不在者財産管理人の選任申立て【手続きには数ヶ月かかる】

不在者財産管理人の選任申立て
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不在者財産管理人の選任申立てを検討しているなら、手続きについて知っておきましょう。

  • 亡くなった人の相続人に行方不明者がいる
  • 不動産の共有者に行方不明者がいる

上記のような場合は、不在者財産管理人を選任しなければ、遺産分割協議や不動産の処分をすることができません。

不在者財産管理人の選任申立ては家庭裁判所の手続きなので、複数の書類を用意する必要があります。

不在者財産管理人の選任までには数ヶ月かかるので、早めに取り掛かりましょう。

今回の記事では、不在者財産管理人の選任申立てについて説明しているので、不在者がいるなら参考にしてください。

1.不在者財産管理人の申立て要件は2つ

まず初めに、不在者財産管理人の申立て要件を確認します。

  • 不在者であること
  • 財産管理人を置いていない

どちらかだけでなく、2つの要件を両方満たす必要があります。

1-1.不在者でなければ申立てはできない

当然ですが、不在者に該当しなければ、不在者財産管理人の選任申立てはできません。

裁判所のウェブサイトでは、不在者とは以下のように説明されています。

従来の住所又は居所を去り,容易に戻る見込みのない者(不在者)

出典:裁判所ウェブサイト(不在者財産管理人選任)

容易に戻る見込みがないなので、少なくとも1年ぐらいは所在不明の期間が必要です。

したがって、所在不明になって半年ぐらいでは、不在者財産管理人の選任申立ては難しいと思われます。

1-2.不在者が財産管理人を置いていない

不在者が任意財産管理人を置いているなら、不在者財産管理人の選任申立てはできません。

任意財産管理人
財産管理等委任契約の受任者のこと

なぜなら、任意財産管理人が手続きをするので、選任申立てをする理由がないからです。

ただし、任意財産管理人の権限が消滅した場合は除きます。

2.不在者財産管理人の選任申立て手続き

不在者財産管理人の申立て要件を満たしているなら、選任申立て手続きに移ります。

あらかじめ用意しておく書類もあるので、ご自身で手続きするなら確認しておいてください。

2-1.不在者財産管理人の申立ては誰ができるのか?

不在者財産管理人の選任申立てができるのは以下の人です。

  • 利害関係人
  • 検察官

例えば、亡くなった人の相続人が不在者であれば、他の相続人は利害関係人に該当します。

あるいは、不動産の共有者が不在者であれば、他の共有者も利害関係人に該当します。

2-2.不在者財産管理人の申立先は管轄家庭裁判所

不在者財産管理人の選任申立先は決まっています。

申立先の家庭裁判所は、不在者の従来の所在地または居住地を管轄する家庭裁判所です。

基本的には、不在者の最後の住民票を取得して確認します。住所が分からない場合は戸籍の附票で確認することも可能です。

家庭裁判所の管轄については、裁判所ウェブサイトで確認できます。

裁判所ウェブサイト』に移動できます。

2-3.不在者財産管理人の申立て費用は3種類

不在者財産管理人の選任申立て費用は3種類あります。

  • 申立手数料
  • 予納郵券
  • 予納金

それぞれ説明していきます。

申立て手数料は収入印紙で納める

不在者財産管理人の選任申立手数料は800円です。

ただし、現金ではなく収入印紙で納めます。収入印紙は郵便局やコンビニで購入できます。

申立書に収入印紙を貼付する箇所(右上)があります。

予納郵券は家庭裁判所により違う

不在者財産管理人の選任申立てに必要な予納郵券は家庭裁判所により違います。

管轄家庭裁判所を確認したら、必ず予納郵券の金額を確認してください。切手の内訳も指定されています。

予納金の金額は不在者の財産により変わる

不在者の財産内容によっては管理費用に不足が出るので、申立人に予納金を求めることがあります。

予納金の額は申立てをしないと分からないので、管轄家庭裁判所に確認しておきましょう。

2-4.不在者財産管理人の選任申立書と添付書類

不在者財産管理人の選任申立てをするには、複数の書類を準備する必要があります。

  • 不在者財産管理人選任申立書
  • 不在者の戸籍謄本・戸籍の附票
  • 不在者財産管理人の候補者の住民票
  • 不在の事実を証する資料
  • 不在者の財産に関する資料
  • 申立人の利害関係を証する資料

それぞれ簡単に説明していきます。

不在者財産管理人の選任申立書

不在者財産管理人の選任申立書は、家庭裁判所の窓口やウェブサイトからダウンロードできます。

専門家に申立てを依頼する場合は、専門家が用意するので大丈夫です。

不在者の戸籍謄本・戸籍の附票

不在者の戸籍謄本と戸籍の附票は、不在者の本籍地の役所で取得できます。
※本籍地が遠方の場合は郵送で取得します。

戸籍謄本は450円ですが、戸籍の附票は自治体により金額が違います。郵送で取得する場合は請求前にご確認ください。

不在者財産管理人候補者の住民票

不在者財産管理人の候補者がいる場合は住民票を提出します。
*候補者がいない場合は不要です。

候補者を推薦しても決めるのは家庭裁判所なので、専門家等が選ばれる可能性もあります。

不在の事実を証する資料

不在の事実を証するとは、「行方不明者届受理証明書」や「返送された不在者あての手紙(あて所に尋ね当たらずなどの理由が付されたもの)」が該当します。

不在者の財産に関する資料

不動産登記事項証明書や銀行の通帳の写しなど。

申立人の利害関係を証する資料

他の相続人が申し立てる場合は、共同相続人であることを証するために戸籍謄本を提出します。

3.不在者財産管理人が選任されるまでの期間

不在者財産管理人の選任申立てをしたら、家庭裁判所は不在者かどうかを審理します。

不在者かどうかは、提出された資料や申立人から聞き取り等をして判断します。

不在であることが確認できれば、家庭裁判所は不在者財産管理人を選任します。

通常、家庭裁判所の審理に数ヶ月はかかるので、不在者財産管理人の選任まで半年ぐらいは想定しておきましょう。

4.不在者財産管理人の申立てに関する注意点

不在者財産管理人の申立てに関する注意点も確認しておいてください。

  • 権限外行為許可の申立ても必要
  • 当初の目的を達成しても終了しない

4-1.不在者財産管理人の権限外行為許可の申立ても必要

不在者財産管理人が選任されても、遺産分割協議や不動産の売却をすることはできません。

なぜかというと、不在者財産管理人の権限は管理・保存行為に限られるからです。

遺産分割協議や不動産の売却は処分行為に該当するので、家庭裁判所に権限外行為許可の申立てをする必要があります。

4-2.当初の選任目的を達成しても不在者の財産管理は終了しない

遺産分割協議や不動産の売却等の目的を達成しても、不在者財産管理人の業務は終了しません。

不在者の財産が存在する限り、不在者財産管理人の業務は続いていきます。

不在者が見つからなければ、見つかるまで不在者の財産から報酬が支払われていきます。

5.さいごに

亡くなった人の相続人に行方不明者がいる場合や、不動産の共有者に行方不明者がいると手続きが進みません。

各種手続きを進めるには、行方不明者のために不在者財産管理人を選任する必要があります。

不在者財産管理人の選任までには、数ヶ月はかかるので早めに取り掛かりましょう。