不在者財産管理人とは行方不明者の財産を管理する人

不在者財産管理人
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相続人の中に不在者がいて、相続手続きが進まず困っていませんか。

そのような事態を解決するのが不在者財産管理人です。

不在者財産管理人を選任すれば、不在者の代わりに相続手続きを行います。

今回の記事では、不在者財産管理人について説明しているので、相続手続を進めるための参考にしてください。

1.財産管理制度上の不在者とは

まず初めに、不在者にはどのような状態の人が該当するのかを説明します。

財産管理制度上の不在者とは以下の2つを満たす人です。

  • 生死不明
  • 当分帰ってくる見込みがない

生死不明で当分帰ってくる見込みがない人」のことを不在者といいます。行方不明者届の提出は関係ありません。

1-1.生死不明でなければ該当しない

生死不明であることが条件にあるので、死亡している人は当然ですが、死亡しているとみなされている人も不在者ではないです。

死亡しているとみなされるとは、失踪宣告を受けている場合です。失踪宣告を受けている人は死亡しているとみなされます。

不在者に該当するかどうかは、戸籍謄本を確認することから始めます。通常、他人の戸籍謄本は取得できないのですが、申立てをする場合は取得することができます。

行方不明の期間が長期間に及ぶ場合は失踪宣告も検討してみてください。

1-2.当分帰ってくる見込みがない

当分帰ってくる見込みがないとは、ある程度の期間行方不明であることが求められます。最近連絡が取れない程度では、認められない可能性が高いです。

例えば、1ヶ月海外旅行に行くと伝えて旅行している場合、連絡が取れなくても1ヶ月経過までは返ってくる見込みはあると判断されるでしょう。

明確な期間の定めがないので、個々の事例ごとに判断するしかありません。

 

2.家庭裁判所の選任手続きが必要

家族が不在者に該当しても、自動的に不在者財産管理人が選任されるわけではありません。

不在者財産管理人を選任するには、家庭裁判所に対して不在者財産管理人選任申立てをする必要があります。

詳しい手続きの流れは『不在者財産管理人選任申立て手続き』でご確認ください

2-1.申立人が予納金を負担する

不在者財産管理人選任申立てのデメリットに、予納金の存在があります。

予納金
申立て手続きをする際に裁判所に納める費用のこと

不在者財産管理人の報酬などは、予納金から支払われます。

具体的な金額は決まってなく、不在者の預貯金などがあれば少なくなります。

2-2.不在を証する資料を用意する

不在者財産管理人の選任申立てをする際には、不在であることを証する書類を提出します。

主な書類には以下があります。

  • 職権消除された住民票
  • 辺戻された不在者宛ての手紙
  • 行方不明者届受理証明書

すべて必要なわけではなく、できる限り用意しましょう。

 

3.不在者財産管理人の権限は限られる

不在者財産管理人の権限は限られています。

不在者財産管理人は権限の定めのない代理人に該当します。

(権限の定めのない代理人の権限)
第百三条 権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一 保存行為
二 代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為

出典:e-Govウェブサイト(民法103条)

下記の2つが不在者財産管理人の権限となります。

  • 保存行為
  • 管理行為(利用・改良)

不在者の財産管理が目的なので権限も限られています。

不在者財産管理人の権限は2つ

気を付けなければいけない点は、相続手続(遺産分割協議など)は処分行為に該当するので、不在者財産管理人が自由に行うことはできない点です。

 

4.相続手続は権限外行為となる

不在者財産管理人が選任されていても、相続手続(処分行為)を自由に行うことはできません。

(管理人の権限)
第二十八条 管理人は、第百三条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。

出典:e-Govウェブサイト(民法28条)

不在者の代わりに遺産分割協議や相続放棄をするには、家庭裁判所の許可が必要になります。

4-1.遺産分割では法定相続分の確保が原則となる

家庭裁判所に権限外行為の許可を申し立てる際には、遺産分割協議案を提出します。

原則として、不在者のために法定相続分を確保していなければ、家庭裁判所の許可がおりません。

不在だからといって、不利になるような内容は認められません。

4-2.相続放棄をするには理由が必要

不在者財産管理人が相続放棄することも可能ですが、放棄する理由が必要となります。

なぜなら、相続放棄してしまうと、本来取得できた財産を失うことになるからです。

例えば、亡くなった人の財産が借金しかないなどの理由が必要です。

 

5.不在者財産管理人の業務は終了事由が発生するまで続く

不在者財産管理人を選任した目的を達成しても、管理業務が終了するわけではありません。

不在者財産管理人の職務は不在者の財産を管理することです。ですので、相続手続が終わったからといって、管理業務が終わるわけではありません。

終了事由は以下のとおりです。

  • 不在者が見つかる
  • 財産管理人が選任された
  • 管理財産が無くなった
  • 不在者の死亡が確認された
  • 不在者に失踪宣告がされた

上記のどれかに該当するまでは、不在者財産管理人の管理業務は続きます。

 

6.さいごに

不在者財産管理人とは、生死不明で当分帰る見込みがない人の財産を管理する人です。

亡くなった人の相続人に不在者が存在するや、不動産の共有者に不在者がいる場合などに、不在者財産管理人を選任することが多いです。

なぜなら、遺産分割協議は相続人全員の同意が必要ですし、不動産の処分には共有者全員の同意が必要だからです。

不在者の代わりに同意してもらうために選任します。ただし、不在者の不利益になるような行為は、家庭裁判所が認めません。

不在者財産管理人は不在者の財産を管理するために存在しています。