亡くなった人が遺言書を残していなければ、特別縁故者制度を頼ることになります。
なぜなら、あなたが特別縁故者に該当するなら、相続人でなくても財産を取得できる可能性が残っているからです。
ただし、財産を取得するには、以下の条件を満たす必要があります。
- 亡くなった人に相続人が存在しない
- 申立をして特別縁故者として認められる
上記の条件を満たすのは簡単ではありませんが、最後の手段として特別縁故者制度を確認しておいてください。
目次
1.特別縁故者に該当するには要件がある
人が亡くなると法定相続人が財産を相続します。法定相続人がいない場合は通常は国庫へ帰属します。
*相続人全員が相続放棄をした場合も含みます。
例外は、特別縁故者への財産分与です。
ただし、誰でも特別縁故者になれるのではなく、以下のどれかに該当する必要があります。
- 亡くなった人と生計を同じにしていた人
- 亡くなった人の療養看護に努めた人
- 上記以外で亡くなった人と特別な縁故があった人
特別縁故者として認められるのは、自然人だけではなく法人も認められます。
1-1.亡くなった人と生計を同じにしていた人
生計を同じとはお金を同じにしていた人です。財布が同じという言い方もします。
過去に特別縁故者と認められた例
- 事実婚の相手
- 同性婚の相手
- 事実上の養子関係の相手
- 亡くなった子どもの配偶者
上記に該当しても、認められない場合もあります。
内縁の夫を認めなかった裁判例もあります。
*遺言書を偽造していたからです。
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1-2.亡くなった人の療養看護に努めた人
原則として、報酬を得ている看護師や介護士は除きます。例外は、仕事以外でも看護や介護をした場合や、報酬以上に看護や介護をしたと認められる場合です。
法人が療養看護を認められた例もあります。亡くなった人が35年間入所していた施設で、全額財産分与が認められています。
関連記事を読む『亡くなった人の療養看護に努めた人|特別縁故者に該当する3類型の1つ』
1-3.上記以外で亡くなった人と特別な縁故があった人
過去に認められた例です。
- 遺言書はないが、生前に譲ると約束を受けていた人
- 亡くなった人の親戚で、親身になってお世話をした人
- 財産を譲ることが、亡くなった人の意思と合致する人
特別な縁故なので、親しかった程度では難しいです。葬儀を行っただけでは生前の縁故には含みません。
過去には法人が認められた例もあります。
2.特別縁故者が財産を取得するには条件が2つある
特別縁故者の要件に該当しても、それだけでは財産を取得することはできません。
特別縁故者が財産分与により財産を取得するには、2つの条件を満たす必要があります。
- 亡くなった人に相続人が存在しない
- 特別縁故者の財産分与の申立てをする
2-1.亡くなった人に相続人が存在しない
特別縁故者の財産分与は、亡くなった人に相続人が存在しない場合だけです。
亡くなった人に相続人が存在すると、どんなに特別な縁故があっても認められません。
ですので、生前から特別縁故者制度を当てにすると、想定外の相続人が発見されて財産を取得できない可能性があります。
関連記事を読む『特別縁故者制度を当てにするのは危険|意外と相続人は存在する』
2-2.特別縁故者の財産分与の申立てをする
亡くなった人に相続人が存在しないからといって、自動的に財産が分与されるわけではありません。
家庭裁判所に特別縁故者の財産分与の申立てをしなければなりません。
ただし、特別縁故者の財産分与の申立てをするには、相続財産管理人が選任されている必要があります。
関連記事を読む『相続財産管理人の選任申立てをするなら手順を確認しよう』
3.財産を取得するまでの流れ
特別縁故者の財産分与の申立てができるのは、相続人の不存在が確定した後です。相続人の不存在を確定させるためには、相続財産管理人の選任申立てをする必要があります。
相続財産管理人が相続人を捜索したり、相続債権者への支払い等をします。すべての手続きが完了した後に、特別縁故者の財産分与の申立てができます。
特別縁故者が実際に財産を取得するまでには、1年以上はかかりますので流れを確認しておいてください。
関連記事を読む『特別縁故者の申立ての流れ|財産を取得するには時間がかかる』
4.さいごに
特別縁故者制度は、残された人の最後の希望です。亡くなった人が遺言書を残していなければ、特別縁故者制度に頼らざるを得ないです。
ただし、特別縁故者制度を生前から当てにするのは危険です。相続人が1人でも存在すると、1円も取得することはできないからです。会ったこともない相続人を、優先するのが相続のルールです。
あくまでも、特別縁故者制度は最終手段となります。生前に遺言書を書いておくなどの相続対策をしておきましょう。