補者を推薦できる

遺言執行者の選任申立書で、遺言執行者の候補者を推薦することもできます。

ただし、注意点が2つあります。

  • 遺言執行者を選ぶのは家庭裁判所
  • 欠格事由に該当する人は無理

3-1.遺言執行者を選ぶのは家庭裁判所

遺言執行者の選任申立書で候補者を推薦しても、誰を遺言執行者にするかは家庭裁判所が決めます。

候補者がそのまま遺言執行者に選任されることもありますし、家庭裁判所が専門家(弁護士)を選任することもあります。

誰を選ぶかは家庭裁判所が決める

相続人同士で揉めているケースなどでは、第3者である専門家を選ぶ可能性が高いでしょう。

3-2.欠格事由に該当する人はなれない

遺言執行者の候補者は親族でも大丈夫ですが、法律上で禁止されている人もいます。

(遺言執行者の欠格事由)
第千九条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。

出典:e-Govウェブサイト(民法1009条)

未成年者と破産者は遺言執行者になれないので、候補者を推薦する場合は気をつけてください。

4.遺言執行者の選任申立ては司法書士に依頼できる

遺言執行者の選任申立ては、司法書士に依頼することも可能です。

ご自身で手続きをする時間がなければ、司法書士に依頼することで必要な書類も収集してくれます。

また、遺言書の内容に不動産があれば、不動産の名義変更も同じ司法書士に依頼できます。

遺言執行者の選任について疑問があれば、司法書士に相談してみましょう。

5.遺言執行者を選任しないことも可能

遺言執行者がいない場合でも、選任申立ては強制ではありません。

なぜなら、遺言執行者を選任しなくても、相続人全員が協力すれば財産名義の変更はできるからです。

例えば、不動産名義を受遺者に移転するのも、相続人全員が登記義務者になれば可能となります。

ただし、遺言執行者でなければ出来ないこともあります。

  • 遺言認知の届出
  • 相続人の廃除
  • 相続人の廃除の取消し

上記が遺言書に記載されているときは、遺言執行者の選任申立てをしましょう。

遺言執行者を選任しないことも可能ですが、遺言書の内容によっては選任申立が必要です。

6.さいごに

遺言執行者がいなければ、家庭裁判所に選任申立てができます。

遺言書で指定していない場合だけでなく、辞任・解任・死亡した場合も含みます。

申立ができるのは、相続人や受遺者などの利害関係人です。

遺言執行者の選任申立ては強制ではありませんが、相続人同士で揉めている場合等は、第3者を選任した方が遺言書の内容を執行しやすいです。