亡くなった人が遺言書を残していないと、相続人全員で遺産分割協議が必要になります。
そのため、相続人の中に行方不明の人がいると、遺産分割協議が始まりません。
いつまでも相続手続が進まないと困るので、不在者財産管理人を選任することになります。
不在者財産管理人は相続時以外でも選任できるのですが、今回の記事では相続時について説明していきます。
1.不在者とは
まず初めに不在者について説明していきます。
財産管理制度上の不在者とは「生死不明で当分帰ってくる見込みがない人」のことです。
ちなみに、行方不明者届けを出していなくても該当します。
1-1.生死不明
生死不明であることが条件にあるので、死亡している人は当然ですが、死亡しているとみなされている人も不在者ではないです。
生前に交流が無かった相続人の場合は、相続手続の際に戸籍で死亡の確認をします。他人の戸籍は通常取得できないのですが、相続手続は取得理由となります。
死亡しているとみなされるとは、失踪宣告を受けている場合です。失踪宣告を受けている人は死亡しているとみなされます。
行方不明の期間が長期間に及ぶ場合は失踪宣告も検討してみてください。
1-2.当分帰ってくる見込みがない
当分帰ってくる見込みがないとは、ある程度の期間行方不明であることが必要です。
ですので、最近連絡が取れない程度では、認められない可能性が高いです。
たとえば、1ヶ月海外旅行に行くと伝えて旅行している場合、連絡が取れなくても1ヶ月経過までは返ってくる見込みはあると判断されるでしょう。
明確な期間の定めがないので、個々の事例ごとに判断していくしかないです。
2.遺産分割協議に参加
亡くなった人が遺言書を残していなかった場合、相続人全員で遺産分割協議をする必要があります。
全員参加でなければ遺産分割協議は無効となります。
ですので、相続人に行方不明者がいると、いつまでも相続手続が終わりません。
それでは他の相続人にとっても不都合なので、不在者財産管理人を選任します。
行方不明の相続人の代理人として、在者財産管理人が遺産分割協議に参加します。
遺産分割協議書にも不在者財産管理人が署名します。
2-1.法定相続分を確保する
不在者財産管理人が遺産分割協議に参加するには、家庭裁判所から権限外行為の許可が必要になります。
不在者財産管理人は遺産分割協議において、相続分として法定相続分を確保しなければなりません。
法定相続分を下回る内容の遺産分割協議案では、原則として家庭裁判所の許可がおりません。
特定の相続人に財産を集中させたい場合は、生前に遺言書を作成する方が確実です。
たとえば、子ども達で話がまとまっているのなら、親に遺言書の作成を頼んでおくことも考えておくべきです。
3.選任申立てが必要
相続人が行方不明であっても、自動的に不在者財産管理人が選任されるわけではないです。
家庭裁判所に不在者財産管理人選任申立てをしなければなりません。
申立ては他の相続人からできますので、不明点があれば専門家等にご相談ください。
詳しい手続きの流れは『不在者財産管理人選任申立て手続き』でご確認ください
4.さいごに
亡くなった人が遺言書を残していなかった場合、相続人の中に行方不明者がいると遺産分割協議が進みません。
なぜなら、誰か1人でも不参加だと無効になるからです。
相続手続を進めるためには、不在者財産管理人が必要になります。
ただし、行方不明の定義は明確に決まっているわけではないので、申立てが認められない可能性もあります。
不在者財産管理人は行方不明者の相続分として、法定相続分を確保しなければなりません。
したがって、特定の相続人に相続財産を集中させるのは難しいです。
すでに推定相続人で連絡が取れない人がいるのなら、遺言書を作成しておくことをお勧めします。遺言書の作成は相続手続をスムーズに進めるためにも重要です。